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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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相互扶助の勝利(?)と、調剤室のポコポコ大混戦

涼香と陣内が店長セミナーへと向かった翌朝、凶器じみた専門書の山を前に「ガチ勢だわ……無理ら……」と涙を流して完全撃沈するほのか! しかし、「専門が違う方が相互扶助になるし、家で別の話もできて私たちの勝ち!」というまひろの超絶ポジティブな悪魔的(?)ロジックで奇跡の復活! そこから「胃袋を掴んだ私の勝ち!」「私だってエブリデイ可愛いんだから!」と不毛な可愛すぎる争いへ発展するのだった

あくる日の朝――。

氷室涼香薬局長と陣内拓海エリア長の二人は、全社の幹部が集う『店長セミナー』の会場へと向かっていった。

取り残された白鳥駅前店の調剤室では、白石ほのかがズッシリと重い絶望の荷物(凶器じみた厚さの精神科参考書とガイドラインの山)を調剤台の上に置き、遠い目をして深く考えにふけっていた。

「あの……ほのかちゃん……?」

あまりのオーラの暗さに痺れを切らした小寺結衣が、おそるおそる声をかける。

「どうだった……? 昨日の精神科領域の勉強……」

調剤室の奥から、有栖川まひろとギャル実習生のあげはも興味津々な様子で顔を覗かせた。

次の瞬間――。

つーーーー……。

ほのかの大きな瞳から、ぽろりと大粒の涙がこぼれ落ちた!

「「「!!??????」」」

「だっ、大丈夫!? ほのかちゃん、なんで泣いてるの!?」――パニックになる結衣。

「うん……。ガチ勢だわ……あのスケベ薬局長……」

「そ、そんなに難しかったの……?」――あげはが尋ねる。

ほのかは涙を拭いもせず、舌足らずな声で絶望を吐き出した。

「うつ病の抗うつ薬換算式(イミプラミン換算)とか……抗精神病薬の換算式(クロルプロマジン換算)……ベンゾジアゼピンの換算式に……各薬品の細かな毛色や作用機序の違い……漢方薬の組み合わせ……眠剤の使い分け……非薬物療法(CBT)……診療ガイドライン……老眼を殺しにくる殺人的な厚さのテキスト……無理ら……」

「でもでも! ほのかちゃんは全社オータム研修の最優秀新人賞じゃない……!」

「くっ……新人賞でも……一日の長(涼香のキャリアと勉強量)が果てしなく長いんら……」

「『長いんら……』って! ちょ、ちょっとほのかちゃん、語尾変になってない!? 大丈夫!?」

「無理ら……。出し抜きとかどうとかじゃなくて……純粋にガチ勢なんだ、あの人……」

あげはが調剤台のガイドラインのページをパラパラとめくり、ドン引きしながら呟いた。

「うわ……マジでガチ勢っしょ……」

「なんでこんな数字化できないメンタルの対応まで完璧にできるのかなぁ……?」

「料理あんなに下手なのに……」

「うっ……!! その技は……私にも効く……っ!!」

『料理下手』というワードが流れ弾となって突き刺さり、まひろが「ガクッ」と胸を押さえてうなだれた!

――しかし次の瞬間!

うなだれていたまひろが、ハッと何かを閃いたように目を輝かせ、急に元気を爆発させ始めた!

「ほのかちゃん! 元気出して!!」

「出……出ねぇ……」

「いや! 大丈夫だよ!! 全然大丈夫!!」

「……?」

涙目のほのかが首をかしげると、まひろは満面の笑みでドヤ顔を決めた!

「だって……! 拓海さんと専門分野が違うほうが、お互いの【相互扶助】になるじゃない!! 家に帰ってからも拓海さんと違う分野の医療の話ができるし、お互いに補い合えるんだから……これ、実質私たちの勝ちじゃない!!」

「……っ!!」

まひろの超絶ポジティブな悪魔的ロジックに、ほのかの表情が「ぱぁぁぁっ!」と一気に明るく花開いた!

「そ……そうだ!! 私には白戸彩さん直伝の極上料理があるんだ!! 栄養学も完璧なんだ!! ……私の勝ちだーーーっ!!」

「ちょ……ほのかちゃん!?」

調子に乗り始めたほのかに、まひろがすかさず「待った」をかける!

「まひろちゃん! 敗れたりっ!?」

「なっ、なんでよー!!」

「だって、最終的に男の胃袋を掴んだほうが勝つんだからっ♪」

「そっ……そんな前時代的な!! 私なんか超華やかだし!! 周りのスタッフやお客さんから『可愛い可愛い』言われるのだって私だしぃ!! エブリデイ可愛いんだからねっ!!」

「わっ……私だってエブリデイ可愛いもん!!」

ぽかぽか、ポコポコ……!

お互いの肩や腕を猫パンチのように可愛く叩き合い始める二人!

その光景を横で見ていたあげはと結衣は、開いた口が塞がらない様子で呆気にとられていた。

「ちょちょちょ……落ち着くっしょ、二人とも……!」

「そっ……そうだよ! 肝心のエリア長がいない状態で騒いでも……!」

二人が必死になだめようとしたその時――ほのかとまひろの矛先が、突然矛先を変えて結衣へと向かった!

「「そう言う結衣ちゃんは、ドリンク補充コーナーなの!?」」

「えっ……」

「くそっ……! ドリンク補充のところで生駒君とイキイキして、スケベなこと考えてるんじゃないでしょうね!!」

「なっ……ななな、なんで私に飛び火するのよーーーーっっ!!? そっ…そんなドリンクでスケベとか意味わかんないんですけどーー!!」

ぽこぽこ、ポコポコ……!!

結局、結衣まで巻き込まれて調剤室全体がカオスなポコポコ大混戦に突入!

(((なんでこんな事になるのか……サッパリ分からないっしょ……)))

あまりの混沌ぶりに、ギャル実習生のあげははただただ途方に暮れるばかりなのであった。

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