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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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筋トレ紳士と胸脇苦満、大柴胡湯のキレ味

謎の肋骨・お腹の痛みに悩む42歳の筋トレ紳士・篠田(しのだ)さんが来店! ギャル実習生あげはの圧倒的な胸囲(?)に度肝を抜かれつつ、陣内の驚異的な漢方臨床診断(胸脇苦満・実証に対する『大柴胡湯』のアプローチ)に開眼! 厨二病のような用語解説に驚きつつも、カフェで過ごすうちに劇的に症状が改善してビビる篠田さんと、前哨戦で教わった漢方の奥深さに恐怖と感銘を覚えるあげはのストーリーをお楽しみください!

俺――篠田(しのだ)、42歳。

ここ数日、原因不明の謎の腹痛というか、みぞおちから右肋(あばら)にかけての不快な痛みに苦しんでいた。心配になって総合クリニックを受診したものの、各種検査の結果は「異常なし」。大きな病気ではないと言われたのは安心したが、肝心の症状がまったく改善しない!

(ちっくしょー!! 一体どういうことなんだ! 俺はジムで鍛え上げたムキムキマッチョマンの変態……ではなく、紳士なのに……!!)

痛む脇腹を押さえながら白鳥駅前を歩いていると、何やらドラッグストアの店頭で賑やかな雰囲気が漂っていた。

(ん……? 何だ、『秋の健康フェス』……? 藁にもすがりたい気持ちだ、ちょっと覗いてみるか……)

店内へ一歩足を踏み入れた瞬間――私の目は釘付けになった。

そこにいたのは、驚異(というか圧倒的な胸囲)を誇る、眩しすぎるギャル(あげは)だった!!

(でっ……デケェ……!! どうなってんだ一体……! あのサイズ感で白衣を着ていて苦しくないのか……っ!?)

ハッ……! あぶないあぶない、紳士たるものが何を興奮しているんだ!

私は己の邪念を必死に振り払い、本来の目的を思い出して声をかけた。

「あの……すみません。クリニックの検査では何ともなかったんスけど、なんだか肋(あばら)のあたりが張って痛くて……」

あげはちゃんはパチッと大きな目を瞬かせると、気さくに微笑んだ。

「あっ! それならエリア長が得意な分野っしょ! アタシ、実習生なんで横で見学させてもらってもいいですか〜?」

(じっ、実習生だったか……! あまりの可愛らしさと存在感に、いきなり話しかけてしまったわ……!)

すると、調剤室の奥から一人の男が歩み出てきた。

その男――陣内拓海を見た瞬間、筋トレトレーニーとしての私の直感がピンと跳ね上がった。

(ほう……ボディビルのコンテスト系とは違うが、無駄のない実に引き締まった素晴らしい体躯……! 思わず『冷蔵庫!!』と掛け声を送りそうになる気持ちを抑えねば……!)

「あの……このあばらの下がちょっと張って痛むのですが……」

「こちらへどうぞ」

迷いなく面談ブースへと案内する陣内。

(おいおいムキムキの兄ちゃん、病院の精密検査でも異常なしだったんだぞ? 大丈夫か……?)

不安に思いながら着席すると、陣内は私の顔色、体格、そしてお腹の触診(腹診)の手順を踏まえ、一切の迷いなく滑らかな口調で解説を始めた。

「まず解説しますと……今の症状は、東洋医学でいう【胸脇苦満(きょうきょうくまん)】という状態に当てはまります。みぞおちから肋骨の下(胸脇部)にかけて、張ったり詰まったりした強い不快感や痛みがありますね?」

「はい……! まさにそれです!」

「拝見したところ、お体も非常に引き締まって鍛え上げられていらっしゃる。体力スペックは『実証(体力が充実している状態)』、気血の巡りで言えば陽の気です」

(なっ……厨二病か、このお兄ちゃん……!? 陽の気……!?)

面食らう私をよそに、陣内はさらに深い臨床解説をたたき込んでくる。

「ストレスや日常の緊張によって、体のエネルギーである『気』の流れが滞る【気鬱(きうつ)・気滞(きたい)】が起きています。柴胡(さいこ)という生薬が作用する通り道が塞がれることで、その強い張り感が生じるのです」

(なっ……なんだ、この圧倒的な説得力とパワーは……!!)

「そこで、がっしり体型の実証の方で、胸脇苦満が非常に強く、みぞおちが硬く張る症状に劇的に効く漢方処方があります。それが『大柴胡湯(だいさいことう)』です! ストレスフルな方や便秘がち、高血圧、脂質異常症、あるいは筋肉質の方の胃炎にも非常に優れた効果を発揮します」

横で見学していた実習生のあげはは、さっき陣内からレクチャーされた『大柴胡湯』の臨床応用が目の前で完璧に展開されているのを見て、「漢方の奥深さ……マジでやばいっしょ……」とブルッと身を震わせていた。

「数日間しっかり服用していただき、もし改善が見られないようでしたら、またいつでもご相談ください」

「あ、ありがとうございます……! すぐに飲んでみます!」

それから1時間後。

購入した大柴胡湯をその場で服用し、駅前のカフェでコーヒーを飲みながらくつろいでいた私――篠田。

「……ん? あれ……!?」

ふと、自分の脇腹に手を当てて驚愕した。

さっきまであんなに苦しく、鉄板でも入っているかのように頑固に張っていた右肋の下の痛みが……スッと嘘のように消え去っていたのだ!

「なっ……何なんだあのドラッグストアは……! 病院でも治らなかった痛みが、一発で取れちまったぞ……! あの冷蔵庫みたいなイケメンエリア長、只者じゃない……!!」

カフェの席で一人、劇的な改善にビビり倒す筋トレ紳士・篠田であった。

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