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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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なかなか先に進まない

騎士団に戻ると中は何やら忙しそうな感じだった。


せわしないというか忙しそうというか、いや焦ってる?


「何かあったんですか?」


「牢屋に入れていたやつが自殺を図ったんだ・・・ってイナバ様じゃないですか!」


「自殺を!?」


「今医者が入って様子を見ていますけど、なかなかの状況なので行くのはお勧めしません。」


「わかりました。団長室で報告を待ちます。」


「そうしてください。」


なんとまぁ大変な事になっているようだ。


俺の方が空振りだったのでシルビアの方に期待したんだが、これは中々厳しいかもしれないな。


護衛してくれた二人と別れて一人団長室へと向かう。


「これはイナバ様、戻られたんですね。」


「カムイ騎士団長、戻ってましたか。」


「つい今しがた、シルビア様は一緒ではないのですか?」


「シルビアは地下室で重要参考人に尋問をしていたようですが、、残念ながら自害してしまったようです。」


「なんだって!?」


お、珍しくカムイの素が見れた気がする。


いつも丁寧で堅っ苦しい感じだけど、素は普通なんだよな。


「どういう状況か教えてくださいますか?」


とはいえそれも一瞬の事、すぐにいつもの感じに戻ってしまった。


シルビアが戻ってくる様子もないので、先ほどの件も含めて最初からすべて説明した。


「そう言えばそんな事もありましたね。」


「今思えばまさかこんな大ごとになるとは思いもしませんでしたよ。」


「シャル様の警護は?」


「今の所有志の冒険者と自警団が行っています。大丈夫だとは思いますが、状況が危ぶまれる場合は至急援軍を送っていただくことはできますか?」


「領内の不穏を正すのも騎士団の務め、多くは出せませんが急ぎ対応しましょう。」


「助かります。」


商店連合に入り込めるようなやつだ、冒険者に紛れて近づいてくるなんて朝飯前だ。


さすがに村人に紛れる事は出来ないだろうけど、安心はできない。


常に気を張るのは空気も悪くなるし、なによりシャルちゃんの為に避けたい所なんだよなぁ。


「わずか半日ここを離れていただけだというのに。」


「言っときますが私は無実ですよ。攫われそうになったぐらいなんですから。」


「イナバ様にはもう少し鍛えてもらう必要がありますね。それが嫌なら常に護衛を連れて歩くべきです。助けないとうるさい人がたくさんいるんですから、自覚を持ってもらわなければ。」


「やっぱりそうなるんですね。」


「これも領内とサンサトローズの平穏の為です。」


「人を不穏分子みたいにいうのは止めてくれませんかね。」


俺が来ると領内の平穏が崩れる。


そう言われているのと同じなんだけど。


「ふぅ・・・。」


と、その時だった。


ノック無しで疲れた顔をしたシルビアが部屋に入って来た。


「シルビアお疲れ様でした。」


「シルビア様ご苦労様です。」


「シュウイチ、それにカムリも戻っていたか。」


「留守の間お手を取らせ申し訳ありませんでした。」


「いや、むしろ役に立てず済まなかった。普通の相手ではないとわかってはいたが、あんなにもあっさりと命を捨てるとは・・・。」


「よほど手練れだったのでしょう、心中お察しします。」


疲れた様子で俺の横に深く腰掛ける。


いつもの優しい母親といった雰囲気とは全く違う顔をしている。


あ、もちろんこっちも好みですよ。


カッコいいシルビアもなかなかよろしい。


「済まないシュウイチ、今はそんな気分じゃないんだ。」


「失礼しました。」


流石のシルビアもかなりのダメージを追っているようだ。


ダメージというか落胆といううか。


そんな状況でおふざけは流石に受け入れられないと。


仕方ない。


「折角見つけた重要参考人だったんだが、結局は何も聞きだせなかったな。」


「そんな時もあります。」


「そっちはどうだった?」


「収穫なしです。いえ、件の人物が悪人ではないことは確認が取れました。」


「そうか。最初に戻ったわけか。」


「おそらくコッペンの奥さんが持って来た情報その人で間違いないと思います。となると、今の所分かっているのはダークスという死んだ商人を騙る誰かが、裏で暗躍をしているという事。シャルちゃんをはじめ多数の優秀な商人に声をかけ、加えて目障りな私を国外に捨てようとしてきた。さらに言えば、自白もせずに自害するほどの優秀な部下がいるという所でしょうか。」


まとめるとこんな感じだ。


ちんけな商人なはずが、今や怪しさMAXのそれこそ不穏分子って感じになっている。


一体何が目的なんだろうか。


「商人や職人を連れてどこに行くつもりなんだろうな。」


「あ、言い忘れていました。追加で娼婦も入れてください。」


「どういうことだ?」


「さっきの人物を調べている途中で娼館で行方不明者が出ているとの情報を得ました。猫目館の支配人に確認した所、商人同様に声をかけられた事案があったそうです。詳細については夕刻までに支配人から報告があります。」


