ドラゴンにも色々あるようです
最下層へは転送装置ですぐなので苦にはならない。
が、心配なのは最下層にいるそのドラゴンとやらの要求だ。
今まで召喚した魔物に呼び出されることなんてなかった。
まぁ、知性などほとんどないような魔物ばかりなので致し方ないが、召喚されてすぐ主人である俺を呼び出すとは何事か。
来るなら自分で・・・ってダンジョンから出れないので致し方ないか。
朝から動き回っているから結構しんどいんだけど明日じゃダメ・・・だよね?
ダメですかそうですか。
渋々といった感じで転送装置に乗り最下層へと到着した。
他の階層と違い巨大な部屋になっているんだけど・・・・
あれ、いつもより天井高くない?
普段はもっと低かったと思うんだけど、どうみても3mはあるよね?
もしかするともっと高いかもしれない。
まるで体育館のようだ。
「お前がダンジョンマスターか。」
と、その体育館をビリビリと震わすような低い声が奥から聞こえてきた。
最下層に他の冒険者はいない。
ということは、聞こえてくる声の主がドラゴンなんだろう。
ゲームや漫画だと威圧感が凄くてひれ伏しそうになるとか言うけれど、全然そんな感じはしない。
あれか?
ダンジョンマスターだからか?
「そうですがアナタは?」
「我はハルト、そなたの召喚に応じたアースドラゴンだ。」
「それはそれは、ご丁寧にどうも。」
「見ればなんとも脆弱でか弱き存在。うぅむ、そなたのような軟弱者に召喚されたと知れれば他のモノに何と言われるか。」
「知られて何か不都合でも?」
「魔族ならまだしも、人間なんぞに召喚されたと馬鹿にされるだろう。」
「なるほど。でもここにいたらわからないんじゃないですか?」
「いや、まぁそうなんだが・・・。」
偉そうに話すわりには反応がイマイチだなぁ。
姿も見えないし、ちょっと奥まで行ってみるか。
壁際は魔灯がついているので明るいが、中央までその光は届かない。
そのまま中央に向かって歩みを進めると、正面に巨大な影が現れた。
デカイ。
そりゃこれだけデカいと天井も高くなるわ。
でも高すぎて顔が見えないんだよな。
俺に見えるのは巨大な体躯のみ。
巨大な爬虫類っぽい鱗から察するにドラゴンだと感じるだけだ。
「改めまして、ダンジョンマスターのイナバ=シュウイチです。ハルトさんでしたっけ?」
「いかにも。」
「ドラゴンに会うのはこれで二度目なんですけど、大きすぎてお顔が見えないんですよね。人型になってもらうことは出来ますか?」
「我に人化しろと申すか。」
「その方が話しやすいので、出来るのであれば。」
「出来るに決まっておろう!我を侮辱するな!」
ばりばりと割れるような声が頭上から降り注ぐ。
それと同時に地団太をするように巨大な前足がじたばたと動いた。
「侮辱だなんてとんでもない。これから頑張ってもらうわけですし、良好な関係を築ければと思っていますよ。」
「フン、人間如きが偉そうにぬかしおって。我を誰だと思っているのだ。」
「いや、アースドラゴンですよね」
「その通り!我らアースドラゴンの強靭さは始祖であるフォレストドラゴン様にも匹敵するものなのだぞ!」
自分で何者か名乗っておきながら誰だと思っているとか意味が解らん。
無理やり偉そうに見せているのが見え見えなんだが・・・。
なんだかおもしろくなってきたぞ、向こうは俺を攻撃できないわけだしちょっとからかってみるとしよう。
「へぇ~、フォレストドラゴンに匹敵するんですか、すごいなぁ。」
「始祖様を呼び捨てするでない!」
これまた大きな声が頭上から降り注ぐ。
フォレストドラゴンってそんなに偉かったんだなぁ。
知らなかった。
始祖といえばエンシェントドラゴンとかそういうのがいると思ったんだけど、系統によって違うのかもしれない。
後学の為に今度聞いておくとしよう。
「ちなみにその始祖様にお会いしたことは?」
「あるわけないだろう!始祖様はお忙しいお方、我らの前に出てくることなど・・・。」
「会いたいですか?」
「貴様何を言って。」
「会いたいなら会えますよ?」
暇だったらの話だけど。
噂の冒険者とイチャイチャしてたら駄目だけど、そうでなければ来てくれるはずだ。
「貴様のような脆弱な者が嘘を申していいような相手ではないぞ。ダンジョンマスターでなければ今すぐ叩き潰しているところだ。えぇい、それが出来ないとはなんという屈辱!」
「そんなに嫌ですか?」
「嫌に決まっておろう!」
そんなに嫌わなくたっていいじゃないか。
そもそも俺が召喚したわけじゃないし・・・。
って、そういえばユーリのあのお腹は大丈夫なんだろうか。
ちょっと心配になってきたぞ。
「おい!我を前にしてよそ見とはどういう事だ!」
「あぁ、すみませんちょっと考え事を。」
「これだから人間は嫌いなんだ!この間だって我を勝手に呼び出しておいて放置しおってからに。」
「前回はどこに?」
