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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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突然の辞令

平和な時間が長く続きますように。


そんなことを考えるとフラグが立つよとどこぞの誰かが言っていた。


ホラー映画の定番フラグ。


死亡フラグ。


結婚フラグ等々。


世の中にはフラグになる言葉が多い。


それこそ言葉選びを慎重にしなければならないぐらいにだ。


「緊急招集よ。」


ですよね、知ってた。


そんなセリフが漏れそうになったのは。


夏節花期も終わりに差し掛かったころだった。


陰日は特に問題なく最終日を迎え後は休息日を待つのみとなった所である。


「何事ですか?」


「商人誘拐事件で進展があったわ。っていうか、それ関係で貴方にお声が掛かってるの。すぐに行くわよ。」


「行くわよってどこにですか?」


「もちろん王都よ。」


はい?


今なんて言った?


王都?


いやいやいや、行くまでのどれだけ時間かかると思ってるんですか。


往復するだけでもう秋節。


こちとら収穫やらニケさんの出産やらで秋も大忙しなんですよ?


冒険者の数も増え、そろそろダンジョンの大幅改造を行わなければと話し合っていたところだ。


それなのに王都て。


「すみません、事態が良く呑み込めなくて。」


「気持ちはわかるけど国王陛下直々のお呼び出しよ、拒否権は無いわ。」


「あ、そうですか・・・。」


「メルクリア殿、事情ぐらいは説明してくれるな?」


「そうです。何も知らずにシュウイチさんを送り出すなんてできません。」


陰日最終日。


朝食後、束の間の一家団欒を楽しんでいたその最中の事だ。


突然メルクリア女史が黒い壁の向こうから現れ、こんな事を話すものだから珍しくエミリアまでが食って掛かっている。


まぁ気持ちはわかるよ。


「そうね、それぐらいは・・・でもこの件は他言無用よ、わかった?」


「それほどの事態なのだな。」


「ここ百数十年の均衡が破られるぐらいにね。」


「百数十年・・・。」


時間の大きさにニケさんが戸惑っている。


俺にしてみればこの世界に来てまだ三年目なので全く実感が無い長さだ。


「戦争か。」


「まだそこまでは言ってないけど、それに近い事が起きるかもしれないわ。」


「どういう事なんですか?」


「貴方が発見した商人誘拐事件。それを調査していると隣国の国王が関わっていることが判明したのは知ってるわよね?それに関して混成議会と元老院は遺憾の意を表明し、早急に対処するようにとの声明を発表。国王陛下もそれに署名したわ。」


「その話は騎士団でも聞いている。隣国の犯罪を許してはならないというのが国の方針だ。」


「で、それに対して反応があったと。」


今まではダークス・・・いや、トーターという男が主導して誘拐を行っているというだけで、国王直々に命令を下しているわけではないという事になっていた。


だが、実際に命令を下したのが国王だという情報が持たされると、議会は大きく揺れる。


それもそうだろう。


国王が自ら命令して人を誘拐して来いなんて言ったんだ、立派な侵略行為になる。


それに対して遺憾の意を表明し、早急に誘拐した人を返せと言ったら・・・。


「今回の件はあくまでも誘拐ではなく正当な勧誘行為であり非難される筋合いはないそうよ。つまり返す気はないって事。」


「それはおかしな話だ。強制的に連れていかれたという証言も証拠もある。それを否定してまであくまでも勧誘行為であると言ったのか?馬鹿げてる。」


「それどころか、今回の件は国政に関わる重要な事案でありそれを邪魔するのであれば容赦はしない的な発言もして来たそうよ。加えて、こちらが要求する人材を早期に譲渡するようにとも言ってきたわ。」


