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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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ふたりの同盟と、とどまることを知らない可愛さ

京都嵐山への出張が決まってから可愛さがとどまることを知らない氷室薬局長に対抗すべく同盟を結んだまひろとほのか、そして2人の急激なボディタッチ攻撃に翻弄される陣内

「ねぇ……ほのかちゃん」

「どうしたの、まひろちゃん?」

白鳥駅前店の休憩室。

これまでお互いを「有栖川さん」「ほのかちゃん」と呼び合っていたふたりは、固い手と手を握りしめ、秘密の同盟を結んでいた。

というのも――京都嵐山での学会出張が決まってからというもの、氷室涼香薬局長の可愛さとデレ具合がとどまることを知らなかったからだ。

出会った初日や昔の涼香といえば、『有栖川!』『白石!』と感情の籠もらない冷徹なトーンで呼び捨てにしてきたものだった。

それが最近では、事あるごとに――

『ほのかちゃん、大丈夫? 何か分からないことはなくて?』

『まひろちゃんは今日も本当に可愛いわね。さすがコンテストで準優勝しただけのことはあるわ!』

などと、柔らかい微笑みを浮かべながら後輩たちを愛おしそうに気遣う始末なのだ。

「ねぇ……ほのかちゃん。最近の薬局長、可愛すぎない……?」

「もう……困っちゃうよー、まひろちゃん! 反則だよね……っ!」

もちろん、ふたりにとっても憧れの薬局長と壁がなくなり、仲良くなれたこと自体は心から嬉しい。何でも話せる温かい職場になったのは間違いなかった。

だが! もともと美貌とスタイルは超一級品のクール系美人が、恋を知ってこんなに可憐で可愛くなってしまうのは、ヒロインレースにおいて脅威以外の何物でもなかった。

「ほのかちゃん、薬局長は仕事の方ではどうなの? 何かミスとか付け入る隙はないわけ!?」

「ん〜……そこは完全にロジックマシーンのままだよ。普通そこまで気づくかな……? っていう細かい所まで一瞬で見抜いちゃうの」

「たとえば!?」

「高血圧のお薬の鑑査でもね、『このプロプレス2(一般名:カンデサルタン2mg)は、病名が腎実質性高血圧症だから今回の処方で減量した理由をちゃんと聞き取ってね』とか、薬理と病態が全部頭に入ってる感じで……」

それを聞いて、まひろは「うわぁ……」と頭を抱えた。

可愛い上に、プロとしての壁があまりにも高すぎるのだ。

そこへ、バックヤードでドリンクを飲んでいたギャル実習生のあげはが会話に混ざってきた。

「あげはちゃんはどう思うのよー!?」

「いや〜、薬局長はマジでヤバいっすよ! 大学じゃ絶対習わないような現場の細かい臨床知識を毎日教えてくれるからビビるっしょ! 抗コリン薬の適正化とか眠剤のプロファイル調整もスゴいし……精神科のCP(クロルプロマジン)換算なんて、換算表も見ずに暗算でパパッと出された時はマジでビビったっしょ!」

「なんで仕事もできてあんなに可愛くなるのーーっ!!」

頭を抱えて叫ぶまひろとほのか。

「とにかく……京都で一気にゴールインなんてされたらたまらないから……! ウチらも負けずに、直接アタック仕掛けていこっ!」

「うんっ! 頑張ろう、まひろちゃん!」

学会という名のお泊まり出張を目前に控え、危機感を限界まで募らせたふたりは、一致団結して反撃に出ることを決意したのだった。

そしてその直後。

デスクで提出書類の締め切りに追われていた俺――陣内を、未曾有の災厄が襲った。

「エリア長ぉ〜♪ この書類のチェック、一緒に見てくれませんかぁ〜♡」

「っ!?」

エブリデイ可愛いまひろちゃんが、甘いフローラルの香りを漂わせながら、俺の右腕にこれでもかと柔らかい胸を押し当ててしがみついてきた。

「あ、有栖川さん!? 距離が、距離が近い……っ!」

さらに反対側から、ふわりと上品な石鹸の香りが近づいてくる。

「エリア長、私の方の処方監査のダブルチェックもお願いできますか? ……ね?」

「しっ白石さんまで!? なんで左腕まで挟み撃ちにするんだよーーっ!?」

ゆるふわ清楚なほのかちゃんが、上目遣いに潤んだ瞳で見つめながら、俺の左腕をギュッと抱きかかえてきたのだ。

左右から同時に押し寄せる、圧倒的な甘い体温と柔らかい感触。

急激に増量された過剰なスキンシップとボディタッチに、俺の脳内容量は一瞬でキャパオーバーを起こした。

(くっ……! 本部への締め切りが近いってのに……! なんで急にこんな甘々空間が倍増してんだ……!? ふたりとも可愛すぎるだろ……っ!!)

両腕を完璧に封じられ、顔を真っ赤にしながらプルプルと震える俺。

そんな俺たちの様子を、調剤室の奥から「あらあら、賑やかですわね」と優雅にメガネの位置を直しながら、余裕の笑みで見つめる氷室薬局長。

(あかん……! 楽園どころか、理性が焼き切れる地獄の甘さだ……!!)

俺はかろうじて動く右手でポケットから『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、ふたりの甘い視線に晒されながら、一気に喉奥へ煽り込むのだった。

「少しでも『面白かった!』『続きが気になる!』と思ってくださったら、下部の【★で評価する】や【ブックマーク】を押していただけると執筆の大きな励みになります!」

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