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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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お願いと応戦と

「話というのは他でもありません、私達の村にも排水路を作って頂きたいのです。」


「ここじゃなくて、村に?」


「ダンジョン商店の他に村長も兼任しておりまして、昨日の大雨で現在使用している水路に汚水が溢れ大変な事になったんです。元々そういう計画はあったのですが、今回の一件で優先順位が大きく変わりまして、早急に手を打たなければならなくなりました。このまま不衛生な状況が続けば疫病などの二次被害が出る可能性がありますから。」


「へぇ、ここじゃなくて村長までやってるんだ。精霊師だから?」


「いえいえ、それとは関係なくです。」


普通に考えれば村長と兼任なんておかしな話だ。


精霊師なんだからできるよね?みたいな過度な期待を受けて強制されていると思われても仕方がない。


でも本当にそうじゃないんだよね。


その辺については色々と事情があるんだけど・・・。


ま、聞かれたら応える感じでいいだろう。


「ここに来る途中に見させてもらったけど、確かに排水関係では色々と問題ありそうな地形をしていたねぇ。北側の畑付近は綺麗に整備されているのに肝心の居住部がかなり適当な感じを受けたけど・・・あれは君が?」


「もともとは既存の堀を利用していたんですが、急増した住人に対応するべく住居建設を優先したため水路関係は後手後手になってしまいました。何とか今の形に落ち着いたものの、このような状況でして。」


「専門家じゃないのにむしろよくここまでやったと褒めてあげたい所だけど、確かに大変な状況みたいだね。それで、具体的にはどういう解決方法を見越しているのかな?」


「既存水路の終点にスライムを使った浄水槽を設置、汚水を浄化して状況を改善します。スライムの増殖や消化できない固形物に関しては、浄化槽下に設けた雑処理施設にて除去できると考えています。」


「なるほど。」


「問題は、浄化した後の水でして・・・。本来であれば近くの川に流すところですが残念ながらここから近くの川まではかなり離れており、森の中を通る都合上、地上を通る水路では後々の維持管理が大変になると判断しました。そこで、地下を通る排水路を掘って頂き、最終的に川に排水を流す計画になっています。」


とまぁ、今の所はこんな感じか。


計画自体はスラスラいえるけど、これを実行するとなるとかなりの大工事になる。


それこそ街道整備の時のようにププト様主導でやってほしいぐらいの内容だ。


これを村だけでやろうってのがそもそも間違ってるんだけど、上申してからでは時間が掛かりすぎるので、前倒しでやっているわけだな。


「なかなかの計画だけど、本当に大丈夫なの?」


「スライム型浄水槽に関しては我々で大穴を掘り設置します。これらは既存の施設を流用できるので商店連合の力を借りて実現可能です。地下の雑処理施設に関しては正直かなりの深さになるので、やってみるまでは何ともというのが本音でしょうか。かなりの工事になりますし、素人では難しいでしょうから国から専門家を派遣してもらって行う事になるかもしれません。」


浄化槽を専門に作るような業者は無いが、ノウハウはしっかりとある。


それをどれだけ生かせるかが課題だな。


「じゃあ僕に頼みたいのは排水路だけでいいのかな?」


「むしろそこに関しては我々ではどうしようも出来ないので、ぜひお願いしたいと考えています。もちろん、あくまでもこれは個人的な話ですので、実行する際は正式にサンサトローズ領主、プロンプト様より正式な依頼を出すことになるでしょう。」


「実際土地を見てみないとわからないけど・・・。ウンディーヌがいるのなら彼女にお願いすればいいんじゃないかな。」


「地下水であれば可能でしょうが、新設する地下水路となるとなかなか・・・。増水にも対応するとなるとしっかりとした基礎固め、硬化処理、傾斜管理が必要になりますから。」


「君、本当に商人?専門家じゃなくて?」


「あはは、下手の横好きで知識ばかりあるだけですよ。」


まるで専門家みたいな口ぶりだが本職は商人だ。


大昔に、無人島に行ったら!とか勝手に考えてあれこれ調べまわった知識がこんな所で使えるとは思っていなかったよ。


ただ、あくまでも素人の付け焼刃。


専門家の足元には到底及びはしない。


「話を聞いた限りは可能だと思うよ。巨大都市の下水道と違ってスライム型浄化槽は設置が簡単だし、水路一本なら僕にかかれば朝飯前さ。まぁ、合流部分の排水弁とか、高低差管理とかはちょっと面倒かもしれないけど、その辺はいつもの事だしね。」


「本当ですか!」


「でもごめんね、いくら領主様のお願いでもすぐに作ることは出来そうにないや。」


なんだって・・・。


個人はともかく領主直々の依頼でもできないとは、いったい何が問題なんだろうか。


「どうしてですか?」


「今ちょっと立て込んでいてね、新規の依頼を受けていないんだよね。もちろん緊急性の高い依頼には随時対応しているんだけど、国内にいない事も多いからすぐにっていうのはなかなか難しいんだ。」


