中池のプライドと、再びの神対応
デリケア事件以来、陣内を「神」と崇める現場作業員・中池が電子お薬手帳の処方箋送信機能で大ピンチ!? 中池の男のプライドとデリケートなプライバシーを完璧な気転で守り抜く陣内と、昨夜の歓迎会の余韻でデレデレポヤポヤな涼香たちヒロインのドタバタ劇をお楽しみください!
俺は以前、神(陣内エリアマネージャー)の神がかった配慮によって『デリケアM's』を購入した現場作業員の中池だ。
あの日以降塗った直後は良いが
全然痒みが取れないため神の案内に導かれて覚悟を決めて皮膚科へ行ったら、医者から衝撃の一言を突きつけられた。
『あー、これ股部白癬……いわゆる「いんきんたむし」ですね』
処方されたのは抗真菌薬の『ニゾラールクリーム』。
衝撃は凄まじかったが……男として、何としても治さねばなるまい。
ところで、ドラッグラベールには独自の電子おくすり手帳アプリが存在する。
俺は以前、あのあまりにも可憐すぎる美人薬局長(氷室涼香さん)に優しく促され、鼻の下を伸ばしながらあれよあれよと会員登録を済ませていたのだ。
そのアプリには、病院でもらった処方箋をスマホのカメラで撮影し、事前に指定店舗へデータを送信して調剤予約ができる神機能がついている。
俺は迷わず、大好きなドラッグラベール白鳥駅前店に処方箋データを送付した。
……だが! 送信ボタンを押した直後に俺は冷や汗を吹き出しながら気づいてしまったのだ!
(アカン……! 神(陣内さん)から直接薬をもらえるならいいが……俺の股間がタムシに冒されているという地獄のような事実が、あの美しすぎる薬局長や看板娘たちにバレてしまうのではないかーーーッ!? ※注:処方箋データを送った時点で調剤室のPCにはバッチリ届いているためバレバレである)
「うおぉぉぉ!!いかん! いかんぞこれはーーーッ!」
俺は現場の安全靴のまま、足早に白鳥駅前店へと急行した。
店内に飛び込み、藁にもすがる思いで売り場を見渡す。
神は……神はどこだ!?
「ん……? なんか、新しい女の子が増えているではないか……!?」
レジ奥には、新しく着任したらしい可愛らしく真面目そうな女の子(小寺結衣)がニコニコと働いていた。他の3人のようなド派手な圧倒的オーラとは違うが、非常に可憐で素朴な可愛さがある。
(っていうか……心なしか、今日の薬局長も、白石さんも、有栖川さんも、全員いつも以上に顔を真っ赤にしてポヤポヤと可愛すぎやしないか……!? 一体この店で何が起きてるんだ!?)
店舗全体の謎のピンク色の空気に圧倒されながら神を探すと――いた!
一番レジ(あまり使わない所)に昨夜の歓迎会(激しいおうち訪問争奪戦と甘々おねだり)でヒロインたちに徹底的にやらかされ、魂が抜けかけてボロボロ(ペロペロ)になっている神の姿があった。
(あ、あんなところに神が……! しかし、ここは一般のお客さんもいる店舗側のカウンターだ。あそこへ行って「ニゾラールくれ!」なんて声をかけるのはあまりにも不自然すぎる……!)
モジモジと売り場の影で挙動不審に蠢く俺の存在に、神――陣内拓海がいち早く気づいて歩み寄ってきた。
手には処方箋アプリの通知端末。
「どうされましたか?」
神は優しく声をかけてくれた。
「あっ……あの……その……っ!」
処方箋には、ハッキリと『ニゾラールクリーム』の文字。
神は一瞬で俺の焦りと、売り場の女子スタッフたちの視線を気にしている絶望的な心理を察してくれたらしい。
(さては……女子スタッフにこの病名と処方薬を知られたくないんだな!)
「中池さん、こちらへどうぞ」
神は俺をそっと静かな調剤室の服薬指導スペースの奥へと招き入れてくれた。
するとそこへ、昨夜の「涼香さん呼び」の余韻でポッと頬を朱に染めた可愛すぎる氷室薬局長が、処方薬の入った袋を持ってパタパタと寄ってきた。
「あっ……あのぅ……拓海さん…… こちらのお客様の処方箋、もうご用意できておりますわ……」
言葉の語尾にハートマークが見えるような激甘な雰囲気を漂わせる薬局長。
神は間髪入れずに、中池から見えない角度で涼香に見えるように口元で人差し指を立てた。
『シーッ……!(涼香さん、静かに! 男のプライドがかかってるんだ!)』
神は薬局長からサッと袋を受け取ると、さも「ただの一般的な塗り薬」であるかのように、自然かつ手早い動作で処方薬をカウンターの下から俺へ差し出してくれたのだ。
「中池さん、お待たせいたしました。医師の指示通り、お風呂上がりに1日1回、患部に優しく塗布してくださいね。お大事にどうぞ!」
「あ……ありがとうございます……神(エリア長)……っ!!」
完璧すぎる気遣い。完璧すぎる男のプライドの守り方!
(察しが良すぎる……! こういう仕事や男のデリケートなピンチに対する察しの良さは異常だ……! だからこそ、この若さでグループのエリアマネージャーなんて偉い立場に登りつめたんだな……っ!)
俺は深々と頭を下げ、心からの感動と満足感に包まれながら店舗を後にしたのだった。
中池を見送った調剤室。
「まあ……男性ファンまでいらっしゃるなんて、拓海さんは本当にステキですわ……♡」
涼香は昨夜の居酒屋での甘甘なおねだりと「涼香さん」と呼ばれた余韻で、まだ顔をポッと赤くしてポヤポヤと夢見心地で微笑んでいる。
「いや、ファンとかそういうのじゃないからね……っ! 医療従事者としての配慮だから……っ!」
中池からの熱すぎるリスペクトの視線と、涼香からの甘すぎるデレデレな熱視線に挟まれ、猛烈に恥ずかしくなった俺は、急いで店舗カウンターの陰へと身を隠した。
(あ、あかん……! 中池さんの男のプライドは守れたけど、朝から全ヒロインの甘い空気が店内を満たしていて、俺の胃腸が保ちそうにないーーーっ!!)
俺は冷や汗をダラダラと流しながらポケットの『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、カウンターの下でコソコソと隠れるようにして、悲鳴を上げる胃袋へ向けて一気に喉奥へ煽り込むのだった。
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