「で、その中に私の名前もあると。」


「察しがいいわね。」


「拒否すれば軍事的に進行し人材を奪取する用意がある。とか何とか言ってるんじゃないですか?」


「その通りよ、貴方の入れ知恵じゃないでしょうね。」


「まさか、この国を裏切る理由なんて一つもありませんよ。」


こんなに店と村の事を思っているというのに心外だなあ。


「隣国の事は風の噂で聞いてはいるが、まさかそんな強硬手段に出てくるとは。」


「イナバ様を連れていくだなんて、そんな事許されません!」


「まぁ今は口だけでしょうから、さすがに国境を越えて進軍してくることは無いでしょうけど・・・。」


「この国の軍備ってどうなってるんですか?」


「各騎士団の他、国境警備隊が組織されている。と言っても、最近は平和だったから周辺の魔物から建物を守る程度の兵しか用意されていないな。」


「隣国の様子は?」


「現在国境を封鎖しているから詳細は不明よ。」


ですよねー。


自分から喧嘩売っといて、さぁ見てくださいってことは無いだろう。


まずは国境を封鎖して、いつでも戦えるという意思を示さないと。


でも国境を封鎖するという事は物流を含めてすべてを止めてしまうという事だ。


ミハエル王子の話では隣国はあまりいい状況ではないと記憶してるんだけど・・・。


大丈夫なのか?


「それで、国王陛下の招集理由は?」


「もちろん貴方の安全確保よ。」


「知恵袋か何かだと思ってません?さすがに戦争となると荷が重いんですけど。」


「ただの商人にそこまで口を出させたら後々問題になるでしょ、それはないわよ。」


ですよねー。


よかったよかった。


「この間の襲撃もあるし、名指しされた人物は早急に身柄を確保し王都に集めよとのお達しなの。しかも転送陣を使ってね。」


「えぇ!あの金食い虫を?」


「費用は国が負担してくれるわよ。」


「でも、そうなったら・・・。」


「そうね、皆には当分会えない可能性が高いわ。」


何という事だ。


折角穏やかな生活を手に入れたと思っていたのにまたかよ。


平和な日々はどこに行った!


「やむを得んな。」


「そうですね、また襲われる可能性もあるわけですし。」


「ですがダンジョンと店はどうするのです?」


「当分は彼抜きで運営してもらう事になるわ。まぁ、いなくても問題ないでしょ?」


「それひどくないですか?」


「事実よ。貴方無しでも十分に回るだけの人材が確保されているわ。正直に言ってこれだけ恵まれている店はほとんどないわよ。」


それは俺もわかっている。


俺以外に店を回せる人間が二人。


荒事に対応出来る人二人。


ダンジョン妖精二人。


宿を運営する人一人。


他にも村やギルドの出張所から人員は手配できるので、俺が居なくても十分に経営を続けられる。


あれ、むしろ俺っていらない?


そ、そんなことないよね?


