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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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美月ちゃんボードの行方と、乙女の敗北

まひろがやらかした100ケース誤発注の『朝までフィット』完売大作戦の結末と、美月ちゃんの等身大パネル(涼香激似)の撤去をめぐる「乙女の密かなプライド対決」、そしてまたしても意味の分からない女の争いに挟まれて胃薬を煽る陣内のドタバタ劇をお楽しみください!

私、有栖川まひろは、猛烈な手応えを感じていた。

100ケースという絶望的な誤発注をしてしまった夜用生理用品『朝までフィット』だったが、私の本気のポップ作りと、女優・美月ちゃんの華やかな知名度、そして何より――陣内エリア長による神がかった配慮(赤字にならないギリギリのラインでの特別割引価格システム設定)のおかげで、売れ行きは絶好調!

本来なら奥の定番棚にひっそりと並ぶ商品だが、今回は店舗入口の一番目立つ「エンド棚」を丸ごと特設コーナーへ改造。近隣に大きな婦人科・産婦人科のクリニックがある立地も手伝って、生理の重さに悩む女性客たちがこぞってまとめ買いしていってくれたのだ。

しかも……! しかもだよ……っ!?

「すごいよまひろちゃん! まひろちゃんの作ったPOPと売り場作りのおかげで、店舗の売り上げが前年比爆増だぞ!」

拓海さんに……あの拓海さんに、頭を撫でられんばかりの笑顔で褒められちゃったのだ!!

尊すぎる……尊すぎて涙が出てきちゃう(ブワッ)……!!

……っていかんいかん! 涙を拭いて、売れて隙間ができた棚に商品を補充しなきゃ!

「よしっ! かなり在庫もハケてきたし……そろそろ店内中に溢れてる美月ちゃんの等身大ボード、1枚だけ残してあとはバックヤードに片付けちゃおうかな〜♪」

私(まひろ)としては、拓海さんが「涼香さんに激似の美月ちゃんボード」を愛おしそうに何枚も抱えて戻ってきたあの日のトラウマがあるのだ。いくら売り上げのためとはいえ、薬局長に似た美人女優のパネルが店内に何枚も立ち並んでいるのは、乙女心として面白くない!

パネルをまとめて片付けようとした、その時だった。

「有栖川さん……。それ……どうするつもり……?」

後ろから、ひょっこりと美月ちゃん激似の氷室薬局長が現れたのだ!

「あっ、あの〜♪ かなり在庫も減って落ち着いてきたので、看板は元通り普通(1枚)に戻そうかな〜……なんて!」

笑顔で答える私に、薬局長はポッと頬を染めると、指先をモジモジと絡めながら消え入りそうな声で言い出した。

「わっ……私は……その、この看板、すごく可愛くてお客様にも好評だから……あの……パネルはこのまま全員(全枚数)残しておいて……いいと思うの……っ!」

(((な、なにそのモジモジした可愛いリアクションはーーーーっ!?)))

破壊力満点の可愛さ! ドラッグストアの絶対女王のくせに、拓海さんに抱えられてきた自分のそっくりさんパネルを「残してほしい」だなんて……コイツ、やっぱり超絶強敵すぎる……!

そこへ、騒ぎを聞きつけた拓海さんが歩み寄ってきた。

「どうしたんだ、二人とも?」

二人は同時に主張した。

「拓海さん! 美月ちゃんのパネル、もう片付けてすっきりさせましょー!」(まひろ)

「拓海さん……! 美月ちゃんのパネル、とっても素敵だからこのまま売り場に残しましょう……っ!」(涼香)

「えっ……? ああ、美月ちゃん看板のことか」

拓海さんは特設コーナーの圧倒的な売れ行きと、通りかかるお客様たちが「この女優さん可愛いわね〜」「薬局長に似てるわね」と足を止めている光景を見渡した。

「そうだね……『朝までフィット』の売れ行きは全社でもダントツの1位だし、集客効果も抜群だ。キャンペーン期間が終わるまでは、美月ちゃんボードは全員このまま売り場に設置しておこう!」

「「あ……」」

拓海さんの下した業務上の合理的な判断により――まひろ、敗北……!!

(ううう……っ! いや、100ケースの誤発注が奇跡的に売れたんだから万々歳だし、拓海さんにも褒められたから良いんだけど……! 良いんだけどぉぉ……っ! なんだろう、この解せぬ気持ちはーーーっ!!)

納得がいかない私は、ポッと照れ笑いを浮かべる薬局長に向かって、ビシッと指を突きつけて言い残した。

「くっ…クソう…薬局長! 今回は売り上げのために譲りますけど……次は絶対に負けませんからねッ!!」

「えっ……ええ、受けて立ちますわ、有栖川さん……♪」

何やら火花を散らし合う二人のヒロイン。

「えっ……? な、なんで二人ともそんなバチバチしてるんだ……? 売り上げが伸びて万々歳じゃないのか……!?」

業務上の大成功を収めたはずなのに、なぜか目の前で繰り広げられる「謎の乙女のプライド戦争」に巻き込まれ、俺――陣内拓海は困惑の極みに達していた。

(あ、あかん……! 女心の複雑さと、両隣から飛んでくる甘く鋭い視線の圧に、俺の胃袋が耐えきれないーーーっ!!)

理由の分からない激しい胃痛に見舞われた俺は、ダラダラと冷や汗を流しながらポケットの『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、売り場の陰でこっそりと、悲鳴を上げる胃袋へ向けて一気に喉奥へ流し込むのだった。

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