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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二部 第十九章

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森を抜ければ

昼食を終え、予定通り新人たちを前にして進行を始めた。


もちろん速度はグンと落ちる。


ティナさんは経験からかどこの道を進めばいいかを感覚で知っているが、彼らはそうじゃない。


迷い考えながら進む分速度は遅くなり、さらに深くなった森はたやすく進むことを許さない。


加えて魔物が増える。


「そっち行ったぞ!」


「くそ、ちょこまか動くなよ!」


「ダメ!それ以上は追いかけないで。」


「なんでだよ!」


「ダンジョンじゃないの、奥まで行ったら戻れなくなる。」


ここは彼らの領域だ。


複数人ならまだしも、一人で入って戻れるとは限らない。


余程自信がない限りは。


「くそ!」


「見せて、怪我してる。」


「かすり傷だよ、これぐらい。」


「さっきのはポイズンマウスよ?かすり傷でも毒が回ればそこから腐っていくわ。」


「うげ、マジかよ。」


彼が慌てて腕を出し患部を見せる。


すると場所を即座に把握しカバンから薬草と毒消しハーブを取り出して治療を開始。


必要であれば治癒魔法も使う。


そう、彼女は僧侶だった。


い、違うな。


どっちかっていうと薬師?


そのハイブリットみたいな感じだ。


「これでよし、痺れはある?」


「いや、ない。」


「なら大丈夫。もししびれたらすぐに言って、その場合は麻痺消しを使うから。」


「わかった・・・ってイテぇよ!。」


患部を簡易包帯で巻いて最後に叩くのが彼女の流儀だ。


それがわかって来たのか彼らもそれで怒る事はなくなった。


「そろそろ暗くなってきたな。」


「そうだな。早めにランタン用意しとこうぜ。」


「わかった、任せて。」


三人組のサポート役が弓師の彼。


腕はまだまだのようだが、段取りがいい感じだ。


うーむ、こう見ると非常にバランスのいい班みたいだな。


今回の人選はティナさんが行ったみたいだし、それがわかって選んだのなら流石以外に言葉が見当たらない。


ぶっちゃけ俺はおまけみたいなものだ。


ただ後ろからついていくだけ。


ほんと、お世話になってます!


「そろそろ野営にしましょうか。」


それから少し進んで先を進む四人に告げる。


「え、でもランタンがあればまだいけますよ。」


「そうですよ。ここじゃ視界も悪いし・・・。」


「わかりました準備します。」


「「え?」」


先に行きたい前衛二人とは対照的に、後衛二人はすぐに荷物を下ろした。


森の中なのにすり鉢状になっており見通しは悪い。


背の高い木は多いが茂みが無いので魔物の接近は把握しやすいだろう。


「ほら、貴方達は薪になりそうな枝を探してきて。生木はやめてよ、煙が凄いから。」


「でもここだと見通しが・・・。」


「夜になったら見通しも何もないでしょ。むしろくぼんでる分明かりが見えにくいから、向こうからもわかりにくいってことよ。」


「「あぁ!」」


納得するの早!


そして行動はや!


あっという間に荷物を下ろして森の奥に消えて行った。


いやいや、さっき戻れなくなるって忠告受けたんじゃなかったっけ?


「イナバ様、火おこしお願いしてもいいですか?」


「え、あ、はい。」


「早くしないと二人戻ってこれなくなるので。」


「わかりました。手近なもので作りますね。」


そうか、見えにくいけど見えないわけじゃない。


少し離れてもオレンジ色の火の揺らめきなら見えるもんな。


なるほどなるほど。


荷物を下ろし持ってきた携帯燃料に火をつける。


ダンジョンの中には薪が無い。


なので普段はこういった難燃性携帯用の燃料を使って野営をするんだ。


火は小さいが長持ちする。


だがここは外だ。


少しの時間持てば、後は燃料がたくさん届く。


「「お待たせしました!」」


「さすが早いね。」


「へへへ、俺達森の中でしょっちゅう遊んでたんで。な?」


「あぁ。本当はもっと進めるんですけど、無理するなって言われてるんで。」


「誰に?」


「もう一人に。あいつも同郷なんです。」


あぁ、だから仲がいいのか。


先を行く二人を後ろでサポートする。


それをずーっとやってたんだろうな。


「ほら、戻って来たなら今度は周辺の安全確保だよ。これ、魔物除けの香草だから四方に撒いてきて。」


「「ういっす!」」


「ちぇっ僕の言う事は聞かないくせにさ。」


「年上だから気を使ってくれているだけよ。」


「年上だから敬うんです。」


本当に真面目なんだなぁ。


こんな子も街に染まれば擦れていく・・・。


お父さんは悲しいよ!


