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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二十一章

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村を大きくするために

子供が生まれてからというもの、時間があっという間に過ぎていく。


光陰矢の如しとはまさにこのことだ。


気付けばもう夏節も草期が終わろうとしている。


まぁ、前半は決闘とかあったから忙しかったっていうのもあるけれど、終わってからもなかなかに忙しかった。


まずはドーン家ならびにドーン商店との関係改善。


特に商店連合とはお互いに手を取り合うまで行かなくても、必要なら協力し合うという約束が取り交わされた。


これまでは敵対企業だったが、これからは好敵企業としてお互いに切磋琢磨していくらしい。


その功績を称えられてメルクリア女史が出世したそうだが、俺は相変わらずだ。


もちろんそういう話はあったけれど、役職が増えた所で個人商店にはなんの利点もないので給料を上げてもらうことで手を打った。


この世界に来た時の給料は銀貨30枚だったが、今は銀貨45枚ももらっている。


1.5倍の大出世だ。


いやー、お金があるって素晴らしいなぁ。


といっても、子供二人増えたのでその分の出費も増えてトントンってところか。


ニケさんが正社員扱いになったのでお給料が商店連合から出るようになったのは大きいな。


今までは俺の収入で賄ってたし、ニケさんも自由に使えるお金があるのはありがたいだろう。


シルビアは騎士団からの年金があるし、エミリアもこそっと昇給している。


順風満帆とまではいかないが、それなりに前に進んでいてそれがちゃんと評価されるのってうれしいよねぇ。


ちなみに、俺が関係各所に顔を出している分は勘定に入れていない。


報酬が出るときもあればそうでないときもあるので、出たときは丸々貯金に回している。


それもガンドさんの家づくりなんかで減ったりしているので、それほど多くはない。


いっそのことさっさと大きな家を作って、今の家をガンドさんに渡せばよかったんじゃね?


