シックス・タロンズ・ライジング
教室は静まり返り、黒板の光が一人ひとりの瞳に映っていた。
「えっ!?」
葵は息を呑み、目を大きく見開いて画面を見つめた。彼女の名前は他の候補者よりもはるかに上の、一番上に表示され、ほぼクラス全員の票を獲得していた。
「え、えっ、何!?」彼女は驚きを顔いっぱいに浮かべ、飛び上がった。「どうして、どうして私がトップ候補なの!?」
「いいことじゃない?」隣にいた芽衣が、いつもの穏やかな笑顔を浮かべながら優しく言った。
「うん!」綾音も満面の笑みを浮かべた。「ほとんど全員があなたに投票したのよ。私たちのクラスも、他のクラスも。私もね。」
「でも…!」葵は慌てて振り返り、教室を見回した。「こんなこと、全然知らなかった!」
「大丈夫よ。」芽衣は優しく笑った。「心配することないわ。私たちが応援してるから。」
「えっ?」葵はボードに目を戻し、凍りついた。自分の名前のすぐ下に、綾音と芽衣の二人の名前があった。上位3名だ。
葵はくるりと振り返り、二人に向き直った。「そんなこと関係ない!私には無理よ、絶対に!」
「できるよ~!」陸也が口を挟んだ。「ライトもそう思ってるよ。君に投票したんだから。」
「ちょ、ちょっと!黙れ!」ライトは怒鳴り、背を向けた。
葵は呆然として彼を見つめた。「ライト…あなた…」彼女はためらい、唾を飲み込んだ。「どうして私を選んだの?もっと強くなりたいって言ってたじゃない。兄を倒せるくらい強くなりたいって。今がチャンスじゃないの?」
「ちっ。」ライトは舌打ちをした。「俺は俺のやり方で行くさ、青髪。大げさにするな。」
「そうだね」1年4組の誰かがにこやかに微笑みながら付け加えた。 「葵、君は絶対にこの賞にふさわしいよ。だって、君に投票しない人なんていないでしょ?」
「そうだね」別の声が加わった。「入学試験の頃から、君はリーダーシップを発揮してきたじゃないか」
刹那はニヤリと笑った。「第一段階では君に助けられたしね」
「その後も、みんなを救ったじゃないか」
「噂では、黒氷と沙夜奈の確執を止めたとも言われているよ。すごいね!」
葵の頬は赤くなり、声が重なり合う中、視線をさまよわせた。「私…ほとんど知らない人ばかりなのに…」彼女の声は震えた。「どうして…?」
彼女は視線を落とし、胸が締め付けられた。「私はここの出身じゃないし。地元の人を推薦するべきだったのに。私は特別な人間じゃない。ただ、この街に溶け込もうとしている普通の女の子よ」
彼女の口から出た言葉は、重く感じられた。
「そんなことないよ、葵。」
彼女は顔を上げた。ルーカスがそこに立っていた。黒い瞳は揺るぎない。
「君は本当にすごいよ」彼は明るい笑顔で言った。「君がそう思っていなくても、それは間違いだ。」
彼が続けると、彼女は息を呑んだ。「僕が孤独を感じていた時…希望がないと思っていた時、君が現れてくれた。僕を支えてくれた。励ましてくれた。」彼は優しく微笑んだ。「クラスが違っていたのに、僕の彼女を助けるのを手伝ってくれたんだ。」
「それに、僕たちが君を選んだのは、君が強いからだけじゃない。」彼女のクラスの誰かが付け加えた。「君を選んだのは、君が優しいからだ。」
「君は自分のことより他人を優先する。物事を深く考える。」タクトが口を挟んだ。
「それに、君にはそれ以上のものがある。」セツナが付け加えた。
「だから僕たちはみんな賛成したんだ。」別の声が言った。「君は六本爪の一員になる資格がある。」
「私たちもいるよ」と綾音は優しく言った。
隣にいた芽衣は微笑みながら頷いた。「あなたは一人じゃないわ」
葵の胸に温かいものがこみ上げ、周りの顔を見渡すと喉が締め付けられた。
陸也は目をぎゅっと閉じ、誇らしげな笑みを浮かべた。美鶴と光は何も言わずに親指を立てた。和樹は自然な笑顔を浮かべ、さやかは抑えきれない興奮で拳を握りしめ、静香は優しく安心させるような微笑みで葵の視線を受け止めた。