「ソイル殿は国外にもいかれるのか?」


「まぁ、ちょっとね。」


そういえばあまり国同士の移動があるっていうのは聞かないな。


この国の国土がかなり広いからっていうのもあるけれど、たしか他にも大陸はあるはずだし他の国もそれなりにあった気がする。


国同士の貿易は行われているようだし、この間みたいに王子が出入りできるぐらいには緩い関係だと思うんだけど・・・。


この国の事はそれなりに知っているつもりでも、国外の事となると全然知らないんだなぁ。


「あまり聞かない方がいい内容なんでしょうね、わかりました。でも依頼自体はプロンプト様よりして頂きますので、出来る限りお願い致します。」


「時間が出来たらすぐに伺うようにするよ。ここは静かだし気分も休まるから・・・。」


「王都等は大変なのではないか?」


「そうだね、実は王都にはもう何年も帰ってないんだ。帰れないが正しいかな。」


「人が多いとそれだけ聞こえてくる声も多いわけですか。」


「そういうこと。その点ここは人も少ないし、人の心も比較的穏やかだから気が楽だよ。」


「どうぞゆっくりしていってください。」


「そうしたいのは山々なんだけど・・・。」


あれ?


今日は泊るって話じゃなかったっけ。


そう思った次の瞬間。


ディーちゃんが俺の横に現れた。


「あれ、ディーちゃんどうしたの?」


「シュウちゃん、良くないのが来るよ。」


「え?」


「ん~、音の感じからすると馬が10頭それと馬車が三台って所かな。」


「どういう事?」


「君さ、最近面倒な相手を探したりしなかった?例えばダークスって人とか。」


「どうしてその人の名前を・・・。」


まさかソイルさんの口からその名前が出てくるとは思わなかった。


ってそれどころじゃない。


「馬はともかく馬車というのは聞き捨てならんな。すぐに来るのか?」


「ん~、距離的にまだ大分離れているとは思うけど、村に来るのは時間の問題だと思う。」


「目標がシュウイチであれ、村を通過する時によからぬことをしないとも限らん。シャルを攫いに来た可能性だってある。」


「どうしますか?」


「すぐに出る。シュウイチは・・・。」


「もちろん私も行きますよ。」


「止めるだけ無駄か。」


子供達の為にもここまで来られては困る。


幸いまだ時間はある、今から馬で迎えば迎え撃てるはずだ。


「手はずは道中で、ソイルさんはここで待って居て下さい。」


「僕も行くよ。」


「でも。」


「彼らには僕もそれなりに恨みがあってね、むしろいい機会を与えてくれたと喜んでいるぐらいだ。足止めぐらいは出来るから任せてよ。」


「ではお願いします。」


「シュウイチは私の馬車に、ソイル殿はもう一頭に乗ってくれ。」


エミリアもニケさんも特に何も言わなかったが、ただ、無事で帰ってきてくださいねとだけ言って俺達を見送ってくれた。


シルビアがいつものハーフプレートを身に着けオリハルコンの剣を腰に差している。


母親の顔から戦士の目へと変わっていた。


「行くぞ!」


シルビアに抱き着くような格好で馬に乗り、街道をひた走る。


真っ暗な森。


普段は月明かりが良く見えるはずだが、生憎今日は新月のようだ。


なるほど、だから今日なのか。


月明かりがあれば色々と隠密行動できないもんな。


「どんな感じだ。」


「今街道の真ん中って所かな。大丈夫間に合うよ。」


「わかった。村から少し離れたところで迎え撃ちたい。」


「もしかして僕たちだけでやるのかな?」


「精霊師が二人に、三精霊、それと元騎士団長がいますから何とかなりますよ。」


「僕は戦力にはならないよ?」


「構いません。」


別に直接戦う必要はない。


向こうもまさか狙っている俺本人が迎撃してくるとは思っていないだろうから、その隙をついて返り討ちにするつもりだ。


正確に言えば捕獲。


ダークスに繋がる大切な生き証人だ。


殺しはしない。


もちろん自害もさせない。


今度こそダークスの尻尾を掴んで見せる。


「具体的にはどうする?」


「馬で来るようですから古典的な方法で行きます。」


「と、いいますと?」


「穴って、急に出てくると避けられないんですよね。特に、障害物をよけた後だと絶対に引っかかります。」


「なるほど。」


「さらにその穴が水でいっぱいだったりすると身動きが取れなくなります。深くなくてもいいんです、馬の脚が半分ぐらい埋まるぐらいの泥沼であれば。」


競馬の障害物レースを思い浮かべてもらうとわかりやすい。


馬は目の前の障害物を華麗に避けるようにして飛ぶ。


だが、避けることに意識が向いているので着地地点でリカバリーするのは非常に難しい。


まぁ、これは馬に限らず誰にでも言えることだけど・・・。


着地地点に用意した固めの泥に足を取られれば間違いなく動きを止めることが出来るだろう。


目の前で大量の馬が動けなくなれば、後続の馬車も動くことは出来ない。


