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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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村のこれからとお金の話

馬と馬車の導入は村にとって大きなプラスになった。


まず作業効率が全然違う。


今まで人力で行っていた木や石の輸送が馬を使うことによって飛躍的に改善。


また、サンサトローズへの移動が簡単になったことで購買意欲がまし、生活環境が整うきっかけになった。


外貨は落ちるが消費する先がなかったからなぁ。


ちゃんと外で使えるようになると、さらに獲得する熱が増す。


熱が増すという事はより仕事をするという事だ。


おかげで誰もが夢中になって働いている。


ただ、この街の外貨獲得は冒険者頼りだ。


その為、どうしてもそれ関係の人に外貨が集中してしまう。


今はそれを一度回収して皆に分配しているのだが、それでは不平不満が出てくるだろう。


っていうかもう出ている。


移住でやって来た人達と先住の人達とでどうしても仕事に差が出てしまう。


にもかかわらず給金が一緒になったら、そりゃ不満も出るよなぁ。


致し方ないとはいえ、それをどうにかしなければ諍いの原因になる。


人が増えるまでは今まで通りでよかった。


でも、人が増えた以上そのままではいけない。


今後はそれぞれから税金を回収する仕組みに変更する必要も出てくるだろう。


もちろんそれが貧富の差に繋がる可能性は高い。


でも社会主義国じゃないんだ、それは致し方ないだろう。


働けばお金が増え、休めば減る。


休んだ人間が同じだけ貰うってのはやはりおかしいよな。


おっと、この手の話はキリが無くなるのでこの辺にしておくとしよう。


そうじゃないと目の前でオッサンの頭が茹で上がってしまう。


「で、結局どうするんだ?」


「仕事内容の見直しをします。」


「というと?」


「畑で働いていく人はこれまで通りこちらで税金を支払い、食料も公平に分配します。それ以外を選んだ人にはそれぞれが得た賃金から税を納めてもらいます。」


「食料はどうする?」


「我々から購入してもらいます。もちろん、格安にするつもりではいますけどね。」


「なるほどな。安定した生活かそれ以外かを選ばせるのか。」


いきなり全部を変えることは出来ない。


だから今までの仕組みから抜けるかどうかを選んでもらうんだ。


畑を選べばこれまで通り収穫に応じた安定した暮らしを。


それ以外の人には村の一員ながらも独立した生計を営んでもらう。


今ある店に雇用してもらうもよし、自分で店を営むのも良しだ。


とりあえず宿は村で運営するので雇用を守るつもりでいる。


でもそれ以外、例えばシャルちゃんのお店なんかは独立した生計を立ててもらう必要があるだろう。


ぶっちゃけ今の稼ぎがあればくいっぱぐれることはない。


人手が欲しいならこっちから斡旋してあげれば問題ないだろう。


もちろん依怙贔屓はしないぞ、面接した上で採用するつもりだ。


「他のやつが購入することを前提として備蓄した残りを売って税に充てるんだな。でもそうすると、自分で税金を払ったやつの分だけ金が余らないか?」


「余っていいんです。彼らは彼らで税を支払うわけですから。」


「残りが増えるって事は余裕が出来るって事だよな?」


「そうなります。さらに言えば食料購入分のお金も加算されますので、それなりの現金が手元に残るでしょう。」


今までは税金で半分飛んで行っていた。


だが、自分で税を支払う者が増えるとその分支払わなくて済むので最終的に4割ぐらいに落ち着くと思っている。


問題はその残った分をどう扱うかだが・・・。


「その現金はどうするんだ?」


「蓄えに回すことも考えていますが、やはり給金として支払うべきでしょうね。」


「そうだな。畑で働けば安定した生活は送れるが買い物する金が手に入らない。今は支給という形でほしい物は渡しているが、みんな自由に買い物がしたいだろうしな。」


「今年は難しいかもしれませんが、今年の収穫を見て来年の春節から導入しようと思います。それまでは今のやり方で行くしかないでしょう。」


「事前に何度か説明した方がいいかもな。正直に言って俺も一回じゃ覚えられねぇ。」


まぁそうだよな。


俺も思いついたから発言しているけど、荒もあるだろうし一度エミリア達と話し合いたい。


あくまでもこれは素案だ。


春節までにこれを磨き上げて形にしていけばいい。


「既存の仕事だけじゃなくて新しい仕事を始めてもらっても面白いかもしれませんね。」


「新しい仕事だと?」


「これだけ木があるのに木材を買い付けるのも変な話です。加工してくれる人が居ればその手間も費用も減らすことが出来ます。酪農も昔考えましたよね。水路も出来ましたし製紙業も可能だと思うんです。」


