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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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貴女ともう一人の貴女

まるで小学生になったぐらいの小さなユーリが、不思議そうな顔で俺を見てくる。


「パパ、とお呼びする方がよろしいでしょうか。それともお父様?父上?」


「えっと、これはどういう・・・。」


「信じられないみたいだけど正真正銘貴方の子供よ。でも、彼女は普通の子供よりもダンジョン妖精としての自分を選んだみたいなの。」


「だからもう一人の私と、おっしゃったんですね。」


「そうよ。もう一人の貴女、完全な分身じゃないし半分彼のモノだからやっぱり子供って事になるのかしら?」


なんだかよくわからないぞ。


ユーリの前に小さなユーリがいる。


それは俺の子供で、ダンジョン妖精でもある。


それを自分で選んだ?


お腹の中で?


「私の子供、なんですよね?」


「そうだと申し上げていますお父様。お父様、良いですねこの響き、気に入りました。」


「でもダンジョン妖精でもある。」


「お母様と違い私は生粋のダンジョン妖精です。でも、半分人間ですから生粋じゃないのでしょうか。そこのところどう思われますか、リェース様。」


「そうねぇ。半分ドラゴンも入っているから形容しがたい存在ね。」


「そうですか。でもダンジョン妖精としてお役に立てるのであれば問題ありません。」


「そこは大丈夫よ。それに、ドラゴンの血も入っているから外での活動も問題ないわ。母親と同じく魔力でも食事でもどちらを摂取しても活動できるんじゃないかしら。さすがの私も貴女のような存在ははじめてだから、多分って事になるけど。」


人とドラゴンとダンジョン妖精のミックス?


それってすごい存在だよな。


「ハルトの半分の力を得ているから、戦ってもすごいわよ。」


「戦えるのですか?」


「いきなりは無理だろうけど経験を積めばそこらの魔物なんて相手じゃないわね。アースドラゴンは丈夫さだけはピカ一だから、彼、貴女のお父様を守るにはうってつけの存在よ。」


「お父様を守る・・・。私はその為に産まれたのですね。」


「そうじゃないと思うけど。まぁ、貴女がそうしたいならそれでいいんじゃない?」


「お父様!これからは私がお守りしますからどうぞご安心ください。」


小さなユーリが一人で驚き一人で納得して一人ではしゃいでいる。


なんだろう、いつものユーリを感情豊かにしたらこんな感じになるだろうか。


「完全な心を得たんです、当然かと思います。」


「ユーリは驚いていないんですね。」


「もちろん驚いています。まさか自分の子供がドラゴンの力を得るとは思っていませんでした。」


「そこ!?」


「ご主人様の世界の言葉を借りれば『カエルの子はカエル』というのでしょうか。御主人様と同じ普通の人間として生まれるとばかり思っていましたが、ダンジョン妖精を選んでくれて嬉しい気持ちも有ります。」