「調査させているサンサトローズ内の行方不明者と合致するかもしれん。」


「その流れで実際にいなくなった店にもいってみたんですが・・・。」


「そこでも何かあったんだろ?」


さも当たり前みたいに聞くのは止めてもらえませんかね。


まぁ、あったんですけども。


「娼館に行き、支配人室へ移動する間所属する娼婦に話を聞きました。その時、二人いなくなったと言っていたのですが支配人の話では一人しかいないというんです。曰く、娼婦がいなくなるのはよくある話で、大方冒険者を誘惑し街の外に逃げたとかんがえているようですね。最後まで二人目の存在については何も言いませんでした。」


「妙ですね。」


「娼婦が支配人を貶める為に嘘を言っている可能性は否定できないが、シュウイチはそう思っていないのだろう?」


「その方の話では、行く場所が無いからと自分から逃げ出すような子ではなかったそうです。さらに身受けの話も出ていたそうで、それを蹴って勝手にいなくなるとは到底思えないと。」


「ならば怪しいのは支配人だろう。裏でダークスと繋がっているかもしれん。」


それが一番あり得る話だ。


もちろん、その居なくなった子が実在していたという確証を得てからの話だけども・・・。


「この件私に預からせてもらって構いませんか?」


「そうしてもらえると助かる。私もシュウイチも店を空けるわけにはいかなくてな。」


「イナバ様が攫われそうになったと言えば、あの人も色々と動いてくれるでしょうから。」


「出来ればあの人には伝えないでほしいんですけどねぇ。」


「それは無理な話です。領内、しかもおひざ元でこんなことが起きているのにあの方の耳に入れなかったら何を言われるかわかったものではありませんよ。」


ま、それもそうだな。


そろそろ夕刻。


流石に店をほったらかして泊まるわけにもいかないので(今更だけど)、ここは本職に任せるのが一番だろう。


亡くなった人物の調査もあるだろうし、これ以上ここに居ても情報は得られそうにない。


後をカムイに任せて俺とシルビアは村へと向かう定期便に乗りこんだ。


「みんなに託されたというのに散々な結果になってしまったな。」


「むしろこの短い時間に良くやったと褒めてくれますよ。」


「そしてシュウイチは叱られるな。」


「あれは不可抗力です、誰も予見できませんよ。」


「最近は問題なかったからと油断した私の間違いでもある。引き続き気をつけなければ。」


「ノアちゃんにも改めてお礼を言わなければなりませんね。」


馬車に揺られながら長かった一日に思いをはせる。


やることはやった。


明確な情報を仕入れられなかったのは残念だが、それでも細かな情報をたくさん仕入れる事が出来た。


後はそれを踏まえたうえで行動すればいいだけだ。


一つ言えるのは、チンケな商人なんかではなくかなりヤバイ人物だという事。


俺が直接見た感じではそんな風には見えなかったが、もしかするとあの人はダークス本人ではなく演じるように言われた仲間なのかもしれない。


そうでなければあんな強引な手段をとるはずがない。


ダークス本人にシャルちゃんを連れてくるように言われて、なかなかその命令を実行できないから焦ってあんな行動をとった。


そう考えた方が自然な感じだ。


腕のいい職人、商人、錬金術師、そして娼婦。


関連性のなさそうなこれらの人をどこに連れて行こうというのだろうか。


そしてその先で何をさせようというのだろうか。


「難しい顔をしているな。」


「わからない事ばかりで・・・すみません。」


「私も今日は久々に落ち込んでいる。慰めてくれるか?」


「シルビアはよくやってくれました。例えカムリ騎士団長が尋問していても同じ結果になったでしょう。」


「そうじゃない。」


慰めてほしいと言われて慰めた。


でもそれは違うと言われた。


昔の俺なら『じゃあどうすればいいんだよ!』と内心荒ぶっていたかもしれないが、今はそんな風になったりしない。


なにもいわずシルビアの肩を抱き寄せその頭を優しく撫でてあげる。


シルビアの体から力が抜け、大きく息を吐くのが分かる。


悔しかっただろう。


申し訳ないのだろう。


昔の自分ならもっと出来た。


自分が弱くなったんじゃないか。


そんな不安に襲われているに違いない。


もちろんそんなことはない。


シルビアは精一杯やってくれただろうし、結果が伴わなかっただけの話だ。


褒めてほしいわけじゃない。


ただ、現実を一緒に受け入れてほしいだけなんだ。


幸せな事は二倍に、辛い事は半分に。


そんな歌か何かがあったような気がするけれど、まさにその通りだ。


辛いなら分け合えば耐えられる。


シルビアが結果と向き合い自分なりに折り合いをつけるまで、俺は何も言わず側にいればいい。


横に誰かがいてくれるという安心感に勝るものはなかなかないからね。


村に着くギリギリまでそうしていたが、村の門が見えてきた所でシルビアが体を放した。


「ありがとう。」


「落ち着きましたか?」


「もちろんだ。あんな顔を子供達に見せるわけにはいかん。」


「それでこそシルビアです。」


