大悪魔の囁きと、まひろの逆転フルブースト
売上爆増に歓喜しつつも「ヒロイン争奪戦の均衡」を図る大悪魔・神崎葵課長が、準優勝のまひろに授けた起死回生の秘策! 【マジュリカ秋コスメのカラーマスカラ完売作戦】と【府中での勉強会&サントゥリー武蔵野ブルワリービール工場見学ご褒美デートの権利】を巡り、大悪魔と小悪魔が手を組む波乱の展開
ドゴォ!
またしても事務所の重い扉が、壁を叩き割るような爆音とともにけたたましく開いた。
「売上が……売上が止まらないのよ……っ! どうなってるのよ、このバケモノ店舗はーーーーっ!!」
現れたのはグループ本部の悪魔たんこと、神崎葵統括課長だ。
過去最高売上を更新し続ける白鳥駅前店の数字に大興奮しながらも、彼女はハァハァと息を荒げて店舗入口の吹き抜けを見上げ、ビシッと指を突きつけた。
「有栖川ちゃん! カモン!!」
「ひゃいっ!? か、課長!?」
呼び出されたまひろが目を丸くして駆け寄ると、神崎課長はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべ、まひろの肩をガシッと掴んだ。
「ちょっと不利な状況の貴女に、超・朗報よ……!」
「え……? 状況って……?」
「ボルドーニットで攻め立てる氷室ちゃんに、恋泥棒で躍進する白石ちゃん……このままじゃ、貴女だけが取り残されちゃうじゃないの! 私から貴女だけに手助けしないなんて、フェアじゃないわ!」
「えっ! なんか逆転の策があるんですか!?」
目を輝かせるまひろに、神崎課長は胸ポケットから1本のコスメを取り出して見せつけた。
「フッフッフ……『マジュリカマジョルカ』の秋限定コスメ! 煌めくラメ入りカラーマスカラよ!!」
「?? マスカラ……ですか?」
ポカンとするまひろに、神崎課長は身を乗り出して悪魔の囁きを始めた。
「これね、本部でちょーっとだけ在庫気味なのよ。これをこのイベント中に貴女の接客で売り切ったら……拓海くんとの『特別出張デート権』を組んであげるわ……! 題して、化粧品・カウンセリング合同勉強会!!」
「!?」
「いい? 来月、拓海くんには『新人薬剤師オータム研修』と『店長セミナー』の引率があって、漏れなくファシリテーター(運営責任者)として参加するのよ。……でも、ドサクサに紛れてこのまま放置したら、白石ちゃんや氷室ちゃんにまた一歩出し抜かれるのでは〜〜〜?」
「!!?」
まひろの脳裏に、ボルドーニットで拓海さんに迫る涼香と、手作り弁当で攻めるほのかの姿が過った。
「ぜ……絶対行くっ!! 拓海さんと一緒に出張行きますッ!!」
「ふふふ……なんと〜、メインはそれだけじゃありません……貴女は今回のディスプレイコンテストの優勝者ですからね!」
「ど、どういうことですか!?」
「勉強会の会場は……東京都府中市よ!」
「府中……?」
「な〜んか知らないけどぉ、サントゥリー武蔵野ブルワリーの『ビール工場見学ペアチケット』が本部に余ってるのよね〜? プレミアムモルツの試飲で、ちょっぴりほろ酔いになって……そのまま勢いでキスしちゃったりして〜? あと府中には巨大な映画館(東邦シネマズ)もあるわよね〜?」
「「「……っ!!」」」
サントリーのビール工場見学でほろ酔いデート!? 映画館で暗闇スキンシップ!?
あまりにも具体的かつ魅惑すぎるご褒美プランに、まひろの瞳がメラメラと激しい欲望の炎で燃え上がった!
ガシッと固い握手を交わす大悪魔(神崎葵)と小悪魔(有栖川まひろ)。
「さぁ! 行きなさい……悪魔有栖川! 来店するお客様すべてのまつ毛を、煌めくラメでモリモリにしてくるのよっ!!」
「イエス・サーーーッ!!」
小悪魔まひろは、カラーマスカラを手に猛スピードでコスメ売り場へ爆走していった。
【調剤室の陰】
「……ぞくっ!?」
調剤室で処方箋の監査をしていた俺――陣内拓海は、背筋を駆け抜けた謎の激しい悪寒に思わず身震いした。
事務所の陰で繰り広げられていた大悪魔と小悪魔の恐ろしい企み。
内容ははっきりと聞こえなかったものの、「出張」「府中」「サントリーの工場」「ほろ酔い」という不穏すぎるワードだけが俺の耳に届いていた。
(あ、あかん……! 神崎課長め、またしても俺を巻き込んだとんでもない計画を!!)
予感される新たな大修羅場と、過激すぎるご褒美デートの猛攻。
俺はダラダラと冷や汗を滝のように流しながら、ガクガクと震える手でポケットの『ラベール胃腸薬プレミアム』を用意した
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