「よくもまぁそんなに思いつくな。」


「つまりは、まだまだ手を付けてない仕事があるって事です。」


仕事が無いから今まで通りでいいなんて言わせない。


ヤル気があるなら俺達は全力で手伝うだろう。


それが軌道に乗れば新しい雇用が生まれる。


雇用が生まれれば選択肢が増える。


村の未来の為にもいろいろな選択肢が出来るのは素晴らしい事だ。


「ま、今日の所は馬と荷台が手に入ったことを喜ぶか。」


「いつかは欲しいと思っていたところだしな。」


「そうですね。タダで入ったのを喜びましょう。」


「これもお前が襲撃されたおかげだ。」


「なんならもう一回ぐらい襲われるか?」


「勘弁してくれよ。」


思わず素が漏れる。


今回は何もなかったものの、もし次が有ったら無事で住む保証はどこにもない。


世の中何もないのが一番だ。


あの襲撃から三日。


今の所、特に変わったことは起きていない。


「話は以上だな?」


「あぁ、浄水槽の件は精霊師の返事待ちだしそれ以外に時に問題は出てない・・・はずだ。」


「異音の件は?」


「あれ以降聞いたやつはいない。聞き間違い・・・って事にしておくつもりだ。」


「他の連中にも無用の心配をかけるわけにはいかないですしね。」


「一応自警団には気を付けるように言ってある。南の森には定期的に冒険者を派遣するつもりなんだが、構わないか?」


「初心者向けのいい依頼になります。ただし、ちゃんと予算計上しといてくださいね。」


ついでに魔物を蹴散らしてくれればそれだけで十分だ。


費用もそんなに高くならないだろう。


ほんと、冒険者って便利屋だよなぁ。


村に出張所が出来て本当に良かった。


「なぁ、一つ相談なんだが・・・。」


「なんだよ畏まって。」


「人、増やさないか?」


突然オッサンが申し訳なさそうに頼んできた。


人を増やす。


移住の件じゃなさそうだが・・・。


「どういうことです?」


「話し合いは俺達でもできるが、書類とかは苦手なんだよ。今まではそれでよかったがこれからはそういうわけにいかないんだろ?」


「そうですね、出来るだけ書類で記録を残したい所です。」


人が増えればイチャモン付けてくるやつも増える。


そういう時に、書類があれば順序だてて説明することが出来る。


加えて、自分たちもどういう話し合いをしたかが分かるしな。


「つまりはそれを誰かに頼りたいのか。」


「まぁそういう事だ。」


恥ずかしそうにポリポリと頭を掻くオッサン。


確かにこの三人、特に二人に事務作業をやらせるのは難しいだろう。


いや、やらせればやるんだろうけど適性が無いというのが正直なところだ。


とはいえ、議事録を作るとなると俺達の会話が他人に漏れるわけだし、その人が外で話をしないとも限らない。


絶対に裏切らない俺達側の人間が必要になる。


「仮にお願いするとして、誰か良い人います?」


「女衆と男衆から一人ずつ呼ぶのはどうだ?俺たち以外の意見ってやつも大切だろ?」


「なるほど、一理あります。今必要としているのは書記と会計、そういう事ですね。」


「だな、金勘定も書類も苦手なんだよ。」


「だがその二つに適性のあるやつ・・・なんているのか?」


読み書きはともかく、算術は厳しいかもしれない。


元商人とか、そういったところで働いていたっていう人でなければ難しいだろう。


さらに言えば不正が起きないように気を付けなければならない。


人を雇ってポッケナイナイされたじゃたまらない。


その辺をしっかりと管理できて安心できる人材・・・。


人材なぁ。


「一応声だけかけてみましょうか。いなかったら・・・その時はその時で考えます。」


「商店連合はどうだ?」


「あくまでも私に管理を任せているので人を出してくれるかどうか・・・。でもまぁ、聞いてみるだけ聞いてみます。」


「よろしく頼む。」


今後を考えてもそういう人材は必要だ。


探すだけ探してみよう。


「じゃあ店に戻りますね。」


ウェリスに送ってもらうつもりだったが、さすがに襲撃は無いだろうという事で断った。


最悪ドリちゃんとディーちゃんを呼べば何とかなる。


村を抜け、シャルちゃんの店の前を通りすぎる。


今日も冒険者が近くで警護してくれていた。


願わくばそんな事しなくても済むようになってほしい。


その為にも今回の問題を何とかしなければ。


なんとか・・・なるのか?


