クレバーな小悪魔と、足りない先輩成分
コスメの頂点を目指しつつ、陣内を独占するために「登録販売者試験」に挑戦するまひろと、直球すぎる「先輩成分足りないんですぅ」ハグに思わず胃が吹き飛ぶ陣内の爆笑&甘々ドタバタエピソード
有栖川まひろは、可愛さ最高潮の24歳である。
既に「コスメコンシェルジュ」と「日本メイクアップ技術検定1級」を保持するプロ中のプロだが、彼女のスキルアップへの野心は留まることを知らなかった。
なぜなら、第12回『ラベール・トータルビューティーコンテスト』の開催が迫っていたからだ。
全国のドラッグラベールグループから選ばれし1000人が参加し、激烈な予選を勝ち抜いたわずか35名――その最年少ファイナリストとして、まひろは見事残留を果たしていたのである。
(ふふんっ♪ このコンテストで優勝して、エリア長に『まひろちゃん凄〜い!』って独占で甘やかしてもらうんだから……!)
ウキウキで秘密裏にコンテスト用の勉強を進めていたまひろだったが、先日、ギャル実習生のあげはに「え〜? まひろ先輩、また新しいコスメの勉強ですかぁ〜? マジリスペクト〜♡」と突っ込まれ、秘密がバレて大ショックを受けたのだった。
(くっそ〜! あげはちゃん、調剤室でも売り場でもエリア長との距離が近すぎるのよ……! 待てよ?)
まひろはバックヤードでポンと手を叩いた。
(ドラッグストアには『調剤部門の薬局長』と『店舗部門の店長』がいる……。私、実務経験はあるんだから……『登録販売者』の資格が取れるじゃない! 資格を取れば、私もビューティーだけじゃなくて『ヘルスケア』のプロとして店長ラインを狙える……!)
そして何より――。
(勉強を教えてもらうという名目で、エリア長を二人きりで独占できちゃう!! これなら薬局長にもほのかちゃんにも邪魔されない! 私ってばナイス作戦! まひろちゃん超クレバー!!)
その日の夕方。あげはが調剤室で涼香とほのかに「BPSD対応」の指導を受けている隙を突き、まひろはバックヤードで一人書類をまとめていた俺を捕まえた。
「ねえねえ、エリア長〜! 私、来週の試験で『登録販売者』受けちゃいます! めちゃくちゃテキスト詰め込みまくったんですけど、直前で心配で……!」
「おー! 有栖川さん、偉いっ! コスメリーダーにとどまらず、店舗全体の医薬品まで勉強をしてたとは、もしかして俺とはじめて会ったときのアドバイス覚えてたか!」
俺が心から感心して褒めちぎると、まひろは心の中で(なんちゃってー! 先輩を一週間独占させてもらうぜ!!)と悪魔のウインクを浮かべていた。
しかし、その時――。
「有栖川君! じつーは、君の受験するこの関東エリア……全国で一番問題がムズいのだ!」
「ガッビーン!?」
まひろは可愛く口をあんぐりと開けて驚いた。
「だ、だがしかし! 傾向と対策さえ掴めば恐れることはない! 薬害の歴史や抗コリン作用の副作用問題は毎年必出だ。これから試験までの1週間、君に任せるミッションは……必ず俺に日々の成果を報告すべし!」
「有栖川隊員、了解っ!!」
俺は腕組みをして、ビシッと指を突き立てた。
「君に課すミッションはこれだ! 毎日1年分の過去問を本番と同じ時間配分で解くこと! 採点は私、陣内がやってあげます! なんと無料の個別解説つきだ!」
「キャーっ! カッコいい、エリア長〜っ!!」
「ということだ! 行けっ、有栖川隊員!」
「アゲハちゃん! 負けないっ! 私はビューティー&『ヘルスケア』担当になるのよーーっ!」
「なにーっ!? めちゃプリティーまひろちゃんに戦いを挑まれたら、受けんわけにはいかんのだけど〜!?」
バックヤードの扉がバターン! と勢いよく開き、ゾーンに入ったまひろと、ノリノリで応じるあげはの叫び声が響き渡った。
「……なんなの、あの謎のノリは……」
「有栖川さん、急にどうしちゃったんだろう……」
調剤室から覗き込む涼香とほのかは、完全に蚊帳の外でぽかんと首をかしげていた。
だが、連日まひろが業務後に俺と二人きりで「過去問の解説指導」を受けている姿を目撃し、二人の疑惑と警戒の目は日増しに強まっていくのだった。
そして、試験直前の翌日。
まひろが提出してきた過去問の採点をした俺は、思わず目を見張った。
「正答率……85%……!? おいおい、合格ラインの70%を遥かに超えてるじゃないか! 有栖川さん、普通に余裕だよ!」
しかし、当のまひろは「う〜ん……でも、このコリンエステラーゼ阻害薬の引っ掛け問題で間違えたのが納得いかなくて……!」と、必死の形相でテキストの解説を貪り読んでいる。
「そんなに無理しなくても大丈夫だって。十分すぎるくらい頑張ってるよ」
俺が呆れつつも温かい声をかけると、まひろはテキストから顔を上げ、じっと俺の目を見つめた。
「……はいっ。資格を取りたいのは本当ですし、あげはちゃんに対抗したのも本当です。でも……」
まひろは恥ずかしそうに頬をポッと赤く染めると、急に俺の胸元へ飛び込んできた。
ギュッ……!
「うおっ!?」
「最近、エリア長が薬剤師のことばかりにかまけてて……全然独占できないし……『先輩成分』が足りなかったんですぅ……っ!」
しがみつくような甘いハグ。
腕の中に伝わる、まひろの柔らかい体温とフローラルの甘い香り。
そして、「先輩成分」という破壊力満点のおねだりワード。
(……っ!?!?)
直撃した胸キュンの破壊力と、不意打ちのド直球アタックに、俺の脳内警報が鳴り響く!
(アカン!! 甘すぎる!! 可愛すぎる!! 脳みそと胃袋が同時に爆発するーーーっ!!)
不意打ちのときめきとパニックで、俺の胃袋は「ポンッ!」と物理的に飛んでいくかのような激痛を起こしたのだった。
「ひいっ……! す、先輩成分補給は完了だ! 明日の試験、頑張ってこいーーっ!!」
「ふふっ♪ はーい! エリア長パワーで満点取ってきますね〜♡」
つかのま
「メイクアップコンテスト本戦優勝狙ってますっ…次は景王プラザホテル銀座!!
ぜっ…絶対優勝して、エリア長に…」
(告白するんだもん!…か声に出なかった)
それ以前に私のプリティー甘々時間で真っ赤になって胃を押さえるすがたを見て、まひろは満足気な小悪魔の笑顔を咲かせるのだった。
「エリア長…超可愛い…採点時は幸せだったな…ずっとテストないかな…落ちちゃう?でもおバカちゃんともおもわれたないな〜ムムム…」小声でつぶやく
俺は数日ぶりに可愛いの超絶怒涛ラッシュをモロにくらいまくりもうライフはゼロだった
胃が悪いのかもわからなくなりながら
ラベール胃腸薬プレミアムをのんだ
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