生駒遼の休日偵察と、真っ直ぐな感謝
プライドを捨てて大きく成長した慶旺卒の御曹司・生駒遼が、休日に内緒で白鳥駅前店へ乗り込んできた! 結衣へのピュアすぎるラブアタックと緊張の血圧爆上がり、そして陣内・涼香・ほのかへの真っ直ぐで誠実なお礼と意見交換。成長した若者の姿に胸を打たれ、珍しく自ら胃薬を仕舞う陣内の爽快なストーリーをお楽しみください!
僕――生駒遼。
今日は会社から休日を頂いている。
もちろん、この訪問は結衣ちゃんには完全に内緒だ……!
彼女が働く『ドラッグラベール白鳥駅前店』がどのような店舗展開をしているのかをじっくり偵察すること、そして何より――可憐な白衣姿の結衣ちゃんの姿をこの目に焼き付けておきたいからだっ!
「ただ結衣ちゃんを見たいだけだろ」と人は言うかもしれない。
その通りだよ!! 否定はしない!!
だが、敗北を経験した僕には純粋な勉強の意欲もあるのだ!
それと……あの1点差勝負を繰り広げた白石ほのか、超絶エリートの氷室涼香、そして彼女たちが全幅の信頼を寄せる陣内拓海エリア長にも、改めて顔を合わせておきたかった。
「たのもーーーっ!!」
仕立てのいいピカピカの高級スーツに身を包み、堂々と店舗へ乗り込む僕!
待合室にいる患者たちが一斉に僕を見つめてくる。
ふふっ、無理もない……この僕の圧倒的な魅力は社内一! 慶旺卒の御曹司にして、できんことなど何一つない男なのだからーーーっ!!
(はっ……しまった! 忍び込んで勉強するはずだったのに、目立ってどうするんだ自分……!!)
受付カウンターで突然現れた僕の姿を認めた結衣ちゃんは、一瞬で顔を真っ赤にして脱力し、下を向いてしまった。
(ちょっ……何やってんのよぉ……遼君……っ)
ツカツカと堂々たる足取りで血圧測定ブースへ歩み寄る僕。
「結衣ちゃん……白衣姿も本当に可憐だね……! ぜひ僕の血圧を測ってくれたまえ!」
「うん……どうしたの、今日は急に……?」
「フッ……売り場の勉強と、白石ほのか、氷室涼香、そして陣内拓海エリア長に直接お礼を言いに来たのだ!!」
「うん……生駒君、あの研修で本当の自分に目覚めたんだもんね!」
「そうだ! だから結衣ちゃん……好きだ!!」
「っ……!?」
ピ、ピ、ピー♪
腕帯が締まり、測定機から弾き出された僕の血圧数値は――『170 / 124』!!
「ちょっ……! 壊れているのではないか、この測定機はっ!? 結衣ちゃん!」
「も〜〜っ! 緊張しすぎだよ、遼君……! でもね、遼君のこと、お店のみんなもすごく尊敬してるよ? それに、自分の負けを認めてそんな風に素直にお礼を言いに来られる遼君……すっごくカッコいいと思う。……好きっ♪」
「ゆっ……結衣ちゃんっっ……!!」
不意打ちの「好きっ♪」の破壊力! 緊張のドギマギと結衣ちゃんの圧倒的な可愛さに、僕の頭の中が甘くぐちゃぐちゃに溶けていくのを感じていると――。
「待っててね、今みんなを呼んでくるから♪」
結衣ちゃんが奥へ走り、間もなくして陣内エリア長、氷室薬局長、そして白石ほのかの3人がやってきた。
「わざわざ休みに見に来てくれたんだね。存分に勉強していってくれ、生駒君! よければ君の店舗での取り組みや意見も教えてほしい」
真っ直ぐな瞳で僕を迎え入れてくれる陣内拓海……。
さっ……流石だ……! 白石ほのかが惚れ抜いた男だけのことはある……! 僕まで男として惚れてしまいそうだ(もちろん変な意味ではなくてだぞ!)!
「フフッ……白石さんがあの症例報告書で最高の成果を出せたのも、切磋琢磨してくれた貴方という素晴らしいライバルがいたおかげよ。本当に素晴らしいわね、生駒君」
ボルドーのニットを着こなす氷室涼香もニッコリと微笑む。こっちも超絶美人だ……まぁ、僕の結衣ちゃんには一歩及ばんがな!!
「さっ……最初は生意気で嫌なヤツだなって思ってたけど、確かに貴方が本気でぶつかってきてくれなかったら、私もあそこまでのレポートは書けなかった。また現場で一緒に頑張りましょう、生駒君!」
白石ほのかが爽やかに手を差し伸べてくる。
フフッ……流石だな! またいつでも存分にかかってくるがいい、白石ほのか!
僕はハッと胸を張り、姿勢を正した。
「きょっ……今日は……礼を言いに来たのだっ!!」
「「「……!」」」
「確かに僕は自他共に認める優秀な男! 常に勝ち続けてきた! だが……ただそれだけだったのだ! 挫折を知り、諸君という高い壁に出会わなければ、僕はただ優秀なだけのつまらない男で終わっていた……! そっ……その……本当に、ありがとう!!」
フッ……言ってやったぞ! 自分のプライドを乗り越えて、感謝を口にしてやったぞ、白石ほのか! そして……言えたぞ、結衣ちゃん!!
ちらりと結衣ちゃんを見ると、どこか誇らしげで妖艶な笑顔を浮かべて僕を見つめてくれていた。
その後、有意義な店舗運営の意見交換を終え、僕は大満足の晴れやかな心地で白鳥駅前店を後にするのだった。
【店舗事務所・陣内拓海】
「……ふぅ。生駒君、本当に良い顔になったなぁ」
去っていく生駒君の後ろ姿を遠目で見送りながら、俺――陣内拓海は、深く温かな感銘に包まれていた。
かつては高慢で嫌味なエリート御曹司だった彼が、負けを糧にして成長し、ライバルや周囲への感謝を真っ直ぐに伝えにやってくる。若く前途ある薬剤師の眩しいほどの成長劇に、胸の奥が熱く焦がされるようだった。
「拓海さん……♪ 生駒君の成長、本当に凄いですわね」
「はい! 私も負けていられませんっ!」
涼香さんとほのかちゃんが、笑顔で俺の顔を覗き込んでくる。
(……ふふっ。素晴らしい仲間と、素晴らしいライバル。胸がいっぱいで……胃の痛みなんて欠片も存在しないな)
俺はポケットの中に伸ばしていた手をそっと引き抜き、持っていた『ラベール胃腸薬プレミアム』を静かにポケットの奥へと仕舞い直すのだった。
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