そして、葵の視線はライトと交わった。彼はほんの少しの間、葵の視線を受け止め、口元に微かな笑みを浮かべた。
葵はゆっくりと息を吸い込み、そして吐き出した。
綾音は立ち上がり、葵の肩に手を置いた。
「それからね」メイは席からくすくす笑った。「…忘れないでね、私も地元民じゃないんだから、バカ」ニヤリと笑って付け加えた。「引っ越してきたのはたった2年前よ」
葵は瞬きをした。
「じゃあ」明日香は手を一度叩いて言った。「候補者たちが賛成しているなら…」
「待って」
教室は静まり返った。葵は顔を上げ、両手を握りしめ、2年生たちの方を向いた。
「私がやるなら」彼女は静かに言った。「風早ライトにも席を譲ってほしい」
教室中にどよめきが広がり、ささやき声が続いた。
ライトは飛び上がった。「ちょ、おい、青髪!それは…!」
「あなたにはその資格があると思う」葵は彼の方を向き、揺るぎない目で言った。 「あなたはよく頑張ったわ。私が必要としているものより、あなたが必要としているものを奪うなんてできない。」
ライトは拳を握りしめ、顎をきつく引き締めた。「何も奪わせない。言っただろう――」
「でも、それ以上に」アオイは優しく遮り、一歩近づいた。「あなたには私の傍で戦ってほしいの。」
部屋は静まり返った。
「あなたは私にインスピレーションを与えてくれる」彼女はそう言って、ライトに手を差し出した。「あなたは私を前に進ませてくれる。私には支えが必要なの――私を立ち止まらせない人が。」
彼女の唇には、いつもの笑みが浮かんだ。「それに、ライバルも必要なの。私をもっと強くしたいと思わせてくれる人が。」
ライトは彼女の手を見つめ、視界が少しぼやけてきた。
そして――
「すみません」メイは手を上げた。
アスカは振り向いた。「はい?」
「候補者が自分の席をすぐ下の人に譲りたい場合、それは許されるのでしょうか?」メイは落ち着いた口調で尋ねた。
アスカは肩をすくめた。「ええ、本人が望むなら」
メイは微笑み、茶髪の少女を指差した。「では、私は風早ライトに席を譲ります」
教室は騒然となった。
「えっ!?」ライトは彼女の方を振り向いた。「そ、そんなことできない!」
「どうやら許されるみたい」メイは穏やかに答えた。
「そんなの絶対許されない!でっち上げだろ!」ライトは抗議し、二年生を指差した。
アスカはため息をついた。「本当よ。私も同じ方法で今の席を手に入れたの」彼女は画面を指差した。「それに、彼は4位よ、あなたのすぐ下よ。」
メイは目を閉じ、微笑んだ。「正直言って、六爪団の仕事量にはあまり興味がないの。」
「仕事量を減らしたいだけだろ」とライトは呟いた。
メイはくすっと笑った。「どういう意味か分からないわ。」
ミツルは頬を赤らめ、静かに微笑んだ。彼は真実を知っていた――彼女がアオイのためにやっているのだ。
アスカは腕を組んだ。「それで、ライト。引き受ける?」
ライトは視線を落とし、頬を赤らめた。仲間たちは頷き、励ますように笑った。
それから彼はアオイを見上げた。彼女は自信に満ちた笑みを浮かべ、彼を見つめた。
彼は手を伸ばし、空中で彼女の手を握り、まるで腕相撲でもするかのようにしっかりと握った。
「もちろん。」
教室は歓声に包まれた。
綾音はすぐに二人に飛びつき、横から抱きしめた。「やったー!これで私たち3人だね!」
葵とライトは軽く顔を見合わせてニヤリと笑った。
「うん」と葵が言った。
「ふむ」とライトが頷いた。
明日香は微笑んだ。「じゃあ決まりね。桜庭葵、白川綾音、風早ライト。君たちは1年3組と1年4組の代表よ。さよなき高校の六本爪へようこそ!」
周囲から歓声が上がった。
「3人ともすごいね!」と光は笑いながら拳を突き上げた。
「私たちがついていくわ!」とさやかは興奮して飛び跳ねながら付け加えた。
