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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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思わぬ人物の襲来

「誰でしょうか。」


「このクソ暑い中外套とか頭おかしいんじゃないか?」


「さすがにそれは言いすぎですよ。」


「だがよぉ・・・。」


確かに怪しい人であるのは間違いない。


さっきから微動だにしないし、ってあれ?


いつの間にか怪しい人物がこちらを向いている。


外套を深くかぶりすぎて表情はわからないしさらに男性か女性かすらわからない。


一応警戒したほうが・・・。


「大丈夫だよシュウちゃん、悪い人じゃないから。」


「あれ、ドリちゃんどうしてここに。」


呼んでもいないのに突然ドリちゃんが現れた。


「ん~、なんていうか懐かしい気配を感じたんだ。」


「ドリちゃんが言うなら大丈夫そうだね。」


「そうそう、頭はおかしいかもしれないけど危険はないよ。」


「誰だ!」


突然聞こえてきた声にウェリスが周りを見るもドリちゃん以外誰もいない。


でも今聞こえてきた声はなんていうか地面から聞こえてきたような気がするんだけど。


気のせい・・じゃないよな?


「その通り、よくわかったね。」


「この声、あいつがいってるのか?」


「でもかなり離れています。普通は聞こえませんよ。」


「普通ならそうだろうね、でも僕には聞こえるし僕の声は届くんだ。」


「それはね、ノーマが音を伝えてるからだよ。」


「まったく、君の精霊はおしゃべりだなぁ。もう少し楽しませてくれたっていいのに。」


ドリちゃんの事を君の精霊と言うってことはこの人はまさか・・・。


「土の精霊師。」


「ご明察。初めまして、になるのかなイナバ=シュウイチ君。君の事はフィフィやリュカから聞いてるよ。聞いてるというか聞こえているというか、ともかく敵意はないし今日は挨拶に来ただけなんだ。」


