悪魔のギフト戦略と、まひろの妄想子育て
敏感肌用スキンケア『デュエール』の一般向けアイテムは絶好調で完売間近なものの、少しだけ余ってしまった「ベビー用ライン」の販促に悩むまひろとシュガーさん。そこへ現れた本部の悪魔(神崎葵)が投下した、発想の転換による驚きの解決策とは……? まひろの妄想(脳内子育てシミュレーション)を刺激する悪魔の圧倒的なビジネス手腕と、常連客の瞳ちゃんを巻き込んだ見事なギフト戦略を描く爆笑&感動物語をお楽しみください
「ん〜……一般向けの『デュエール』は、おかげさまで大分はけたわねぇ〜♪」
「そうですね! でも、ベビー用シリーズがちょっと余っちゃいました……」
「いい商品なんだけどねぇ〜」
「でも、普段使いにするにはちょっとお値段しますし、他にもマイルドでお手頃なベビーブランドは世の中にたくさんありますもんね〜」
休憩室の片隅で、有栖川まひろとシュガーさん(等々力環奈)が腕を組み、うーんとうなだれていた。
そこへ、ガチャンと勢いよく扉を開けて本部の悪魔――神崎葵統括課長が乗り込んできた。
「苦戦しているようねぇ、乙女たち……!」
「あっ……悪魔たん……」
「誰が『悪魔たん』よ! 今日は『天使』って呼べ……って、いつも私は天使みたいな慈悲深さで店舗を救ってるでしょーがっ!」
くわっと目を剥いて怒る葵に、まひろは苦笑いを返す。
「わっ……すみません! でも、何か良い販促の案でもあるんですか?」
葵はフッと不敵な笑みを浮かべ、艶やかに言い放った。
「その……『ドスケベ』な頭をフル回転させて考えてみなさいよ♪」
「なっ……なんですかそれ! 誰がドスケベですかっ!」
「ふっ、有栖川ちゃん……まだまだ修業が足らんなぁ……」
「ちょっと〜! 勿体ぶらないで、さっさと教えてくださいよぅ!」
葵は勝ち誇ったように人差し指を立ててみせた。
「――『新生児から使える圧倒的な安心感』!! そして『贈る相手のライフステージを選ばない実用性』!! ズバリ、出産祝いのスペシャルギフト化だコラァ!!」
「「……っ!?」」
「ドスケベな有栖川まひろ……想像しなさい……。愛しの彼(拓海)と結ばれて……可愛い、可愛い我が子が生まれたとする……。想像しただけで顔が溶けてるわよ」
「っっっ〜〜〜〜〜〜っっっ/////」
葵のその一言で、まひろの脳内は一瞬にしてパラダイスと化した。
(たっ……拓海さんとの子ども……! どんなに可愛いだろう……! 男の子かな、女の子かな……! 肌着を着せて、ミルクをあげて……あぁ、想像しただけで胸がキュン死しそう……!)
葵はまひろの真っ赤な顔を無視して、容赦なく畳みかける。
「そうよ! 赤ちゃんの肌はデリケートだから、どんなスキンケアが合うかなんて親御さんも分からない。だけど、皮膚科医が推奨する信頼の『デュエールベビー』なら絶対に安心だし、毎日使うものだから何本あっても困らない。でも、自分で買うにはちょっとリッチ。だからこそ……人から『贈り物』として貰うと、めちゃくちゃ嬉しいのよ!! 祝福の気持ちを込めて、特別感のあるラッピングをして出産祝いとして売り出すの! どうする、どうする〜〜〜?」
「「はっ……! この悪魔……言うことのスケールが大きすぎてムカつくけど、仕事のキレが凄すぎる……っ!!」」
まひろとシュガーさんは、完全に脱帽して葵を見上げた。
「ちょっ……その『ムカつくけど』のニュアンスは何よー! まぁ、分かったなら早速、見栄えの良いベビー用ギフトセットを組み立てて、キレイなラッピングと『御出産祝』ののしをつけて店頭の特等席に出しなさいっ!」
「はーい! 承知しましたっ♪」
それからしばらくして――。
まひろの熱烈なファンであるおばあちゃんの付き添いで、よく店舗に顔を出してくれる常連客の桜井瞳ちゃんがやってきた。
「あ、まひろちゃーん! こんにちは♪」
「あ、瞳ちゃん! いらっしゃいませ〜♪」
「ねぇ、聞いてよ。会社の同期の看護師さんが今度子供生まれるんだ!お祝いにベビー服でも見にデパートに行こうかと思ったんだけど、種類が多くて何がいいか分からなくてさ。無難にカタログギフトにするしかないかなぁ……って悩んでたの。まひろちゃんなら、何がいいと思う?」
その相談を聞いた瞬間、まひろの瞳がピカーンと輝いた。
「あのね、瞳ちゃん! もしよかったら……コレ、試してみませんか?」
まひろが満面の笑みで差し出したのは、先ほど悪魔の指令で作ったばかりの『デュエールベビー スキンケア・ギフトセット』だった。
「わあ……これ、何?」
「皮膚科のクリニックでも取り扱われている、敏感肌のための『デュエール』のベビー用シリーズです! もちろん、パラベンや香料、着色料フリーなのはもちろん、デリケートな赤ちゃんの肌をうるおいで包み込んでしっかり守ってくれるんです。パッケージもシンプルで洗練されているから、出産祝いのプレゼントにめちゃくちゃ最適なんですよ♪」
瞳ちゃんはギフトボックスを手に取り、嬉しそうにまじまじと眺めた。
「へぇ〜! 皮膚科医推奨かぁ……それに、おむつとか洋服と違って『肌に合わなくて使えない』ってことが少ないスキンケアのセットなら、もらう側も絶対に嬉しいよね! 特別感もあるし、無駄にならない! 私、これにするわ!」
「ありがとうございます! じゃあ、キレイなリボンラッピングと、『御出産祝』ののし紙をおかけしますね♪」
「うん! お願いしまーす!」
――その様子を、カウンターの陰から本部の悪魔がニヤニヤと腕組みしながら見守っていた。
「どうだ……? 子供は宝、そしてギフトは商売の華だぜ……有栖川ちゃーん……♪」
(悪魔のくせに……! 今回ばかりは、心の底から感謝するしかないじゃない……っ!)
悔しいけれど、完璧すぎるビジネス戦略に脱帽しつつ、まひろは晴れやかな笑顔でベビー用ギフトのラッピング作業に没頭するのだった。
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