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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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店長セミナーの資料と、13キロの鼻の下

昨夜のシュガーさんからの超絶爆弾投下により、完全に眠れぬ夜を過ごした陣内拓海! 朝からヒロイン3人の溢れ出る美貌と色気(ナチュラルあざとメイクのまひろ、色気全開の涼香、良妻賢母のほのか)を前に鼻の下が13キロ伸び、さらには神崎葵&シュガーさんから「春の異動とヒロインたちの将来のキャリア」を突きつけられて大パニック! 涼香との結婚妄想まで暴走させて獣のような目になり、たまらず「外の宣伝」口実でバックヤードから逃亡する爆笑エピソードをお楽しみください!

昨夜のシュガーさんからの怒涛の爆弾投下――「ヒロイン3人は本気でお前に恋している」「腹を決めろ」という言葉が頭の中をグルグルと駆け巡り、俺――陣内拓海は一晩中まんじりともできず、ほぼ徹夜の状態で出社していた。

(あ、あかん……! 昨日の今日で、一体どんな顔をして彼女たちと顔を合わせればいいんだ……っ!?)

恥ずかしさとドギマギでヒロイン3人の顔を直視できず、俺は出社するやいなや、出勤時間ギリギリまで逃げるように『店長セミナー』の事前確認資料に没頭していた。

「ふぅ……頭がこんがらがりそうだが、とにかく確認だ……」

今回の店長セミナーは、本部意向により各店舗の『財務状況』を細かく確認・分析するための重要会議だ。一般的に薬剤師や店舗スタッフは経済学や会計学、損益分岐点の計算などには明るくない。だが、最優秀エリア長である俺がしっかり数値を把握し、指導しなければならないのだ。

手元のPL(損益計算書)と損益分岐点売上高の数値を追っていく。

(……それにしても、白鳥駅前店の数字はとんでもないな。測定会の大成功と『デュエール)』のほぼ完売もあって、とてつもない黒字を叩き出しているぞ……!)

数字の優秀さにホッと胸を撫で下ろす。そして、もう一つ安堵したことがあった。

(しかし助かった……! 今回の涼香さんの担当エリア長が、あの優秀で冷徹な『鉄の神楽坂エリア長』で本当に良かった……! 今の俺のメンタルじゃ、鼻の下を伸ばしすぎてまともに涼香さんを指導できるとは思えん……!)

ふと、資料から目を切って店内を見渡してしまったのが運の尽きだった。

視線の先には――

『引き算ナチュメイク』をマスターし、素の可憐さと透明感を全開パージしている有栖川まひろ。

ボルドーのニットを揺らし、歩くだけで大人の色気を「ブッピガン!!」と全方位に乱射しまくっている氷室涼香。

白戸彩直伝の絶品レシピで俺の胃と心を完全に掴みにかかっている、良妻賢母オーラ全開の白石ほのか。

(なっ……!!)

昨日、シュガーさんから「3人全員がお前にゾッコンラブだ」と聞かされたフィルターを通して見る3人は……あまりにも、あまりにも艶っぽすぎた!!

(おっ……俺の鼻の下が……!! 再び13キロにまで伸びていくのを感じるーーーーッ!!)

俺がデレデレと鼻の下を伸ばして悶絶していると――不意に後ろから、ムスッとした顔の神崎葵と、ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべたシュガーさんが忍び寄ってきた。

「オメェ……完全に調子に乗ってるだろ……」――ジト目で睨みつけてくる葵。

「ほらぁ〜……見てよ葵ちゃん、あの顔完全に来てるでしょ〜? シュガーちゃんの言葉でようやく自分がどれだけ愛されてるか分かったのねぇ〜。流石は朴念仁……♪」――楽しそうなシュガーさん。

「なっ……葵課長……シュガーさん……っ! 違います、俺はただ資料を――」

「オメェ……マジで春には異動とかもあるんだからな!! 春までに男を見せろよこの野郎!!」

葵が力強く俺の肩を叩く。シュガーさんも真面目な顔で頷いた。

「特にまひろちゃんは、登録販売者の資格も取ったからねぇ〜。店舗管轄での管理者(副店長)の話も出ているのよ。それにゆくゆくは、私と同じ『ビューティースーパーバイザー』になってもらわないとねぇ〜♪」

(……確かに。登録販売者を取れば、店舗マネジメントとしての副店長の打診は当然出やすい。コスメ強化店舗で修行を積めば、メイクアップコンテスト優勝も夢ではないはずだ。コンテストで優勝し、全社を統括するビューティースーパーバイザーになれば……誰しもが羨むスーパーレディだ……!)

「それに、ほのかちゃんだって新人最優秀賞を取ったんだから、薬局長の話がいつ出てもおかしくないわ〜。すぐ副薬局長への抜擢もあり得るわね。癌分野に明るい『一ノ瀬薬局長』なんかとタッグを組んだら、大変素晴らしいキャリアになるわ♪」

(なるほど……癌専門医療と地域医療の架け橋か。一ノ瀬の元で鍛えられれば、ほのかちゃんの成長スピードは計り知れない……!)

「そして涼香さんはどうなると思う〜? エリア長への昇進かしら……? いや待てよぉ〜? もし……『拓海君の奥さん』になったらぁ〜……?」

「!!??????」

シュガーさんのその一言で、俺の脳内回路がショートした!

(お、俺の奥さん……!? あ、あの超絶美人の涼香さんが……俺の妻に……!? 毎日家に帰ったらボルドーのニットを着た涼香さんが『おかえりなさい、拓海さん♡』って微笑んで出迎えてくれて……朝は一緒に起きて……っっっ!!)

「おいおいおいおい……!! すっげぇスケベな顔してんぞコイツ!!」――葵がドン引きして指をさす!

「あぁ〜……まひろちゃん、ほのかちゃん……頑張ってぇ〜……♪ ドスケベ薬局長を見る拓海君の目が、完全に『獲物を狙う獣』の目になってるわぁ〜♡」――シュガーさんがくすくす笑う!

「なっ……! い、イベントの宣伝活動、頑張ってきますーーーーッ!!」

限界を迎えた俺は、真っ赤な顔でポケットから『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出す暇すらなく、宣伝用のティッシュとチラシを抱えてダッシュで店舗の外へ逃げ出した!

「あのスケベ……宣伝を口実に逃げやがったわね……」

「フフッ……ちょっと遅い青春ねぇ〜♪ 頑張りなさいよ、拓海君……♪」

秋の澄んだ空の下、チラシを配りながらも激痛を訴える自らの胃袋を押さえる俺――陣内拓海。

ヒロインたちの輝かしい未来と、自分自身の恋の決着。

頭と気持ちの整理がつくには、まだまだかなりの時間がかかりそうであった……!

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