「それはご丁寧にどうも。あの、お近くでお話ししても?」


「もちろん構わないけど、この外套は取らないよ。僕は恥ずかしがり屋なんだ。」


「自分でいうか?」


それは言わないお約束だ。


土の精霊師と言えば俺達が今一番必要にしている人物。


どうしてここに居るかは謎だけど、直接話が出来るのはありがたい。


精霊師同士仲良くしたい所だ。


店の前まで近づくと同時に今度は店のドアが開き、メルクリア女史が出て来た。


あれ?商店連合に行ってたんじゃなかったっけ。


「妙な気配を感じると思ったら、まさか貴方自身が来るとは思わなかったわ。」


「久々だね、フィフィ。」


「そうねソイル、私は・・・あまり会いたくなかったけど。」


「そんなこと言わないでおくれよ。でもまぁ、君は幸せそうだし、色々と面白い話が聞けそうだね。」


「聞かなくてもわかってるじゃない。」


メルクリア女史が諦めたような顔をしている。


「改めまして、シュリアン商店のイナバ=シュウイチです。」


「ソイルだ、土の精霊師をやらせてもらってる・・・って言うまでもなかったね。話には聞いていたけど本当に君の周りは賑やかなんだね。」


「おかげ様で、三精霊様に祝福を授かっています。」


「それに加えてドラゴンの加護まで、店の中からもドラゴンの気配を感じるよ。これだけの力が集まるなんて、この土地は本当に豊かなんだねぇ。」


「それはそうよ、だってシュウちゃんのお店があるんだもん。」


ドリちゃんが自慢げに胸を張っている。


気配を感じるのは精霊師だし当然として、釈然としない部分が他にもある。


「先ほどの話ですが・・・。」


「聞かなくてもわかるって事?」


「えぇ、この前もメルクリアさんが言わなくても色々と知ってると話していました。」


「それはソイルが土の精霊師だからよ。」


「フィフィ、それじゃ説明になってないんじゃないかなぁ。」


うん、全く説明になってないね。


冷静なツッコミありがとうございます。


「僕はね土の声が聞こえるんだ。」


「土の声。」


「えぇと、その為にはそもそも音がどういう性質かっていう所からの話になるんだけど・・・。」


「波ですね。」


「良く知ってるね。でその波、特に低い波が地面を通して遠くまで届くんだ。」


確かゾウがそうだった気がする。


低い音は何キロも離れた仲間の足を伝わってそれを使って会話をしているとか。


あの大きな耳は実は音を聞いているわけではない、みたいなのを昔聞いた気がするなぁ。


それと一緒か。


「なるほど、それを聞き分けているわけですか。」


「聞き分けているというか、勝手に入ってくるんだけどね。」


「え!」


「で、この不審な外套をかぶってるわけよ。これはフェリス様の特別製で不要な音を遮断してくれるんだって。」


「ノームとの相性が良すぎてこんなことになっちゃったんだ。でも彼を悪く言わないでおくれ、彼は僕のみたいな男に力を貸してくれているんだから。」


僕みたいな男。


随分と卑屈な言い方をするようだが、それを出会ってそうそう聞くのは変な話だ。


「ちなみにその音を聞き分けることはできるんですか?」


「集中すれば大丈夫だよ。でもすごく疲れるから、半日が限界かな。」


「それでもすごいですね。」


「えへへ、そうかな。」


「ほめすぎちゃだめよ、すぐに図に乗るんだから。」


「ひどいなぁ。」


外套越しで表情は見えないがなんとなくわかる。


悪い人ではないようなので何よりだ。


その後ドリちゃんにお礼を言ってみんなで店に入った。


「あれ、結構忙しい?」


「買取が多いのよ、すっかりわすれてたわ。」


「僕のことは気にしないで、隅でのんびりしてるから。」


「でも・・・。」


「いいのよ、むしろこれだけお客がいると話もできないから落ち着いてから話しましょ。」


なるほどな。


多方面からたくさん音が入って来るからしんどいのか。


予想以上の客と買取の多さに苦戦しながらもなんとかすべての客をさばききったころにはもう夕刻になっていた。


最後の冒険者が定期便に乗るために急いで店を出る。


今日は宿の客もいない。


と、いうことはだ。


「今日はもう閉店しましょうか。」


「いいのかい?僕のことは・・・。」


「他に客がいないからいいのよ。」


「急いで片づけをしますからソイル様はもう少しお待ちください。」


片づけを済ませ、今日は店で食事を摂ることにした。


ちなみにセレンさんとウェリスは先に帰ってもらっている。


「改めて紹介します、妻のエミリアとシルビアとニケ、ダンジョン妖精のユーリとサリューです。メルクリア女史は・・・説明不要ですね。」


「精霊師のソイルだよ、こんな格好でごめんね。」


「話は聞いている、気にしないでくれ。」


「ほら、リュシア、シルカ、ご挨拶は?」


エミリアに促されて子供たちが一歩前に出るも、外套で顔が見えないからか怖がってかくれてしまった。


「あ、すみません。」


「いいんだ、こんな格好をしている僕が悪い。」


そういうとソイルさんは外套のフードを外した。


現れたのは頭上に大きな耳を付けた少年だった。


犬耳・・・だろうか。


「はじめまして、ソイルっていうんだ。君がリュシア、そして君がシルカだね?よろしく。」


しゃがんで二人に向かって両手を伸ばすソイルさん。


すると、さっきまで怖がっていた子供たちが笑顔でソイルさんに駆け寄った。


「ふふ、歓迎してくれるんだね。」


「人見知りのシルカが・・・これは意外だな。」


「この耳のおかげかな?」


「ソイル様は犬人族の方だったんですね。」


「正確には半分だけどね。」


ハーフなのか。


でもどう見ても亜人の血のほうが来いよな。


「ソイル様、もう隠されても大丈夫ですよ。」


