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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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その人の正体は

ノアちゃんに助けてもらい最悪の事態は無事に免れた。


男は依然意識を失ったままだが、ぐるぐる巻きにされ騎士団の牢屋に転がされている。


念の為猿轡をかましているので、そのまま自害なんて言う事は無いだろう。


意識のない人間に猿轡をかますのがあんなに大変とは俺も知らなかった。


大人三人がかりでやるんだな。


恐ろしや。


「しかし、あれだけ気をつけろと言ったのに困った男だ。」


「いやいやどう考えても不可抗力でしょ。」


「見たことも無い人がいるのなら普通警戒しませんか?」


「毎日来ているわけじゃありませんし、異動してこられた可能性もありますから。」


「それで毒を盛られていては世話はない。竜の加護が無ければ大変な事になっていたぞ。」


「まぁ、そうなんですけど・・・。」


どうして俺が怒られているんだろうか。


あの状況で俺に出来ることは何もない。


あそこで疑いだしたら世の中全ての人を疑わなければならなくなる。


基本は皆いい人、でいたいんだよなぁ。


「でだ、何者だと思う?」


「ダークスという名前を言っていましたので、例の商人に関係しているのは間違いないでしょう。この国で目立ちすぎるので隣国に捨てに行くと言っていました。」


「ただの迷惑な商人だとばかり思っていたが、案外そうではないのかもしれんな。」


商店連合ウチに怪しまれず入り込むなんて、人事部の目をごまかすのは大変なのに。」


人事部といえばメルクリア女史がいる部署だ。


あの人の下で不正をやらかすとは、中々の手練れといえるだろう。


まぁ、最近はうちに来てばかりだしその辺の穴をついてきたのかもしれないな。


「シュウイチが目障りだからという理由だけで隣国に捨てに行こうとするとは。我々の動きも把握されているのかもしれん。」


「昨日の今日ですから、前々から入り込んでないと無理でしょう。もしかすると、別の機会にやろうとしていたのでは?」


「あの人は確か二期前から居たと思います。」


「そんなにまえから・・・。いえ、最初にシャルちゃんが誘われた頃と合いますね。」


「つまりその頃から狙っていたというわけか。」


「入り込んだのが先なのか、それとも私が探りを入れてから入り込んだのかはわかりませんがどちらにせよコッペンの調査網にも引っかからなかった男です、油断できないのは間違いありません。」