とか考えたけど、後の祭りだ。


ジルさんはここ一期でかなり回復してきたようで、やはり環境が良くなかったのかと改めて反省している。


従業員の健康は大切に。


ユーリもそろそろ臨月に近づくし、仕事を減らしていくべきかもしれない。


ニケさんは安定期に入ったので無理を居ない程度で頑張ってもらおう。


もちろん働きすぎは厳禁だ。


まぁ、メルクリア女史が来てくれているので何とかなるだろう。


「何とかなるって本当に思ってるの?」


「申し訳ありません。」


「この査定品を一体だれが仕分けして出荷していると思っているのかしら。一度自分でやってみたら?」


「その通りでございます。」


「これからはビシビシ行くから覚悟しなさいよね。」


「宜しくお願いします。」


そして俺はというと、そのメルクリア女史を前に正座させられて叱られていた。


理由は店をほったらかして村で長話をしていたからだ。


もちろん遊んでいたわけじゃない。


村長として住民の話をしっかりと聞いて対処していただけだ。


だから子供を追いかけて走りまわっていても、遊びではない。


立派な仕事なんだ。


と、弁解したらこんなことになってしまった。


本当に申し訳ありませんでした。


「まぁまぁフィフティーヌ様、シュウイチさんも反省していますから。」


「エミリアもいつまでもこの男を甘やかしてると碌なことにならないわよ?」


「シュウイチさんはシュウイチさんなりに頑張っているんですから。」


「もぉ、そうやって甘やかすから図に乗るのよ。ほら、さっさと仕分けしてきなさい!」


「は~い。」


「はいはしっかり!」


思いっきり尻を叩かれてしまった。


痛い・・・。


「申し訳ありません、私が不甲斐ないばかりに。」


「ユーリのお腹を考えれば私がやるべきなんです。ゆっくり休んでいてください。」


「出来る限りの事はさせていただきます」


「じゃあダンジョンの点検・・・。」


「貴方さっきの話聞いていたの?」


「・・・は私がやりますのでセレンさんの近くでゆっくり休んでいてください。」


鬼の形相、というか完全に鬼になってメルクリア女史が睨んできた。


そんな顔してると産まれてくる子供に嫌われるぞ。


リュシアやルシカの前ではものすごい笑顔なのになぁ。


とか思いながら大量に積み上げられた買取品を仕分けしていく。


といっても詳細は帳簿があるので、種類別に分けて専用のコンテナに入れるだけの簡単なお仕事だ。


後は夜中のうちに商店連合の回収車がやってきて素材を回収、代金を置いて帰るという感じだ。


その為にもきれいに整理整頓しておかないといけないわけで、普段はニケさんやユーリに任せっぱなしになっている。


たまには自分でしないとなぁ。


これは状態良し、こっちはやや良し。


お、珍しくホワイトエイプの皮が入ってるぞ。


しかも傷なし、これは高値で売れそうだ。


これは大事に梱包しておこう。


うぉ、大量の核が転がってる。


スライム系の核ってブヨブヨして見た目はあれだが冷やしておくと気持ちいいんだよな。


何個か持って帰ろうかなぁ。


って、いかんいかん。


しっかり仕事しないと。


「終わった?」


「もう少しです。」


「終わったら村に行くわよ。」


「村に?」


仕分けも佳境に入り、あとは倉庫に積み上げるといった段階でメルクリア女史が監視、じゃなかった様子を見に来た。


村に何しに行くんだろうか。


「秋の収穫後に大規模な下水工事をするって話だったじゃない。その打ち合わせよ。」


「あー、そういえばそんなこともあった気がします。」


「村を大きくするのなら早めに手を付けとかないと、後で大変なことになるって言ったのは貴方でしょ?」


「とはいえかなり大規模ですし、費用も商店連合だけで負担するのは無理な話だって言ってたじゃありませんか。」


「だからププト様に直談判するんじゃない。収穫後にまた移住を受け入れるから、それを労働力に充てるんでしょ?」


「予定ではですけどね。サンサトローズのような下水網を引くのは無理なので、せめて離れた場所に下水処理用の施設だけでも作りたいんです。そうすれば汚水問題も解決できますから。」


「ここは水は多くてもそれを処理するための川が遠いのよねぇ。とはいえあそこまで水路を伸ばすわけにもいかないし・・・。」


この夏に新たに浮かび上がったのが汚水問題だ。


100人を超える人間が生活しているとどうしても大量の水が消費される。


トイレに関しては畑で使うので汲み取り式だが、生活排水は水路から村の堀に流れるだけでそこから別の場所へ行くことはない。


結果、水質が悪化しにおいが充満。


虫もわくのでどうにかしなければということになったのだ。


今は炊事の時に出る灰を撒いて、土と合わせて回収し離れた所に捨てている。


だがそれでは土壌汚染も心配なので、浄化装置を作ろうということになったのだ。


元の世界であれば汚水槽などで沈殿分解を経て綺麗にするが、ここは異世界。


もっと効率的かつ画期的なやり方があった。


「だからこそスライム浄化槽を導入するんじゃないですか。幸い冒険者も増えましたし、なにかあっても十分に対処できます。大量発生しても今ならメルクリアさんが焼き払うことだって可能ですしね。」


