大盛況のフィナーレと、まさかのMVP
怒涛のハロウィンキャンペーンが大盛況でフィナーレ! 超エリートブロック長・等々力隆弘をも唸らせた大悪魔・神崎葵統括課長が発表した波乱の「MVP発表」と、まさかの小寺結衣ダントツ優勝(分子標的薬の大量調剤)、そして結衣の「興味ないもーん!」発言に振り回されて胃薬を煽る陣内のドタバタ劇をお楽しみください
私、神崎葵! グループ本部の統括課長にして、社内からは恐れとリスペクトを込めて「本部の悪魔たん」と呼ばれている女だ。
大熱狂のうちに幕を閉じた『白鳥駅前店・秋のハロウィン大感謝キャンペーン』。
この結果を見て、我ながら自分の「美人を最大限に使いこなすプロデュース能力の高さ」にビビり散らかしていたわ!!
日頃、何かと私のやり方に小言を言ってくる目の上のたんこぶ――
喜多里大学出身、レジデント薬剤師修了、外来がん化学療法認定薬剤師という超ド級のスペックを持つ超エリートブロック長・等々力隆弘(とどろき たかひろ・39歳)(※当グループにおいてブロック長とは、エリアマネージャーの上に位置する上級課長職である)でさえ、今回の売上速報と患者・顧客満足度のデータを見て膝を打ち、感服していたわ!!
超絶才女たるこの私が、勝利の報告を携えて白鳥駅前店へ乗り込むわよ!!
シューッ!! バッコォ!! 超エキサイティング!!
バターン!!
「はいはいはい! 全員注目ーーーっ!!」
ウキウキで事務所のドアを豪快に開けて突入する私に、スタッフ全員が「また来た……」という顔で引き気味に固まった。
「なんとなんとーっ! 今回のハロウィンキャンペーンだけで、店舗の売上が〜〜数千万円を超えるという空前絶後の大快挙達成です!! パチパチパチパチ〜〜ッ!!」
パチパチパチ……と、店内には微妙に引いた拍手が響く。
「そこでぇ〜っ! 今日は頑張ったみんなのために、今回のキャンペーンの【MVP】を発表しちゃいまーすッ!!」
「「「くわっ……!!」」」
その言葉が出た瞬間、涼香ちゃん、まひろちゃん、ほのかちゃんの3人の瞳にメラメラと凄まじい執念の炎が灯った!
「フン……! 売り場全体を統括し、抽選会で大人の色気を放ち続けた私が一番でしたわよ!!」(涼香)
「なにいってんの薬局長! 本部の不良在庫だったカラーマスカラを完売させて、男子の売上まで爆増させた私に決まってるでしょ!」(まひろ)
「ふふっ、感染予防と恋の予防接種で、お客様の健康と心を守り抜いた天使の私ですよ♪」(ほのか)
バチバチと放電する火花!
私はニヤニヤしながら、悪魔の宣言を叩きつけた。
「さぁさぁさぁ! 担当部署の単純な売上数字、および口コミの反応を葵ちゃんが厳正にリサーチしました! 贔屓なしッ!! 最優秀MVPに選ばれた方には――なんとッ! 【明日1日、拓海くんとの完全フリーデート権】をプレゼントしちゃいまーす!!」
「「「!!????」」」
「ちょ……っ!? 課長! 勝手に何わけの分からん決め事を言ってるんですか!?」
俺(陣内拓海)が慌てて叫ぶが、神崎課長は聞く耳を持たない。
「拓海くん、最近休みが少なくて顔色悪いでしょ〜? だから明日の休み……あげちゃうわ! 明日のエリアマネージャー業務は、この葵ちゃんが代わりにぜ〜んぶ入ってあげるからねっ♪」
「「「きゃあああああーーーーーッッ!!!!」」」
目を見開いて歓喜の悲鳴を上げる涼香、まひろ、ほのかの3人!
調剤室の陰では、実習生のあげはと転属してきた結衣が「うおーっ! 懸賞の景品がエリア長とか超ウケるっしょ(笑)!」「葵課長すごーい! フーフー!」とワーワー大喜びしている。
「それでは発表しまーす! ドラドラドラドラ……ジャンッ!!」
神崎課長がビシッと指をさしたのは――
「MVPは、調剤室を守り抜いた小寺結衣ちゃんですッ!!」
「「「「!!??????」」」」
事務所全体が静まり返った。
「えー、解説しますと! ハロウィン期間中、高額な抗がん剤や分子標的薬の処方箋が多数舞い込み、それを裏方で淡々と、ミスなく完璧に調剤・監査・払い出しをし続けた小寺結衣ちゃんの調剤売上がダントツのトップでしたー!!」
「「「「ええええええええーーーーーっ!?!?」」」」
3人のヒロインが呆然と結衣を見つめる中、渦中の結衣は一瞬ポカンとしたあと、ぶんぶんと首を激しく横に振った。
「えっ……えええっ!? い、行きませんよっ!! 私、エリア長には全然興味ないもーんっ!!! 氷室薬局長一筋ですからっ!!」
「「「「……っ!?」」」」
明日の休日(エリアマネージャー業務免除)が決まって一瞬ホッとしたのも束の間。
目の前で後輩の結衣にでかい声で「興味ないもーん!!!」とバッサリ拒絶され、その横では「じゃあ繰り上げ優勝は私ですわね!?」「いや私でしょ!」「私です!」と3人のヒロインが大乱闘を始めている。
(あ、あかん……! 売り上げ数千万円の快挙は素晴らしいが、俺の尊厳と胃袋が木っ端微塵だーーーっ!!)
激甘な修羅場と、結衣からのバッサリな振られ文句、そして明日訪れるであろう狂乱の休日に怯える俺――陣内拓海。
冷や汗を滝のように流した俺は、ガクガクと震える手でポケットの『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、興味ないもーん!!の衝撃に濡れてペソペソの胃に優しく薬を流し入れた…
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