「気をつかってくれてありがとう。君たちは・・・ただのダンジョン妖精じゃないね?」


「わかるのですか?」


「うん、声が聞こえない。ううん、隣の子は少し聞こえるかな。」


「私ですか?」


「雑念がないっていうほうがいいのかな。君のような人は初めてだよ。」


「おほめいただき光栄です。」


ユーリが人造生命体(ホムンクルス)であることは隠しておいたほうがいいだろうか・・・。


「へぇ、実在していたんだね。」


「え、まさか・・・。」


「あ!っと、ごめんね聞こえちゃったんだ。」


「ソイルは人の心の声が聞こえるのよ。だから大変なの。」


「そうでしたか。」


「気持ち悪いよね、心を読まれるなんて。」


「そんなことはありません。お父様は慣れていますから。」


いやまぁ、慣れているというかなんというか。


いろいろとあるんです。


慌ててフードを被るソイルさん。


また表情が見えなくなってしまった。


でも子供たちは怖くないのか、キャッキャと楽しそうに笑っている。


「どうか気にしないでくれ、ソイル殿に悪意がないのは子供らを見てもわかる。」


「ありがとう。」


「さぁ、湿っぽい話は終わりよ。さっさとご飯にしましょ。」


「せっかくのお客様です、腕を振るいますよサリュー。」


「お任せくださいお母様。」


同じ顔をした二人が腕まくりをして厨房へ向かっていく。


どれ、俺も手伝うとしよう。


「ソイル殿はお酒はいける口かな?」


「それなりに・・・かな?」


「じゃあ倉庫からとっておき、持ってきますね。」


「まだ残っていたのか?」


「ドーン様から送られてきたんです。」


「あの方も律義な方だな。」


エミリアとシルビアは倉庫に、ニケさんが子供たちの相手をしてくれている。


「じゃあ残った僕たちは久々にゆっくり話をしようか。いろいろ聞かせてよね。」


「・・・逃げるのが遅れたわ。」


「いや~、あのフィフィに恋人ができる日が来るなんて思わなかったなぁ。」


向こうでは二人が楽しそうに?話をしている。


今のうちにちゃちゃっと作るとしよう。


「作るのは私たちですけどね。」


「頑張りますね、お父様。」


はい、よろしくお願いします。



渾身の料理がこれでもかと振る舞われ、大満足の夕食となった。


ドーン氏からもらったお酒は非常に美味しくてつい飲み過ぎてしまった感はある。


ちなみにメルクリア女史も飲んだので、その後は・・・お察しの通りだ。


「眠られたか?」


「はい、とても楽しかったようですね。」


「明日の朝どんな顔をするのか見ものだな。」


「そんなこと言うと可愛そうですよ。」


「子供達は?」


「いまニケさんが寝かしつけてくださってます。横にフィフティーヌ様がいるので朝までぐっすりでしょう。」


すっかりメルクリア女史の事を気に入ってしまったな。


口ではなんだかんだ言うけれど、子供好きだからなぁあの人は。


「いや~、ご飯は美味しかったしお酒は最高だし、なによりフィフィのあんなにはじけた姿を見れて僕はもう大満足だよ。」


「お口に合って何よりです。」


「ありがとうございますソイル様。」


「ダンジョン妖精って有能なんだねぇ・・・。それとも彼女達が特別だからかな。」


「どうでしょう。もう一人のダンジョン妖精もかなり有能ですから。」


「おや、まだいるのかい?」


「あちらは生粋のダンジョン妖精ですので、ダンジョンの外に出る事は叶いませんが。」


バッチさんもかなり優秀な方だと思う。


お願いしたらあっという間に仕事を終わらせてしまうからなぁ。


今頃は秘密の商人としてダンジョン内を徘徊しているんじゃないだろうか。


冒険者からしてみれば、遭遇できれば生存率の上がるお助け妖精・・・って感じになるのかな?


見た目があれだけどね。


「三人もダンジョン妖精がいつくなんて、さぞ立派なダンジョンなんだろうねぇ。」


「どうでしょう、まだ階層も浅く他のダンジョンの足元にも及びません。」


「それでもあれだけの冒険者が来るだけ立派だよ。仕事がらダンジョンに潜ることもあるけれど、適当な所には冒険者は寄り付かないからね。」


「ありがとうございます。」


「ソイル殿もダンジョンに潜るのか?」


「土の中は僕の管轄だから。仕事中にダンジョンを見つけた時は、中身を確かめる為に潜ることもあるよ。」


なるほどなぁ。


そう言う感じで野良ダンジョンが見つかる事もあるのか。


勉強になります。


ってそうだ、せっかくの機会だしフライングになるけど仕事を頼んでみようかなぁ。


正式な依頼はププト様からしてもらうとして、可能かどうかを確かめてもいいかもしれない。


「地中に水路を作るお仕事をしているとお伺いしましたが・・・。」


「そうだよ。」


「では、お聞きしたいことがあるのですが構いませんか?」


俺の話し方が変わったのに気が付いたんだろう、ソイルさんが姿勢を正しこちらを向く。


表情はうかがえないが、きっと真剣な顔をしているのだろう。


時々崩したような話し方はするけれど、この人は根っからの真面目な人なんだろうな。


そんな事を思いながら俺は仕事の話を始めるのだった。


少し短めで申し訳ありません。

仕事が忙しく執筆が追い付いていない状況です。

小刻みの投稿にならないようしていきますので、どうかよろしくお願いします。


さて、店の前にいたのはまさかの人物。

噂をしていたもう一人の精霊師でした。

なかなか癖のある人のようですが、悪い人ではない様です。

果たして依頼を受けてくれるのか。

それはまた次回という事で。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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