「当然ですお母様。お二人のお役に立つにはそれが一番だと考えておりました。」


「お腹の中でそんなことを考えていたのですね。ご主人様、私に名前を授けてくれたようにこの子にも名前をくださいませんか?」


「え、今ですか!?」


突然の無茶ぶり止めてくれませんかね。


こういうのは時間を掛けて二人で決めるものなんじゃないでしょうか。


「そうです。素晴らしい名前をお願いします。」


小さいユーリが期待に胸膨らませた感じで俺を見てくる。


えぇっと、名前名前・・・。


小さいユーリ・・・じゃありきたりだよな。


そもそもユーリってどういう名前だったっけ。


確かリリィって名前から来て、そこから日本名に変換して・・・。


小さい百合


小百合。


サユリ・・・じゃありきたりだよな。


「サリュー。」


「サリュー・・・気に入りました!」


「なるほど、そういう言葉遊びですか。悪くありませんね。」


「素敵な名前だと思います。」


終始状況を見守っていたエミリアも納得のようだ。


ってか、産後なのに元気すぎませんかねユーリさん。


普通は動けないものだと思うんですけど。


「私の場合は出産ではなく分離ですから、離れてしまえば元通りです。」


「そういうものですか?」


「そういうものです。」


「まぁまぁ、無事に産まれたんだからいいじゃない。半分はハルトの血だけどもう半分は貴方の血な訳だし、あら、これってハルトとの子供って事にもなるんじゃない?」


「本人が居ないのを良い事に、そんなこと言って大丈夫なんですか?」


「ちょっと、ここにいるんだけど?」


「え?」


慌てて周りを見てみるも、ハルトさんの姿はない。


「ここよバカ!」


と、思いっきり誰かに脛を蹴られた。


余りの痛さにしゃがみ込んで悶絶してしまう。


涙目になりながら顔を上げると、そこにはサリューと同じ背格好をしたハルトさんが居た。


あのグラマラスな体は見る影もない。


ツルペタ小学生が俺を睨んでいる。


「随分と小さくなられましたね。」


「仕方ないじゃない。半分この子に上げたんだもの。」


「ありがたく頂きました。」


「魔力が戻るまでは当分この感じよ。ここの守護者的役割は当分お預けね。」


「えっと、どのぐらいでしょうか。」


「一年は休養しないと。もちろん、リェース様から力を分けてもらってそれだけかかるわ。」


そんなにかかるのか・・・。


でもまぁ仕方ないよな。


っていうかさ、話し方変わってません?


最初に会った時のあの取ってつけたような威厳ある話し方は何だったんだろうか。


「あ、あれは少しでも強く見せようとしたから・・・って言わせんじゃないわよ!」


また脛を蹴られてしまった。


無茶苦茶痛い。


「つまりこちらが素なわけですね?」


「そうよ。」


「その方がよくお似合いですよ、ハルトさん。」


「ふん!」


「とりあえず上に戻りませんか、みんな心配しています。」


「おっと、そうですね。シルビアがダンジョンの前で待っています。」


なんだか怒濤の展開だったが、とりあえず無事に生まれたんだから良しとしようじゃないか。


改めてリェース様とハルトさんにお礼を言って四人で転送装置に乗る。


「いよいよ外の世界を実際に体験できるのですね。」


「そうなります。素敵な事が沢山待っていますよ。」


「楽しみです!」


サリューは子供のように目を輝かせてって、子供か。


ともかく期待に胸膨らませた様子で転送を今か今かと待ちわびている。


さぁ、地上に戻ろう。


転送装置に手をかけ起動させる。


一瞬の暗転の後、眩しい光が目に飛び込んできた。


ダンジョンの入り口は東向き、ちょうど太陽が真正面にあるんだろう。


眩しくて目を開けられない。


「これが、外の世界・・・。なんて、なんて綺麗なんでしょうか!」


まぶしくて目を開けられなくても、サリューの感動したこえは聞き逃さなかった。


強く手を握られる。


ここが君の世界だよ。


そう言いたくて俺もぎゅっと手を握り返した。



「にわかには信じられんが、二人の顔を見れば親子であるのは一目瞭然。こんなことがあるのだな。」


「私もドラゴンと人とダンジョン妖精、そのすべてを持つ存在なんて初めて聞いたわ。」


「リェース様曰く、初めての存在なので今後に関しては未知数だそうです。」


「フェリス様に見てもらったほうがいいのではないでしょうか。」


「う~ん、見てもらったところでダンジョン妖精は専門外よ。」


どちらかといえば商店連合が専門家ってことになるよな。


その専門家がさじを投げてるんだ、何でもありってことだろう。


「まぁ、いいじゃないですか。こうやってサリューちゃんが生まれてきたわけなんですから。」


「ありがとうございます、リアお母様。」


「そうだな。どのような産まれ方をしても私達の娘であることに変わりはない。みろ、二人が喜んでいるぞ。」


メルクリア女史に抱かれながらリュシアとシルカがサリューを見てキャッキャと声をあげている。


「兄様姉様もありがとうございます。」


「大きな妹ができたな、二人とも。」


ふと思ったんだが、ダンジョン妖精は成長するんだろうか。


まさかずっとこのまま?


わからないことばかりだ。


でもまぁ、俺の子供であることに変わりはないし、どんな姿であれ可愛いものは可愛い。


ぶっちゃけ三人目四人目と立て続けに生まれたら地獄のような子育てが待っていると覚悟していただけに、一人でも手がかからないと思うとホッとする部分も大きい。


もちろん、赤子の姿が見れないってのはさみしいけどね。


「それに関しては、再度妊娠すれば問題ないと思われます。」


「お母様のいう通りです。私はダンジョン妖精としての生を望みましたが、次の子がそれを願うかはわかりません。今回は魔力の流入があったからこうなったわけで、それがなければ兄様姉様と同じように生まれていたと思います。」