「シュウちゃん。」


「ドリちゃんどうしたの?」


「考え事?」


「まぁねぇ。わかる?」


「うん、元気ない感じ。」


「世の中上手くいかないなってね。」


「人間は大変だね。」


「あははまぁね。」


よっぽど元気なかったんだろうか、ドリちゃんに心配されてしまった。


「でも大丈夫だよ、この間みたいに私達が何とかするから。」


「うん、これからもよろしくね。」


「任せといて!」


「でもどうやってお返ししようか。」


「いつもと一緒でいいよ?」


いつもと一緒っていうのはほっぺにキスをすることだ。


それでお願いを聞いてくれるなんて安すぎると思うんだけどなぁ。


「それでいいの?」


「だってシュウちゃんだもん。」


「ありがとう。」


「そうだ、一つだけお願いしたいことがあるんだった。」


ドリちゃんが他の事を言い出すなんて珍しい。


それこそ年単位で無かったと記憶している。


「何かな。」


「リュシア君とシルカちゃんにちゃんとご挨拶がしたいんだ。」


「え?どういうこと?」


「今はシュウちゃんの子供だからって守護してるけど、これからはちゃんと祝福を授けるべきかなってディーちゃんと話していたの。」


「それは大切な事なんだよね。」


「うん。今のままだとシュウちゃんの近くにいないと守ってあげられない。でも、祝福を授けたらシュウちゃんが居なくても守ってあげられるよ。」


「それはうれしいけど・・・。」


本人の了承が無い状況で決めてしまっていいんだろうか。


そりゃ、守ってくれるのはうれしいよ?


でも、見返りはどうする?


二人の事だから裏は無いと思うけど、何かあった時に二人の選択肢を狭めたくはない。


「でも、二人がもう少し大きくなってからでもいいかな。それこそ自分の事を自分で考えられるようになるまで待ってほしいんだ。」


「どのぐらい?」


「あと10回季節が巡るまで。」


12になればそれなりに自分の事を考えられるだろう。


もちろんわからなかったら俺達が助言してあげればいい。


二人が望めば祝福を貰い、イヤなら断る。


断ったからと言って二人が気を悪くすることは無い・・・はずだ。


「それだけでいいの?じゃあ待つ!」


「ありがとう、ごめんねせっかくのお話なのに。」


「ううん、大丈夫。急にごめんね。」


「今回の件もあったから心配してくれたんだよね?」


「それもあるけど、シュウちゃんの心配がなくなればと思ったんだ。」


「その気持ちがうれしいよ、有難う。」


俺は感謝の気持ちを込めてドリちゃんの右頬にキスをする。


するとキスをした右頬を嬉しそうに手で押さえると、ふわふわと空中に浮かびだした。


「えへへ、嬉しいな。」


「ディーちゃんには・・・また今度ね。」


内緒には出来ない。


だってどこかで見ているはずだから。


ここで出てこないのは理由があるんだろう。


「・・・私も。」


と思ったら出てきた。


「ディーちゃんも有難う。」


左頬にキスをすると嬉しそうに左頬を手で押さえ同じように浮かびだした。


こらこらスカートの中身が見えますよ、二人共。


「季節が10回廻ったら。」


「うん、楽しみだね。」


長い年月を生きている二人にとって10年なんて瞬きみたいなものだろう。


これから生まれてくる子供達も同じだ。


彼らがどうするかを選べばいい。


まぁ、そんな心配がなくなれば一番いいんだけどね。


ふわふわと浮かぶ二人に両腕を掴まれながら店へと向かう。


願わくば平和な時間が続きますように。


そんなことを考える自分がいた。

今回も駆け込みセーフです。

ゲームがしたいのに仕事が忙しい!

書く時間が無い!

でも書きたい!

そんな状況ですが頑張りますのでどうぞお付き合いください。

今回はすこし落ち着いたない様になりましたがそろそろ終盤に入ります。

姿の見えない相手に対してどう立ち向かうのでしょうか。

そして行きつく先は?


それはまた次回という事で。

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