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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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町田のお仕置きデート

京都出張でのお揃いお守り(ピンクの鈴)事件のお仕置きとして、まひろとほのかの二人に挟まれながら行く休日町田ショッピングデートと、過熱するお揃いグッズ争奪戦

秋の休日。澄み渡る青空の下、俺――陣内拓海は小田急線町田駅の改札前に立っていた。

先日の京都出張で、神崎葵課長が社内SNSに投稿した「氷室薬局長とお揃いのピンクの鈴」の写真。あの事件の余波は収まるどころか加速し、結果として俺は今日、二人のヒロインから「京都のお仕置き」として休日ショッピングに連れ出される羽目になったのだ。

エリア長連中からもめちゃくちゃ揶揄われている

(あの氷室薬局長の顔見た?)

(完全にほれてんだろ…)

(いや陣内君がこういう趣味なんて(笑))


皆知らないのだ、涼香の可愛さが…

そんな事を考えてた所に

「エリア長ぉ〜! お待たせしましたぁ♪」

「先輩、待たせちゃってごめんなさい!」

人混みの中から走ってきた二人を見て、俺はまたしても息を呑んだ。

私服の有栖川まひろは、フェミニンなピンクベージュのニットワンピに黒のブーツ。コスメリーダーらしい華やかでエブリデイ可愛いスタイルだ。

対する白石ほのかは、柔らかいアイボリーのカーディガンにチェック柄のロングスカート。清楚で可愛らしい雰囲気が全身から溢れ出している。

(うっ……私服の二人も反則級に可愛い……! だが、二人同時にデートなんて、街中の男たちの視線が痛すぎるだろ……!ちょっとざわついてるし…)

「二人とも、すごく似合ってるよ。……で、今日は町田で何を買うんだ?」

俺が尋ねると、二人は示し合わせたかのように同時にニッコリと、しかし目は一切笑っていない笑顔を浮かべた。

「「決まってるじゃないですか。エリア長とお揃いの品です!」」

息ピッタリのハモりに、俺の胃がキューッと縮み上がる。

「や、やっぱりそれか……」

「当たり前ですよ! 薬局長だけとお揃いの鈴なんてズルすぎます! 今日は私たちがエリア長とお揃いのグッズをゲットする日なんですから!」

まひろが腕を組み、ぷくっと頬を膨らませる。

「そうです! 京都に行けなかった私たちの気持ち、しっかり受け止めてもらいますからね!」

ほのかも負けじと拳を握りしめた。

こうして、町田の駅ビル(ルミネ&モディ)を舞台にした、地獄(天国)のお揃いグッズ争奪戦が幕を開けたのだった。

まず向かったのは、おしゃれな生活雑貨や文具が並ぶショップ。

「エリア長! これ見てください! この文房具ブランドのペアボールペン、すごく描きやすくて素敵ですよ! 私とお揃いにしましょう♪」

ほのかが目を輝かせながら、上質な真鍮製のペンのセットを差し出してくる。

「おい…それで働けと?」

俺が呟く間もなく

「あーっ! ほのかちゃんずるい! 仕事で毎日使うボールペンでお揃いを狙うなんて! だったら私は……エリア長、この革製のイニシャルキーホルダーにしましょう! 白鳥駅前店の鍵、一緒につけましょうよ!」

まひろがすぐさま割り込み、色違いのレザーキーホルダーを俺の手に握らせてきた。

「え、えーっと……ボールペンもキーホルダーもどっちも実用的で良いと思うんだけど……」

「「どっちが良いですか、エリア長!?」」

「ぐはっ……!?」

左右から詰め寄る二人。

右からは、まひろが「私とお揃いにしてくれないと泣いちゃいますよ?」と上目遣いで袖を引っ張ってくる。

左からは、ほのかが「先輩、私との思い出も形にしてください……」と潤んだ瞳で見つめてくる。

(だ、どちらか一人を選んだら、もう片方のヒロインに即死させられる……! どんな究極の選択だよ!!)

冷や汗をダラダラと流しながら、俺は必死に脳みそを回転させた。

「あ、あのさ! ボールペンもキーホルダーもどっちも素晴らしいから……両方買おう! 白石さんとはお仕事用のボールペン! 有栖川さんとは店舗の鍵用のキーホルダー! これなら二人ともお揃いだし、喧嘩にならないだろ!?」

折衷案を提示すると、二人は一瞬だけポカンとしたあと、嬉しそうに顔をほころばせた。

「ふふっ、エリア長ったら、両方買うなんて太っ腹ですね♪」

「先輩がそう言ってくれるなら……満足です!」

なんとか第一関門を突破し、ほっと胸を撫で下ろした俺。……だが、これで終わる二人ではなかった。

その後、カフェで休憩したあとも二人の猛攻は続いた。

「エリア長! このハンドクリーム、すごくいい香りですよ。お仕事で手が荒れないように、お揃いで使いましょう♪」

「先輩! こっちのマグカップ、ペアで使うとハートの形になるんです! 休憩室用に買いましょう!」

行く先々で繰り広げられる、甘く激しいお揃いアピールとボディタッチの嵐。

右腕にはまひろの柔らかい感触、左腕にはほのかの温かい体温。歩くたびに二人の甘い香りが鼻腔をくすぐり、俺の理性と心臓は休む暇もなく悲鳴を上げ続けていた。

(あかん……! 二人とも可愛すぎて理性が保てん……! だけど、誰かを贔屓したらその瞬間に平和が崩壊する……!!)

両手に二人から買ってもらった「お揃いグッズ」の紙袋を抱え、冷や汗をぬぐう俺。

「あ〜楽しかった! 今日はエリア長を独占できちゃいましたね、ほのかちゃん♪」

「うん! 薬局長にちょっとだけ追いつけた気がするね、まひろちゃん♪」

(確かに最近の氷室薬局長は可愛すぎて俺は直視できないレベルに入りつつある、有栖川さんのようにボディタッチされたら死んじまう)

買い物を終えた二人は、お互いにお揃いの品を手に入れて満足したのか、仲良く手を繋いで笑い合っている。二人で同盟を組んだおかげか、不思議と殺伐とした雰囲気はなく、終始華やかで甘いショッピングデートとなった。

……俺の胃袋と精神力が削れに削られたこと以外は。

「ふぅ……二人とも、無事に欲しいものが買えてよかったよ……」

駅の改札前で二人を見送りながら、俺はそっとポケットの中に手を突っ込んだ。

「それじゃあエリア長、また明日お店でね♪」

「先輩、明日からもお仕事頑張りましょうね!」

手を振って改札へと消えていく、エブリデイ可愛いまひろと、清楚で愛しいほのか。

二人の姿が見えなくなった瞬間、俺はその場に膝をつきそうになった。

(ふぅぁぁぁ……助かった……! 命からがら生還したぞ……!!)

俺はプルプルと震える手で『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、町田の夕空を見上げながら、疲れ切った胃袋へ向けて一気に喉奥へ煽り込むのだった。

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