「さぁ、準備は迅速に!食事を済ませたら交代で警戒しますからね。」


「「「「はい!」」」」


その後滞りなく食事は済み、明日の予定を確認した後早めの就寝となった。


ダンジョンと違って四方をから襲われる可能性が有るので不夜番は二名。


最初は前衛の二人、それから後衛、その後ティナさんと俺という順番になった。


ぐっすり寝て早起きすれば問題ない最高の順番。


間違いなく気を使ってくれたんだろうなぁ。


一応俺も冒険者だし気を使わなくてもよかったのに。


有難いけどさ。


なんてことを考えながら簡易毛布にくるまって床に就いた。


「イナバ様、順番です。」


一瞬深く落ち、目を開けると目の前にティナさんの顔があった。


ドキッとしてしまい一気に血が体内を駆け巡る。


びっくりした。


「っと、もうそんな時間ですか。」


「大丈夫ですか?」


「えぇ、ぐっすり寝ましたから。」


「南側は私が見ますので、イナバ様は北側をお願いします。」


「わかりました。」


薪を中心に北と南に分かれて警戒する。


立ちっぱなしだと寝てしまうので時々場所を変えながらするのがコツだ。


後は思考を巡らせる。


そうすれば朝が来る。


皆が起きれば不夜番は終了だ。


明日には南の村につく。


そこから先は手配してもらった冒険者と一緒に魔石鉱山へ。


店はもう準備できているようだから到着次第準備をしよう。


探索は始まっているらしいからそっちの情報収集もした方がいいな。


冒険者ギルドの職員が探索を管理しているらしいから挨拶しておこう。


あくまでも俺に求められているのは店の運営。


それと、休憩所の管理。


如何に冒険者の疲れを取り再度鉱山の調査に向かってもらえるかだ。


上はそれ以上の何かを期待しているようだけど、状況がわからない以上出来ることはあまりないんじゃないかなぁ。


鉱山の攻略を俺がするわけにもいかないし・・・。


え、中に入るの?


冗談じゃない。


その辺はプロにお任せするよ。


お前もプロだって?


ほら、ダンジョンのプロであって鉱山は専門外・・・いえ、何でもありません。


あとそれから・・・。


「イナバ様。」


「え?」


「東から妙な気配がします、見に行っても構いませんか?」


考え事をし過ぎたのかティナさんの接近に気づかなかった。


危ない危ない。


「妙な気配ですか?」


「なんていうか、気味が悪いんです。」


「それは冒険者としての勘ですか?」


「そう・・・ですね。そんな感じです。」


気味が悪い・・・か。


一番いやな奴だ。


第六感って言うんだろうな、熟練の冒険者にはそういう何かが見につくとガンドさんが言っていた。


死線を何度もくぐっているとそんな何かを感じるようになるのだとか。


同じような事をシルビア様が言っていた気がする。


「ではお願いします。ただし、危険が伴う場合はすぐに戻ってきてください。あくまでも調査ですから無理に戦わず逃げることが大切です。」


「彼らがいますからね。」


焚火の周りには気持ちよさそうに眠る四人の姿がある。


冒険者は死と隣り合わせ。


それも彼らはわかっているだろうけど、そんな彼らを守るのもまた先輩の役目だ。


俺が先輩なんておこがましいけどな。


ティナさんが装備を整え東側へと消えていくのを見送り、俺は今まで以上に意識を集中させ警戒に当たった。


話によれば変異した魔物がいるそうじゃないか。


そいつらが森に入ってきている可能性は否定できない。


また、そいつらに追い出された魔物がが森に入っているというのが今回の調査の目的だ。


そいつらが近くにいる可能性だってある。


俺で太刀打ちできないのなら・・・。


「太刀打ちできる人に出てきてもらうしかないよね。」


幸いにもココは森の中。


森の精霊ドリちゃんが一番本領を発揮できる場所だ。


俺を派遣した皆様もそれを期待して呼んだみたいだし・・・。


高いお金貰っているしね、報酬分の仕事をしないと怒られるってもんだ。


それからどれぐらい時間が経っただろうか。


ティナさんの消えた東側ではなく南側から何かが近づいてくる音が聞こえてきた。


ガサガサ、ガサガサと一直線にこちらへ向かってくる。


俺は短剣を抜き、体勢を整えてその時を待つ。


音が大きくなり一番手前の藪が揺れた次の瞬間。


「ただいま戻りました。」


血まみれのティナさんが藪の向こう側から出てきた。


「ティナさんでしたか。」


「すみません、驚かせてしまいました。」


「それよりもお怪我は?」


「あ、大丈夫です。全部返り血ですので。」


右手には愛用の剣を握り反対の手には血まみれの何かを持っている。


あれは・・・死骸か?


