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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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涼香の覚醒と、深夜の悶々LINE

これまで勉強一筋でアイドルとは無縁の人生を送ってきた氷室涼香が、陣内の本気MiLKパフォーマンスによって「アイドルの尊さ」と「拓海の沼」に完全開眼! 楽曲の全買い、実写ドラマのキスシーンと前回のキス体験の反芻、そして深夜の二階堂先輩への悶々LINEとゾルピデム(睡眠薬)を欲しがる乙女(&ドスケベ)パニックを描く爆笑&胸キュン回をお楽しみください!

自室のベッドに飛び込んだ氷室涼香は、真っ赤になった両頬を両手で包み込みながら、天井を見つめて激しく身悶えていた。

(わっ……私はとんでもないミスをしていたんだわ……!! じっ……人生の半分以上を損していたのは間違いないわ……! なんで今まで勉強ばかりして、アイドルの尊さに気づかなかったのかしら……っ!?)

これまで薬学の専門書と症例報告書ばかりを読み漁り、芸能界やアイドル文化とは無縁の人生を歩んできた涼香。しかし、今日のカラオケで陣内拓海が見せた、あの完璧で超絶格好良いMiLKのパフォーマンスによって、彼女の価値観は天変地異のごとくひっくり返っていた。

(い、いや待ちなさい涼香……! 拓海さんがあれほどまでにMiLKに力を入れて歌い踊っていたということは……彼と同じ曲を完璧に網羅すれば、私には他のヒロインたちに対して圧倒的なアドバンテージができるということじゃないの……!?)

ハッと目を見開いた涼香は、枕元のスマートフォンを掴むと、指先を高速で動かしてMiLKの全楽曲とライブ映像を速やかに全買い(大人買い)をブチ決めた!

早速、プレイリストに入った『ラブ過ぎて滅/ 超絶愛してる)』を再生してみる。

「う……上手い……上手いわ拓海さん……! 音源の本家様も素晴らしいけれど、今日の拓海さんの生歌もほとんど本人レベルじゃないのーーーっ!!」

続いて購入したライブ映像を再生し、画面の中のキレキレなダンスとウインクを見つめる。

「うっ……格好良い……っ! 拓海さぁぁぁん……♡」

すっかり拓海沼の深みにハマった涼香は、曲の音量を小さく下げると、大好きな女優・山元美月が出演している録画ドラマを再生し始めた。

画面の中で美月ちゃんがロマンチックなキスシーンを迎える。

(ま……またキスシーンだわ……っ! キスといえば……っ!)

涼香の脳裏に、以前のあの甘く激しい出来事が鮮烈に蘇ってきた。

白衣の上からでも分かる彼の筋骨隆々な男らしい体……。だが、決して嫌な油臭さなどなく、清涼感のある石鹸と微かな胃薬の香りが漂う彼。美月ちゃんの等身大パネルを後部座席に抱えて我が家へやってきた、あの愛おしいムキムキボディ。そして今日の、キレッキレの『ラブ過ぎて滅』!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ♡♡♡」

思考が暴走した涼香は、半狂乱になってベッドの枕をギュッと抱きしめ、何度も何度も枕に誓いのキスを浴びせた!

ふと我に返ると、部屋の中にどこか甘い芳香が漂っている気がする。

(なんだか……すごく甘いニオイがするわ……! もしかして私の体内から、拓海さんに恋焦がれるあまり何らかの恋愛ホルモン的なフェロモンが分泌されているのかしら……!?)

ハッ……と我に返り、両手で顔を覆う涼香。

(私ったら……! 一体いつからこんなスケベな女になってしまったのかしらーーーっ!!)

このままでは興奮で心臓が破裂して倒れてしまう。涼香は震える手で、信頼する二階堂先輩へLINEを打ち始めた。

『【送信】二階堂先輩! 心臓のドキドキが止まらなくて眠れないんですの! 涼香ちゃん、今日ばっかりはどうしてもゾルピデム(超短時間作用型睡眠導入剤)が欲しいですわ!! 明日、拓海さんの前でヨダレ臭くならないように何かを確保しないと……っ!!』

画面に表示される『既読』の文字と、深夜にもかかわらず返ってきた二階堂先輩からの『涼香……あんたついに重症ね。私医者じゃないのよ?深呼吸して寝ろ』という呆れ顔のスタンプ。

自分の劇的な変化とあふれ出るスケベ心にビビり散らかしながら、涼香の悶々とした甘い夜は更けていくのだった。

【翌朝・白鳥駅前店 事務所】

「……ふぁ……おはようございます、拓海さん……♡」

翌朝、少しだけ目元を赤くした涼香さんが、どこかトロンとした甘い瞳で事務所に入ってきた。ボルドーのニットからは、心なしかいつも以上の妖艶なフェロモンが漂っている気がする。

(っ……!? な、なんだか今日の涼香さん、いつも以上に距離が近くて色気がダダ漏れになってないか……!?)

俺――陣内拓海は、彼女の甘い視線を直撃で喰らい、朝一番から激痛を訴え始める胃袋を押さえつける。

(あ、あかん……! MiLKダンスの余波が、涼香さんをさらに覚醒させてしまったようだーーーッ!!)

俺は冷や汗を拭いながら、ポケットから取り出した『ラベール胃腸薬プレミアム』を素早く口に流し込み、今日も波乱に満ちたドラッグストアの1日へと立ち向かうのだった。

「少しでも『面白かった!』『続きが気になる!』と思ってくださったら、下部の【★で評価する】や【ブックマーク】を押していただけると執筆の大きな励みになります!」

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