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どうして私だけできないのか

授業の後、ミヤコさんが声をかけてくれた。


「どうだった?」


「すごく本格的なんですね……」


「うん。すぐ現場に行けるように訓練してるから」


「なるほど……」


私が頷いてると、隣にいた男の人も頷いていた。


「このスクールの卒業生で、栗山さんっていますよね?」


男の人が興奮気味に言う。


「ああ栗山ね。うん、卒業生」


「スゲェ……!」


すごい人なのかな?


そのときの私は、まだ知らなかった。


でも後になって、

雑誌を開けば名前を見て、

テレビを見れば名前を見て、

気づけば、何度もその名前を見ることになる。


――栗山泰文。


あのとき、あの教室で名前を聞いた人だった。

その当時、売れているスタイリストだった。


栗山さんのアシスタントになれれば、

男性芸能人の仕事に関われる。


私の夢に一番近い人だった。


だから私は、栗山さんの事務所に応募した。


書類を出して、

面接に行って、

結果を待って。


落ちた。


理由は分からなかった。


でも、ダメだった。


私は、専門学校を辞めて、

ミヤコさんのスタイリストスクールに入り直した。


ここなら一年で卒業できる。

在学中もアシスタントができる。

現場を学べる。

スタイリストの側にいられる。


それが、何より大きかった。


その年の学生は、私を含めて10人程度しかいない、少人数のクラスだった。

男子4人、女子6人。

年齢も、10代から20代でバラバラだった。


前の専門学校みたいに、華やかな人はいなかった。

でも、みんな真面目で、服が好きだった。


私は、その雰囲気が落ち着いた。


ここなら、やっていけるかもしれないと思った。


「頑張ろうね」


最初は、みんな同じ気持ちだった。

スタイリストになる。


衣装を用意するお金がないから、

古着屋で衣装を探したり、

生徒同士で洋服を貸し借りしたりして、

コーディネートの授業を乗り越えた。


入学して三か月も経つと、

ちょくちょく現場に行く人が出てきた。

少人数だから、アシスタントの仕事がすぐ回って来る。


私は、専門学校を辞めてよかったと思っていた。


でも。


ここでも私は、

自分にセンスがないという問題に、またぶつかった。


「この服はないでしょう」


ミヤコさんに言われる。


「モデルもダメ。この商品でこの人じゃ、全然売れない」


「……すみません」


「やり直し」


「はい」


「じゃ、次の人」


何が悪いのか、わからなかった。


放課後は古着屋で衣装探し。

CMをイメージして、

今売れている人をリサーチして、

それでも選んだのに、ボツだった。


衣装を片付けながら、

涙が溢れないように、私は必死だった。


何回かそんなことを繰り返していると、

発表の授業自体が怖くなっていった。


正直、逃げ出したかった。


みんな少しずつ、褒められていくのに、

私は全然進歩しなかった。


何回目かのミヤコさんの授業で、

とうとう涙が溢れてしまった。


「あなた、現場で泣くつもり?」


「すみません……」


「出て行きなさい」


スクールの外で、

私は声を押し殺して泣いた。


悔しくて、悔しくて仕方なかった。


どうしたらセンスがよくなるのか。

考えても、考えても、わからない。


褒められている人の衣装の、

何がいいのかもわからなかった。


同じ授業を受けて、

同じように衣装を探して、

同じように考えているはずなのに、

結果だけが全然違った。


センスって、何なんだろうと思った。


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