彼女が家と呼ぶ場所
薄暗く、ほとんど片付いていない部屋で、葵は布団に丸まって横たわっていた。寒さをしのぐため、布団を頭までかぶっている。顔は赤らみ、目の下にはクマができ、呼吸は乱れ、苦しそうだった。昨日からずっと眠れていない。
玲奈の言葉と、母親についての告白が頭の中でこだまする。牧野と直美との試合の記憶、そして何よりも、自分の正体が皆に知られてしまったという事実が、彼女の脳裏をよぎる。
「消えてしまいたい」と、彼女は毛布をぎゅっと抱きしめながら思った。綾音たちの顔が脳裏に浮かぶ。試合後の、悲しみと困惑に満ちた瞳。
「昨日、綾音から電話があった」と、彼女はぼんやりと思い出した。まさか電話がかかってくるとは思っていなかった。
その時、携帯電話が鳴り出した。葵は瞬きをして、受話器を取った。発信者番号を見て、彼女は目を見開いた。
「綾音?」と、彼女は小声で呟き、慌てて電話に出た。「もしもし」
「あおい?よかった!少しは良くなった?」綾音の心配そうな声が聞こえた。
「あ…うん、くしゃみ!」あおいは弱々しく鼻をこすりながらくしゃみをした。
「全然良くないみたいね」綾音は真顔で言った。
「大丈夫?大丈夫?」陸也の声が続いた。
「まあ…大丈夫かな」あおいはか細い声で答えた。
「嘘だろ?」美鶴はニヤリと笑いながらからかった。
「えっと…」あおいはためらった。
「具合が悪いのに治療もしてないの?死にたいの?風邪でも死ぬことがあるんだよ」芽衣は軽く冗談を言った。
葵が返事をする前に、別の声が割り込んできた――鋭く、低い声だった。
「おい、桜庭?」
葵は凍りついた。その声――ライト。視線は膝の上のシーツに落ち、心臓が締め付けられる。
「何?」と、かすれた声で言った。
ライトは息を呑んだ。「お前、本当にバカだな。どうして自分の面倒を見ないんだ?」
「ライト!早くして!」綾音は叱ったが、ライトは無視した。
「風邪を引いて寝てれば治ると思ってるのか?」苛立ちを滲ませた口調で、ライトは問い詰めた。
葵は舌打ちをし、かすれた声で言った。「あなたに何がわかるの?どうせ気にもかけないんでしょ。」
ライトのこめかみの筋肉がぴくりと動いた。彼は息を呑んだ。「ああ、早く出てこいよ。お前の家に着いたんだ。」
葵は瞬きをした。「…私の家?」彼女は信じられない思いで声を上げた。布団から飛び起き、よろめきながらバルコニーへ向かう。カーテンを引いて下を覗き込むと、息を呑んだ。
そこにいたのは、綾音、芽衣、美鶴、陸也…そしてライト。皆、彼女を見上げていた。
「あ、いた!」綾音は安堵の笑みを浮かべながら叫んだ。「葵、大丈夫?!」
「彼女、本当にここに住んでるんだ…」ミツルは呆然と呟いた。
リクヤは眼鏡をかけ直し、同じように驚いていた。
「アポなしで来てごめんね」メイはからかうような笑みを浮かべながら言った。「ところで、元気そうね」
ライトは受話器を耳から外し、アオイに視線を向けた。ゆったりとしたダークブルーのオフショルダーのトップスは太もも丈で、黒のコンプレッションショーツを合わせている。疲労と熱にもかかわらず、彼女は印象的で…そして、か弱そうに見えた。
「な、何してるのよ!?」アオイは顔を真っ赤にして叫んだ。「それに、どうやって私を見つけたの!?」
「私たちはあなたの世話をしに来たのよ、バカ」アヤネは腕を組み、冷たく言い放った。
「それに、白川さんから住所を聞いたかもしれない」リクヤは眼鏡を押し上げながら認めた。
