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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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悪人は再びやって来た

その村に行く途中の事だった。


もうすぐで村に到着するという所で、何やら怒鳴り合うような声が聞こえてきた。


最初は冒険者同士でまた喧嘩でもしているのかと思たのだが、近づくにつれそうではないと感じ始める。


場所はシャルちゃんの店の前。


店を取り囲むようにして冒険者が集まっていた。


あれはなんていうか、守っている・・・のか?


「騒がしいわね。」


「そうですね、何やらいつもと違う感じです。急ぎましょう。」


メルクリア女史と急ぎ近づくと、怒鳴り合う声が鮮明になってきた。


「そこを退け!」


「誰が退くかよ、俺達のシャルちゃんに好き勝手させないぞ!」


「おい、イナバ様呼んで来い!自警団もだ!」


「それよりも今すぐ潰しちまえ!」


「やっちまえ!」


どうやら争っているのは店の前にいる小太りのオッサンと冒険者のようだ。


オッサンが周りにいる四人と一緒に冒険者を追い払おうと威嚇するも、そんなことで退くような人たちじゃない。


逆に追い払う、いやボコボコにしてしまいそうな勢いだ。


流石に怪我をさせると後々が面倒なので止めに入った方がいいだろう。


「何事ですか!」


「あ、イナバ様!」


「聞いて下さいよ、こいつがシャルちゃんを脅しやがったんです!」


「脅す?」


それはまた物騒な話だ。


突然登場してきてなんだこいつとかそんな顔をしたが、俺の名前を聞いた途端に急に焦りだしたぞ。


「失礼ですがどちら様ですか?」


「だ、誰でもいいだろ。おい、帰るぞ!」


「「「へい!」」」


「これだけの騒動を起こしておいて、帰るとはどういうことですか?」


逃げようとするのを冒険者が妨害する。


俺と冒険者に挟まれ万事休すという感じか。


「もう一度聞きます、名前は?何が目的ですか?」


「・・・。」


「今度はだんまりですか。」


「こいつ、ダークスとかいう商人らしいですよ。」


「え、ダークス?」


何処かで聞いたことがある。


えーっとあれはたしか・・・。


「くそ!余計な事言いやがって、覚えてろ!」


と、オッサンが突然悪態をついたかと思いきや突然白い煙が視界を奪った。


煙幕?