「それが違和感の正体ですか。」


「見た目にはただのポイズンマウスなんですけど・・・。」


「けど?」


「ここが違うんです。」


そう言いながら死骸に剣を突き刺しその場で解体を始めるティナさん。


おぉぅ、スプラッター。


って今更だけどね。


「魔石?」


「そうなんです。この手の魔物にはないはずなのに、向こうで見つけたほかの三匹にも同じ物が入っていました。」


解体をはじめてすぐ。


身体の中心部分から赤い色の石が転がり出てきた。


赤いから危険ってわけではない。


魔力の種類や量によって色が変わることがあるが、これはごく少量の魔石特有の色だ。


屑石と呼ばれるそれは魔灯に使う事も難しく、ふつうは捨て置かれているそうなんだけど・・・。


何でこんなものが体内にあるんだろうか。


「という事は、これらは魔石鉱山から逃れてきた可能性が高い?でも逃れてきたのなら魔石はないはず。」


「魔石鉱山から逃れたのではなく、出てきたというのはどうでしょうか。変異した魔物がいるという情報にも合致します。」


「だとしたらかなりの数が脱走している可能性が有りますよ。変わった所は他にありますか?」


この三匹だけってことは考えにくい。


弱い魔物だから魔石鉱山から森に住み処を移したという可能性はあるけど・・・。


黒い悪魔じゃないが一匹いれば複数匹いると考えるのが普通だ。


変異体だとしてそれがかなりの数いたら・・・。


それはそれでややこしい事になるぞ。


「生命力が高かった・・・ような気がします。下半身を切ってもすぐには絶命しませんでしたから。」


「魔石のあった場所は心臓付近ですね・・・。という事はここから魔力を供給されている分死ににくいとか?」


「可能性はあると思いますが・・・。魔石で動くなんてアンデットぐらいなものですよ?」


「それは人工物ですよね?自然発生したアンデットは魔石を保有してないはず。という事は誰かに作られた?」


「わざわざネズミに魔石を?」


「ネズミ算的に増やしたいのかもしれません。」


そうだとしても誰が?


増やして得をする人がいるのか?


わからん。


魔石なんてダンジョンに潜ればいくらでもってわけじゃないけど手に入るから、魔石鉱山がすべてというわけではない。


食べたことによって変異した可能性だってある。


それこそどこかの研究施設から奪ったウイルスを食べたように。


でもそれなら昔から居るはずなんだよね。


そして記録されているはず。


でもティナさんが知らないっていうのはそうじゃないってことだ。


突然変異的な何か。


もしくはそれ以外の何か。


わからんなぁ。


「どうしましょうか。」


「一応その死骸はそのまま持っていきましょう。」


「わかりました。」


「今日はこのまま野営を続け、朝早くに出発します。申し訳ありませんが今日はティナさんに先導してもらうという事で。」


「致し方ないと思います。」


「帰りは念の為馬車で戻ってください。サンサトローズに到着しましたらグランさんにすぐ情報を伝えてもらってから戻ってもらえれば。」


「私もそれがいいと思います。でも、イナバ様は?」


俺か?


こんな状況でもやることはおんなじだ。


なぜ起きたのかを調査するのは俺の仕事じゃないが、それを支えるために俺は呼ばれたみたいだしその分の仕事はするつもりだ。


なに、危なくなったら本気で逃げるさ。


可愛い娘と嫁を残して死ねるかよ。


「私は予定通り鉱山に向かいます。」


「危なくないですか?」


「仕事ですから。」


「・・・わかりました。」


こいつには何を言っても無駄、そんな風に思われている事だろう。


まぁ今に始まった事じゃないしね!


「では引き続き警戒をお願いします。」


それから明るくなるまでの間、特に怪しい気配を感じることはなかったそうだ。


偶然なのかはわからない。


でも事実変異体は目の前にいる。


それは紛れもない事実だ。


早めに彼らを起こし事情を説明すると、すぐに納得してくれたようだった。


その後ティナさんを先頭にどんどんと進み、昼過ぎには森を抜けることが出来た。


「後は村まで一直線ですね。」


森を抜けたすぐ近くに街道があり、道なりに進めば一刻程で村に到着する。


森を抜けたことで緊張がほぐれ、厳しい面持ちだった彼らにも笑顔が戻ってくる。


だが・・・。


「なんだ・・・これ。」


予想もしていない光景に彼らの表情がまた強張るのだった。

森を抜ければそこには何かがあった。

果たして村の状況は?

それはまた次回という事で。


GWでも非常事態宣言でも変わらず仕事をしております。

ですが執筆に遅れが出ているためもしかしたら遅れるかもしれません。

その場合はご容赦ください。

出来る限り頑張らせて頂きます。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 山や森の窪地はアウトドアではキャンプしませんけどね、降雨で水が流れて来るし、水が流れるって事は下生えが少ないイコール獣道に成りやすいし、窪地は湿気てる可能性が高いし煙も籠もり易いので普…
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