対ほのか弁当の悲劇と、救世主の微笑み
愛する陣内拓海の胃袋と健康を守るため、涼香とまひろがそれぞれ気合を入れて手作り弁当を持ち寄るも、二階堂先輩直伝を無視した「骨量爆増カルシウム弁当」と相澤玲奈直伝?の「タンパクモリモリ高校生弁当」は、シュガーさんも絶句する衝撃のダークマターと化す! そこへ救世主(あるいは大本命の黒幕)として現れたほのかが優しく料理指導を申し出る、笑いと愛に満ちた大人気のエピソードをお楽しみください!
バックヤードのテーブルを挟んで、氷室涼香と有栖川まひろの二人は、お互いに大きな風呂敷包みを抱えながら、じりじりと視線を交わし合っていた。
「あっ……有栖川さん。……わたくしお願いが…」
「きっ……奇遇ですね、薬局長♪ 私も、薬局長にお見せしたいものが……って、何ですかその重そうな包みは!」
2人がピリピリとした火花を散らしている横で、シュガーさん(等々力環奈)はマグカップを手に、ニヤニヤと面白そうに高みの見物をしている。
そこへ、シュガーさんが意地悪く口を挟んだ。
「そうよねぇ〜お二人とも、白石ちゃんみたいにあんな美味し〜い手作り健康弁当は作れないわよねぇ〜? ふふっ、一体何を持ってきたんだか」
「「なっ……!!」」
シュガーさんのその一言で、ライバル心に火がついた2人は、同時に風呂敷をバッと勢いよく剥ぎ取った!
「わっ、私はね! 二階堂先輩と天音ちゃんに厳しく教わって作ったのよ……! 名付けて、【骨量爆増・完全カルシウム無双弁当】ですわーーーっ!!」
くわっと誇らしげに涼香が差し出した弁当箱の中身は、カルシウムの粉が雪のように真っ白に降り積もった、圧倒的な白さを放つ謎の料理の塊だった。
「こっ、こっちだって負けてませんからね! 私だって、友達の相澤玲奈にレシピを教わって作ったんだから……! 名付けて、【タンパクモリモリ・わんぱく高校生アスリート弁当】ですっ!!」
まひろがドヤ顔で開けた弁当箱からは、隙間なく詰め込まれた真っ黒な肉の塊と、炭水化物が一切見当たらない肉・肉・肉の波が押し寄せていた。
「……」
ごくり……。
2人の弁当のあまりの破壊力に、シュガーさんは冷や汗を流しながら「これ絶対ダークマターの領域ね……」と心の中でドン引きした。
「さあっ……! 批評はあとです! まずは食べましょう……っ!」
震える手で、涼香はまひろの弁当を口に運び――。
「ぐっ……うぐっ……! こっ、これは……! 血管と腎臓が一発で灰燼になりそうですわ……っ! タンパク質地獄がダイレクトに攻撃して……うっ……!」
猛烈なガリガリ感と異次元のタンパク質に涼香は盛大に悶絶した!
一方のまひろも、涼香の作った弁当を一口食べて白目を剥く。
「ぐっ……むっ……にっ、にがぁぁぁいっ!! 何を入れたんですか、これ!!」
「だっ……誰か、第三者の客観的な意見を聞きましょう! シュガーさん!」
「絶対に嫌ーよ? 自分の舌を犠牲にしたくないもの」
「「そこを何とかお願いしますぅぅぅ!!」」
半泣きで縋り付く2人に折れ、シュガーさんは青い顔をしながらおそるおそる箸を伸ばした。
「わぁ……美味しそうだなー(棒読み)……。いっ、行くわよ……あむっ」
もぐもぐ……ゴクッ……!
「「しゅ、シュガーさん……! お味の方は……どうですか……っ!?」」
シュガーさんは遠い目をして天を仰ぎ、冷酷な一言を叩きつけた。
「……2点ね」
「「なっ……!? 10点満点中の……ことですよね、ねっ!?」」
「ふざけんな! 1000点満点だオラァ!どんだけ見積もり甘ぇんだ!! こっちの精神が死にかけるわ!!」
シュガーさんはキレッキレのツッコミとともに、ガタッと椅子から立ち上がった!
「おぃーっ!! 二階堂先輩とやらは一体何を教えてんだーっ!! 料理できない素人が中途半端にアレンジしてんじゃあねぇ!! カルシウムの粉を入れすぎて、弁当箱の底がセメントみたいになってるぞ!!」
「あっ……あの……拓海さんの骨密度を本気で上げようと良かれと思って……」
「よくねぇだろーが! 腎臓がパーになるわ!!」
シュガーさんはさらにまひろの弁当へと矛先を向ける。
「あと、なんだこの肉の山は!! 普通、炭水化物(米)くらい入れるだろーが! 高校生だってこんなに肉ばかり食わねぇよ! つーか、お前……食中毒が怖すぎて、鶏むね肉を限界まで加熱しすぎて『干し肉』になっとるぞ!! 噛み切れないわ!!」
「ひっ……シュガーさん、そんなに怒らなくても……」
シュガーさんは頭を抱え、ガックリと肩を落とした。
「ダメだ……これじゃあ『お嫁さん検定』……完全に落第だわ……」
「「ガガーーーン……っっ!!」」
自分たちの料理スキルの低さと、愛する拓海の健康を逆に脅かしかけたという事実のダブルパンチに、涼香とまひろはその場で崩れ落ちて絶望に打ちひしがれた。
――その時!
パタパタと軽やかな足音とともに、救世主が現れた。
「もー、見てらんないんだから♪」
「「あっ……! ほのかちゃん……!?」」
そこに立っていたのは、白戸彩直伝の完璧な血管強化レシピをマスターし、目を眩しく輝かせた白石ほのかだった。
ほのかは困ったような、しかしどこか誇らしげな優しい笑みを浮かべる。
「もし……拓海さんがこのままお弁当を食べ続けたら……本当に胃薬どころか病院送りで死んじゃうから……。だから、私があとで料理の基礎からみっちり教えてあげる♪」
「ほ、ほのかちゃん……私たちに料理を教えてくれるの……?」
「だって……! ヘタな料理で拓海さんの健康を壊しちゃったら意味ないもん! あの人なんとか食べるだろうし!せめて普通の料理が作れるようになってもらわないと、正々堂々勝負できないでしょ♪」
その言葉を聞いた瞬間、涼香とまひろの目から大粒の涙が溢れ出した。
「ほのかちゃあぁぁぁーーーーーーんっっ!! 優しすぎるよぉ……好きぃーーーーっ!!」
「そうよ、白石さん! あなたって子は、なんて心が広いの……っ!」
2人は泣きながらほのかに抱きつき、ほのかは「ちょっ、ちょっと苦しいですって!」と照れくさそうに笑いながらも、優しくその背中をトントンと叩いた。
――すべては、愛する陣内拓海の命(と胃袋)を守るための、美しくもほほえましい、ヒロインたちの「秘密同盟」の幕開けであった。
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