忍者かよ!という俺のツッコミをよそにあっという間にオッサン達は森に隠していた馬で逃げて行った。


まさかそんな方法で逃げるとは思えず、冒険者の誰も反応することが出来なかった。


もちろん俺もだ。


「逃げ足の速い男ね。」


メルクリア女史も反応できなかったなんて、かなりの逃げ足だぞ


「そうだ、今思い出しました。ダークスといえばサンサトローズに店を出さないかとシャルちゃんにしつこく迫った男です。」


「俺も思い出した!しつこく誘って出禁になったやつだ。」


「そういえばそんな奴いたなぁ。」


「最近見なかったからすっかり忘れてたぜ。」


他の冒険者も思い出してきたようだ。


夏節の初め頃にしつこく勧誘してきた商人なんだが、商業ギルドにもコッペンの調査網にも引っかからなかった謎の存在。


あのあとフェードアウトしていったので決闘の件もありすっかり忘れていた。


まさか今日出てくるとはなぁ。


そして前よりもかなり強引な方法を取ってきたようだ。


「シャルちゃんは?」


「奴が怒鳴り込んできたんで俺達が間に入ったんです。中にいるはずですよ。」


「わかりました。ちょっと失礼しますね。」


冒険者の間を抜けて、店に入る。


魔灯はついているが姿は見えなかった。


「シャルちゃん、もう大丈夫だよ。」


声をかけると、一番手前のカウンター裏から可愛いウサミミがぴょこんと飛び出した


それからゆっくりと顔が出てくる。


その顔は涙でいっぱいになっていた。


「おいで。」


両手を広げると無言で飛び込んできた。


余程恐ろしかったんだろう、ガタガタと震えている。


しばらくの間よしよしと頭を撫でてあげるとやっと落ち着いてきたようだ。


「ウェリスが来たわよ。」


「入ってもらってください。」


騒ぎを聞きつけ自警団とウェリスがやって来たようだ。


「大丈夫か?」


「だいぶ落ち着いたみたいです。もう大丈夫かな、シャルちゃん。」


「・・・はい。」


「ったく、久々に来たと思ったらとんでもない事しやがって。二度とこの村に入れないようにしてやる。」


ウェリスがだいぶご立腹だ。


気持ちはわかる。


俺だって二度とこの村に入れるつもりはない。


だが今はシャルちゃんを落ち着かせるのが先決だろう。


「メルクリアさん、シャルちゃんと一緒にいてあげてもらえますか?」


「わかったわ。」


「ウェリス、ちょっと外へ。」


「何だよ。」


「ここではシャルちゃんが思い出してしまいますから。」


「・・・そうだな。」


少し冷静になったようでメルクリア女史に後は任せて店の外に出る。


外では心配そうな顔をした冒険者達が店を取り囲んでいた。


「皆さん心配をおかけしました。また、シャルちゃんを助けてくれてありがとうございます。おかげで最悪の状況を回避することが出来ました。」


「俺達は自分に出来ることをやっただけですって。」


「シャルちゃんを連れて行こうなんざ俺達が許さねぇ。」


「顔は覚えたから次に会ったら逃がさないぜ。」


なんとまぁ心強い事。


彼らに話を聞いたところ、前回同様に普通のお客を装ってお店に入って来たそうだ。


前回と違うのは勧誘を断った後、突然声を荒げシャルちゃんを脅したことだ。


一緒に来なかったら大変な事になるぞ。


後悔させてやる。


そんな事を言っていたらしい。


で、余りの怖さにシャルちゃんが怯えて泣いてしまったのをみて、周りの冒険者がブチ切れ、外に追い出したと。


前までは一人だったが、今回は複数人できていたようだし、過激になっているのが伺える。


やいのやいのしている所にちょうど俺がやってきたというわけだな。


「前回から時間が空いてうやむやになってしまいましたが、引き続き気を付ける必要がありますね。」


「そうだな。まさか仲間を連れてくるとは思わなかった。」


「連れ去られる可能性もありますから、護衛を付けてもいいかもしれません。日中はともかく夜も気を付けるべきでしょう。」


「護衛か・・・、前回シャルは嫌がったんだよなぁ。」


「そうも言っていられない状況です。何かあった時に後悔しない様にしておきましょう。」


「わかった。男衆にも知らせておく。」


冒険者にお礼を言って解散してもらったのち、ウェリスの家で今後について話し合った。


ちなみに村長の一人であるドリスは所用で外に出ているので不在だ。


「悪いんですけど、今日は一緒にいてあげてもらえませんか?」


「もちろんそのつもりだ。その方がセレンも安心するだろう。」


「よろしくお願いします。」


「これからどうする?」


「もう一度サンサトローズに行って調べてきます。もしかするとシャルちゃん以外にも同じような被害にあっている人がいるかもしれません。」


「シャル以外にか?」


「可能性の話です。」


前の引き抜き文句はサンサトローズに店を出さないか?だった。


蓋を開けてみれば空き店舗なんてなかったし、そんな話が出ている事を誰も知らなかった。


つまり初めから出店するという話は嘘だったと考えられる。


その証拠に前回と違ってかなり強引にに連れ出そうとしたわけだしね。


一人ならともかく複数人で動いているのも気になる。


もしかすると組織的に錬金術師を攫ってポーションを造らせようとしているのかもしれない。


もちろん可能性の話だけどもしそうだとしたら大変な事になる。


改めて調査するべきだろう。


「その辺はお前に任せる。」


「任されました、代わりに村の方はおねがいします。」