うーん…やっぱり住所を教えちゃいけなかった。葵は心の中でうめいた。うっかり口を滑らせてしまっただけなのに、まんまとバレてしまった。あのずる賢いおじさんめ…。
彼女は手すりを握りしめながら、下のグループを見下ろした。「まあ…とにかく、あなたたちはここにいるべきじゃないわ。家に帰りなさい。」
「痛っ、痛いよ」メイはわざとらしく胸に手を当てて言った。
「せっかくここまで様子を見に来たのに、追い出そうとするの?!」アヤネは信じられないといった様子で叫んだ。
「自分で何とかできるわ」アオイはそう言い返し、また咳き込んだ。「ありがとう、でも大丈夫よ」
「薬も飲んでないくせに」ミツルが皮肉っぽく言った。
「もう入れてよ、アオイ。手伝わせて」アヤネは優しくも毅然とした声で促した。
「本当に必要ないの。あなたたちは…」
「桜庭アオイ!」アヤネは突然怒鳴り、両手を腰に当てた。「今すぐ降りてきてドアを開けなさい!冗談じゃないわよ!」
アオイはため息をつき、苛立ちながら目を閉じ、背を向けた。
「だめよ、だめよ、私から離れて行っちゃダメ!」葵が静かにカーテンを閉めると、綾音は怒りに震える声を上げた。
綾音は苛立ちを露わに唸り声を上げ、鳴き声と他の仲間たちを引き連れてアパートの入り口へと足早に歩き出した。
「ま、待って、あやね!」陸也は説得しようと声をかけた。「葵の気持ちを尊重した方がいいんじゃないか?葵は明らかに俺たちが押し入るのを望んでいないんだから…」
「岡部。」
彼は自分の苗字を聞いて凍りついた。
あやねは彼の方を向き、決意に満ちた目で言った。「今、葵は病気で、一人ぼっちで、頑固すぎて自分の面倒を見られないの。だから、彼女が嫌がろうと、私たちが助けるのよ。」
「ひゃあ!」陸也は彼女の怒りに満ちた声に背筋が凍り、びくっとした。
再びドアの方を向き、ポニーテールを振り乱しながら、彼女は唸るように言った。「たとえこのドアをぶち破らなきゃならなくても、それだけの価値はあるわ!」
「おいおい、ちょっと待って!」美鶴は足を上げた彼女を見て叫んだ。「まさか本当に蹴破ろうとしてるんじゃないだろうな?」
「そこまでやるとは思わなかったよ」とライトは片方の眉を上げて呟いた。
「もう一度よく考えてみて!」アヤネはドアに向かって足を振り上げながら言い放った。「具合が悪いからって、家に閉じこもっていられると思ってるなら、それは間違いよ。とんでもない目に遭わせてやるわ!」
鋭い叫び声を上げ、アヤネは蹴りを入れた。その瞬間、ドアが勢いよく開いた。アヤネの足はアオイの腹部に直撃した。
「うわっ!」アオイは喘ぎながら目を大きく見開き、後ろに吹き飛ばされ、床を転がり、顔面から壁に激突した。
「あああああ!!」アヤネたちは一斉に悲鳴を上げた。
「あおい!」メイとミツルが駆け寄ってきて、リクヤとライトもすぐ後ろに続いた。
「ごめんなさい!本当にごめんなさい!」アヤネは泣きながら、目に涙を浮かべて駆け込んできた。
うめき声を上げながら、アオイは頭をさすり、メイに支えられて起き上がった。「もう二度とアヤネを怒らせないようにしないと…」
「え?」アヤネは鼻をすすり、涙でかすむ目を瞬かせた。
アオイは弱々しく顔を上げた。「ちょうどドアを開けようとしていたところだったの。もう追い払えないみたいね?」
「完全に追い払えるわけじゃないわね」メイはくすくす笑いながら、アオイを立たせた。アオイはふらつきながらも、なんとか立ち上がらせた。
「大丈夫よ」メイは優しく支えながら言った。「部屋に行きましょう」
「あ、うん…」葵はそう呟き、階段を上る際に綾音に寄りかかった。
