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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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神崎葵という女、超エリートブロック長

いつもは嵐のように現れては破天荒な企画を丸投げしていく「本部の悪魔たん」こと神崎葵統括課長。その秘められた凄まじい実力と過去が、超エリートブロック長・等々力隆弘の口から語られる

「はいはいはい! おっはよー、みんな〜っ!! 今日はこの葵ちゃんが直々に朝礼をしまーす!」

朝の白鳥駅前店の事務所。相変わらずテンション全開で仕切る神崎葵統括課長の声に、スタッフ一同は朝からぐったりとした表情を浮かべていた。

「あ、それとね! 今日の昼休みに大物ゲストが来まーす! 等々力隆弘(とどろき たかひろ)ブロック長が、今回のハロウィン企画の大盛況にお礼を言いたいってことで来店しまーす!! みんなの顔を見せるからねー!」

「「「……っ!?」」」

ざわ……ざわ……とバックヤードが一気に緊張感に包まれた。

ブロック長といえば、エリアマネージャー(陣内拓海)の上司にあたる上級幹部。しかも等々力ブロック長は、喜多里大学出身でレジデント研修を修了し、『外来がん化学療法認定薬剤師』の資格を持つ、社内でも屈指の超エリートで知られている。

思わず、涼香が控えめに手を挙げた。

「あっ……あの、神崎課長。よろしいでしょうか?」

「なにかしら、氷室ちゃん?」

「あの……なぜ今日、拓海さん(陣内)を急にお休みにされたのですか?」

神崎課長はニヤリと笑うと、ひらひらと手を振った。

「あー、はいはい! 拓海くんが優秀なのは本部も周知の事実だから良いのっ! たまには休ませてあげなさい! アイツ、放っておくと胃がすぐクラッシュしちゃうんだから!!」

「はぁ……(確かにそれは否定できませんけれど……)」

納得半分、不満半分といった表情で涼香は胸を撫で下ろした。

そして昼休み――。

スーツをビシッと着こなした背の高い男が、静かな足取りで白鳥駅前店へとやってきた。等々力隆弘ブロック長だ。

しかし、肝心の神崎課長は「ちょっと本部から電話〜♪」と言い残したまま、いつの間にか姿を消していた。

「こんにちは……。今回のハロウィンキャンペーン、皆様の並々ならぬご尽力に大変感謝いたします……」

等々力ブロック長が深々と頭を下げると、威圧感と威厳に圧倒されたヒロインたちはビビりながら恐縮した。

「い、いえ……! 全て神崎課長が考えられた企画でして……」

涼香が答えると、等々力ブロック長はふっと表情を和らげ、首を振った。

「だが、それを現場で完璧に実施し、数字を出したのは君たちだ。ありがとう。……正直、彼女の無茶振りに即座に応えて成果を出せること自体、実に素晴らしい店舗だよ」

「そっ……そうですか……ありがとうございます……!」

「……ところで、神崎が見当たらないが?」

「あぁ、そう言えば『席を外す』と言ってどこかへ……」

「逃げたか、神崎め……相変わらず食えない奴だ」

等々力ブロック長は苦笑混じりに息を吐くと、涼香たちヒロイン4人(涼香、まひろ、ほのか、結衣)をぐるりと見渡した。

「そう言えば……君たちは神崎葵という人間の経歴を、あまりよく知らないのではないか?」

「はっ……はい」と答えるまひろ。

「どんな人物か、気になります……」と涼香。

等々力ブロック長はゆっくりと腕を組み、静かな声で語り始めた。

「神崎は去年まで、大型店舗である浅草中央店の『上級薬局長』だったんだ」

「えっ……浅草の……!?」

「あそこは売り上げも患者数も桁違いの激戦区だ。彼女は今年からいきなり経営本部の統括課長へ抜擢昇進している。……ちなみに、当グループ最年少エリアマネージャーは君たちの上司の陣内君だ。彼は29歳でエリア長になった。当初、神崎は陣内君の教育係(メンター)だったが、途中で陣内君が先に昇進して立場が逆転した経緯がある」

「拓海さんの……教育係……!」

「彼女は浅草店時代、瀕死状態だった売上を大幅に上向かせ、本部でも噂になるほどの功績を挙げた。オータムフェスやクリスマスファンタジーといった全社キャンペーンでも、全国1位の売上を数回叩き出している凄腕(兵)だ。……私とはまったく異なるスタンスの人間だよ」

等々力ブロック長は自嘲気味に微笑んだ。

「私は喜多里大でレジデント研修まで受け、がん専門の資格も取った。『臨床能力さえ上げれば評価されて上に上がれる』と思って今までやってきた。だが彼女は……奇抜なアイデアと圧倒的なプロデュース能力で、今までの薬剤師には到底真似できない『人が集まる店舗作り』に注力してきたんだ。そして、出す企画のどれもが大ヒットした」

「……っ!」

「私のようなお堅い薬剤師には、到底不可能な芸当だよ。彼女の手掛けた健康相談ブースは地域で大人気となり、子ども向けの職業体験ブースや、高校生の見学受け入れ、さらには医療系大学との産学連携など……さまざまな能力に溢れた人間だった。だからこそ、30代前半でいきなり経営企画の統括課長に抜擢されたわけだ」

ヒロインたちは息をのんだ。

「君たちは今年初めて彼女の店舗監査を受けたから知らないだろう。実際、今回のハロウィン企画も彼女の思惑通りに大ヒットしたわけだ。やり方には思うところがあるし、昔は化粧も今よりずっと派手だったと聞くが……クレームどころか、本部には地域住民や顧客から感謝状まで届く始末だ。……ヤツは、まさに『怪物(バケモノ)』だよ」

等々力ブロック長は、最後に涼香を見つめて言った。

「ひとつ意外だったのは、氷室薬局長だな。君は私と同類の『お堅い臨床派』だと思っていたのだが……意外だよ。あの神崎とうまく連携し、巻き込まれながらも成果を出す術を持っている。意見が食い違って当たることもあるが、君たちの店舗にはいつも新鮮さと熱気があるな」

――4人は、完全に息をのんでいた。

ただのおふざけやハイテンションだけで、33歳という若さで全社の統括課長になれるはずがなかったのだ。

あの破天荒な言動の裏に隠された、圧倒的な実績と経営戦略の鋭さ。

(((((あ……あの大悪魔(神崎葵)……やっぱりただの変人じゃなかったんだ……っ!!)))))

「本部の悪魔たん」こと神崎葵に対する警戒度を、MAXまで強めざるを得ない4人(涼香、まひろ、ほのか、結衣)なのであった。

【その頃、自宅で休日を過ごす陣内拓海】

「……はっくしょんっ!?」

久しぶりの休日、自室のソファでくつろいでいた俺――陣内拓海は、派手なくしゃみをひとつ漏らした。

「ふぅ……今日は神崎課長が現場に入ってくれたおかげで、久しぶりにゆっくり休めているな……」

温かいお茶をすすりながら、静かな時間を噛み締める。

白鳥駅前店で今まさに、等々力ブロック長によって神崎課長の恐ろしい伝説が明かされ、ヒロインたちの警戒心が爆発していることなど、知る由もない。

「うん……今日はお腹の調子も良いし、胃薬もお休みだ。おっと……午後から有珠とデートだったか…」

俺はデートの準備に取り掛かる

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