「ここから離れた山の上だ。人同士の争いを何十年も見せられ、やっとお役御免になったと思ったらこの調子。ドラゴンを置き物か何かだと勘違いしているのではないか?」
いや、この間も人間に召喚されてるし。
抑止力か何かの為に呼ばれたんだろうけど、ある種の置き物と考えてもいいかもしれない。
見てよし戦って良しって感じでさ。
「なるほど、それは大変でしたね。」
「最後はもう用が無いから帰れと来た。まったく自分勝手な生き物だよお前たちは。」
「その点今回は実力のある冒険者がやってきますから頑張って下さいね。」
「なに?」
「ここはダンジョンです。そしてあなたはそのダンジョンを守護するフロアマスターとしてここで戦うんです。期待していますから頑張って下さいね。」
「ふははは、人間如きが我と戦うか!」
「冒険者を甘く見ないほうがいいですよ。」
「人間如きに後れを取るはずなど・・・。」
「ちなみに、うちの商店にはドラゴンスレイヤーの称号持ちが三人はいますから。」
シルビア、メルクリア女史、そしてティナさんだ。
ガンドさんも称号持ちだが今はいないので省いている。
シルビアとティナさんはまだしもまったく、あの鬼女はいったいどこで何をしているんだか。
「さ、三人もいるのか?」
「ちなみに二人は私の奥さんです。」
「お前の妻だと!?」
「一人は・・・恋人未満って感じですが頼りになる友人ですね。」
「・・・・・・。」
「どうしました?」
「身内ということは、我を倒しには来ないわけだな?」
急に静かになったぞ。
まさかビビってるのか?
「そうですね、必要が無ければ。」
「そうであろう、ダンジョンを守護する我を倒しに来ることなど・・・。」
「でも腕試しには来るかもしれません。最近身体がなまって困るとシルビアも言っていましたし。」
「そ、それならば別のドラゴンと戦う方が良いだろう。私はこのダンジョンを守護するという命があるからな。疲れたところを襲われても困る。」
「でもフォレストドラゴンと同じぐらい頑丈なんですよね?」
「その通りだ。その通りだが・・・。」
さっきまでの勢いはどこへやら、大人しくなってしまった。
偉そうにし続けるのならここであのお方に登場してもらって、窘めてもらおうと思ったのに。
残念。
「あの、そろそろ人化してもらえませんか?話をするのに顔が見えないのは不自由で・・・。」
「う、うむ、そうだな。」
ブツブツと呪文のような何かが聞こえてきたと思ったら、巨大な体躯がどんどんと縮んでいくのがわかる。
そしてあっという間に、グラマラスな女性へと変化した。
「おっと、女性でしたか。」
「性別で言えばそうだが、人には関係ないだろう?」
「関係はありませんが見た目的な所でちょっと・・・。」
人化したのはいいものの、服を着ていない。
個人的には眼福なんですけども、いつまでも見るのははばかられるというかなんというか。
「えぇい、人化しろと言っておきながら面倒な奴め。」
ぶつぶつとまた呪文を唱えるとあっという間に服を着た姿になった。
が、なんでワンピースなんですかね。
エミリアにも負けない爆裂な胸部装甲が服を持ち上げ超絶ミニスカートになってるんですけど。
「これでいいか?」
「ありがとうございます。」
「色々と言ったがお前の召喚に応えたのは私だ、不本意ながら力を貸してやるからありがたく思え。」
「あ、やっぱり不本意なんですね。」
「当たり前だ!」
「ちなみにどのあたりが?」
「そうだなぁ・・・。」
それから出るわ出るわ。
今までの?鬱憤を晴らすかのように不満が山のように出て来た。
それは俺にというよりも、今まで召喚されてきた現場や環境そして人物への物ばかりだったのだが、話を聞けば聞くほどなんていうか不憫でそれも仕方ないと思えるぐらいだった。
まず環境が劣悪すぎる。
前回が小さな山の上に無理やり呼び出され、『ここで戦うから見守っていてほしい』という条件を付けられて何十年も興味のない人の争いを見せられ続けたそうだ。
なんとか終わりはしたものの、勝った方が『いてもらっても邪魔だから帰ってくれ』とお礼も言わずに強制的に送還してしまったとか。
その前は魔族に呼び出されて頑丈なのをいい事に、血液や皮膚、鱗などを何度も何度も剥され続けたとか。
死ぬほどの痛みではないし、かといって痛くないわけでもない。
本人は実験と称してあれこれするだけで話しかけても来なかったそうだ。
何だろう、どこかで聞いたような話だが気のせいだな、うん。
「それは大変でしたね。」
「だろう!いくら私が丈夫だからと言って何も言わずに血を抜き皮膚を剥ぐのは頭がおかしいとしか思えない!」
「心中お察しします。」
「その点ここはそんな心配もないし、魔力は自動で供給されるようだな。それになんだこの気配は。これはいったいなんだ?」
「もしかすると私の精霊波導を感じているのかもしれませんね。」
「なに?」
「あ、説明が遅くなりましたが私精霊使いです。」
ちょっと胸を張ってみたのだが、鼻で笑われてしまった。
それひどくない?
