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ブルーストーム  作者: Fawole Oluwaseyi


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次の波

体育館の空気は張り詰めていた。観客が後ずさりするにつれ、靴が床に擦れる音がかすかに響き、二人の間には広い円ができた。


ライトは肩を回し、首を鳴らしながらニヤリと笑った。「その言葉、後悔するなよ、青髪。」


「後悔?」葵は首を少し傾げ、前髪がラベンダー色の瞳に影を落とした。「床に倒れるのはあんたよ。」


その言葉にライトはキレた。素早く正確に飛び出し、右拳が空気を切り裂いた。


葵は軽々と横に身をかわした。その動きは鋭く、滑らかで、静かだった。耳をかすめる風の音だけが聞こえた。


ライトはくるりと向きを変え、彼女の腹部を狙って蹴りを入れた。彼女は前腕でそれを受け止め、その衝撃で数歩後退した。衝撃音は床に響き渡り、体育館中にこだました。


ミツルは低い口笛を吹いた。 「うわぁ…ここからでも衝撃が伝わってくるわ。」


綾音は両手を組み、芽衣の後ろに身を隠した。「これはまずい…二人とも、お互いを殺し合っちゃうわ!」


「もう半分はそうなってるよ」陸也は冷静に答えたが、その目は興味津々といった様子だった。


葵は体勢を立て直し、ゆっくりと息を吐いた。そして、素早く予測不能な動きで突進し、左にフェイントをかけた後、彼の足を払いのけた。ライトは間一髪で飛び上がり、靴が床を擦る音を立てた。葵の蹴りはほんの数センチの差で外れた。


「悪くないな」彼は呟き、体勢を立て直した。「だが、まだ足りない!」


彼は再び突進した。今度はさらに速く、より鋭く、よりタイトなフォームで。二人の拳が空中で激しくぶつかり合い、大きな音が響き渡った。その振動が腕を伝っていった。


観客は息を呑んだ。葵の表情は読み取れず、ライトの笑みはさらに深まった。


「これが戦いというものだ」と彼は歯を食いしばって言った。


「じゃあ、勝ち方を覚えなさいよ」葵はそう言い放ち、体を回転させた。そして、膝を振り上げ、ライトの顎に当たる寸前で止めた。ライトは凍りつき、瞳孔がわずかに開いた。クラス全員が息を呑んだ。


葵は左にフェイントをかけ、目にも止まらぬ速さで二回転した。踵がライトの腹部に叩きつけられ、息を詰まらせた。ライトは床を滑るように後退し、咳き込みながら、間髪入れずに突進してきた葵に襲われた。


ライトが体勢を立て直す間もなく、葵は彼に迫った。彼女の拳が振り上げられ、ライトの顔に向かって空気を切り裂くように振り下ろされた。しかし、拳は数センチ手前で震えながら止まった。


ライトは身をすくめ、目をぎゅっと閉じた。しかし、衝撃はなかった。ゆっくりと片目を開け、そしてもう片方の目も開け、止められた彼女のパンチを信じられないといった表情で見つめた。二人は息を切らし、顔は戦いの余韻で赤らみ、空気は言葉にならない緊張感で満ちていた。


葵が動きを止めたにもかかわらず、アラタの声が刃のように鋭く響いた。 「もう十分だ。」


二人は同時に振り向いた。アラタはクラスメイトの中に立ち、腕を組み、表情を読み取れない。「お前たち、もう見せびらかしは終わりか? それとも日没まで走らせようか?」


ミツルのこめかみに一筋の汗が流れ落ちた。「痛っ。あの口調で。」


「でも、あんな口調で言われたのは初めてだ」とヒカルが驚きながら呟き、隣に立っていたカズキも頷いた。


ライトは目を大きく見開いて固まり、状況を理解した途端、彼女を見上げた。「離せ!」とどもりながら、顔を真っ赤に染めた。


葵は目を丸くし、かすかに鼻で笑ってから立ち上がり、一歩後ろに下がった。表情はすぐにいつもの冷淡な無関心に戻った。ライトは立ち上がり、顎を食いしばり拳を握りしめ、顔をしかめて背を向けた。


