高度専門チームと、店長セミナー前の小競り合い
高度医療機能薬局の取得に向けた「店長セミナー(専門チーム選択)」の直前、陣内の専門分野である「精神病・認知症チーム」へルンルンで滑り込もうとした涼香! 拓海とのドサクサ狙い(?)を察知したほのか&まひろと、学会発表や専用ハンドベルまで買った実績を盾に大激突する不毛で可愛い小競り合いが開幕! 超高度な医療水準と小中学生並みの恋愛争奪戦の落差に引く結衣&あげはの横で、最後はパズーばりの悪魔(神崎葵)の喝で我に返る皆でした
我が『ドラッグラベール』グループは、地域医療の要となる【高度医療機能薬局】の認定取得に向け、今回の店長セミナーのオプション講義として極めて重要な専門チーム制度を導入していた。
国が医療連携において重点指定する【5大疾患】――すなわち『精神疾患』『糖尿病』『がん』『脳卒中』『心臓疾患』。
その中でも特に高難度の専門薬剤師・認定薬剤師資格が存在する主要分野において、全店から選抜されたスタッフを以下の4チームへ振り分ける方針となっていたのだ。
【ジェネラリスト(オールラウンダー)チーム】
【精神病・認知症チーム】
【糖尿病領域チーム】
【がん・緩和医療チーム】
私――氷室涼香は、セミナーの受付用紙を目にするやいなや、ルンルン気分でペンを走らせた。
(もちろん、迷うことなく【精神病・認知症チーム】へシューーーッ!! 超エキサイティング!!ですわ〜〜〜♪♪)
とびきりの笑顔でチェックを入れ、ふと隣に視線を向けると――後輩の白石ほのかが、両頬をプクーッとこれでもかと膨らませて私を睨みつけているではないか!
(どっ……どうしたと言うの……? 私、何か失礼なことでもしたかしら……?)
「しっ……白石さん♪ どうなさったの……?」
最年長のお姉さんとして、可愛く優しく尋ねてみた。
すると、ムーッと不満顔のほのかは「ダッ!」と音を立てて走り出し、同じくプクプクと怒りマークを浮かべたまひろを連れて戻ってきたのだった!
「「はいっ! 薬局長、アウトーーーーーッ!!」」
「なっ……なによー!! いきなりアウトって言われても分かりませんわ!」
「『春まで抜け駆けはしない』って、この前の女子会で約束したじゃないですかーーーっ!!」――まひろがキーッと指をさす。
「認知症と精神科領域って……拓海さんの超本命の専門分野(認知症研修認定薬剤師)じゃないですか!! 絶対に研修のどさくさに紛れて、拓海さんと二人きりでイチャイチャ何かする気でしょーーーっ!!」――ほのかがプンプン抗議する。
「なっ……何もしませんわよ!! 私はただ……拓海さんのおかげで精神病領域の臨床が大好きになって……っ!」
「プクーーーッ!!」
ぽこぽこ、ポコポコ……! 涼香の胸元を小さく叩いて抗議するほのか。なんだか現場が一気にワチャワチャした空気に包まれていく!
「もーっ! 私なんて、この前わざわざ学会に参加したのも精神科領域ですもの!!」
「ずるいずるいー! 薬局長は【がん・緩和医療】とか【糖尿病】にしてくださーい!!」
「嫌っ!!」
今度は涼香が子供のように「プクーッ」と頬を膨らませて意地を張る!
「有栖川さんだって、この前コスメの全国大会に行ったじゃない! 拓海さんの守備範囲は広いのよ!」
「むー!! 私は全社のメイクアップ大会ですー! 違いますー! 拓海さんを狙って出たわけじゃなくて、技術力を競うために出たんですー!」
「わ、わたくしもですーーーっ!! 狙ってじゃなくて、純粋に精神科の服薬指導が好きなんですーーーっ!!」
「なによー! 『精神科好き』って意味わかんないんですけどーーーーっ!!」
……そのすぐ横で。
調剤台の影からこの様子を見ていた小寺結衣とギャル実習生のあげはの二人は、開いた口が塞がらない様子で慄いていた。
この専門チーム制度は、学会発表レベルの症例解析や高難度の病態生理を網羅する、極めてハイレベルな内容だ。普通の薬剤師ではとてもついていけない難易度を誇っている。
(((求めている学会・チームのレベルは超一流なのに……目の前で繰り広げられている小競り合いのレベルが低すぎる……っ!!)))
高度な医療水準と、小中学生レベルの恋愛争奪戦という強烈なギャップに、二人は戸惑いを隠せない。
「ゆっ……結衣先輩は、将来薬局長になったらどの専門チームに入るんすか……?」
「わっ……私は……生駒(遼)君と……ドリンク?の棚割りチームとか……」
「ハハッ……先輩、冗談キツいっしょ……(それ専門チームでも何でもないっしょ)」
そこへ――ドカドカと重威圧の足音を響かせて、巡回中の本部の悪魔・神崎葵統括課長がやってきた!
葵は某アニメの飛行戦艦の船長よろしく、仁王立ちで爆音の怒声を響かせた!
「うるせーーーーーっ!! 40秒で支度して、仕事しなーーーーーっっ!!」
「「「はっ……!!」」」
雷が落ちたような一喝に、一瞬で我に返る女子たち。
((((私……いい年して一体何をやっているのかしら……っ////))))
己の恥ずかしすぎる小競り合いに顔を真っ赤にしつつ、この時ばかりは非常に珍しいことに、全員が心の中で「悪魔課長、止めてくれてありがとう……」と本気で感謝したのだった。
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