水着パネルの波紋と、覚醒のボルドーニット
水着パネル設置による人だかりに焦るまひろとほのかの共闘、そして「ドラマの水着回」と「Vネック客」に謎の刺激を受けてあげは&結衣プロデュースの爆盛コーデで覚醒した氷室涼香、さらに売り場騒然の中で胃薬を煽る陣内のドタバタ劇をお楽しみください!
有栖川まひろは、自分のしでかした連続奇跡(ミス→販促利用→全国優勝)の結末に頭を抱えていた。
生理用品の大量誤発注から始まったドタバタ劇だったが、なぜか氷室薬局長がどんどん可愛くなり、ポップコンテストではスポンサーのゾフィー様が大喜び。その結果、白鳥駅前店限定の『美月ちゃん水着姿バージョン等身大パネル』なんていう特大の劇薬が持ち込まれてしまったのだ。
「もう……私のバカバカバカッ! 薬局長をこれ以上可愛くしてどうするのよ〜っ!」
本気で興奮した小寺結衣には「神崎課長から許可をもらったから♪」と通常版の美月ちゃんパネルを1枚譲渡して「白鳥駅前店最高ですフー!」と大歓喜させたものの、水着版パネルは流石に特設棚へ飾らないわけにはいかない。
……要するに、『水着姿の氷室薬局長』を店内に配置しているようなものなのだ。
案の定、水着パネルを渋々設置した翌日から、特設コーナーには凄まじい人だかりができていた。明らかに生理用品に用がない男性客まで、パネルをガン見しているではないか!
その人だかりの端っこで、当事者である氷室涼香本人が、顔を真っ赤に染めながらニヤニヤとパネルを見つめていた。
「「……っ!!」」
まひろと白石ほのかは、同時に目を見合わせた。
(ほ……ほのかちゃん……!)
(ま……まひろちゃん……!)
明らかに薬局長が良からぬこと(さらなるデレとアピール)を考えている! ここは一時休戦し、共闘せざるを得ない!
――その頃、涼香の脳内では猛烈な思考サーキットが回転していた。
(わ……私?に群がっているわ……! もしや……みんな私の水着姿が見たいのではないかしら……!? でも、もう秋だし……でも何かにつけて水着でも買って、陣内さんに見せびらかしたい……! あぁ、そういえば美月ちゃんのドラマでも、オフィスラブコメなのに意味不明な水着回のロケがあったわ……! でも……通常の職場で水着になるなんてあり得ないわね……)
悶々とする涼香の前に、胸元が大胆なVネックになった女性客がやってきた。
「あのー! ちょー頭痛いんで痛み止めください!」
(な……なぜ頭が痛いのに、こんな胸元の開いた服を着ているのかしら……!?)
疑問に思いながらも、プロとして『イブプロフェンプレミアム』を販売する涼香。だが、その頭には電撃が走っていた。
(はっ……これは試練よ! 露出ではなく、おっぱいの『見せ方』を変えるという試練なのよ……!)
涼香は速やかに調剤室の陰へ向かうと、涼宮あげはと小寺結衣を呼び寄せた。
「あ……あの……涼宮さん、小寺さん。少し……胸元を強調するようなお洋服のコーデって……ないかしら……?」
「「……っ!?」」
一瞬目を見合わせたあげはと結衣。次の瞬間、あげはの目がニヤリと光った。
「超おもしれぇ展開っしょ!!」
ふたりは緊急 fashion 対策会議を開き、あげはがプロのギャル目線でバシッと提案をまとめた。
「ズバリこれっしょ! 薬局長はアタシみたいな露出系キャラじゃないから、おっぱいは『見せ方』を変えるっしょ!」
【あげはプロデュース・激盛り薬局長コーデ】
トップス: ボルドーのスクエアネックリブニット。
デコルテを美しく見せる広いスクエアネック。上質な厚手ニットの立体感で、上品さを保ちながら胸元のボリューム感を強調!
ボトムス: ベージュのハイウエストタイトスカート。
ウエストベルトでくびれを際立たせ、膝下のスリットで美脚をアピール。
アウター: ライトベージュのロングチェスターコート。
前を開けて羽織ることで、ボルドーの胸元とウエストラインが自然と目に入る縦ラインを形成。
靴・バッグ: 黒の7cmヒールブーツと小ぶりなハンドバッグ(ゴールド金具)。
「黒髪と涼しげな目元、すらりとした美脚にベストマッチな大人色気コーデっしょ!」
「完璧です……あげはさん、天才です……脳内補完余裕でしたっ!」と拝む結衣。
そして翌日――。
白鳥駅前店は、昨日以上の異常事態に見舞われていた。
水着姿の美月ちゃんパネルに群がる人だかり。
そして……私服通勤から白衣に着替える直前、その【ボルドーのスクエアネックニット】を身に纏い、本物の色気満点で売り場に姿を現した氷室涼香!!
「「「「ぐはっ……!?!?」」」」
ボードの可愛い水着姿の美月ちゃんと、実物の溢れんばかりの大人の色気を放つ涼香。
二人の「激盛り美月ちゃん(涼香)」が揃い踏みした店舗は、あまりの美しさと破壊力に客もスタッフも騒然となった。
「たっ……拓海さん……♪ 今日の私のコーディネート……いかがかしら……♡?」
ボルドーのニットで強調された豊かな胸元と、すらりとしたウエストラインを照れくさそうにくねらせ、上目遣いで俺に寄ってくる涼香。
(((「「「ズルすぎるーーーーッ!!」」」)))
まひろとほのかの悲鳴のような対抗心が火花を散らす。
なぜか店内の男性客と女性客が社会現象レベルで押し寄せ、結果として店舗の売上は過去最高を記録した。
……だが!
「はぁ……はぁ……っ! う、売上が伸びたのは素晴らしいことだけど……っ!!」
ボードの水着姿と、実物の激盛りボルドーニットの挟み撃ち。そして全ヒロインからの凄まじい嫉妬と情熱の視線に晒された俺――陣内拓海は、真っ赤になった顔を隠しながら猛烈な胃痛に悶絶していた。
(あ、あかん……! 美月ちゃんパネルも涼香さんのボルドーニットも、男としての理性を破壊しにかかってきているーーーっ!!)
限界突破したプレッシャーと甘すぎる刺激に耐えかねた俺は、ガクガクと震える手でポケットの『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、悲鳴を上げる胃袋に向けて一気に喉奥へ流し込むのだった。
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