二人が口を開く前に、別の存在が現れた――美空だ。鋭い視線が部屋を見渡した。「あら。あなたたち、ついに体育館を戦場にすることに決めたの?」


「私の考えじゃないわ」葵はぶっきらぼうに言った。


ライトは鼻を鳴らした。「彼女が始めたんだ」


「二人とも始めたのよ」美空は冷ややかに腕を組みながら言った。「床がまだ割れていないのは、あなたたち二人とも幸運ね」


クラスは緊張した笑い声を上げ、緊張が徐々に解けていった。


新はこめかみを揉みながらため息をついた。「二人とも才能はあるが、お互いに争っていては何も成し遂げられない」彼の視線は二人の間をさまよった。 「次は、エゴではなく、冷静さと集中力で、正しい方法で意見の相違を解決しなさい。」


ライトは顎をきつく引き締め、視線をそらした。「ちっ…」


アオイは黙って頷き、両手をポケットに突っ込んだ。


美空はかすかにニヤリと笑った。「よかった。次のグループ課題は10分後よ。さて、誰と誰がまた一緒になると思う?」


二人は一斉に美空の方を振り向いた。「えっ!?」二人は声を揃えて言った。


「落ち着いて。あなたたちのグループも両方とも私と一緒に行くわ」美空は軽く微笑んだ。


「どっちにしても、あの二人は殺し合いするだろうな」陸也は緊張したように笑い、隣にいる美鶴も同じような表情を浮かべた。


体育館はざわめきに包まれた。綾音は芽衣にささやいた。「これ…すごく面白くなりそう」


「本当にね」芽衣は小さく笑った。


……


一年生たちは静かな通りを歩き始めた。美空はいつもの落ち着いた表情で先頭を歩いていた。しかし、彼女の後ろでは、綾音たちはそれほど落ち着いてはいなかった。葵とライトが並んで歩く姿を見ながら、彼らの顔には汗が滴り落ちていた。二人は互いに反対方向を睨みつけ、苛立ちがまるで放射状に広がっているかのようだった。


「まったく、面倒くさい…」ミツルは小さくため息をついた。


「あいつら、本当に仲が悪いんだな」リクヤは眼鏡を直しながら呟いた。


ライトは皆に聞こえるように小声で呟いた。「ただの運が良かっただけだ。簡単に倒せたのに。」


「なあ、あいつ、お前、完全にやられただろ。クラス全員がその一部始終を見てたんだぞ」と、ミツルは冷ややかに言い放ち、眉をひそめて額に汗を浮かべた。


ライトは顔を真っ赤にして、言い返した。「そ、あれはウォーミングアップだったんだ!あいつは運が良かっただけ!俺だって勝てたんだぞ!」


「そうか…そう思ってればいいさ」と、ミツルはニヤリと笑った。


アオイは得意げな笑みを浮かべ、首を傾げた。「私の忠告は効かなかったみたいね?あんたの方が負けてたじゃない」


ライトの視線が鋭くなった。「もっと喋ってろよ、青髪。次は、あんたに勝ち目はないぞ」


「次?」アオイの口調が鋭くなった。「また負けるってこと?」


アヤネはこめかみを揉みながらため息をついた。「もう…お願いだから、また言い争いはやめて」


「発電機を動かせるくらいの張力があるわね」とメイは軽く冗談を言った。


「ああ…」とミツルは静かに同意した。アオイは舌打ちをして背を向け、両手をショートパンツのポケットに突っ込んだ。


「うわっ!本当にうざい!」ライトは指を突きつけながら怒鳴った。「自分は誰よりも優れていると思ってるんだな!」


アオイは振り返りもしなかった。「誰よりもじゃないわ。あなただけよ」


ライトは凍りつき、アオイが冷静ながらも鋭い声で続けると、眉間のしわがさらに深くなった。「認めなさいよ。私の方が優れてるし、強いし、今証明したばかり。あなたも分かってるでしょ。あなたには私を否定する力なんてないんだから」