「死人に化けて悪さをするんだ、ろくな奴じゃない。」


本来のダークスさんが死んだのが五年前。


その後いつから偽物がその名前を名乗っているかはわからないが、かなりの余罪がありそうだ。


俺達が最初に思い描いていたような奴じゃないのは間違いないけど。


「尋問は私が行う、構わないな?」


「大丈夫ですか?」


「当たり前だ、何が何でも情報を吐いてもらわねば。」


シルビアがかなりヤル気だ。


現場を離れてかれこれ一年以上。


良き母であると同時に元騎士団長でもある、多少の鬱憤を発散したいってのもあるだろうなぁ。


「それじゃあ私は戻ります。」


「この度は大変ありがとうございました。」


「別に、エミリア様の為ですから。」


「私からも礼を言わせてもらう、よくシュウイチを助けてくれた。」


ノアちゃんを見送りながら大きく息を吐く。


思っていたよりも大事になるのはいつもの事だが、まさか自分が狙われるとは。


俺を目障りだと思っている人はたくさんいるだろうけど、こうも露骨にやられるとは思わなかった。


なんていうか昔やり合ったえらいさんを思い出す。


あのザキウスもたしか隣国に逃げたんじゃなかったっけ。


この国もいくつかの国と接しているからどこに逃げたかまではわからないけど・・・。


さすがにあの人とやり合ったのは二年前だし、縁は無いと思う。


というか思いたい。


これから何が起きるかわからないし、できるだけ慎重にいかないとなぁ。


ポリポリと後頭部を掻きながら色々な事を考える。


家の事、店の事、シャルちゃんの事、ダークスという商人の事。


考えなければならない事が多すぎて、考えがまとまらない。


そういう時はどうするか。


簡単だ、歩けばいい。


何もせず考えるとなかなかうまくまとまらないが、何故か歩きながらだと考えがまとまる。


不思議なものだ。


って事で、シルビアの所に戻ろうとしたその時だ。


「すみません、イナバ様はおられますでしょうか!」


切羽詰まった女性の声が騎士団エントランスに響く。


後ろを振り返ると、そこにいたのは商業ギルドのセーラさんではなく、もう一人の方だった。


「どうしました?」


「イナバ様、また来ました!」


「わかりましたすぐ行きます!」


そうだ、忘れてた。


もう一人重要人物がいたじゃないか。


ダークスと同一人物と思われるラントという人物だ。


シルビアにも一緒に来てもらって・・・と思ったが、シルビアには礼の男を人文してもらわなければならない。


かといって何も言わずに行くと絶対に怒られるので、声だけかける事にした。


「くそ、ちょうどこっちも目が覚めたところだ。」


「申し訳ありませんがこっちは任せます。」


「くれぐれも無理を・・・って言っても無駄だな。とにかく命だけは守れ、逃げられても構わないからそれだけは頼むぞ。」


「もちろんです。」


俺だって命は惜しい。


死んだら皆に会えないじゃないか。


念の為騎士団から数人貸してもらって急ぎ商業ギルドへと向かう。


さぁて、何者か見せてもらおうじゃないか。


そんな気持ちとは裏腹に先程の大雨で大通りがぬかるみ走りにくい。


気持ちだけ急いてしまうのをグッと抑えて、商業昼ギルドへと飛び込・・・まずに裏口へと回った。


騎士団員が一緒とはいえ、もしダークス本人であれば護衛が一緒の可能性も高い。


無用な争いを避けるためにも用心するに越したことはないだろう。


裏口から廊下を進みエントランスへ。


すると、男女が言い争っているような声がだんだんと大きくなってきた。


「ですから興味ありませんと言ってるじゃないですか!」


「そんなつれないこと言わないでよ、セーラちゃんなら絶対に看板娘になるからさ。」


「私はここの仕事が好きなんです。迷惑ですから帰って下さい。」


ここからでもセーラさんが嫌がっている感じがよくわかる。


呼びに来た同僚のほうを見ると、またも胸を持ち上げて納得いかない顔をしていた。


ほら、世の中には胸の小さな女性が好きって人もいるから。


世の中大きさじゃないんだよ。


「いますね。」


「またセーラにばっかりちょっかいかけて。」


「今回も複数人ですか?」


「いえ、一人でした。」


「なら好都合ですね。」


一人なら複数人で捕縛することもできる。


いざ、決戦!と意気込ん向かった俺の目に飛び込んできたのは・・・。


「あ、イナバ様!」


「な、なんだね君は!騎士団がどうしてここに!」


全然違うオッサンだった。


おれがみたダークスとは似ても似つかぬ太りよう。


腹は出すぎてるし、背は低いし、顔は・・・こっちのほうが多少ましかもしれないが、それでも俺を眠らせようとしたイケメンとは程遠い。


なんだよ、別じゃねぇか。


「貴方がラントさん?」


「そ、そうだ。お前は誰だ、俺に何の用だ!」


「まぁまぁ落ち着いてください。」


「落ち着いてられるか!俺のセーラちゃんに何をした!」


「別に貴方の物になった覚えはありません!」


いつの間にか俺の後ろに回ったセーラさんが横から顔を出して文句を言っている。


まるでかばったような感じになったので、余計にラントさん・・・オッサンでいいや。


ともかくオッサンが鼻息を荒くしている。


「私はシュリアン商店のイナバと申します。彼女からしつこく言い寄ってくる男性がいるとの被害を聞きまして、こうして参上した次第です。あぁ、後ろにいる騎士団員は護衛です。最近色々とありましてね、付いてきてもらいました。」


「言い寄ってくるって、お前以外に誰いるのか?」


「いや、貴方です。」


「私だって?」


いや、なんでそこで驚いた顔をするのか意味が分からない。


お前以外に誰がいるっていうんだよ。


「本人が拒絶しているのに一日に何回も来ている時点でダメですね。誘いたいのであればもっと時と場合を考えるべきじゃないでしょうか。」


「時と場合を考えても絶対にありえませんけどね!」


「なぜだ!ここよりもずっと給料はいいし、仕事も簡単だ。その何がいけないっていうんだ!」


「待遇や仕事環境よりも生理的に受け付けないと言っているんです。しつこい男は嫌われると教えられなかったんですか?」


「そうよ!貴方の顔を毎日見ながら仕事するなんて絶対に嫌!お金もらっても嫌!」


俺と騎士団員がいるのをいいことにセーラさんが言いたい放題だ。


恥ずかしさかそれとも怒りからかオッサンの顔がどんどんと赤くなっている。


あ、髪の毛も結構来てるのね。


俺も人のこと言えないけど、頭皮が見えるから余計に赤くなっているのが分かるぞ。


「この、下手に出ればいい気になりやがって!」


「本性が出てきましたね。そうやって複数の女性に言い寄って、攫ってきたんじゃないんですか?」


「何の話だ。私はちゃんと自分の足で出向いてほしい人材を口説き落としてきただけだ。そんなことするか!」


「調べたところ、貴方は三年前にサンサトローズで商人登録していますね。」


「その通りだ。それがどうした、この三年間がむしゃらに仕事をしてやっと南通りに店を購入したんだ。あそこなら必ず繁盛する、そのためにはセーラちゃんのような可愛くてでも美人な受付が必要なんだよ。だからこうやって誘いに来ているんじゃないか!」