「お前のような軟弱者に精霊様が祝福を授けるなど。それに、精霊波導がそんなに多種にわたって・・・、おいなんだそれは。」
「これは精霊結晶です。二精霊の融合結晶ですごい珍しいんですよ。」
「そうじゃない!なんでそんなものがあるんだと聞いているんだ!」
「そりゃあ貰ったからですよ、お二人に。」
祝福を授かっている事を納得させる為にお守りを取り出してみたら偉く食いつかれてしまった。
宝石が好きなんだろうか。
だがその結晶からただならぬ魔力を感じたようで、怯えたような目で俺を見て来る。
「本当に精霊師なのか?」
「えぇ、嘘は言いません。」
「それでいてドラゴンスレイヤーの嫁がいるのか?」
「えぇ、ちなみに二人の内一人は精霊師でもあります。」
「・・・お、お前はいったい何者なんだ?」
「私はこのダンジョンを運営するただの商人ですよ。」
怯えた相手に最高の笑顔で応えるのも商人の仕事だ。
どうやらやっと認めてくれたようだな。
いやー、長かった。
「っと、そろそろ上に戻らないと子供たちが待っています。お話は以上ですか?でしたらこれからよろしくお願いしますね、ハルトさん。」
「あ、あぁよろしく頼む。」
差し出した手を怯えた感じで握り返してきたと思ったら、見る見るうちに目が見開かれていく。
「おい!この加護は何だ!?優しくてとても強い、お前どこでこの加護を受け取った!?」
「どこって、ここ・・・になるんでしょうか。」
「ここ?その加護は間違いなく始祖様のもの。始祖様がこんな所にいるはずが・・・。」
「あらあら、同族の気配を感じたと思って来てみたらここだったのね。」
「これはリェース様、お久しぶりです。シルエ様はお元気ですか?」
「ん~、元気といえば元気かしら。この間また負かされたでしょ?だから必死になって勉強してるわ。」
「それは何よりです。跡継ぎになる日も近・・・くはなさそうですね。」
「まだまだ、あの程度じゃ認めてあげないわ。って今日はお話をしに来たんじゃないのよ。用があるのはそこの貴女。」
ジロリといった感じでハルトさんを睨むリェース様。
同族同士のはずなのに、まるで蛇に睨まれた蛙のように縮こまってしまっている。
「し、しししし始祖様!?」
「貴女お名前は?」
「ハ、ハルトでござます!」
「そう、ハルトさんね。どうしてここに?まさか私の愛しい人を誘惑しに来たとか?」
「滅相もありません!私はこの人間の召喚に呼ばれて来ただけで・・・。」
「その割には滅茶苦茶なこと言っていたわね。脆弱だとか軟弱だとか。」
「聞いていたんですか?」
「ん~、聞こえてきたが正しいかしら。貴方に授けた加護はかなり強力だから、お膝元のここだとどうしても漏れてきちゃうのよ。あ、大丈夫よ、夫婦の営みは聞いてないから。」
つまりそれって聞いてるってことですよね?
いやまぁ、別にいいですけど。
そういう趣味があるわけではないが、向こうはドラゴンでこっちは人間。
それでどうこうなるわけでもないし、リェースさんにはぞっこんラブの彼氏さんがいる。
向こうのが聞こえて来なければそれで十分だ。
「そうでしたか。」
「だからね、私が祝福を授けた貴方を悪く言う人がいるみたいだから来てみたんだけど、まさか同族も同族アースドラゴンだとは思いもしなかったわ。」
「これには深い訳が、ど、どうかお許しを!」
「いいえ、許しません。人間だからと上から目線で見下すような子にはお仕置きが必要よね、それこそシルエのように。」
「私は別に気にしてませんよ?」
「貴方は気にしなくても私は気にするの。さぁ、早く帰りなさい。子供が泣いていたわよ。」
「おっと、そうでした。ではよろしくお願いします。」
にこりと微笑むリェースさんに後はお任せして俺は地上に戻るとしよう。
後ろから『マテ、人間!』とか聞こえて来るけど気のせいだろう。
同族、しかも初めて会う始祖様?直々に教育してもらえるんだ、ありがたい事じゃないか。
転送装置で地上へ戻る瞬間、何とも言えない叫び声が聞こえてきた気がするけど、気のせいだろう。
あ~、お腹空いた。
帰ってご飯にするとしよう。
ドラゴンにもいろいろとあるようです。
大変ですね。
呼び出しは無事に?終了し、地上へと戻ります。
長い一日が終わりまた新しい一日が始まる。
果たして次の一日は何が待っているんでしょうか。
進展はあるのか、それとも・・・。
それはまた次回ということで。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願いいたします。