「頑張ってね」と静香は静かに、しかし真摯な笑顔で言った。
葵は頷き、二人に微笑み返した。「頑張ります」
美鶴は一歩前に出て、ライトと拳を合わせた。「おめでとう、相棒。」
「ありがとう」ライトは目をそらしながら呟いた。
「できる限りのことはするよ」陸也は眼鏡を直し、その目に決意を宿らせながらきっぱりと言った。
美鶴はいたずらっぽい笑みを浮かべ、ライトに身を寄せた。「でも正直言って?君も喜んでるでしょ。トップに近づいたからだけじゃなくて、それに――」
ドスン。
美鶴は腹に拳を叩きつけられ、床に崩れ落ちた。
ライトは鋭く息を吐き、こめかみに痣が脈打つようにして手を引っ込めた。
「うるせえ」彼は言い放った。
「…なんて馬鹿なんだ」陸也は首を振りながら呟いた。
「美鶴、君は本当に懲りないね」和樹はため息をついた。
さやかは吹き出し、光は苦笑いしながら頭を掻くしかなかった。
それからライトは拳を握りしめ、芽衣の方を向いた。「おい…」
芽衣は彼を見た。
「ありがとう。本当に」
芽衣は微笑み、彼の頭を撫でた。「どういたしまして、影少年」
「ちょ、おい!」彼は頬を赤らめながら芽衣の手を払い除けた。「…そう呼んでいいのは葵だけだ」
美鶴はうめき声を上げながら立ち上がり、残っていた痛みがゆっくりと消えていくのを感じながら片目をぎゅっと閉じた。
「ちっ…まだ冗談が通じないのか?」
「お前の冗談はダメだ」ライトは言い返し、美鶴は低い声で笑った。
「葵。綾音。ライト」明日香の声が彼らの注意を引いた。彼女が落ち着いた口調ながらも毅然とした口調で続けると、三人は彼女の方を向いた。「準備して。訓練場に行って他のメンバーと合流するわよ。」
綾音の目はたちまち輝いた。「えっ、六爪の他の候補者たちも?!」
由良は頷いた。「そうよ。五尾の残りのメンバーと、私たちのトップ4もね。」
「わー、やったー!」綾音は拳を突き上げた。
「頑張ってね!」陸也は明るく手を振った。
「楽しんでね」芽衣は優しく微笑みながら付け加えた。
葵は小さく頷いた。「ありがとう。」
ライトは顔をしかめた。「誰が楽しむって言ったんだ?」
綾音はすぐにライトの腕に自分の腕を絡めた。「さあ!みんなに会いに行きましょう!」彼女は葵の腕も掴み、二人をドアの方へ引っ張っていった。
「ちょ、ちょっと、引っ張らないでよ!」ライトは抗議した。
メイたちは二人が去っていくのを見送り、口元に笑みを浮かべた。
「二人ともよかったね。本当に。」ヒカルは小さくため息をついた。
「うん。」カズキは頷いた。
サヤカはメイに寄り添い、軽く肘でつついた。「ライトに場所を譲るなんて、なかなかいい感じだったわね。」彼女はにっこり笑った。「すごくおしゃれ。」
メイは微笑んだ。「ありがとう。」
ミツルは横からメイを見守り、その表情は和らぎ、瞳には温かさが宿った。
…………
「あぁ~!」綾音の瞳は星のように輝いた。「すごい~!」
3人は訓練体育館の中に立っていた。そこにはすでに数人の生徒と数人の若い教師が集まり、談笑していた。期待に満ちた空気が漂っていた。
葵とライトは視線を交わし、部屋を見渡した。
「ほとんどが2年生…」葵が呟いた。
「ああ」ライトは頷き、片手をポケットに突っ込んだ。
綾音は拳を握りしめ、興奮を抑えきれない様子で2人のほうへ振り返った。
「ここにいられて本当に光栄です~!ナイチンゲール最強のコア戦闘部隊の候補生になれたんです…」彼女は微笑みながら、声が震えた。「私たち、六爪の一員になったんです。」
彼女はゆっくりと手を下ろし、視線を床に落とした。瞳はキラキラと輝いていた。 「私…本当に嬉しい。授業中はそんなに嬉しそうに見えなかったかもしれないけど…」
彼女は言葉を詰まらせ、拳を握りしめた。「少なくとも、これで他の人たちと…あなたたちと…もっと親しくなれると思う。」彼女は少し躊躇してから、静かに付け加えた。「それに、妹とも。」
