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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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高校生たちの襲来と、甘酸っぱい秋風

ほのかに触発されて「帝協大学薬学部」を進路調査に提出した美園太が、同級生たちを巻き込んで再来店! ゲキカワ薬剤師・ほのかの後輩宣言と、まひろの激盛りメイク実演に男子も女子も総ノックアウト。甘酸っぱい秋風とともに、本日も陣内の胃薬が平和にお休みする微笑ましい放課後のひととき

俺、美園太(みその ふとし)は、昨日の出来事からずっと胸の鼓動が収まらなかった。

あの『ドラッグラベール白鳥駅前店』で出会ったゲキカワ薬剤師(ほのか)さんの笑顔と、温かい進路アドバイスに完全に心を撃ち抜かれてしまったのだ。

俺の通う八王子実戦高校は、昔から帝協大学への進学実績がやたらと多いことで定評がある。

昼休み、下心から始まったかもしれないが、ゲキカワ薬剤師さんに背中を押されて『帝協大学薬学部』を進路調査票に書いて提出したことを友達に話していると、なぜかクラスの女子たちが話を聞きつけて集まってきた。

「あれ? 美園くん、私もそのドラッグストアのこと聞いたことあるよ! コスメの店員さんがすごーく可愛くて教え方が上手いってSNSで話題になってた!」

「えっ、マジで? 美園、いつまでそのハロウィンキャンペーンやってるか知ってるか!?」

気づけば俺の周りには人だかりができていた。

「ゲキカワな薬剤師さんを見に行きたい男子グループ」と、「噂のゲキカワコスメリーダーにメイク相談したい女子グループ」に綺麗に意見が分かれ、放課後、みんなでゾロゾロと白鳥駅前店へ向かうことになってしまったのだ!

(あ〜……なんか気恥ずかしいな……。でも、昨日のお姉さんに『勧めてもらったおかげで進路調査票に薬学部って書きました!』って直接言えたら最高だな……。動機は何であれ、俺は本気で勉強すると決めたんだ! あの女神に感謝しに行こう……!)

女子グループは「秋の新作マスカラほしい〜」「キュンメイク教えてもらえるかな!?」と楽しそうに盛り上がっている。

(女子ってそんなにコスメ買うお金どこから出てくるんだ……?)と不思議に思いながら歩いているうちに、あっという間に店舗に到着した。

(うっ……昨日来たばかりなのに、また男子集団でぞろぞろ押しかけて『キモい』とか思われないだろうか……どうする俺!?)

入口でドギマギと日怯んでいると、店内から可憐な白衣姿の女神――ほのかさんがトコトコと歩み寄ってきた!

「あれ? 昨日の高校生くん! お友達もたくさん連れて来てくれたのね♪」

「「「「……っ!!!」」」」

ほのかさんの圧倒的な透明感と黒猫耳のあざと可愛さに、一緒に来た男子グループ全員が「うわっ……本物だ……可愛すぎてどうにかなりそう……」と一瞬で言葉を失って固まった。

ほのかさんは俺の顔を見て、嬉しそうに目を輝かせた。

「昨日の進路の相談、どうだった? 薬学部に決めたのかな?」

「はっ、はいっ! 今日の昼休みに進路調査票に『帝協大学薬学部』って書いて出してきたんです! ずっと決められなくて困ってたんすけど、担任の先生も『お前なら狙えるぞ、頑張れ!』って背中を押してくれて……っ!」

すると、ほのかさんはぱぁっとひまわりのような笑顔を咲かせ、俺の目をじっと見つめてくれた。

「ふふっ♪ じゃあ、将来は私の『可愛い後輩ちゃん』になるのね! でもでも〜、薬学部に入ってからはかな〜り真面目に勉強しないと、すぐに留年しちゃうからね? しっかり頑張るのよ♪」

バキューン……ッ!!

(((「「「後輩ちゃん……!? 留年しないように頑張るのよ……っ!?」」」)))

破壊力無限大の「後輩ちゃん」フレーズと甘いエールに、俺も含めた男子高校生全員が胸を射抜かれて撃沈(ノックアウト)!

帰り際、隣で真っ赤になっていた親友が俺の肩をガシッと掴んできた。

「美園……! オメェ……大学に入ったら、可愛い薬学女子紹介してくれよな……!!」

「フッ……甘いぜ! 俺が真っ先に女神みたいなリケジョ彼女をつくってみせるからな!!」

男子高校生特有の、青く甘酸っぱい秋風が駅前の通りを駆け抜けていく。

――一方その頃、店内奥のコスメ売り場では、女子グループが有栖川まひろさんの周りを囲んで大盛り上がりしていた!

「きゃーっ! コスメリーダーさん超絶可愛いーっ!」

「本当にアイドルみたーい!!」

まひろは小さなマジカルステッキを手に、女子高生たちへ最新の『秋の激盛りキュンメイク』を実演指導中だ。

「は〜い、みんな見てねーっ! ここはこうやってラメを乗せると……ほらっ! 抜け感が出て激盛り可愛いーっ♡」

「すごーいっ! 目元が一気に華やかになった! 嬉しい〜っ!」

女子高生たちのハートを鷲掴みにしたまひろの接客により、先ほど完売したカラーマスカラに続き、秋の新作アイシャドウやリップが爆発的に売れていく。

【調剤室の陰】

高校生からお年寄りまで、あらゆる層のお客様を笑顔にして大人気となっているスタッフたちの姿を眺めながら、俺――陣内拓海は、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。

ほのかの誠実で夢を与える進路指導と、まひろの圧倒的なプロのメイク技術。

二人の素晴らしい活躍によって、店内には終始明るく幸せな笑顔が溢れていたのだ。

(うん……本当に良いお店になったなぁ。みんなの笑顔を見ていると、エリアマネージャーとして感無量だよ)

修羅場も激甘アタックもなく、平和で温かな活気に満ちた店内。

俺の手がスーツのポケットにある『ラベール胃腸薬プレミアム』へ伸びることは一度もなく、今日という一日も、俺の胃袋は至極健やかに保たれたのであった。

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