熱狂の歓迎会と、隣の席を賭けた甘き戦い
実習生あげはの歓迎会居酒屋で勃発した、陣内の「隣の席」を賭けたヒロインたちの熾烈なポジショニング合戦と、お酒の力でタガが外れた美女たちの甘甘&大暴走、そして過去最大級の胃痛に身をよじる陣内のドタバタ劇
金曜の夜。白鳥駅前店の近くにある個室居酒屋は、熱気と高揚感に包まれていた。
キラキラの4名に囲まれている
涼香は
黒のスクエアネックニット
ベージュのショートジャケット
チャコールグレーのミニスカート
華奢なネックレス
ほのかは
アイボリーの柔らかいブラウス
淡いピンクベージュのフレアスカート
小ぶりなベージュのバッグ
ゆるふわハーフアップ
ふんわりした素材と優しい色合いで、自然なかわいさを演出。「こういう服、久しぶりに着ました」と少し照れる
まひろは
黒のオフショルダーニット
ベージュのミニスカート
ショートブーツ
大ぶりのピアス
肌見せと華やかな巻き髪で、最初からかわいさ全開。「エリア長エリア長!今日の私どうですか?」とチョロチョロうごく
あげはは
クリーム色のフィットニット
ショート丈デニムジャケット
デニムミニスカート
厚底スニーカーとフープピアス
少しクールさを残しつつ、脚のラインでさりげなくアピール。「エリア長脚好きっしょ!」
神崎先輩はいつものスーツだが…
それぞれの形で歓迎会を迎える
「それじゃあ改めまして! 実習期間も折り返し、毎日バリバリ頑張ってくれてるアゲハちゃんの歓迎会に――乾杯ーーっ!!」
「「「乾杯ーーーーっ!!」」」
神崎葵課長の威勢の良い発声とともに、ジョッキやグラスが威勢よく打ち鳴らされる。
今回の主役であるギャル実習生・涼宮あげはは、「うひょー! 乾杯っすー♡」と満面の笑みで生ビールを煽っていた。
だが――この歓迎会には、宴が始まる前から目に見えない激しいスパークが散り散っていた。
原因はただ一つ。【陣内拓海の隣の席(左右)を誰が奪取するか】だ。
いつもなら、エブリデイ可愛い有栖川まひろが当然のように右隣をキープし、左隣を白石ほのかがさりげなく確保するのがお決まりのパターンだった。
しかし、今日の氷室涼香は違っていた。
(……先輩から『次は横を譲らないでみよう』と言われたわ。ここで引いていては、ずっと有栖川さんの独壇場のまま……!学会で1段上がったのよ…お揃いのピンクの鈴から勇気をもらって…えぃ♪)
「あ、エリア長ぉ〜♪ 私、エリア長の右隣でビール注いであげ――」
「失礼するわ、有栖川さん」
「えっ!?」
まひろがスッと座ろうとしたその瞬間、白衣を脱いで普段以上の色香を漂わせる涼香が、洗練された身のこなしで滑り込み、陣内の右隣の席を完璧にガード(先着)したのだ。
「や、薬局長……っ!? そこは私の定位置なのにっ!」
「定位置なんて誰が決めたのかしら♪。今日は無礼講とおっしゃったのは神崎課長ですもの、有栖川さんはいつもの私の位置(向かい)で別角度からお試しになって」
メガネの奥の瞳をキラリと光らせ、余裕の笑みで陣内のグラスにビールを注ぐ涼香。
対抗心をメラメラと燃やすまひろは、仕方なく左隣の席へ滑り込もうとした――が!
「まひろちゃん、ごめんなさい! 譲れませんっ!」
「ええっ!? ほのかちゃんまで!?」
清楚なはずのほのかが、素早く陣内の左隣へ着席。潤んだ瞳で陣内を見上げ、袖口をギュッと掴んできたのだ。
「え、エリア長……私、今日は少しお酒飲んじゃってもいいですか……? 酔ったら、介抱してくださいね……?」
(ぐはっ……!? 清楚系の上目遣いアタック、破壊力がすごすぎる……!!)