葵とライトは驚いて瞬きをした。
「別に仲が悪いって言ってるわけじゃないの」と綾音は慌てて続けた。「ただ…これで、妹と力の面でもっと近づける気がするの…」
温かい手が彼女の頭にそっと置かれた。綾音は動きを止め、それから顔を上げた。
葵は優しく微笑み、ラベンダー色の瞳を安心させるように輝かせた。「そんなこと気にしなくていいよ。わかってるから。」
葵は綾音の髪を軽く撫でた。
「ああ」とライトはニヤリと笑って付け加えた。「…どうやら俺たちも同じことを考えてるみたいだな。」
綾音の瞳はキラキラと輝き、満面の笑みを浮かべた。葵が手を離すと、綾音は目を閉じた。
「やあ~!」明るく元気な声が、その静寂を破った。
三人は振り返った。
「君たち、1年3組だよね?!」少年は満面の笑みを浮かべた。肩まで伸びたアッシュブラウンの髪は、少しウェーブがかかっていて、襟元に触れていた。温かみのあるヘーゼル色の瞳は、興奮でキラキラと輝いていた。彼は薄手の白黒ストライプのシャツの上にサヨナキのジャケットを着て、黒のジーンズとコンバットブーツを履いていた。
葵は口を開いた。 「あ、えっと…」
「うわ~!」少年は彼女を見た瞬間、目を輝かせた。彼は一歩前に出て、彼女の手を勢いよく握った。
「君!桜庭あおいちゃんだよね~?!」彼は彼女の手を力強く握った。「大ファンなんです!学校中が君の話をしてるんですよ!初日からずっと、君はすごいと思ってました。めちゃくちゃ強いし、近くで見るともっと可愛い!」
あおいの顔は真っ赤になった。「え、えっと…?!」
何が起こっているのか理解する間もなく、彼女の手を握っていた少年の手が突然緩んだ。
「おい。」
ライトが二人の間に割って入った。無表情で鋭い視線を少年に向け、片手でさりげなく、しかししっかりとあおいの手首を掴んで引き戻した。
「握手か、それとも腕を引きちぎるつもりか?」彼は冷たく言った。
少年は一瞬、呆然として瞬きをした。 「えっ…?!ただ…」
「彼女は展示品じゃない」ライトは低い声で続けた。「下がれ」
葵は彼の後ろで身を硬くした。「あ、ライト、大丈夫…」
「いや、大丈夫じゃない」彼は彼女を見もせずに言い返した。
綾音はほんの一瞬その光景を見つめ、それからニヤリと笑った。
「おやおや?」彼女は身を乗り出し、いたずらっぽい目で彼女を守ろうとした。「何これ~?ライト、守ろうとしてるの?」
ライトは舌打ちをした。「黙れ」
綾音は芝居がかった仕草で両手を合わせた。「わあ~!踏み込んで、彼女を引き戻して、怖い声まで出して~!」彼女は笑った。「何も知らなかったら、嫉妬してるって思っちゃうわ~!」
「してない」ライトは耳をほんのり赤らめながら言い放った。
葵は彼の後ろから顔をのぞかせ、まだ顔を赤らめていた。「そ、そんなことしなくてもいいのに…」
綾音は大きく息を呑んだ。「そんなことしなくてもいいの?彼はあなたを助けてくれたじゃない!」彼女はライトを指差した。「『おい』なんて言ったわよ!すごいじゃない!」
ライトは彼女を睨みつけた。「これ以上喋ったら、ここに置いていくぞ。」
「それだけの価値はあるわ~!」綾音は明るく言った。
少年は後頭部を掻きながら、ぎこちなく笑った。「す、ごめん!つい興奮しちゃった。驚かせるつもりはなかったんだ。」彼は葵に軽く頭を下げた。「ただ…すごく感心したんだ。」
葵は少し安心した。「い、いえ…」
ライトは小さくため息をつき、まだ少しだけ彼女に近すぎる距離に立っていた。
綾音は身を乗り出し、皆に聞こえるくらいの声で囁いた。「ほらね? 楽しくないって言っても、もう番犬みたいに振る舞ってるでしょ~!」
「綾音!」
綾音は全く反省の色を見せず、くすくす笑った。
「恋次郎のことはごめんね。つい夢中になってしまうの。」その声は穏やかで、すぐに皆の注意を引いた。
