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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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襲撃を超えて

背後から聞こえる馬の足音と刺客の怒号。


「何だ、何かあるぞ?」


「何で道の真ん中に樹があるんだよ!」


「この程度飛び越えれば問題ない!」


それに臆することなく逃げ続けるとしばし、今度はソレが馬の嘶きと男たちの悲鳴に変わる。


「うわぁぁぁ!」


「なんだこれ!」


「ちくしょう、罠だ!」


「止まれ止まれ!」


「止まれって言ったって・・・うわぁぁ!」


いい感じに罠に引っかかってくれたようだ。


暗くて様子はわからないが、良い感じに穴に嵌ってくれたらしい。


嵌れば最後、最高の粘りになった泥が絡み抜け出せない。


どれだけもがいても引っ張っても無駄だろう。


なんせ二精霊の力で作られた特別製だ。


今までこんな贅沢な罠は存在しなかっただろうな。


だが、そんな贅沢な罠とはいえ流石に全員引っかかってくれるわけもなく、何人かは左右に分かれて難を逃れたらしい。


馬の足音はまだ聞こえてくる。


「馬車は止まれ!降車して追い込むぞ!」


さらには乗り越えられないと判断した馬車に向かって降りろとの指示まで聞こえてきた。


何人乗っているかはわからないが、それなりの数が追ってくるだろう。


流石のシルビアでも大勢に囲まれれば苦戦は必至。


しかしながら、それが叶うことは無い。


「なんだ!?」


「くそ、蔦だ!蔦が絡んで・・・。」


「クソ開かないぞ!」


「こんなの切ってしまえば。」


「振り回すな!味方を切るぞ!」


ドリちゃんの蔦が彼らを襲い予定通り身動きを取れなくしてくれたようだ。


馬車ごとぐるぐる巻きにしたのかもしれない。


音が小さいのでそれ以上は判断できないが・・・まぁ、大丈夫だろう。


「見つけたぞ、あそこだ!」


「街道を逃げるとは馬鹿か?」


「殺せ殺せ!」


流石に人の全速力と馬の全速力では差がありすぎるので、早くも追いつかれてしまったようだ。


刺客の声がすぐ後ろから聞こえる。


それでもまだ森に逃げ込んだりしない。


まっすぐに逃げて逃げて逃げて・・・。


「死ねえぇぇぇ!」


囮。


それが俺の役目だ。


馬が俺の横を通り抜け、追い抜きながら武器を振り下ろす。


追い抜きざまに切りつけるつもりだったんだろう。


だがそれが叶うことは無かった。


「そんな事、させないよ?」


突如として現れた水の壁によって騎乗していた刺客だけがおいていかれる。


馬が俺の横を通り過ぎて行った。


「何だ?」


「相手は精霊師だ、気を抜くなっていっただろ!」


「矢だ!射殺せ!」


これまた物騒な発言だなぁ。


さすがに背中から撃たれると止められない可能性が高いので方向転換して森に逃げ込む。


「くそ、森に逃げたぞ!」


「追いかけろ!」


鬱蒼とした森を馬で追いかけるのは不可能。


そう判断した刺客達も馬を飛び降り俺を追いかけて森に入ってきた。


勝手知ったる森・・・ではないが、ドリちゃんのおかげか木々を気にすることなく走る事が出来る。


あれだ、『木が避けてるー!』ってやつだ。


もちろんそうなのは俺だけで、追手はそういうわけにはいかない。


「くそ、なんであんなに早く・・・。」


「奥に逃げ込まれると厄介だぞ!」


「他のやつらはどうした!」


声の感じから追いかけてきているのは三人のようだ。


この人数なら十分に対処できる・・・っていうか、捕獲できる。


