最初の道
この国最初の道を作ろうとしていた。
ノワールとブランの姿が見えなくなってからしばらくして、ヴァルガスは更地の端に転がっていた大岩へ両腕をかけた。
「よっ、と」
地面から引き剥がし、そのまま脇へ放り投げる。山ひとつが消えた土地には、大小さまざまな岩や折れた木がまだいくらでも残っていた。
近くにいた龍が、不思議そうにその様子を見る。
「何してんだ?」
「見りゃ分かるだろ。邪魔なのどかしてんだよ」
「なんで?」
「道にする」
そう答えて、ヴァルガスは次の岩へ向かった。
龍は辺りを見回す。小さなアファルの周りには、まだ家と呼べるものすらほとんどない。まして、ヴァルガスが石をどかしている先には何もなかった。
「道って……どこに行くんだ?」
「知らねえ」
「知らねえの?」
「これから誰か来るんだろ」
ヴァルガスは当然のように答えた。
「だったら、来れるようにしといた方がいいじゃねえか」
龍はしばらく黙っていたが、やがて隣にある岩へ前脚をかけた。
「こっちもどかすぞ」
「頼む」
二頭で岩を運び、木を退け、荒れた地面を踏み固めていく。
それを見た別の龍も加わった。やがて、この土地へ移り住んできた魔人たちまで道具を持ってやって来て、曲がっていた場所を削り、窪みには土を入れた。
どこへ続くのか、まだ誰も知らない。
それでも道だけは、少しずつ遠くへ伸びていった。
作業の途中でヴァルガスは顔を上げた。
遠くには、さっき別れた二人が歩いていった方角がある。
振り返れば、この土地の真ん中で小さなアファルが風に揺れていた。
「……千年か」
ヴァルガスは呟いてから、足元に残っていた石を蹴り出した。
「まあ、やるだけやってみるか」
そうしてこの土地に、最初の道ができた。