二人の後ろで、美鶴はからかうように笑って綾音を肘でつついた。「あいつ、元々具合が悪かったのに、また痣までできちゃったのか。」
「ごめんなさい…」綾音は肩を落とし、そう呟いた。
陸也はぎこちなく手を振った。「あ、あやあ!君はただ…元気すぎただけだよ。」
「うん…」綾音はため息をつき、いくつか袋を手に取った。「さあ、これを上に運ぼう。」
美鶴と陸也は後について行ったが、ライトはしばらく立ち止まり、狭苦しいリビングを見渡した。ひどいというほどではないが、葵がこんな生活を送っていると思うと胸が痛んだ。やがてライトも二人に合流して階段を上ると、目の前の光景に凍りついた。
葵の部屋は質素で整頓されていたが、とても狭かった。ひび割れた鏡が壁に立てかけられ、小さなテーブルが窓際にあり、古びたギターがクローゼットの奥に置かれていた。
「よし、落ち着いて」メイはそう言って、アオイを布団に寝かせ、毛布をかけてあげた。
「あ、ありがとう…」アオイはそう呟き、布団の温かさに身を委ねた。
「本当に金持ちの子なの?」ミツルが小声で呟くと、リクヤに肘で突かれた。
「うるさい」リクヤはそう言って、友達の間にどさっと座り込んだ。
メイはかすかに微笑んだ。「ひどい顔色ね。大喧嘩の後で雨に濡れてたから仕方ないわ」
「うるさい…」アオイはそう呟き、またくしゃみをした。
「確かにそうだね」ミツルはからかった。
「お腹空いた?」アヤネが優しく尋ね、アオイのそばに膝をついた。「何も食べてないでしょ?だから薬も飲まなかったのね」
「ううん…あまり食欲がないの」アオイはそう認めた。
綾音の笑顔が明るくなった。「準備万端で来てよかったわ。あなたのためにこれ持ってきたのよ。」そう言って、綾音はいくつかのバッグを葵の方へ滑らせた。
葵は驚いて瞬きをした。「これ、一体何?」
「おやつと薬だよ。元気になってね」と、ミツルはにっこり笑った。
「うん」と、リクヤも温かい笑顔で付け加えた。
アヤネは頷きながら、袋の一つから冷湿布を取り出した。「お父さんも食べ物をたくさん送ってくれたの。風邪をひいているから、温かいものを食べるようにって」
アオイの紫色の瞳がちらりと動き、唇をきゅっと引き締めて俯いた。「そんなことしなくてもよかったのに」
「でも、そうだったのよ」と、アヤネはアオイの青い前髪を優しく払いながら答えた。「お父さんは本当に心配して、これを届けてほしいって頼まれたの」。アヤネはアオイのおでこに冷湿布を貼り、腕を組んで、わざと睨みつけた。「だから、言い訳はやめて、愛を受け取って」
アオイは瞬きをし、眉をひそめながら、小さな汗を浮かべた。「そ、そう…」
「ほら、水」と、リクヤはボトルを差し出した。彼女はそれを受け取り、ゴクゴクと飲み干した。冷たい飲み物が乾いた喉を潤してくれた。
「おやおや、喉がカラカラだったみたいだね」と、満面の笑みを浮かべながら、ミツルはクーラーボックスを開けた。
「うん…」と、アオイは呟き、ボトルを閉めた。
「もっとたくさん飲まないと」と、アヤネは軽く説教した。「脱水症状は熱を悪化させるからね」
「ほら、また説教女王の出番だ」と、ミツルは苦笑いを浮かべ、メイとリクヤにクスクスと笑われた。
彼らが冗談を言い合っている間、ライトは静かに窓辺に歩み寄った。カーテンを開けると、薄暗い部屋に光と風が流れ込んだ。毛布にくるまり、アヤネの叱責をぼんやりと見つめているアオイに、ライトの視線が留まった。胸に何かが込み上げてきた。
彼女は本当にこんな風に…一人で暮らしていたのだろうか?
