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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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理科大のプライドと、恋の専門薬剤師

先ほどのなぞの小競り合いが少し落ち着き、真面目な臨床講義モードへ移行したヒロインたち! ドネペジル等の抗認知症薬にとどまらず、不眠・脱抑制・介護者ケア・消化器症状まで網羅した完璧な症例報告&eラーニング満点修了の実績を突きつける東京理科学大出身の超エリート薬剤師・氷室涼香だった

悪魔(神崎葵)の雷のような一喝によってようやく冷静さを取り戻した一同は、赤くなった顔を手で仰ぎながら、少しずつ真面目な医療の会話へと移行していた。

「わっ……私としたことが……取り乱してしまいましたわ!!」

涼香はボルドーのニットの襟元を整え、コホンと一つ小さく咳払いをした。

隣でほのかが、まだ少し両頬を膨らませながらポツリと漏らす。

「むー……。私、実はちょっと精神科領域の臨床って苦手なんだよなぁ……」

「よっ……よろしければ、わたくしが手取り足取りレクチャーして差し上げますわよ♪」

涼香がここぞとばかりに微笑むと、ほのかは悔しそうに歯を噛みしめた。

「くっ……! 実際、薬局長なら完璧に教えられちゃうのが本当に悔しい……っ!」

「ふふん、それだけではありませんわ! 精神科・認知症領域の『症例報告書』だって、すでに完璧なフォーマットで作成済みなんですのよ!!」

「「「なっ……なん…だとっ……!!??」」」

ほのか、まひろ、そして調剤台の影で聞いていた結衣とあげはの目が飛び出さんばかりに見開かれた!

「なっ……何で……っ!? に、認知症の治療薬なんて……ドネペジル(アリセプト)、メマンチン(メマリー)、ガランタミン(レミニール)、リバスタッチパッチ……くらいしか主要な薬はないはず……! 一体どうやってそんな深い症例報告をまとめたんですか……!?」

まひろが驚愕の声を上げると、涼香は「くあっ!」と目を大きく見開き、白衣の胸を堂々と張ってみせた!

「ふふん! 主病名の抗認知症薬だけに縛られていては、プロの臨床薬剤師としてダメなのよっ!! 認知症に伴う不眠症に対する適切な睡眠薬の選択(ゾルピデム等の安易な使用を避け、レンボレキサント等の受容体作動薬への提案)! 脱抑制や周辺症状(BPSD)・精神異常に対する漢方薬(抑肝散)や抗精神病薬の微調整!! 精神的ストレスを抱える介護者家族のメンタルケア! そして抗コリン作用や消化器症状のケアなど、関わるべき介入ポイントは多岐に渡るのよっ!!」

「ぐっ……ぐぐぐ……ちくしょう……! スケベなデコアタックのくせに、やっぱり東京理科学大薬学部出身の超エリートなのは伊達じゃないのか……っ!」

ほのかが頭を抱えて悔しがると、涼香は真っ赤になって抗議した。

「なっ……スケベだなんて失礼なっ!」

「いや! 薬局長は間違いなくスケベです!!(キッパリ)」――まひろが指をさす。

「勉強も薬剤師としての能力も、全社トップクラスに高いのは認めざるを得ませんがっ!!」――ほのかも力説する。

「なっ……分かったわ……! この際……自分のスケベさは認めますわ!!」

「「認めたの!?!?」」

「でも!! 精神科医療に対する私の力と熱意は本物ですわ!! 白石さん! 貴女だって、自分のかわいさで脳みそをショートさせちゃった男子高校生さんがいたでしょう!! この間なんか、貴女にいいところを見せたくて模試の結果報告を持ってきていたのを私、バッチリ見ていましたわっ!!」

「あっ……あ、あれは……っ! ちょっと私が可愛すぎただけで……っ///」

「ほら! ほらほら〜っ! 悪い気はしないじゃないのっ♪」

「なっ……くっ……!!(反論できない!)」

……調剤室のカウンター越しに、そのやり取りを見つめるギャル実習生のあげはと小寺結衣。

「……とんでもねー理論っしょ……」

「やーん♪ 必死になって照れてる薬局長も可愛すぎる……♡」

「ゆ……結衣先輩……?」

「もー、理論が完全に破綻してて最高じゃない♪」

あげはは呆れ半分、尊敬半分で深々と溜息をついた。

「それにしても……実務をこなしながら専門薬剤師の症例報告まで済ませておくなんて……恋のパワーが凄すぎるのか、薬局長個人のスペックが化け物なのか、もはやサッパリ分からないっしょ……」

そこへ、涼香が「くわっ!」と再び目をギラギラと輝かせ、決めポーズをとった!

「わたくしはっ! すでに必要な座学講習もクリアしているし! 学会指定のeラーニングテストも……満点よ!! ワークショップの受講も修了済みなんだから!! 絶対に【精神病・認知症チーム】の座は誰にも譲りませんわ!!」

「「がーーーーーーん……っっ!!」」

圧倒的な準備量と実績の前に、膝から崩れ落ちるほのかとまひろ。

涼香は二人に優しく(しかし勝ち誇った笑みで)手を差し伸べた。

「あっ……貴女たちも……この悔しさを糧にして、それぞれの分野で立派な専門薬剤師・コスメリーダーになるのよっ!!(バーン!)」

「「(う、意味不明だけどカッコいい……っ!!)」」

――勉強やキャリアというものは、これほどの圧倒的な熱量と情熱(そして恋のパワー)が必要?なのだと、白鳥駅前店の女子たちは身にしみて痛感させられるのだった。

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