「なっ……何よふたりともー! ズルい! ズルいーーっ!」
「「いつも陣取られてばかり居られないわ!(もん)」」
左右を完璧にガードされ、地べたを少し蹴り悔しがるまひろ。
そんな状況を酒の肴にしながら、葵先輩がニヤニヤとジョッキを傾けた。
「ハハハ! 拓海くん、毎度毎度大モテで結構じゃないの〜! ほら、主役のアゲハちゃんも、あんなに近くに行きたそうにしてるわよ?」
「え〜? アゲハもエリア長の膝の上とか座っちゃっていい感じっすか〜?♡」
「座らせるかーっ!!」
まひろとほのか、そして涼香の鋭い視線が一斉にあげはに突き刺さり、あげはは「なっ…冗談っすよ〜!」と手を振って苦笑いした。
宴会が始まって一時間。お酒が進むにつれて、皆のタガは完全に外れ始めていた。
まず仕掛けたのは、普段はクールな氷室薬局長だった。
「陣内さん……これ、召し上がってください。あっ…あーん……♪」
「ひ、氷室さん!? みずから焼き鳥をあーんって……周囲の目がっ!」
「いいではありませんか。今日は学会の打ち上げも兼ねているのですから……。それとも、私のあーんは嫌……?」
ほんのり頬を朱に染めた涼香が、トロンとした瞳で甘く見つめてくる。私服から覗く鎖骨と、耳元から漂う甘い香りに、陣内の心臓はドックンドックンと暴れ出した。
「嫌なわけないだろーが! 薬局長ずるい! エリア長、私のお刺身もあーんしてくださいっ!」
まひろが左側から(ほのかを押しのけて)割り込み、陣内の腕にポヨンと胸を押し当てて抱きついてくる。
「私だって! エリア長、この唐揚げすごく美味しいですよ! ほら、口開けてください♪」
ほのかも負けじと、陣内の左肩に頭をぽんと預けながら、上目遣いで甘えてくる。
左右から同時に押し寄せる、美女二人の甘い体温と過剰なスキンシップ。
そして正面からは、酒が入って完全にノリノリになった葵先輩がカメラを構えて連写していた。
「最高よ拓海くん! 両手に花、いや三つ巴のハーレムね! 本部のグループLINEに流しちゃお〜♪」
「神崎課長! 京都のとき勝手にあげて!!この間の一件からエリア長連中から絡まれて凄かったんですから!頼むから写真を撮るのをやめてくれーーーッ!!」
「あらー羨ましがられてる証拠じゃなーい♪
こちとらあぁなりたいならもっと頑張れー♪とか目標数字あげちゃうぞー♪って皆に言いやすくなるってもんよ」
(くそー…やっぱ課長はこの歳で本部勤務を奪い取るだけあり…あっ…悪魔だぜ…)
「エリア長〜♡ あげはも混ぜてくださいよ〜! マジで目の保養っすわ〜!」
右からは涼香の艶やかなアプローチ、左からはまひろとほのかの猛烈なボディタッチ、正面からは葵先輩の爆撃。
お酒の熱気と甘すぎる幸福感、そして何よりも「誰かを贔屓したらその瞬間に修羅場が爆発する」という極度の緊張感により、陣内の脳内メモリは完全にオーバーヒートを起こしていた。
(あ、アカン……! 楽園どころじゃない……! 全員可愛すぎて理性が焼き切れるし、胃袋が……俺の胃袋が壊滅するーーーっ!!)
逃げ場を完全に失った陣内は、プルプルと震える右手でポケットを探ると、熱狂する居酒屋の個室の中で、誰にも気づかれないスピードで『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出し、一気に喉奥へ流し込むのだった。
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