「さあ、始めましょう」と綾音は明るく言いながら、小さな鍋を床に置いた。蓋を開けると、湯気が立ち上った。「おかゆに梅干しを乗せたの。お父さんのアイデアよ。」
ご飯と卵とさつまいもの心地よい香りが辺りに漂う。葵のお腹がグーッと鳴り、目を見開いた。
綾音はくすっと笑った。「お腹空いてるみたいね」と言って、お椀にご飯を注ぎ、スプーンで渡した。
「はい」と綾音は言った。
「ありがとう」と葵は震える手でお椀を握ろうとしながら呟いた。
「震えてるわよ」と綾音は真顔で言った。
「震えてない」と葵は弱々しく反論したが、震える手でそれを隠そうともしなかった。
綾音はため息をつき、お椀を受け取った。「スプーンを持つことすらできないくらい弱ってるわね。よし、私が食べさせてあげる」
葵は驚いて瞬きをし、毛布をぐっと引き寄せた。「本当に食べさせなくてもいいのに」
「でも、食べさせてあげる」と綾音はふくれっ面をして、子供っぽく唇を尖らせた。
「放っておけばいいわよ」メイは優しく微笑みながらカップにお茶を注いだ。
「ああ、また何か壊されたくなければね」ミツルはからかった。
葵はうめき声をあげ、それから息を吐き出した。「わかったわ」
綾音の顔がたちまち明るくなった。「よかった!さあ、大きく口を開けて。あぁ~」
その声に、葵は息を止めた。遠い記憶が蘇り、彼女の目は優しくなった。姉の、優しくからかうような声。
「さあ、葵~!大きく口を開けて~!」
胸が締め付けられ、目尻に涙が溢れ、瞬きを繰り返した。
「ん?葵?」綾音は首を傾げて尋ねた。
葵は慌てて目を拭った。「何でもない…ただ熱があるだけ」
綾音は優しく微笑んだ。「じゃあ、冷める前に早く食べて」
「わかった、わかった…急かさないで」葵はため息をつき、ようやく口を開けた。綾音はにっこり笑いながら彼女に食べさせ、ライトは窓から静かに見守っていた。彼の脳裏には、彼女の戦いと、その後彼女が受けた残酷な言葉がよぎっていた。
「そうだ!あそこにいる!桜庭葵!呪われた娘!みんなが青い嵐と呼ぶあの化け物!」
「ほら、葵。」陸也は微笑みながら小さなカップに注いだ。「咳止めに生姜湯を。」
「ありがとう。」彼女はそう呟き、温かい生姜湯を一口飲んだ。
「あいつはただの呪いだ!化け物!あいつの周りには不幸がつきまとう!」
「それからこれ。」芽衣は小さな器を差し出した。「八蜜大根。喉にも効くわよ。」
葵は眉を上げた。「これ全部食べろって言うの?」
「全部じゃないよ」と美鶴はニヤリと笑い、彼女のカップをいたずらっぽくひったくった。「食べられる分だけ。残りは…」と悪戯っぽい笑みを浮かべ、「…僕たちが食べるよ!」
「そうだ!」陸也は綾音のお父さんの料理を想像して目を輝かせ、熱心に同意した。
綾音は視線を落とし、両手を腰に当てた。「あなたたち二人には一口もあげないわ。」
「えっ!?どうして!?」二人は声を揃えて叫び、漫画のように涙を流した。
「病気なのはあなたたちじゃないでしょ!陰で企んでないで、手伝ってよ!」
二人は敗北を認め、頭の上に青い線が垂れ下がっているようだった。「はい、お母様…」
芽衣はくすくす笑った。「綾音、二人を甘やかしてあげて。」
綾音は無表情でアオイを睨みつけた。「ちゃんと行儀よくしたらね」
アオイは静かに二人の様子を見ていた。狭くて薄暗い部屋に、ぎこちないけれど温かい笑い声が響き渡る。その笑い声は、アオイの胸の奥底で何かを揺り動かした。
