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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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覚醒した薬局長と、地獄の家飲み決定劇

ショッピングモールの公開告白騒動の直後、胃薬を煽りに行って戻ってきた陣内を待ち受けていたのは……覚醒した涼香のマウント(?)と、妹・有珠の鶴の一声による「陣内宅での家飲み決定」! 完璧なライバル(涼香)の爆発的なデレに敗北感を覚えつつも決戦に挑むほのか&まひろの葛藤を描くドタバタ劇をお楽しみください!

「くっ……お腹が……俺の胃と腸が死ぬ……ッ!」

俺(陣内拓海)はショッピングモールの異常すぎる光景に精神と胃腸が耐えきれなくなり、命からがら多目的トイレへ退避していた。

ポケットの『ラベール胃腸薬プレミアム』を水なしで一気に流し込み、荒い息を整える。

(あ、あかん……! 涼香さんの『私が彼女だもん!!』が頭から離れない……っ! なんだったんだあの破壊力は……! まさか白昼堂々、ショッピングモールの真ん中であんなこと言われるなんて…有珠の異常行動といい…ドッキリか!手が込みすぎな気もするが…神崎課長と有珠は仲がいい、何してくるかわからないぞ…これは要注意だ……よし…少し落ちついた…)

腹痛と動悸を必死になだめながら、俺は冷や汗を拭って外へと戻ったのだった。

一方その頃――。

ベンチに残された白石ほのかと有栖川まひろは、これまでにないガチの危機感に打ち震えていた。

確かに、最初はイライラした。

有珠ちゃんがあざとく拓海さんに胸を押し当てて抱きついていた時は「この泥棒猫!」と怒り狂ったし、実の妹だと種明かしされた時は「してやられた!」と自分たちの早合点に恥ずかしくなった。

自分たちが拓海さんのことを大好きな気持ちに嘘はない。

……だが!

あの普段はクールビューティーで、仕事も完璧、エリート丸出しの氷室薬局長が、あそこまでなりふり構わず取り乱してボロ泣きするなんて。

しかも、訳が分からないパニック状態で「私が彼女だもん!!」と泣き叫ぶなんて――。

(((悔しい……ッ!!)))

ほのかとまひろは、認めたくはないが痛感していた。

あそこまでの熱量と一途さを見せつけられたら、間違いなく今、一番拓海さんを深く強く思っているのは涼香さんだ。どうしよう……このままじゃ完全に持っていかれる……!

そんな二人の焦りをよそに、涙を拭った涼香は突如としてテンションがバクアゲ状態に突入していた!

ボルドーの唇をフワリと緩め、爛々と瞳を輝かせながら、有珠(ありす)を質問攻めにしている。

「グズッ……ふぅ。あっ……有珠さん、貴女とっても可愛らしいわね♪ お幾つなんですの?」

「えっと……26歳です」

「お仕事は何をやってらっしゃるの?」

「看護師です……」

「あら〜! どこの病院ですの?」

「町田総合中央病院です……」

「何科かしら?」

「えっと、もの忘れ外来(認知症専門)です……」

「あぁ! だから拓海さんは認知症領域の臨床知識が得意なのね! 納得いたしましたわ! あ、ちょっと見てくださる? 私、京都の学会で認知症の服薬指導について発表したのよ! このお守りの鈴も見てみて!」

グイグイと圧倒的な距離感で押し込んでくる涼香に、有珠も「は、はい……!」とタジタジだ。

押されっぱなしのほのかとまひろが「あ……あの……?」と遠慮がちに声をかける。

「なぁに? お二人さん♪」と、勝ち誇ったような最高の笑顔を見せる涼香。

「お二方(ほのかちゃん、まひろちゃん)も、拓海さんの昔の写真とか、何か見たいでしょ?」

「「う、うん……!!」」

すると、有珠がニヤリと悪魔のような笑みを浮かべて提案した。

「じゃあさ……お兄ちゃんの家でみんなで飲まない?」

「「「絶対行く!!!!!」」」

涼香、ほのか、まひろの3人の声が完璧に重なった!

「(ふぅ……やっとお腹が落ち着いた……。一体どう収まったんだ……?)」

胃薬の効き目のおかげでなんとか生還した俺(陣内拓海)が、おそるおそるベンチへ戻ってきた。

すると、有珠が手を振りながら気安く言ってきた。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん! これからみんなで、お兄ちゃんの部屋で家飲みしようってなったよー!」

「はぁー!!? え、えっ……!? 家飲み!? お前……急に言われても部屋の片付けとか……!」

「大丈夫でしょ? お兄ちゃん昔から物を持たないミニマリストなんだから」

「はぁーーーっ!!? そういう問題じゃねぇだろ!!」

パニックになる俺の横で、涼香さんは見たこともないほど幸せそうなニコニコ顔で「拓海さん……♡」とほほ笑んでいる。

有珠は呆れ顔の俺の肩をぽんぽんと叩いた。

「大丈夫大丈夫! 終電までにはちゃんと全員返すからさ!」

その裏で――ほのかとまひろの二人は、スマホを取り出し、それぞれの親友へ決死のSOSメールを送信していた。

『助けて! 薬局長のデレ爆発が凄まじすぎて……私たちが負けそうな予感がする……ッ!!』


【数十分後・陣内のアパート】

「はぁ……はぁ……っ! なんで休日の夕方に、俺の狭い部屋に集結して家飲みすることになってるんだーーーーっ!!」

部屋の隅で、缶チューハイを片手に真っ赤な顔で悶絶する俺――陣内拓海。

座布団にちょこんと正座し、上着を脱いでボルドーのスクエアネックニット姿になった涼香さんが「拓海さん…♡」とトロンとした瞳で迫ってくる。

その左右では、ほのかとまひろが「先輩! 私が作ったおつまみ食べてください!」「拓海さん! ビールのおかわり入れますね!」と激しい対抗心を燃やして囲み取材状態だ。

妹の有珠は、ソファでニヤニヤしながらその光景を動画に収めている。

(あ、あかん……! 昼間の『彼女だもん!』の余波が凄まじすぎて、俺の心臓と胃袋が家飲みスタート5分で完膚なきまでに崩壊しそうだーーーっ!!)

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