瞳さんのアシストと、小悪魔の劇薬おまじない
レビー小体型認知症の祖母・トメさん(82)を伴って来店した常連の桜井瞳。憧れのまひろ(ガチ小悪魔)からコスメアドバイスを受けて大満足の瞳が、陣内とまひろの「恋のキューピッド」としてアシスト! まひろの渾身のハロウィン魔法にノックアウトされる陣内
私、桜井瞳(年齢は秘密♪)。近くの病院で看護師をしている
今日は月に数回ある、レビー小体型認知症の祖母・トメ(82)との買い物の日だ。
おばあちゃんの処方薬を受け取るのは何もこの白鳥駅前店でなくても良いのだが……何を隠そう、私はコスメ担当の有栖川まひろちゃんの隠れ大ファンなのだ!
「今日はおばあちゃん、すごく調子が良くて助かるわ……♪」
レビー小体型認知症には症状に大きな波がある。調子が悪い時は「お姉さん、誰かね?」と私の顔すら分からなくなったり、「ほら、おじいちゃんが天井を飛んでいるよ」なんて幻視(幻覚)を訴えたりして大変なのだが、今日は実に穏やかでご機嫌だ。前回来店した時のように、陣内先生に向かって突如「アンタァー!……乳狂いがぁ!!」などと爆弾発言を投下した焦りも、今日はなさそうで一安心である。
「おばあちゃん、調剤待合室のソファで少し待っててね」
「あいよ、ゆっくり見ておいで」
ありがたい! これならゆっくりコスメを見られそう!
店内は噂のハロウィンイベント真っ只中だった。
「はわわわわ……っ! か、可愛い……っ! とんでもない小悪魔ちゃんがいるーーーっ(ブワッ)!」
黒のデビルホーンにローズのリップ、そして小さなハロウィンステッキを手にしたまひろちゃんの圧倒的可愛さに、私は感涙を禁じ得なかった。
「あっ♪ 桜井さん、こんにちは〜っ!」
まひろちゃんに新作コスメの相談に乗ってもらい、幸せな時間を噛み締めていると、待合室のおばあちゃんがウトウトと起き上がるのが見えた。
(あ、戻らなきゃ……! でも今日は可愛いエキスを十分に吸えて大満足だわっ!)
おばあちゃんの元へ向かうと、調剤室から出てきたエリア長の陣内先生が、優しくおばあちゃんの肩を支えて介抱してくれていた。
ふと横を見ると、ついてきた小悪魔ちゃん(まひろ)の瞳が、陣内先生の背中を見つめてキラキラとハートマークに輝いているではないか!?
(……さては、まひろちゃん、先生のことが大好きなのね……!?)
店内を見渡すと、他のお客様の波もひと段落して落ち着いている。
よし……日頃の感謝を込めて、この私が白衣の天使ならぬ「愛のキューピッド」になってあげようじゃないの!!
「有栖川さん、ちょっと一緒に来ていただけますか?」
「えっ……? わ、私は……」照れてもじもじする小悪魔ちゃん。
「ふふっ、先生に『小悪魔の魔法』をかけるところ、間近で見たいなぁ♪」
「えっ……! そ、その……今日だけの特別サービスですよ……っ!?」
顔を真っ赤にしたまひろちゃんを連れて、おばあちゃんと先生の元へ。
「トメさーん、大丈夫ですか?」と優しく声をかける陣内先生の前に、まひろちゃんが意を決して一歩踏み出した。
「た、拓海さんっ……! お仕事お疲れ様です……っ! 魔法のステッキ……えいっ♡ (……っ♪ 拓海さんの疲れ、全部飛んでいけーっ♡)」
上目遣いで頬を真っ赤に染めながら、小さなステッキで不意打ちの萌え魔法をかけてくるガチ小悪魔まひろ!
「「「「ぐはっ……!?!?」」」」
破壊力があまりにも規格外すぎる可愛さに、陣内先生は胸を押さえてその場に撃ち抜かれ、見事にノックアウト!
「ふふっ……ごちそうさまでした♪」
私は大満足でおばあちゃんの手を引き、幸せな気持ちで店舗をあとにしたのだった。
【調剤室の陰】
「 桜井さんのおばあちゃんの状態が穏やかで、レビー小体型の幻視や過鎮静もなく安心したのも束の間……っ!!」
まひろの不意打ち萌え萌えキュン魔法に心臓を直撃され、真っ赤な顔でカウンターの陰に崩れ落ちる俺――陣内拓海。
「拓海さんっ! 今の魔法、効きましたか……♡?」
満足そうに顔を覗き込んでくるまひろ。
「ズルいですまひろちゃんっ! 私だって先輩に『黒猫ののしかかり魔法』かけますっ!」(ほのか)
「「「「胃が……胃が痛ぇぇぇーーーーっ!!」」」」
まひろの劇薬おまじないを皮切りに、全ヒロインからの甘すぎる魔法の乱れ打ち。
限界突破した幸福感と激痛の挟み撃ちに遭った俺は、冷や汗を滝のように流しながらポケットの『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すとウォーターサーバーの水と共に飲み干した
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