「冒険者は頼っていいのか?」


「買収されている可能性も否定できません、今は村だけで何とかするべきでしょう。」


「それもそうか・・・。」


考えたくないが、買収されない保証はない。


出来る限り村の人間で何とかするべきだろう。


ウェリスと共に店に戻り、メルクリア女史と合流する。


だいぶ落ち着いたようだが、まだ目は真っ赤なままだ。


「心配かけてごめんなさい。」


「お前が悪いんじゃない、謝る必要なんてねぇよ。」


「でも・・・。」


「言ったでしょ、この村の人は誰も迷惑だなんて思ってないわ。もちろん冒険者もね。」


「悪いのはあの男でシャルちゃんは被害者です。何も気にする必要はありませんよ。」


「今日から当分家で寝泊まりすることにした。ティオも一緒だから荷物を纏めて移動するぞ。」


「え?」


「セリスがお前と一緒に寝たいんだとよ。もちろん断らないよな?」


大人ってズルいなぁ。


二人のやり取りを聞きながらそんなことを思う。


今の言い方でシャルちゃんが断れるはずがない。


上手いやり方だと思う。


普通に家に呼んだら遠慮してこないもんな。


後はウェリスに任せて、俺とメルクリア女史はニッカさんの所へ向かう。


下水工事の件を伝えに行ったはずが、結局はさっきの件をどうするかで終わってしまった。


まぁ日はあるし急ぐ必要はないだろう。


むしろ急がないといけないのはさっきの件だ。


「貴方はどう動くの?」


「もう一度サンサトローズに行ってダークスという商人について調べてきます。加えて、ここ数期で攫われた商人がいないかも、ですね。」


「確かにあの強引さじゃあり得るわね。もし冒険者が居なかったら連れていかれてもおかしくないもの。」


「商店連合でもあたってもらえますか?」


「わかったわ。ドーン氏にも聞いておいてあげる。」


「助かります。」


ドーン氏にも力を借りれたら百人力だ。


今度会った時にお礼を言わなきゃな。


店に戻る帰り道、メルクリア女史がするりと腕を絡めてきた。


「どうしたんです?」


「相変わらず貴方の周りは問題が尽きないなって思っただけよ。」


「困ったものです。」


「そして、これからもそれに巻き込まれるわけね。」


「嫌だったらいいんですよ?」


「誰も嫌だなんて言ってないでしょ。」


どうしたんだろう、いつにもましてしおらしい感じだぞ。


明日雨でも降るんじゃないだろうか。


しばらく無言の時間が続き、もうすぐ店につくという所でやっとメルクリア女史が口を開いた。


「迷惑じゃないかしら。」


「なにがですか?」


「私と一緒になる事よ。さっきはさらっと言ったけど、私と一緒になるって事は望まなくても商家五皇の一員になるって事よ。嫌な事も沢山あるし、見たくない部分もたくさん見ることになるわ。まぁ、そういうのはお母様が何とかするでしょうけど、いつまでもいるわけじゃないから。」


「ではおられるまでの間に強くなりましょう。大丈夫ですって、私だけではどうにもならなくても助けてくれる人がたくさんいますから。メルクリアさんも、お手伝いしてくれるんですよね?」


「当たり前じゃない、私達の問題なんだもの。」


「そうです。もう二人だけの問題じゃない、エミリアやシルビア、ユーリやニケさんの問題でもあるんです。みんなで立ち向かえばどんなことでも乗り越えられます、これまでもそうだったようにこれからもそうなるでしょう。」


彼女は彼女なりに俺の将来について心配していたようだ。


だがさっきも言ったように、これは二人だけの問題じゃない。


俺たち家族の問題だ。


それに、誰かが変なことして来たら国王陛下っていう最強の切り札もいるので大抵はどうにかなる。


例え相手が貴族でも怖くない。


いやー、人脈って大事だよなぁ。


「何とかなる。そうね、これまでもそうだったんだもの。」


「シャルちゃんの件も何とかなります。明日サンサトローズに行きますから店番お願いしますね。」


「一人で行くの?」


「いえ、シルビアと行くつもりです。この間騎士団に顔を出したいと言っていましたから。」


「貴方ってそういう所マメよね。」


「そうですか?」


別に誰と一緒でもいいんだけど、俺一人ではいけないからなぁ。


それに、騎士団に護衛を出してもらうなら顔の利く人間がいた方がいいじゃない?


そう思っただけだ。


「ま、あれだけ露骨にやってるって事は案外切羽詰まっているのかもしれないわよ。新たに探せば何か出てくるかもしれないわね。」


「そうですね。気楽に行きましょう。」


今から思い悩んでいても仕方がない。


いつもの通りなるようになるだろう。


気付けば店の明かりが見えてきた。


いつもならそこで腕を離すメルクリア女史だったが、今日は最後まで腕を組みながら店へと入って行った。

覚えている人はいますでしょうか。

途中で忘れられた悪人再びの登場です。

いや、忘れていたわけじゃないですよ?

ちゃんと出すつもりで登場させたんですけど、別の話に埋もれていただけです。

再びの登場でしたが速攻で冒険者に囲まれて逃げてしまいました。

ここまででしたらただの雑魚。

ですがそれで終わるかは・・・まだわかりませんね。

シャルちゃんに安寧は訪れるのか。

それはまた次回という事で。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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