一体どういうこと…?こんなに長い間、こんな風に感じていたなんて。アオイは膝を見つめ、毛布をぎゅっと握りしめた。物心ついた時からずっと一人だったのに…どうしてこんなに…懐かしい感じがするんだろう?その時、レイナの声が頭の中でこだました。
「さっき言ったこと――あなたが一人ぼっちだってこと――本気で言ってたし、正しかったわ。でも、あなたがそうなりたいって選んだわけじゃないってことも、私は知ってる」
アオイは毛布をぎゅっと握りしめた。「どうして…?」
彼女の柔らかな声に、皆は思わず息を呑んだ。視線を伏せたままの彼女を、皆は不思議そうに見つめた。
「どうしてこんなことをしてくれるの?私一人でもできたのに…」
綾音と芽衣は意味ありげな視線を交わし、優しく微笑んだ。
「人に助けてもらうのは悪いことじゃないわよ、葵」芽衣は優しく言った。
葵は少し顔を上げ、二人の穏やかで誠実な表情を見つめた。「でも…どうして?」
「だって、僕たちは君の友達だから!」美鶴は明るく自信に満ちた声でニヤリと笑った。「僕たちはいつも君の味方だよ」
「そうだね」陸也は誇らしげに眼鏡を直し、付け加えた。
葵は言葉を失い、二人を見つめた。胸が締め付けられるような痛み――痛みというよりは、重くもあり軽くもあるような、不思議な感覚だった。
でも、一体なぜ彼らはこんなことをしてくれるのだろう…?過去が皆に知られてしまったことを思い出し、彼女は考えた。同情なのだろうか?みんな、ただ私を哀れんでいるだけなの?
「私たちに頼ってほしいの」と、綾音は突然、彼女の思考の渦を断ち切った。声は柔らかかったが、しっかりとしていた。「私たちは同情で来たわけじゃない。ただ、あなたに元気になってほしいだけなの」
葵は深く息を吸い込み、柔らかな光の中でラベンダー色の瞳がかすかに輝いた。レイナの声が再び彼女の心の奥底で囁いた。
「あなたは他の人を見捨てたわけじゃない――本当は。ただ、見捨てたふりをしているだけ。だって、傷ついていないふりをする方が……また失望するより楽だから」
「友達が待っているわ――それに、あなたは休まなくちゃ。いい?」
彼女は息を吐き、小さく頷いた。
「…うん」と彼女は呟いた。
………………
その日の夕方、一行は狭い通りを歩いていた。
「じゃあ、葵、行くね!」綾音は手を振りながら声をかけた。
「うん」と葵は戸口から静かに答えた。
「ゆっくり休んでね」と芽衣は微笑んだ。
「明日も学校に来てね!」美鶴はニヤリと笑い、大げさに手を振った。
ライトはポケットに手を突っ込み、一度だけ彼女の方を振り返ってから歩き出した。葵は彼らの姿が見えなくなるまで見送り、静かにドアを閉めた。
「明日、来てくれるといいんだけど」と美鶴はため息をつき、両手を頭の後ろで組んだ。
「来なくてもおかしくないよ」と陸也が付け加えた。「だって…みんなあの写真を見たんだから」
「うん…」メイは微笑みを消し、呟いた。
ライトは黙ったまま、アオイの薄暗いアパート――ひび割れた壁、使い古された布団、そして孤独な雰囲気――を思い返していた。牧野の残酷な言葉が頭の中でこだまする。
「呪われた存在のせいで、家族に見捨てられた! 不幸しかもたらさない!」
ポケットの中で拳を固く握りしめ、表情は読み取れなかった。
「もっと…彼女のことを知りたい」ライトはそう思い、街を歩きながら、瞳に決意の光を宿らせた。