「もちろんです。シュウイチさん無しのシュリアン商店なんてありえません。」


「その通りだ。ここはお前の店で、お前の帰ってくる場所だ。」


「リュシア様もシルカ様もいますよ。」


「サリューもいますよ、お父様。」


嬉しくて涙が出そうだ。


お前の居場所なんてないと言われたらどうしようかと思ったよ。


「当分は私が行き来して状況を伝えるし、私も手伝いに入るから問題ないでしょ。」


「そうですね。何かあったらメルクリアさんから聞けばいいわけですし、村の運営もウェリス達が居ますから大丈夫でしょう。後は収穫と収穫祭を残すぐらいですから。」


「今回の件も長く引っ張る事はあるまい。何かしらの形で決着をつけるはずだ。」


「それで戦争になったら?」


「仕方ないだろう。」


魔物がはびこる世の中でわざわざ人が争う理由がどこにある。


と、俺は思うんだけど世の中そんな綺麗事だけで生きていけないんだよね。


ぶっちゃけ、この国ってかなり恵まれてるし。


魔石も豊富にあって、国土も比較的豊か。


冒険者がしっかり機能しているので魔物の襲撃も比較的少ない。


隣国からしてみれば喉から手が出るぐらいに欲しい環境だろう。


それを軍事的に奪いに行って、その後同じように機能すると思っているんだろうか。


余程のバカなのか、文句を言う人がいないのか。


どっちかっていうと後者なんだろうな。


ミハエル王子も苦労するわけだ。


「もちろんそうならないように動くでしょうけど、最悪の事態は考えるべきね。でも大丈夫よ、ここは国境の真反対だしこんな辺鄙な所まで責めてくることはありえないわ。」


「私もいませんしね。」


「そういう事。でも、貴女達が弱味であることは間違いないから警備とかは付くでしょうね。」


「致し方あるまい。私のせいでシュウイチが危険な目に合うなど考えたくないしな。」


また前回のように強襲されないとも限らない。


万全の状態で警護してもらわねば。


でもまぁ、ドリちゃんもディーちゃんもいるしこの子達に何かあったら助けてくれるだろう。


念の為リェース様にもお願いしておいたほうがいいだろうか。


さすがにお膝元で大暴れはさせないと思うけど・・・。


「あぁ、私にも転移魔法が使えたらよかったんですけどねぇ。」


「まったくよ。三精霊の祝福があってどうして魔法が使えないのかしら。」


「しりませんよ。むしろどうやって転移魔法を覚えたんですか?」


「そりゃあ彼に聞いたのよ。」


「彼?」


「エフリーに決まってるでしょ。あの時はお母様にバレる前に急いで家に戻らないといけなかったから、かなり必死に聞いた覚えがあるわ。」


「いったい何をしたんですか。」


「そりゃあ、まぁ、色々よ。」


人を燃やしにでも行ったんだろうか。


この人ならありえなくもない。


前科があるしな。


「でもドリちゃんもディーちゃんも知らないみたいなんですよねぇ。」


「やっぱり素質の問題だろうか。」


「シュウイチさんは魔力をほとんど持ってませんしね。」


「お父様はまだこの世界に来て時間も短いですし、仕方ないと思います。」


「とはいえもう三年、多少半人でもいいと思うのですが。」


「そこんとこどうなんですか?」


「だから私に聞かないでしょ。フェリス様も難しいって言ってたし、あの方でも知らないとなると残るはフォレストドラゴンぐらいじゃないの?」


でもリェース様に聞いても使えないって言われたしなぁ。


ぐぬぬ、やはり無理か。


使えるならどこにいてもすぐに帰って来れるのに。


子供達の顔を見れないのは非常につらい。


また単身赴任の日々が続くのか。


「今回はいつ戻れるかもわからないけどね。」


ですよねー。


ガクリとうなだれる俺を心配してか、子供達が近づいてきた。


そして頭をよしよしと撫でてくれる。


何だよこの子達、天使か!