三人が振り返ると、別の少年が近づいてくるのが見えた。彼は真っ直ぐで、深い森のような緑がかった黒髪を襟元に軽く触れるくらいの長さで、きれいにサイドパートに分けている。柔らかな苔色の瞳には落ち着いた表情が映り、物腰はリラックスしていながらも注意深い。彼はダークグレーのシャツの上にサヨナキのジャケットを着て、ブルージーンズと白黒のスニーカーを履いていた。
彼の隣を歩いていたのは、中背の少女だった。濃い藍色の髪はきちんとカットされたミディアムボブで、真っ直ぐな前髪がダークグレーの瞳を縁取っていた。彼女はグレーのパーカーの上にサヨナキのジャケットを重ね着し、ブルージーンズと黒のコンバットブーツを履いていた。その姿勢は静かだが自信に満ちていた。
ライトは一度瞬きをした。「君たちは?」二人が目の前で立ち止まると、ライトは尋ねた。
少年はかすかに微笑んだ。「野口樹。1年1組です。」それから隣にいる少女の方に少し向き直った。「こちらは林田詩織です。」
詩織は軽く頭を下げ、優しい微笑みを浮かべた。「林田詩織です。1年2組です。」
樹は肩越しに振り返り、無表情で言った。「そして、あちらは篠崎蓮次郎。俺と同じクラスだ。」
三人は、まるで何も気にしていないかのように目を閉じ、満面の笑みを浮かべている灰色の髪の少年の方を向いた。
「篠崎蓮次郎! やっと会えたね!」彼は明るく声をかけ、樹と詩織の間に立った。
樹は静かにため息をついた。 「ちょっと…やりすぎかもしれないけど」と彼は認めた。「でも、いい奴だよ」
「ふーん…」ライトは眉を上げ、両手をポケットに突っ込みながら、ゆっくりと答えた。
綾音の目が輝いた。「はじめまして!白川綾音です!」彼女は隣にいる青髪の少女を指差した。「私の友達はもう会ってるでしょ?」
「桜庭葵です」葵は丁寧に挨拶し、樹と詩織は頷いた。
「風早ライトです」茶髪の少女はぶっきらぼうに付け加えた。
「こちらこそ!」恋次郎は親指を立てた。
葵は少し眉を上げた。「さっきおっしゃっていた授業…ということは、あなたたち3人も六爪の候補に選ばれたということですか?」
樹は頷いた。「その通りです」
「すごい~!」綾音は満面の笑みを浮かべた。
樹は緊張した面持ちでくすくす笑った。「ええ…正直、ノミネートされるとは思っていませんでした。時々、すごく不器用なんです。」照れくさそうに首の後ろを掻いた。
綾音は優しく微笑みながら首を横に振った。「全然問題ないわ。クラスメイトがあなたをこの役に任せてくれるなんて、あなたのポテンシャルの表れよ。」
詩織はくすっと笑った。「そうね。みんなもあなたのことをそう言ってたわ。」
葵はにっこり笑った。「みんなと一緒に仕事できるのが本当に楽しみ。」
「僕も!」蓮次郎は満面の笑みを浮かべた。
「僕もだよ。」樹も付け加え、詩織も頷いた。
その時、「みんな、着いたよ~!」という声が聞こえた。
皆の視線が向けられると、涼がさよなきの燕尾服を着て、両手をポケットに突っ込んだまま、魎が歩いて入ってきた。麗奈が彼の隣を歩き、その後ろには陣と美空が続いていた。 4人が演壇に近づくと、教師たちも姿勢を正した。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」と涼は切り出した。「本日、本校の伝統を担う最後の、そしておそらく最も重要なメンバーが誕生します。六鉤爪候補者の皆様、どうぞ前にお進みください。」
合図とともに、葵たちは演壇へと歩みを進めた。葵は視線を横に向け、若い教師たちの中に立つ新田を見つけた。新田は葵と目を合わせ、誇らしげに目を閉じて微笑んだ。葵は頬を赤らめ、視線を前へと戻した。
葵と他の5人は演壇の数歩手前で立ち止まり、麗奈たちの励ましの視線と目が合った。麗奈のエメラルド色の瞳には、優しく賛同するような微笑みが浮かんだ。
