居酒屋よし庵の歓迎会と、爆風の甘々おねだり
小寺結衣の急な着任歓迎会で披露されたヒロインたちの眩しすぎる私服姿と、お酒の勢いでついに爆発した氷室涼香の甘甘な「名前呼びおねだり」、そして暴風警報が吹き荒れる現場で胃薬を煽る陣内のドタバタ劇をお楽しみください!
その日の夜。
事前には異動を知らされていなかったため、何の予約も計画も立てていなかったのだが、運良く空いていた駅前の居酒屋『よし庵』に入ることに成功した俺たちは、急遽、小寺結衣の歓迎会を催すことになった。
いつものオフィスカジュアルや白衣姿とは違い、全員私服姿でテーブルを囲んでいる。
「皆の私服ってこんな感じなんだな……」と、俺――陣内拓海は眩しさに目を細めた。
正直、全員が可愛すぎる。
氷室涼香は、黒の洗練されたジャケットにアイボリーのブラウス、体にフィットしたネイビーのタイトスカートとパンプスを合わせた上品で知的なスタイル。
白石ほのかは、淡いブルーのカーディガンに清楚な花柄ロングワンピース、フラットシューズを組み合わせた、柔らかく清潔感の溢れるスタイル。
有栖川まひろは、ピンクのショートジャケットに黒のトップス、クリーム色のミニスカートとヒールサンダルを合わせた、トレンド感抜群の華やかなスタイル。
涼宮あげはは、短めのジャケットに体にフィットした白いトップス、ダメージ加工のデニムショートパンツと厚底スニーカーを組み合わせた、スタイル抜群なギャル風ストリートカジュアル。
そして本日の主役・小寺結衣は、挨拶と着任初日ということもあって、キリッとした清潔感のあるカジュアルスーツ姿だ。
(あ、あかん……! いつもの制服姿も最高だけど、私服の可愛さは別のベクトルで破壊力が凄まじすぎる……!!)
席につくなり、以前とは明らかに店舗の雰囲気が違っていた。
かつてのようにベタベタとボディタッチをしてくる小悪魔なまひろの姿はなく、真剣な瞳で俺の正面に座っている。そして俺の両隣を固めるのは、右にほのか、左に涼香だ。
お酒が一杯、二杯と進み、少し場が温まってきた頃――。
「ねぇ……」
左隣から、耳が溶けそうなほど色っぽい甘い声が聞こえてきた。
振り向くと、ほろ酔い顔で頬を真っ赤に染めた涼香が、上目遣いで俺をじっと見つめていた。
「おっ……おう、どうしたんだい……?」
「お願いがあります……ほんの些細な……私のお願いです……」
「なんだい? 氷室薬局長」
「私……私も、『涼香ちゃん(さん)』って呼んでよぅ……っ!」
「「「「!!??」」」」
居酒屋の個室に、雷が落雷したかのような衝撃が走った。
「ちょっ……二人して何なのよーーーッ!? わたしのサシ飲みアドバンテージを奪わないでよぉーッ!!」
まひろがテーブルを叩いて立ち上がる。
「そうですようっ! 薬局長は立場ある大人なんですから、ずるいですっ!!」
ほのかも身を乗り出して激しく噛みつく。
「ふふっ、超おもしれぇ展開っしょ!!」
ただ一人、ビールジョッキを手にニヤニヤと高みの見物を決め込むあげは。
一方、歓迎会の主役である小寺結衣は「ふおおっ……!」と顔を覆って悶絶していた。
(私の歓迎会でいきなり恋のガードをパージして攻め込むなんて……薬局長最高!! 可愛すぎる……っ!)
「なっ……や、薬局長まで何を言い出すんだ……!?」
俺の胃が急激なプレッシャーで猛烈な悲鳴を上げ始める。
「だって……! だって……白石さんと有栖川さんだけ『ちゃん付け』で呼ぶなんて……あんまりですわ!! 私だって……私だって拓海さんに名前で呼んでほしいのに……っ!!」
普段のクールな薬局長からは想像もつかない、素直で甘いデレデレの訴え。
(頑張って!! 薬局長ー!! エリア長!! 町田中央店から美月ちゃんボードを大量に奪い取っていった時のムキムキモンスターの気持ちを思い出して受け止めてあげて!!)
心の中でペンライトを振る勢いで大興奮する小寺結衣。
「うっ……た、確かに俺だけ呼び分けるのは失礼だったよな……。じゃあ……『涼香さん』」
「もっかい……っ♪」
涼香は潤んだ瞳で破壊光線のような超ド級の甘い上目遣いを放ってきた。
「うぅ……小寺さんも居るのに……りっ……『涼香さん』……っ!!」
「私のことはどうぞお気になさらず! GO! エリア長ぉ!」
即座に親指を立てる小寺結衣。
「「ちょっとちょっと! 小寺ちゃぁぁぁーーーんッ! 薬局長に肩入れしないでーーーッ!!」」
ほのかとまひろの悲鳴のような抗議が響き渡る。
まさに神崎葵課長が予言した通りの【白鳥駅前店・超大型暴風警報】の発令であった。
(あ、あかん……! 居酒屋の席で全ヒロインの甘すぎる情熱と激しい嫉妬が激突して、俺の胃袋が木っ端微塵に吹き飛ぶーーーっ!!)
店内を吹き荒れる甘く危険な暴風雨に耐えかねた俺は、テーブルの下で冷や汗をダラダラと流しながら、震える手でスーツのポケットへ忍ばせておいた『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、悲鳴を上げる胃袋に向けて一気に喉奥へ流し込むのだった。
「少しでも『面白かった!』『続きが気になる!』と思ってくださったら、下部の【★で評価する】や【ブックマーク】を押していただけると執筆の大きな励みになります!」