思わず抱きしめるとキャッキャキャッキャとはしゃぎだす。


この顔を見れないなんて。


地獄か。


「ともかく急いで準備をしなさい。昼までには連れてくるようにって言われてるんだから。」


「仕方ありませんね。」


商店連合はこの国の企業だ、その上に言われたとなったらどうにもできないだろう。


どれだけ俺が抵抗しても国王陛下の招集となればいかざるを得ない。


それから急いで準備をして、大きなカバンいっぱいに荷物を入れた。


ダマスカスの短剣ももちろん忘れない。


「で、みんな一緒なのね?」


「もちろんだ。」


「転送陣は商店連合のですよね?ならサンサトローズまでご一緒します。」


「せっかく馬車が有りますし・・・。」


「お父様の出立です、見送らないわけにはいきません。」


「幸いダンジョンは休みですから。」


「アイ!」


「ハイ!」


子供達も手を上げていく気満々だ。


玄関で見送り・・・のはずが全員でサンサトローズまで来てくれるようだ。


確かに馬車を手配しなくても良くなったのはデカい。


こうしていつでも好きな時に集団で移動できる。


村までの街道を子供と手をつないで歩く。


これも当分お預けか。


寂しくなるなぁ。


「なんだかんだ言っていつもすぐ戻ってくるんだ。今回も大丈夫だろう。」


「そうなるように祈っています。」


「頑張って早く帰ってきてくださいね。」


「何を頑張るかはわかりませんが、頑張ります。」


「保護とは名ばかりで、必ずやお父様の知恵を借りに来ることでしょう。娘として鼻が高いです。」


「ダンジョンはお任せください。サリューと二人、今以上に魔力を貯め増築しておきます。」


頼りになるダンジョン妖精だ事。


村につき、ウェリスとドリスに事情を説明する。


やっぱりな。


そうなると思った。


そんなことを言われたのでとりあえず殴っておいた。


馬車を借りてサンサトローズへの道をひた走る。


明るい感じにしてくれていた妻達も、近づくにつれその表情は暗くなっていく。


いつもと変わらないのは馬車に大興奮の子供達だけだ。


大丈夫。


そう三人に言い聞かせてその手を何度も握る。


手が三本あったらいいのに。


「私の手は握ってくれないのね。」


「メルクリアさんとは向こうでも色々とお世話になりますから。」


「そういうんじゃないんだけど・・・。」


「よろしく頼むぞメルクリア殿。」


「お願いしますね、フィフティーヌ様。」


「そんなこと言われたら握れないじゃない!」


あはははとみんなで笑いながらその手を握る。


拗ねた顔も中々に可愛いんです。


サンサトローズに到着し、ぞろぞろと街の中を歩く。


何事かとみんな振り返るが、俺やシルビアの顔を見ると笑顔で手を振ってくれた。


大名行列のように移動すると、商店連合の前には人だかりが・・・。


何事?


「やっときたか。」


「ププト様、それにティナさんまで。」


「こんにちはイナバ様、皆さん。」


「遅くなり申し訳ありません。このような状態でして。」


「そうなるだろうと予想はしていた。皆、突然の命で戸惑っているだろうが今しばらく辛抱してくれ。」


家族に向かってププト様が頭を下げる。


「頭を上げてください、プロンプト様。」


「シュウイチさんですから。」


だから俺だから何なんだ・・・っていうツッコミはもうしない。


「それで、ティナさんも見送りに来てくれたんですか?」


「いえ、私も一緒に行きます。」


「ってことは、名指しされたんですね。」


「そうみたいです。」


「商人だけでなく冒険者まで、いったい何をさせるつもりなんだろうか。」


「わかりません。」


でもまぁ、ティナさんも一緒なら安心だ。


「王都へは私も行くことになっている、皆留守は任せたぞ。」


「お任せください!」


商店連合に集まっていたのはププト様の部下、加えて騎士団の皆さんだ。


しかしカムリの姿は無い。


「彼は一足先に向かったぞ。」


「カムリ騎士団長まで?じゃあ騎士団は・・・。」


「案ずるな、カムリが居なくても彼らは十分にやっていける。」


「そうですね。」


何かあればシルビアもいるから大丈夫だろう。


「ほら、そろそろ行くわよ。」


名残惜しいが時間が無いようだ。


もう一度家族全員と抱き合ってから、手を振る。


子供達の顔を見ると思わず泣きそうになるが、グッと我慢した。


「じゃあ行ってきます。」


「「「「いってらっしゃい。」」」」


皆に見送られながら建物に入る。


向かうは王都。


まさかこんなことになるとは、思いもしなかったなぁ。

さぁ、何やらきな臭くなってまいりました。

突然の招集、しかも国王陛下直々にです。

何やら話がややこしくなってまいりました。

彼、ただの商人って設定なんですけど・・・。

全く承認してないと思ったそこのアナタ!

大丈夫です、作者もそう思ってます。


とはいえ、題名通りに生きるのが主人公の宿命。

どうなるかは次回という事で。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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