涼は続けた。「本日、六鉤爪候補者の皆様をお迎えし、共に祝うためにここに集まりました。」涼は視線を一年生たちに向けながら言った。 「桜庭葵、白川綾音、風早ライト、篠崎蓮次郎、野口樹、林田詩織。」
涼の言葉が心に染み渡ると、一年生たちは背筋を伸ばし、誇りと緊張が入り混じった表情を浮かべた。
「君たちは、サヨナキ高校一年生全員の代表として選ばれたんだ」と涼は微笑みながら付け加えた。「君たちは今、ナイチンゲール最強の戦闘部隊の中核を担うメンバーだ。」
彼はレイナの方を指差し、レイナは頷いて応えた。レイナ、ミソラ、ジンはそれぞれ箱を手に、一年生たちのところへ歩み寄った。ジンは自分だけは受け取らなかった。
「サヨナキのリーダーであり代表として」とリョウは言った。「仲間と共に、この記念品を君たち六人に贈呈できることを光栄に思います。」
箱が開くと、鉤爪が絡み合ったような形をした、光り輝くエナメル鋼のピンが六つ現れた。
「わあ…」アオイたちは一斉に息を呑み、その精巧な作りに感嘆した。
レイナはまずレンジロウの左襟にピンをつけ、続いてミソラがイツキ、シオリ、そして最後にアヤネのピンをつけた。レイナの笑顔は優しくも誇らしげだった。
「よくやったわね、妹よ」とレイナは優しく囁き、アヤネの襟のピンを直した。彼女の指はほんの少しの間、綾音の肩に触れたまま留まり、二人は温かく静かな微笑みを交わした。
麗奈はライトの隣に移動し、小さな満足げな笑みを浮かべながら彼の襟にピンを留めると、葵の方を向いた。
青い髪の少女は麗奈の視線を受け止め、恥ずかしそうに微笑んだ。
「よくやったわ、葵」麗奈はそう言って、葵の左襟にピンを留めた。
葵の紫色の瞳は、光沢のある鋼鉄を捉え、ピンと麗奈の間を交互に見つめた。
麗奈は葵の肩を軽く叩き、いたずらっぽい笑みを浮かべると、一歩下がって演壇のジンと美空の元へ戻った。
「このピンは、君が六爪団の一員であることを示すものだ」涼は、毅然とした、しかし励ますような声で続けた。 「これらは、君たち一人ひとりに秘められた可能性の象徴だ。五尾のメンバー全員が一つずつ持っている」と、彼はジンと美空を指差しながら言った。「…そして、我々の二人の翼長もね」
葵は彼の指差すジェスチャーに目を向け、翼の形をしたエナメルピンが二つあることに気づいた。一つは美空の襟にスチールグレー、もう一つはジンの襟に赤いピンだ。彼女の視線は次にアスカと他の五尾へと移り、それぞれが抽象的な「V」字型を五本の線で区切ったマットシルバーのピンをつけていた。
「このピンに恥じない活躍をしてくれ」と、涼は自信に満ちた笑顔で言った。「今日から、君たちはサヨナキ高校とナイチンゲールズのリーダーの一員だ。持てる力の全てを尽くして皆を守り…そして、我々を誇りに思わせてくれ」
葵の胸は誇りでいっぱいになった。一年生たちは完璧なタイミングで左手を腰に回し、右手を胸の前で滑らかな弧を描くように上げた――ナイチンゲールの正式な敬礼だ。
「はい、先生!」と彼らは声を揃えた。
葵の目は輝き、満面の笑みを浮かべた。開会式で他の生徒たちが敬礼するのを見て疎外感を感じた時とは違い、今、彼女は自分が本当にナイチンゲールの一員であることを実感していた。
涼はにやりと笑った。「よし!お互いに気を配り、協力し合い、新しいアイデアを共有し、そして忘れないで――誰も噛みつかないから。仲良く楽しんでね。」
綾音は汗をかきながら小さく微笑み、ライトに視線を向けた。ライトはレンジロウに鋭い視線を返した。葵は明らかに困惑した様子で眉を上げた。
「さて」涼は一度手を叩き、全員の注意を引いた。 「皆さん、自己紹介をお願いします。ファイブテイルズとシックスタロンズのメンバーの皆さん、この機会に自己紹介をしてください。もちろん、尊敬する先生方も大歓迎です。」