俺は速度を落として逃げるのを止めた。


「ドリちゃんいる?」


「うん!」


「どんな感じかな?」


「お馬さんの荷物はぐるぐる巻きにしたから出てこれないよ、今はシュウちゃんの奥さんが見張ってくれてる。穴に埋まった人はノーマが固めたから問題ないかな。」


「じゃあ残ったのは後ろの三人だけだね。」


「ぐるぐるしちゃう?」


「うん、やっちゃって。」


人的優位は消滅した。


後はドリちゃんにお任せすればあっという間に捕縛されるだろう。


「うわぁぁ!」


「なんだ!足に蔓が!」


「離せ!くそ、腕が!」


ほら、こんな感じで。


流石に走り続けたので呼吸は荒いが、俺はただ逃げただけである。


頑張ったのは俺以外の皆様。


いや~、自分で言うのもあれだけど相変わらず他力本願だよね。


精霊様々ってやつだ。


後でソイルさんにもお礼を言わなくちゃ。


「つかまえたよ~。」


「それじゃあ引きずって皆の所に戻ろうか。」


「は~い。」


立って歩け!なんて面倒な事はしない。


俺の命を狙ってきたんだ、傷だらけになる覚悟ぐらいあるだろう。


男たちの文句とうめき声を聞きながら森を出て、皆の所に戻る。


「シュウイチか。」


「シルビア、お疲れさまでした。」


「私は何もしていないぞ。して下さったのはドリアルド様だ。」


「いやぁ、こんな簡単に捕まえられるなんておもわなかったよ。」


「ソイルさんも有難うございました。おかげで簡単に捕まえられました。」


「頑張ったのは僕じゃなくてノーマだよ。」


「ノーマ様も有難うございます。」


未だ姿は見えないがお礼を言っておこう。


罠を見ると、土の水分を抜いたのか嵌った人と馬が埋まったまま固まっていた。


まるで街道から生えたような格好になっている。


「あはは、珍しく照れてるよ。」


「ドリちゃんとディーちゃんもありがとうね。」


「えへへ、どういたしまして。」


「頑張りました。」


「彼らはどうする?」


「取り敢えず朝までこのままにしておきましょう。」


「うるさくないか?」


「もう覚悟は出来ているはずです。そうしないという事は、その程度という事で。」


「それもそうだな。」


もしこの前の刺客のようなタイプなら、自分の不利を悟った瞬間に自害しているだろう。


そうしないという事は、そこまでの忠誠が無い雇われの可能性が高い。


持っている情報は少ないかもしれないが、昨日のようなことにもならないだろう。


「とはいえ、このまま朝が来るまで待つのもあれです。」


「そうだな。」


「えーっと、リーダーは誰でしたかね。」


俺を追いかけていた追手は15人。


プラス馬車の中のその他大勢。


罠に嵌ったのが9人で、ディーちゃんの水に捕まったのが3人。


そして森で捕まった3人だ。


最初にそれらしい奴と話をしたが、暗がりだった為声しかわからなかった。


それぞれの顔を見るも顔を伏せるか目を閉じるかで言う事を聞いてくれない。


「もう一度聞きます、リーダーは?」


また返事は無い。


仕方ない、手荒な真似は好きじゃないが俺もやる時はやる男だ。


「返事が有りませんねぇ・・・。では一人ずつ死んでもらいましょう。」


「そうだな、これだけいるんだニ・三人減っても問題ない。」


俺の発言にシルビアが同調する。


普段はこんなこと言わないので、冗談だという事がすぐにわかったんだろう。


それを聞いて彼らに動揺が走るのが手に取るようにわかる。


誰だって死にたくないものだ。


「死に方は三つの中から選ばせてあげます。一つは首を落とす、二つ目は窒息する、三つめは溺れる。どれも最大の苦痛を与えながら殺してあげます。さぁ、一番最初に死にたいのは誰ですか?」


