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魔女の足跡〜千年前の黒歴史を消すために旅にでます〜  作者: はこぶね
英雄龍ヴァルガス編

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9/23

不器用なりに頑張った

「あはははははー!」


 オトの笑い声が、アファルの頂に響いた。


 赤と青の光が薄れ、過ぎ去った景色が消えていく。


「なにあれ。龍たち、案外器用に暮らしてるじゃない!」


「器用……でしたか?」


 ヴァルガスが少し複雑そうな顔をする。


「畑もやってたし、魚も獲ってたじゃん。人化すればもっと楽だったのに」


「あの頃は、まだ皆、人化に慣れていなかったのですよ」


「そうなの?」


「龍の身体で生きてきた者が、突然あの小さな身体になるのです。力加減も分からず、歩くことすら覚束ない者もおりました」


「そっちのほうが不器用だったんだ」


「ええ。畑を爪で掘るほうが、まだましでしたな」


 オトがまた笑う。


 ナナはそんな二人を横目に、先ほどまで景色が映っていた幹を静かに撫でた。


「……みんなを受け入れてくださって、ありがとうございます」


 ヴァルガスがナナを見る。


「約束しましたからな」


「それでも、です」


 ナナは微笑んだ。


「叔母も、元気そうでしたし」


「叔母?」


 オトが首を傾げる。


「最初にヴァルガスさんと話していた方です。私がヒトだった頃から、一緒に旅をしていたんですよ」


「へえー。あの人なんだ」


「ええ。龍と混ざった魔人ですから、ずいぶん長生きになったようですね」


 ナナは眼下へ視線を落とした。


 千年前には何もなかった場所。

 今ではアファルを中心に、十本の塔と巨大な街が広がっている。通りには角を持つ者も、獣の耳を持つ者も、鱗を持つ者もいる。


「それにしても……増えましたね」


 ナナがぽつりと言う。


「なにが?」


「魔人です」


 オトも街を見下ろした。


「ほんとだ。いっぱいだね」


「最初は、あれだけしかいなかったのに」


 ナナの目が細くなる。


「もう、誰が誰の子孫なのか分からないくらいです」


「ナナの仲間の子孫だらけだったりして」


「それも、あながち間違いではないかもしれませんね」


 家がある。

 道がある。

 橋がある。

 畑だった場所には建物が並び、その向こうまで街が続いている。


「すごいねえ」


 オトが素直に呟く。


「みんなで作ったんだ」


「ええ」


 ナナが頷いた。

 そして、再び猫の足跡へ手を伸ばす。


「では――」


「次は?」


 オトがすぐに覗き込んだ。

 ナナは少し考えてから、ヴァルガスを見る。


「次の約束を見てみましょうか」

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