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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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コミケ姫の秘密と、呼び名が変わった二人

コミケの姫を自負するコスプレイヤー・三木さんのプライバシーを守るための陣内の機転と、前日のサシ飲みを経て「まひろちゃん」「拓海さん」と呼び合い始めたふたりの激甘な変化、そしてそれを見逃さずに背後から猛烈な殺気を放つ涼香とほのかの修羅場劇

私、三木(21)。サブカル系イベントやコミケで大人気のコスプレ大好き女子だ。

特にブーツをバシッと履きこなす『ファイナルファンタジー』みたいなゲームのカッコ可愛いヒロインキャラが大好物。

そんな「コミケの姫」である私を、最近猛烈に悩ませる恐ろしい天敵がいる。

(……足が……ブーツの中でアソコ(足の指)が痒すぎるのよぉぉぉーーーっ!!)

そう……悪夢の【水虫(白癬菌)】だ。

前に皮膚科で「水虫ですね」と診断された時はチョーショックだった。この私が水虫なんて! 万が一、ファンに皮膚科へ入っていくところを見られたら一大事よ。だから手早くドラッグストアで水虫薬を買うことにしたのだ。

乗り込んだのは、SNSでも話題の『ドラッグラベール白鳥駅前店』。

(相変わらず、コミケ姫の私でも弄り倒したくなるくらい可愛い子ばかりの怪物店舗ね……)と感心しながらOTC医薬品コーナーへ突撃した私だったが――。

(……あのレジのイケメンスーツ男、そこから離れてくれないかしら……?)

レジカウンターに立っているエリアマネージャーの陣内拓海だ。

(この私が水虫薬を買うなんて、私のファンかもしれないあの男に見られたら泣いちゃうわ(※妄想)! 早く可愛い女の子の店員さんと交代して頂戴!)

その頃――レジ前に立つ俺(陣内)は、水虫薬の棚の前でソワソワと周囲を気にしている女性客(三木さん)の存在に気づいていた。

(……あの様子、男性店員に商品を見られたくないデリケートなお悩み(女性特有の水虫やデリケートゾーンの悩み)だな。よし、自然に女性スタッフとレジを交代しよう)

俺はバックヤードに向かって声をかけた。

昨日のファミレスでのサシ飲みを経て、ほんの少し勇気を出して呼び方を変えてみたのだ。

「おーい! ……まひろちゃん! ちょっとレジを変わってくれるかい?」

「はぁ〜い! 拓海さん♪ ただいま行きま〜す!」

売り場からパタパタと可憐に走ってきた有栖川まひろ。

(ふっ……空気読めるじゃない。私のファン(※妄想)もなかなか気が利くわね……! これで安心して帰れるわ)

満足げにまひろのレジへ向かう三木さん。……だが!

レジで商品をスキャンしている当の二人(陣内とまひろ)は、内心それどころではなかった。

((ま……まひろちゃん……っ!?))

((た……拓海さん……っ!?))

公の場で、お互いに昨日約束した「名前呼び」を口にしてしまったのだ!

呼び慣れない甘すぎる響きに、二人の顔は一瞬でゆでダコのように真っ赤になり、手汗と冷や汗が止まらなくなっていた。

「ピッ……お会計1,280円になります……っ(あわわ、拓海さんって自然に言えちゃった……! どうしよう、心臓が爆発しそう……!)」

「あ、ありがとうまひろちゃん……! (呼び捨て……! 呼び捨てで呼んじゃったぞ! 可愛い、可愛すぎる……!)」

甘い熱気が二人を包み込み、まるで新婚夫婦のような甘甘な雰囲気がレジカウンターに漂う。

――だが!

その瞬間、店舗の空気温度が絶対零度まで一気に急降下した。

調剤室の陰から、氷室涼香がメガネの奥の瞳を冷たく光らせ、殺気立ったオーラを全開にしてこちらを凝視している。

その隣では、清楚な白石ほのかが笑顔のまま背景に黒い薔薇を背負い、静かに拳を握りしめていた。

((……『まひろちゃん』……? 『拓海さん』……!? いつからそんな呼び方をする関係になられましたの(なったんですか)……!?))

背後から突き刺さる、氷室薬局長とほのかちゃんの凄まじい嫉妬と殺気。

(あ、アカン……!! 昨日のサシ飲みで呼び方を変えたのが……二人(涼香とほのか)に完全にバレたーーーっ!!)

一瞬で命の危険を感じ取った俺は、冷や汗を全身から吹き出しながら、ガクガクと震える手でポケットへ手を伸ばした。

そして、甘い空気と刺すような殺気が激しく交錯する店内で、愛用の『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出し、速攻で喉奥へ流し込むのだった。

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