ニコニコしながら恐ろしいことを言う俺は、彼らにはサイコパスか何かに見えているんだろう。


もちろんそんなことをするつもりはないのだけれど、恐怖を与えるには十分な効果があったらしい。


ほぼ全員の視線が一人の男に注がれる。


その男はぐるぐる巻きにされて、ちょうど真正面に座っていた男だった。


って事はあの罠にはひっかかってなかったのか。


残念だ。


「貴方が頭ですね。」


「さぁ、どうかな。」


「他の皆さんはそう仰っているようですが?」


「俺達はそういう風に訓練されている。殺すなら勝手に殺せ。」


「わかりました。シルビア。」


「こいつでいいか?」


シルビアが半分土に埋もれた男の首に剣を当てる。


ヒンヤリとした感触を感じた瞬間に男の目が大きく見開かれた。


が、叫び声は上がらなかった。


本当にそう訓練されているんだろうか。


「何人目で答えがわかるでしょうか。」


「だからやれって言ってるだろ。」


「だそうです。」


「ならば仕方あるまい、恨むならあの男を恨め。」


シルビアが男の首に当てた剣をゆっくりと引く。


俺の言葉通りゆっくり死ぬように・・・。


「や、止めてくれ!」


「おや?」


「頭はあの人だ、間違いない!」


「そう言ってますが?」


「死にたくないだけだろ、良いから殺せ。」


「わかりました、こうしましょう。教えて下されば開放します、これでいかがですか?」


「何をバカな・・・。」


「しかも、誰が答えを言ったかわからないようにします。顔に覆いをかけて、一人ずつ聞いていきます。あぁ、声は出さなくてもいいですよ、目線だけでわかりますので。」


小学校の犯人探しに使われる定番のやつだ。


昔は『こんなので誰が言うんだよ。』と思ったりもしたが、こういう状況であれば効果は抜群だ。


本当のことを言えば死なない。


どれだけ訓練されていても死ぬのと生きるのとでは気持ちの持ちようが全然違うからなぁ。


その手段を取るまでもなく、全員が男の方に目線を向けた。


決まりだ。


「シルビアこの人を厳重に拘束したのち、念の為猿轡をかませてください。」


「わかった。」


「他の皆さんにはこのまま埋まって頂いて、明け方騎士団に連れて行ってもらいましょう。あぁ、ここでは殺しはしませんよ。でも、その後どうなるかは騎士団次第ですから。良い情報を吐けばそれなりの待遇は保証される、とだけ言っておきます。」


ここでは助かる。


でもその先は知らない。


俺の言葉に一先ずは安心した彼らだったが、この後どうなる事やら。


情報次第、それこそダークスの情報を提供してくれれば命は助かるだろう。


だが俺を殺しに来たという罪は残るので、どっちに転んでも奴隷として使い潰されるだろうな。


というか、俺一人を殺すためにどれだけの人数連れて来てるんだよ。


馬車の中にどれだけいるかはわからないが、20人は超えてるだろう。


いくら精霊師相手だからってやり過ぎじゃない?


「お見事でした。」


「いえ、ソイル様もお手伝い有難うございました。」


日が昇り、連絡を受けた騎士団員に連れられて襲撃者達は連行されていった。


やれやれ、結局徹夜だよ。


「さすが複数精霊の祝福を授かっているだけはありますね、噂でしか聞いていなかったので正直信じていなかったんですけど、実際に見て納得できました。二精霊に祝福されるためには、やはり器が必要なんですね。」


「器、ですか?」


「そうだよ!シュウちゃんは特別なんだ。」


「シュウちゃんは、すごいんだよ?」


「えぇ、そう思います。ノーマも同じことを感じているようです。」


そういえば初めてあった時も、ドリちゃん達は俺のことを特別だと表現していた。


てっきり比喩表現だと思っていたんだけど、本当は違うんだろうか。


「その器というのは?」


「それは僕の口からは言えないよ。」


「じゃあドリちゃん?」


「特別だからだよ?」


「う~ん・・・。」


ワザとごまかしているのか、それとも言えない理由があるのか。


ま、それで困ったことはないし別にいいけどね。


「まぁまぁシュウイチはシュウイチ。それでいいではないか。」


「うん!」


「シュウちゃんはシュウちゃんだよ。」


「何はともあれ襲撃者は捕まえましたし、すくなからずダークスの情報は引き出せるでしょう。問題は今後も襲撃があるかどうかです。」


「そうだな。今回はソイル殿がいて助かったが、次回はそうではない。」


「僕も、今日中にサンサトローズを出なきゃならないんだ。」


お忙しい中お付き合いいただき本当にありがとうございました。


一応排水路の件は直接話が出来たし、それだけでも十分収穫があったといえる。


後はププト様にお願いすればいいだけだ。


「どうする、このままサンサトローズに行くか?」


「そうですね・・・。無事だということだけ村の人に伝えてもらえばいいでしょう。」


「わかった、奴らの残した馬車を押収するからそれに乗っていくぞ。ソイル殿もどうだ?」


「せっかくですからご一緒させていただきます。」


馬を村の人にお願いしてからサンサトローズへと向かう。


仮眠をしたいところだが当分は寝れないだろうなぁ。


二徹だけは避けたいところだ。


そんな事を思いながら馬車はサンサトローズへひた走る。


襲撃犯は何者なのか。


そして一体ダークスというものは何者なんだろうか。


その疑問だけはいまだに晴れることは無い。

無事に何とかなりました。

襲撃者を大量捕獲したので少しは情報が出てくると思うのですが・・・。

果たしてダークスという人物は何者なのか。

そして何が目的なのか。

未だその答えは謎に包まれたままです。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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