顎を食いしばり、両拳を固く握りしめ、睨みつけながら彼女を追った。


綾音はため息をつき、顔に不安の色が浮かんだ。他の者たちも同じように落ち着かない表情をしていた。


「どういうわけか、前より仲が悪くなっている」と、美鶴は呟き、緊張で額に汗が伝った。


「そんなことあり得るの?」と、芽衣は皮肉っぽく付け加えた。


「あいつら、お互いを心底嫌っている」と、陸也は眼鏡を直しながら言った。「美空、どうして――」彼は言葉を途中で止め、目を見開いた。「ずっと餃子を食べて立っていたのか?!」


美空はゆっくりと咀嚼し、飲み込んだ。「何を言うと思ったんだ?チームワークが足りないなら、自分たちで解決するしかないだろう」


「お前、冷静すぎるな」と、美鶴は呟いた。


「お姉ちゃんは好きな食べ物さえ手に入れれば、もう何も気にしないのよ」と、あやねは照れくさそうに笑った。


その時、切羽詰まった声が響いた。「助けて!誰か、お願い!」


二人の露天商が慌てた顔で駆け寄ってくるのを見て、皆が振り返った。


「桑原通りに不良グループがいるんです!」と一人が叫んだ。「店を壊して、欲しいものを何でも盗んでいます!」


「お願い、助けてください!」ともう一人が懇願した。


葵たちは互いに鋭く、決意に満ちた視線を交わした。美空は最後の餃子を口に放り込み、飲み込むと、燃えるような決意を胸に、彼らに向き直った。


「行くわよ」と、彼女は冷静に、そして鋭い眼差しで指示した。


他の者たちは一斉に頷いた。「うん!」


………………


桑原通りにはパニックが広がり、通行人や露店商は安全な場所を求めて逃げ惑った。叫び声とガラスの割れる音が響き渡る中、少年少女の集団が店に押し入り、窓ガラスを割り、手当たり次第に物を奪い取っていた。


「やったぜ、今日は大儲けだ!」ダガークロウズのリーダーが、肩に膨らんだ袋を担ぎ、割れた窓から飛び出しながら高笑いした。


「ええ、やっと運が味方してくれたみたいね」と、女性メンバーの一人が腰に手を当て、くすくす笑った。



「その通りだ」リーダーはニヤリと笑い、騒乱の中、声を張り上げた。「見つけたものは何でも持って行け!今夜は俺が奢る!」


「ボス!敵が来ています!」誰かが叫んだ。


リーダーの笑みは消え、通りの方を向いた。7人の人影がこちらに向かって走ってくるのが見えた途端、彼の目は大きく見開かれた。お揃いのジャケットは紛れもない特徴だった。


「まさか…!」彼は声に緊張を滲ませながら呟いた。美空が先頭に立ち、葵たちが彼女を挟むようにして、開けた場所へと飛び出した。彼女たちの瞳には決意が燃えていた。


「昼夜を問わず、私たちは立ち上がる…」美空は落ち着いた、しかし力強い声でそう言い始めた。葵は少し驚き、瞬きをした。


「恐怖を撒き散らす者たち」綾音は手袋をパチンと鳴らしながら続けた。


「…害を及ぼす者たち」芽衣は穏やかな微笑みを絶やさずに付け加えた。 「…闇に耽る奴ら!」美鶴と陸也は声を揃えて叫んだ。


「…正義の歌に直面するのだ!」ライトはそう言い放ち、拳を空に突き刺した。それはチンピラの顎にまともに命中した。


葵は乱暴な一撃をかわし、クリーンヒットで反撃した。初めて出会った夜、麗奈の声が脳裏にこだまし、彼女の心臓は激しく鼓動した。


「総京志を守る。それが私たちの使命。無法者たちが恐怖に震えながら囁く名…ナイチンゲール。昼夜を問わず、彼らは立ち上がる。恐怖をまき散らし、害を及ぼし、闇に耽る者――彼らの正義の歌に直面するのだ。」


その考えが消え去ると、彼女の唇に笑みが浮かんだ。「そういうことだったのね…」彼女はそう呟き、瞳を輝かせた。「超かっこいい!」



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