「ちなみに今おいくつですか?」


「30になったばかりだ。そりゃ見た目は老けてるしこんな腹だから信じてもらえないかもしれないが・・・。」


なんだなんだ、急にオッサンの元気がなくなってきたぞ。


それどころか涙目になってるし、これじゃあまるで俺が泣かしたみたいじゃないか。


って、オッサン一人泣かせたところで別に良いんだけど・・・。


っていうか30なら俺の年下じゃないか。


「イナバ様、三年前でしたら今年更新しているはずなので、証明書に人相が刻印されているはずです。今年から投影機を導入したのでそれでわかると思います。


と、セーラさんの同僚がこそっと教えてくれた。


なるほど、そんなものがあるのか。


って、俺持ってないんだけど。


「ギルド証を確認しても?」


「それで信じてくれるのか?」


オッサンいや、ラントさんが涙をぬぐいポケットから小さなカードを取り出す。


そこには商業ギルドの刻印と名前、そして本人の顔写真?が載っていた。


写真ではなさそうだがかなり精巧だ。


「確かにラントさんですね。年齢も登録年も間違いありません。ちなみに、南通りに買った店というのは昔ダークスという商人が使っていた場所ですか?」


「そういえば、前の家主がそんなことを言ってたな。買ったものの手入れされてなくて、使い道に困ってたのを買い付けたんだ。」


ここですべてが繋がった。


見た目がちょっとアレなだけでこの人は間違いなくハーメス商店のラントという商人で、南通りに店を買ったというのもコッペンの情報から嘘ではないことが分かる。


言動と行動があまりにもダークスそっくりな為間違ってしまったが、まさに他人の空似というやつなんだろう。


「ちなみに、朝に部下を連れてきたのは?」


「部下?あれはたまたま道に迷っていた人がいたからここに連れてきただけだ。見た目はいかつかったが、いい人だったよ。」


そしてこの人もまた人がいい。


ほんと、申し訳ありません。


どうやら俺の勘違いだったようです。


「すみません、色々と勘違いが重なってしまったようですがハーメス商店のラントさんで間違いないようですね。」


「だからそう言ってるじゃないか。信じてくれてよかったよ。」


「イナバ様、この人悪い人じゃないんですか?」


「私が探している人と似ているだけで別人のようです。」


「なんだ、よかった・・・。」


「あらぬ誤解があったようだが、それも晴れたんだうちの店で一緒に・・・。」


「お断りします!」


悪い人でないとしてもセーラさん的にはアウトのようだ。


懇親のお断りしますを聞き、うなだれてしまうラントさん。


いいことあるさ、頑張れ。


「え~、じゃあ私が立候補しちゃおうかな。」


「え?」


「お給料よくて仕事も楽なんでしょ?セーラには顔で負けるけど、体型では負けないと思うな~。」


と、セーラさんの横で話を聞いていた同僚さんがまさかのアピールだ。


お得意の胸持ち上げポーズでラントさんにアピールをする。


効果は・・・。


「胸の大きい人は苦手なんです。ほら、このお腹ですし細身の人が好みで。」


いまひとつのようだ。


がくりとうなだれる同僚さん。


両者ダブルノックアウトで引き分けでございます。


「まぁ、これを機にセーラさんはあきらめたほうがいいでしょう。それと、あまりしつこく勧誘するのはおやめになったほうがよろしいかと。」


「そうか・・・やっぱりダメか。」


「ごめんなさい。」


「でもいいさ、ここに来れば君に会えるんだ。用事のついでに顔を見に来るよ。」


なんという引き際の良さ。


これで顔がよかったら・・・。


くそ、世の中のイケメンめ、滅びればいいんだ!


「話は変わるけど、女性を攫うってどういうことだい?」


と、急に真面目な顔になってラントさんが食いついてきた。


「実はですね、商人の若い女性に高額の報酬を提示して連れ攫おうとする事案が多発しているんです。今の所表立った被害者は出ていませんが、近隣の街でも発生しており警戒を強めています。」


「だからあの時逃げられたのか。」


「何かご存じなんですか?」


「前に腕のいい料理人に声をかけたんだけど、『前にもお断りしたはずです!』と怒られてしまったんだ。初めて会いに行ったのにおかしいなと思ったんだけど、それが原因だったのか。」


「ちなみにその方はどこに?」


「裏通りの飲食店で修業中の子でね、前に食べに行ったら非常に美味しかったから是非うちの社員食堂で腕を振るってもらいたかったんだけど・・・。」


やろうとしていることは立派なのにことごとく運がなくそして残念な結果に終わっているようだ。


なんていうか、かける言葉もない。


「貴重な情報ありがとうございます。ちょっと聞きに行ってみます。」


「もし弁解する機会があれば私じゃないと言っておいてもらえないか?」


返事の代わりにポンポンと肩をたたき、団員と共に正面からギルドを出る。


残念ながらダークスではなかったけれど、悪い人ではなかったようだ。


ともかく新たに得た情報だ。


有効に利用しないと。


哀れなラントさんに心の中で合掌しつつ、裏通りへと足を向けるのだった。


悪人じゃなかったみたいです。

むしろ根っからの善人。

但し、見た目とやり方で残念な結果に終わっていたようですね。

こっちは外れでしたが、大当たりは残っています。

今は情報を集めるのが大切。

果たして、商人の目的は。

それはまた次回という事で。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いします

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