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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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新山さんの恩返しと、完売のディストラクション光線

カラーマスカラ完売作戦のラストスパート! 以前ラタノプロスト(緑内障点眼薬)の副作用(色素沈着・まつ毛の多毛・ゴワつき)ケア指導で救われた新山さん夫妻が再来店し、まひろの情熱と努力に報いる形でラスト1本を買い上げ完売達成! 府中ご褒美デート権を勝ち取ったまひろの暴走

【マジュリカマジョルカ秋コスメ・カラーマスカラ完売作戦】。

府中でのカウンセリング勉強会、そしてサントゥリー武蔵野ブルワリーでのビール工場見学ご褒美デート(&ほろ酔いキス!?)の権利を巡り、有栖川まひろは凄まじい手応えを感じていた。

「商品はね……圧倒的な物量があると売れるのよッ!!」

なぜだかは分からない! だが、それは小売りの現場における絶対の真実!

物量押しだったのか、それとも美月ちゃんパネルの集客効果だったのかは定かではないが、あの『朝までフィット(100ケース)』もびっくりするくらい売れたのだ!(※注:全国のドラッグストア店員の皆様、決して無謀なバカ買い・過剰発注を推奨する意味ではありません!)

……だが! 怒涛の接客で積み上げ、ついにラスト数本という段階に差し掛かったところで、パタリと売れ行きが止まってしまったではないか!

(くっ……! あとちょっと……あとちょっとなのに……! 行きたいよぉ……拓海さんとサントゥリーの工場見学行きたいよぉぉ……っ!!)

焦りまくるまひろの前に、一筋の光――まるで女神のようなお客様が現れた。

常連の『新山さん』だ。以前、緑内障治療薬『ラタノプロスト点眼液』の副作用(まつ毛が太く・長く・ゴワゴワになり、目の周りに色素沈着が起きる症状)に悩んでいた際、まひろの完璧なアイメイク指導と温かいケアによって救われた女性である。

今日は優しそうな旦那さんと二人仲良く来店していた。

「有栖川さん! この間は本当にありがとうね! 緑内障の目薬の副作用でまつ毛がゴワゴワになって落ち込んでたんだけど、教えてもらった通りにマスカラ下地とブラシを使ったら、すっごく綺麗に盛れて上品になったのよ!」

新山さんは輝くような笑顔で感謝を伝えてくれた。隣の旦那さんも「妻が病気になってからずっと元気がなかったんですが、有栖川さんのおかげで笑顔を取り戻してくれて……本当に感謝しています」と深々と頭を下げている。

(くっ……! めちゃくちゃ嬉しいわ……! 涙が出そう……! でも……でもっ……! すでにまつ毛が伸びてゴワついている状態のお客様に、さらにボリュームの出るラメ入りカラーマスカラを売りつけるなんて、コスメ担当のプライドとしてアホのすること……ッ!)

「あ……ありがとうございます〜っ! えいっ♡(萌え萌えキュン♪)」

まひろはプロとしての葛藤を抱えながらも、精一杯の笑顔でマジカルステッキのアピールポーズを決めた。

二人組みの夫婦は「可愛いわねぇ♪」「アイドルみたいだね」と大喜びしてくれているが、まひろの心の中はパニック状態だ。

(二人が喜んでくれるのは最高に嬉しいけど、私はこのラストのマスカラをどうにかして売り切らなきゃナンナイのよーーーっ!!)

売り場には、まひろが情熱を注ぎ込んで作り上げたモリモリの秋コスメ特設POPが煌めいている。

そのバックヤードの陰では、大悪魔こと神崎葵統括課長が腕を組んでほくそ笑んでいた。

(見せてもらおうか……! 本部のメイクアップコンテスト準優勝者(有栖川まひろ)の実力とやらを……!!)

(くっ……神崎課長……やらせはせん! やらせはせんぞーーーっ!!)

両者の間で謎のニュータイプ的な精神感が交錯する、緊迫の攻防戦!

――と、その時だった。

新山さんがふと特設棚に目をやり、吸い寄せられるようにラスト1本のカラーマスカラを手にとった。

「あれ……? このカラーマスカラ、すごく可愛くないかしら……?」

「!!?」

まひろと神崎課長が同時に息をのんだ。

「で、ですが新山様……! お客さまの今のまつ毛のお手入れですと、少し重くなってしまうかも……っ!」

商売よりもお客様の満足を優先しようとするまひろに対し、新山さんは愛おしそうにマスカラを掲げて微笑んだ。

「大丈夫よ! 昨日、眼科の先生にまつ毛を少し抜いて軽く調整してもらったの。それにね……有栖川さんのおかげで、自分の目元に少し自信が持てたのよ。実は次の日曜日、主人と久しぶりの結婚記念日でデートするの! だから……これ、もらうわね♪」

(((……っ!!)))

まひろの「どうしても買ってほしい」という必死の視線に気づいてくれたのか、それとも本当に心から欲しくなってくれたのかは分からない。

だが――売れたのだ!! これにてカラーマスカラ、完全完売ーーーッ!!

後ろで見届けていた大悪魔(神崎葵)は、満足そうにニヤリと笑うと、クールに背を向けた。

「フッ……府中……サントゥリーのビール工場……映画館……せいぜい楽しんでいらっしゃい……♪」

「き、決まったーーーーーッ!! 拓海出張ご褒美デート権、獲得ーーーーーッ!!」

嬉しさのあまり完全にテンションが限界突破した小悪魔まひろは、手にしたマジカルステッキから【破壊光線(萌え萌えディストラクションアタック)】を店内に向けて乱射!

「皆大好きーーーーっ!! みんなも恋の魔法にかかっちゃえーっ♡」

「「「「うおおおおおっ!! 可愛いーーーーッ!!」」」」

まひろの爆走萌え光線を浴びた店内の男性客たちは大歓喜! なぜかその場のノリで他のメンズコスメや日用品の売上まで爆増するという、謎の経済効果を引き起こしたのだった。

【調剤室の陰】

「新山さんが緑内障点眼薬の副作用を乗り越えて、旦那さんと幸せそうにしてくれたのは本当に素晴らしいことだが……っ!!」

陰で一部始終を見守っていた俺――陣内拓海は、カラーマスカラ完売の歓声と、まひろの解き放った「萌え萌えディストラクション光線」の直撃を受け、真っ赤な顔で悶絶していた。

「拓海さ〜ん♡ 来月、府中への出張勉強会とサントリーのビール工場見学……二人っきりで行きましょうねっ♡ ほろ酔いになっちゃいますからねっ♪」

まひろの激甘な勝利宣言。

「有栖川さんズルいですわっ! 私も……私も『薬剤師店長セミナー』楽しみにしてますからね!!」(涼香)

「 府中の美味しいお店、私も行きたーい!オータム新人研修で必ずデートしてやるっ!」(ほのか)

「「「「胃が……胃が壊れるーーーーッ!!」」」」

全ヒロインからの凄まじい嫉妬と愛の猛攻、そして「府中デート」という新たなる大修羅場確定の未来。

俺はダラダラと冷や汗を滝のように流しながら、ガクガクと震える手でポケットの『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、悲鳴を上げる胃袋に向けて優しく流し込んだ。

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