「なるほど・・・。」


「子供達はいつ見ても可愛いが、赤子の時は赤子の時の可愛さがあるからなぁ。」


「ふふふ、あのフニフニほっぺに小さな手足。思い出すだけで涙が出そうです。」


そんな大袈裟な、と昔なら言ったかもしれないが今はわかる。


泣きそうになるぐらい感動するんだよ。


これが年を取るってことなんだろうなあ。


「それはニケ様の子に期待するとしましょう。私も楽しみです。」


「私もですお母様。」


大きいユーリと小さいユーリ。


瓜二つの二人なのだが、若干サリューの顔が俺に似ている。


どこが似ているかは言いにくいんだが、若干違うから見分けることができるんだな。


そうじゃなきゃ呼び間違えてしまうかもしれない。


忙しい時って身長じゃなくて顔で判断してるし。


「何はともあれ心配事が一つ片付いたな。」


「そうですね、ニケさんの番までもう少しありますから・・・。」


「それなら今は別の問題を片づけましょ。」


「別の問題、シャルちゃんの件ですね。」


「それと貴方よ。」


「私ですか?」


「命を狙われたのよ?また狙われないとも限らないじゃない。」


いやまぁ、そうなんですけど・・・。


「これに関してはシャルちゃんの件を解決すれば収まるんじゃないかと思ってるんですが。」


「解決するも何も、重要参考人が死んじゃったんじゃどうにもならないじゃない。」


「面目次第もない。」


「別に全てが無くなったわけではありません。サンサトローズでの行方不明者、それをたどればもしかすると繋がるかもしれませんよ。」


「シャルちゃんを守るためにそこまでしなきゃいけないなんて、つくづく面倒を呼び込む男よね、貴方は。」


「シュウイチさんはそういう人ですから。」


「諦める方が気が楽だぞ、メルクリア殿。」


嫁二人は早々にあきらめムード、というか日常茶飯事過ぎて感覚が狂っているのかもしれない。


普通の商人がこんなことに巻き込まれるなんて、ありえないもんなぁ。


ダンジョンにドラゴンが来ちゃったし・・・って、これは召喚次第だからなくはないのか。


「大丈夫です。どのような敵が来ても、私がお父様をお守りします!」


「サリュー、頼りにしていますよ。」


「お任せくださいお母様!」


フン!と両手を握りガッツポーズをする我が娘。


気持ちは嬉しいんだけど、産まれてまだ数刻しかたってませんよ?


何でそんなに流ちょうに話が出来るの?


「それはもう一人の私だからです。」


「お母様方の事や、お父様の事は全て情報共有出来ています。もちろん、ダンジョンの事もお任せください。ただ、守ろうにもその辺りの技術は少なめですので、心もとないかもしれません。」


「そういう事なら私が伝授しよう。」


「有難うございますシアお母様!」


「お母様か・・・、私もそう呼ばれるようになったのだな。」


「ふふ、シルカももうすぐそう呼んでくれますよ。」


まだパパママしか言えないからなぁ。


あ、メメも言えるぞ何故か。


「何故かって何よ。」


「子供の成長は著しいという事です。」


「メルお母様は呼ばれたくないですか?」


「そんなこと言ってないじゃない。私だって、いずれ・・・。」


「じゃあメルお母様と呼ばせてもらいます!」


「よかったですね、フィフティーヌ様。」


「なんで貴女まで嬉しそうなのよ。」


それは貴女が嬉しそうに笑っているから。


そう言わなくても全員が同じことを思っていただろう。


「さぁて、バタバタしていますがそろそろ営業の時間です。寝不足ですが頑張りましょう。」


「そんな時間ですか。」


「私は子供達を保育園に連れて行こう、サリュー、父上に紹介したい。ついてきてくれ。」


「かしこまりました。」


サリューとシルビアは村へ、メルクリア女史は商店連合へ、残った我々は自分の店へ。


やる事がいっぱいだし色々と大変な事は多いけど、それでも時は流れ続ける。


朝が来れば店を開け、冒険者を迎え入れなければならない。


それが俺の仕事だ。


たとえどんな状況でも店がある限りそれは変わらない。


ま、流石に今日は何もないだろう。


なんたって出産っていう大仕事を終わらせたんだから。


まぁ頑張ったのはユーリだけどね。

無事に産まれ新しい名前が付けられました。

カエルの子はカエル。

ダンジョン妖精の子はダンジョン妖精になる事を選んだようです。

しかも中々ハイブリットなダンジョン妖精。

その実力は誰にも未知数です。


話は少し落ち着きましたが、問題は何も解決していません。

果たして次は何が起きるのか、それは次回ということで。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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