スライム。


物理攻撃を無効化し、何でも溶かしてしまうあのスライムである。


原理はこうだ。


汚水を大量のスライムで満たされた『浄化槽』に流し込むと、中のスライムが含まれている不純物を分解、綺麗な水に処理してくれる。


王都やサンサトローズなどの大規模な街で採用されており、下水道を通った汚水は全てスライムで満たされた浄化槽を経由し、川に流されている。


分解沈殿浄化なんかの煩わしい流れを一切無視できる画期的な存在。


それがスライムなのだ。


ただ問題がある。


スライムは不純物に含まれる魔力を吸って成長する。


ゴミが多くなればなるほど過剰に魔力を吸収することになるので、結果ものすごく繁殖してしまうのだ。


なので冒険者ギルドは定期的に冒険者へ依頼を出し、増え過ぎたスライムの除去をお願いしている。


そんなに強くない魔物なので、初心者冒険者向けのいい仕事なんだよな。


ここでも同様のやり方を採用しようというわけだ。


まぁ、下水道を作るのは大変なので今のやり方を踏襲しつつ、排水の溜まる堀の下に浄化槽用の穴を造ろうという事になったんだよな。


「でも排水問題は片付いてないわよ?」


「そうなんですよねぇ。水を綺麗にしてもそれを処理する先が何とも・・・。やはり土の精霊師にお願いするしかないですかね。」


「え~、彼とは関りを持ちたくないんだけど・・・。」


「別にメルクリアさんが対処する必要はないですよ。ププト様を経て村の代表として私が関わるわけですし。」


「でも貴方が関わるって事は私も挨拶しないわけにはいかないでしょ。」


「私達の関係は他の場所では公表されていませんし、大丈夫じゃないですかね。」


「あの恋愛バカが知らないはずないわ。」


俺はまだ会った事無いんだが、なかなか癖のある人間だと聞いている。


人の色恋にものすごく敏感で何でも聞いてくる面倒な奴。


その割に自分の恋愛には疎く、何かあったら質問攻めにしてくるらしい。


話に聞いているだけでもめんどくさそうだ。


だが、土の精霊の力を借りれば離れた川への水路なんて簡単に掘れてしまうんだよなぁ。


それさえできれば排水問題は解決。


快適な生活が戻ってくるというわけだ。


土木工事のスペシャリストとして国中を飛び回っているそうだが、首長からの依頼であれば優先度が高いのでププト様にお願いしてもらおうという話をしていた。


「まぁ時間はありますからゆっくり考えましょう。」


「そんなこと言っているうちにあっという間に冬が来るのよ。」


「やめてください、考えたくもない。」


「冬にはお披露目するからそのつもりでいなさいよね。お母様もそのつもりだから。」


「別にメルクリア家を継ぐわけじゃないですよ?」


「わかってるわ。でも、長女の結婚なのよ?式を上げないわけにはいかないわよ。」


「エミリアとシルビアとも上げてないんですけど・・・。」


メルクリア女史と結婚するという事はそういう事である。


商家五皇ペンディキュラメルクリア家の長女が結婚するとなれば、それはもう大変な事になる。


もちろん家長であるお母様が了承しているから何の問題も無いんだけど、今後跡取りやら何やらで俺の名前が上がってくるわけだし、そういう意味でも王都でお披露目をしろというお達しなのだ。


「その時に一緒に上げるって話でしょ?皆のドレス姿見たくないの?」


「そりゃ見たいですよ。綺麗でしょうねぇ。」


「五人同時に式を挙げ、うち四人は妊娠出産済み。稀代の遊び人といわれるでしょうね。」


「失礼な。ちゃんと全員平等に愛しています。」


「そうね。私の事も平等に愛してくれなきゃ嫌よ。」


「わかってますって。」


急にしおらしくなるんだから、困った人だ。


ってか、世間的にはそういう目で見られますよねぇ。


一夫多妻が認められているとはいえ、一気に五人と式を上げるのは俺ぐらいなものだろう。


別に嫌じゃないよ?


さっきも言ったように全員平等に愛しています。


優劣なんて付けられません。


だから正妻というのも決めない。


というか全員が正妻って事になるんだろう。


どうだ、うらやましいだろ。


これこそハーレムってやつだな。


俺の夢がかなったわけだ。


まぁ、蓋を開ければ五人全員の尻に敷かれているハーレムだけども。


「盛り上がってるところ悪いが、さっさと行ってきたらどうだ。」


「シルビア!それにエミリアまで。」


「あまりにも戻るのが遅いので心配して、つい。」


「・・・全部聞いてたの?」


「もちろん聞いていたぞ。安心しろ、シュウイチはみな平等に愛してくれる。」


さも当たり前のように言うシルビアにメルクリア女史の顔が真っ赤になっていく。


それはもう湯でタコのように。


「おかえりなさい。」


「ほら、パパだぞ。」


「パパ!」


「パッパ!」


シルビアに抱かれていた子供達がトコトコとこちらに向かって歩いてきた。


上手に歩けるようになったなぁ。


しゃがんで二人を迎え入れ、ぎゅっと抱きしめると嬉しそうに頬を摺り寄せてくる。


妻たちは平等に愛しているが子供への愛情はまた別物だな。


もちろんこれから生まれてくるユーリやニケさんの子供も同じく可愛いんだろう。


これからどんどん増えるって言ってたけど、本気なんだろうか。


「もちろんだ。一人三人ずつで十二人、いやメルクリア殿も加わるから十五人か。」


「大家族になりますね!」


「大家族っていう範囲を超えている気がしますが・・・。」


それでも全員愛そう。


少し不安なのは子供の顔と名前が一致するかどうかだ。


大丈夫だとは思うが・・・。


十五人かぁ・・・。


「ほら、メルクリアさんにもご挨拶だよ。」


「メメ!」


「メッメ!」


子供たちに名前を呼ばれ、ハッと我に返るメルクリア女史。


すぐに二人の頭を撫で、優しい顔に戻った。


「おかえりなさい。でも、お姉ちゃんとパパはご用事があるから先に帰っていてね。」


「ん~?」


首をかしげるリュシア。


ルシカはにこにこと笑いながらメルクリア女史を見上げていた。


「夕食までには戻って来るんだぞ。」


「今日はフィフティーヌ様もご一緒できるんですよね?」


「そのつもりよ。泊まることは出来ないけど、この子達が寝てから戻るわ。」


「二人はメルクリア殿と寝るのが大好きだからな、助かる。」


「その間にお風呂に入れますしね。」


「という事で、さっさと用事を済ませてしまいましょう。仕分けは終わり、それじゃあ行ってきます!」


最後の品を仕分けして俺は勢いよく立ち上がった。


今から行けば夕食までには戻って来れる。


言い換えれば早くいかないと戻ってこれない。


だから急がなければ。


子供達を二人に預け、急ぎメルクリア女史と共に店を飛び出すのだった。

新章はじまりました。

人が増えると色々な問題が出てきますよね。

食べたら出すじゃないですけど、何をするにしても汚れたものは出てしまいます。

それを処理しなければいつまでも不快なまま。

生活するって大変なんです。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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