まぁ、問題はその後にそこから出てくる人間の方だけど・・・。


それもまぁ大丈夫だろう。


シルビアもいるし。


「じゃあ穴は任せてよ。でも障害物は?」


「私に任せてよ!」


「よろしくね、ドリちゃん。」


「うん!とりあえず道を樹で塞いじゃえばいい?」


「それで十分だよ。」


「そのすぐ後ろに僕が穴を掘って・・・。」


「私が、水を入れるね。」


「よろしくディーちゃん。」


高速で走る馬の横をドリちゃんとディーちゃんが並走?する。


飛んでるから走ってる感じはしないけど、久々の両方登場だ。


「村が見えてきたな。」


「説明している時間はありません、突っ切ってしまいましょう。」


「そうだな、終わってから説明すればいいだろう。」


村の門を通過する時警備していた自警団が驚いた顔をしていたが、方角的に俺達しかありえないので止められることなく通過できた。


夜という事もあり村の中を歩いている人もいない。


そのまま一気に横断して反対側の門を抜ける。


街道が石畳に変わり、一気に速度が上がった。


「近いよ。」


ソイルさんが敵の現在位置を教えてくれる。


出来るだけ村から離れた場所で馬を降り、罠の準備をする。


「シルビア。」


「わかってる、馬車の対処だな。」


「出来るだけ殺さない方向は・・・無理ですよね。」


「お前に害を為す奴は容赦なく切る。とはいえ、重要参考人であることは間違いないからな、前の一件もあるし善処するとだけ言っておこう。」


「それで十分です。」


馬車から誰も出てこなければシルビアの出番はない。


なんならドリちゃんにつたでぐるぐる巻きにしてもらうという手もある。


そうすれば生け捕りに出来るんじゃね?


とか思いついてしまった。


目くばせすると出来るよーと言わんばかりに力こぶを作るドリちゃん。


早くも障害物の設置は終了したようだ。


その後ろでソイルさんが何かをしている。


恐らく穴を掘っているんだろうけど・・・。


精霊の姿は残念ながら確認できなかった。


「ノーマはね、恥ずかしがり屋なの。」


「そうなんだ。」


「でも今土の中で頑張ってるよ。」


「じゃあ大丈夫だね、終わったらいい感じの粘土でよろしく。」


「まかせてね。」


ドドドドと敵が近づいてくる音が足元から伝わってくる。


いよいよだ。


「名乗りはどうする?」


「もちろんしますよ、一応正体を確認しなきゃいけませんし。」


「名乗ったらすぐに逃げる、良いな?」


「もちろんです。」


障害物の前に仁王立ちしてその時を待つ。


シルビアは森に身を潜め、ドリちゃんとディーちゃんは俺の傍で姿を消した。


ソイルさんは・・・。


多分向こうにいるはずだ。


真っ暗闇の向こうから何かが迫ってきて、そして止まった。


「何者だ!」


「貴方達こそこんな時間に何の用です。この先には小さな村と店があるだけですよ。」


「その店に用がある、退け。邪魔すれば殺す。」


「やってみればいい。もちろん、ダークスの手先なんかに出来ればの話ですがね。」


「貴様、我々の正体を何故・・・。」


お、良い感じに動揺してくれたぞ。


案外胆の小さい男のようだ。


「ボス、あいつです。」


「何!?我らが迫っていると知って何故ここにいる。」


「そりゃあ迷惑だからですよ。子供達が起きるんでさっさと帰ってくれませんかね。」


「どういうつもりか知らないが好都合だ、ここで死ね。お前等!」


「「「「へい!」」」」


リーダーの合図で他の男達が馬上で武器を抜く。


幸い飛び道具は確認できない。


よし、後は逃げるだけだ。


「私一人に凄い数ですね。」


「あぁ見えて相手は精霊師だ、お前達ぬかるんじゃねぇぞ!」


「「「「おぉ!」」」」


「ここまで来れたら相手してあげますよ!」


相手が突撃してくる前に反転して全速力で走り出す。


正面の障害物を迂回して、そのまままっすぐ。


後ろを確認することはしない。


俺は囮となって奴らを惹きつけてさえすればいい。


「逃がすな!」


馬の嘶きと足音が俺を追ってくる。


そうだ、追ってこい!


そこがお前らの墓場になるんだ。


って、墓場じゃダメか。


追われているというのに随分と気楽な自分に思わず笑みがこぼれるのだった。

突然やって来た敵。

でもそんな事にも動じないのが主人公です。

そりゃ揉んで揉んで揉まれまくってますから、普通の商人と思ったら大間違いですよ。

彼の理想の普通とはかけ離れてしまいましたが、そのおかげで今彼があるんです。

さぁ、敵は罠にかかるのか。

それはまた次回という事で。


ここまでお読みいただきありがとございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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