「いい男だな、シュウイチは。」


「今更気が付いたんですか?」


「いいや、とっくの昔に気付いていたよ。」


そりゃようござんした。


さっきまでの気弱な雰囲気とは違い、いつもの凛々しくかっこいいシルビアに戻っている。


もう大丈夫だろう。


馬車が到着し、店までの道を手をつないで歩く。


いつもは子供達が一緒だけど、たまにはこうして二人っきりで歩くのもいいなぁ。


夕闇迫る頃、ようやく店に到着した。


「ただいま戻りました。」


「パパ、ママ!」


「シルカ、ただいま。」


子供達も丁度帰って来た所なんだろう、店の中をウロウロしていたシルカが真っ先にこちらに気づき大きな声を上げた。


よたよたと歩いてこちらに向かってくると、シルビアがそれを抱きしめ頬をくっつける。


なんともまぁ幸せな光景だ事。


「おかえりなさいシュウイチさん、シルビア様。」


「大変だったそうじゃない。ノアに聞いたわ。」


「あ、もう伝わってましたか。」


「相変わらず面倒な事に巻き込まれるのね。」


「今回『も』不可抗力ですからね。まさかそういう目で見られているとは思いませんでした。」


「私もよ。貴方を攫う為にわざわざ商店連合に入社するだなんて、信じられないわ。」


「ともかく何事も無くてよかったです。ノアちゃんには改めてお礼を言わないといけませんね。」


ノアちゃんが念話で知らせておいてくれたんだろう。


説明する手間が省けたようだ。


「それにしても隣国に捨てに行くとは、随分と面倒な事をするのですね。」


「国内では色々と問題があるのだろう。シュウイチはいい意味でも悪い意味でも知られているからな。」


「その点隣国であれば知名度はないし、たとえ助けられても戻るのは難しい。貴方何の恨みを買ったの?」


「知りませんよ。居られると困るとしか言わなかったんですから。」


「その張本人も尋問途中に自害してしまった。真相は闇のまま、というわけだ。」


「そうでしたか・・・。」


他の冒険者もいるのに全員で俯いてしまう。


なんだかお通夜みたいな感じになってしまった。


「おもかくお二人が戻ってきてよかったじゃありませんか。お疲れでしょうから先に家に戻ってお休みください。」


「そうさせてもらおう。シルカ、リュシア行くぞ。」


「はい!」


「あ~い!」


元気よく返事をする二人を連れてシルビアが先に家に戻った。


「他に何か変わったことはありませんでしたか?」


「こちらは特に何もありませんでした。しいて言えば、ダンジョンの最下層に厄介な魔物が発生してしまったぐらいでしょうか。」


「どういう事?」


「それは私がご説明します。」


言いにくそうなエミリアに変わってユーリが一歩前に出た。


あれ?


なんだか随分とお腹が大きいような。


いや、ほぼ臨月なんだし大きいのは当たり前なんだけど、朝よりも大きいってどういう事?


「昼過ぎの事です。いつものようにメンテナンスを行おうとしていたのですが、少々お腹の子供が暴れてしまい操作を誤ってしまいました。本来であればダンジョン全体に万遍なく召喚しなければならない魔物を一匹の魔物の為に使用してしまったのです。申し訳ありませんでした。」


「それは別に構わないんですけど・・・お腹は?」


「これですか?問題ありません、その際に少々魔力が流れ込んでしまったため成長しただけです。」


「いや、だけっていう状況じゃないよね。」


明らかにはち切れそうな感じなんだけど。


「ちなみに召還したのはドラゴンです。」


「それも召喚種の中では最上位のアースドラゴンで、上級冒険者が複数人いなければ討伐できません。」


「いや討伐できませんって、召喚したわけですから送還すればいいのでは?」


「もちろんそれも可能ですが、かなりの魔力を無駄にしてしまいます。」


なるほどなぁ。


一日分の魔力だし、かなりの量になるだろう。


魔物を減らすぐらいならいっそのこと有効利用したい所だけど、上級冒険者が複数人ってかなりハードル高いよね。


やっぱり送還するべきだろうか。


「一応現場を見てきます。召還したわけですからマスターである私は問題ありませんよね?」


「ドラゴン種であってもマスターであるご主人様を襲う事はありません。加えてフォレストドラゴンの加護をお持ちですから大丈夫でしょう。」


むしろそうじゃないと困る。


ってことで、帰ってきて早々だけどダンジョンに向かうことになってしまった。

一歩進んで一歩下がる感じですね。

中々前に進みませんが、確実に情報は集まってきています。

まずはそれを精査するのも大切な事。

今は休憩と行った所でしょうか。


ですが、休憩してもいられない様です。

なにやらダンジョンに異変があったようですね。

それを確認しにダンジョンへと潜るわけですが・・・。

果たしてどうなるんでy草加。

それはまた次回という事で。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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