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魔女の足跡〜千年前の黒歴史を消すために旅にでます〜  作者: はこぶね
英雄龍ヴァルガス編

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18/23

時限式の悪戯は嫌がらせだ

山が吹き飛び、大きな空白になった場所。


 その真ん中に、小さなアファルが植えられている。


 まだ細い幹には、ついさっき残した赤と青の猫の足跡が淡く光っていた。千年後、もう一度ここへ戻ってくるための約束だ。


 ノワールはアファルの前にしゃがみ込み、足跡を眺めながら頬を緩めた。


「千年後かあ」


 今は何もないけれど、この木は大きくなる。人も増える。ヴァルガスたちも、きっと今とは全然違っている。


「どんな街になってるかな。楽しみだなあ」


 しばらく想像を膨らませていたノワールは、ふと何かを思い出したように顔を上げた。


「……あ」


 ブランの姿がないことを確かめると、ノワールは悪戯を思いついた子どものように笑った。


「最後だけ、ちょっと特別にしよ」


 ヴァルガスを英雄にするためのアヴァロンは、もう完成している。けれど千年も経てば、ヴァルガスだって今よりずっと強くなっているはず。


「普通に出したら、一発で終わっちゃうかも」


 それでは、せっかく戻ってきても面白くない。


 ノワールは指先に黒い光を灯し、アヴァロンへ繋いだ術式へこっそり手を加えていく。


 千年目だけ、アヴァロンを除いて、その場にいる魔力を持つ者たちの力を封じる。龍も魔人も、まとめてだ。


「これなら、いつも通りにはいかないでしょ」


 楽しそうに笑いながら、さらに条件を書き足す。


 最後のアヴァロンは、倒さなくてもいい。そこにいる者たちが逃げずに立ち向かい、一つになって勇気を示せば、それで終わり。


「千年後なら、いろんな人がいるだろうし」


 その頃に誰がいるのかなんて、ノワールには分からない。龍かもしれないし、魔人かもしれない。ヒトだっているかもしれない。


「そのときのみんなで、なんとかしてね」


 黒い光が弾け、術式の奥へ溶けていった。


 ノワールは出来栄えを確かめるように何度か頷くと、満足そうにアファルへ振り返った。


「よし!」


 小さな木が、風に揺れている。


 ノワールは幹に残した猫の足跡へ手を振った。


「じゃあね、アファル。また千年後!」


 そう言って、楽しそうにその場をあとにした。

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