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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二部 第十九章

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対策を練ろう

シャルちゃんの件は全員で共有する事になった。


また、南の村で発生している水不足に関しても今後の状況を注視していく。


水はまだしも疫病が面倒だ。


折角村一丸になってがんばってきたというのにこんな所で邪魔をされたくない。


と、いう事で朝晩の巡回を増やし畑周辺には鳴子を使った罠を設置。


捕縛を目的とするのではなく、警戒しているぞというアピールをすることで被害を未然に防ごうという事になった。


「とりあえずは交代制で巡回すれば問題ないだろう。必要があれば冒険者に依頼を出しても良い。」


「それだと金がかかるだろ、俺達だけで大丈夫だ。」


「勿論そのつもりだが魔物の件が気になる。」


「水不足が原因なんだろ?森では起きないんじゃないか?」


「逃げてきた魔物が森に溢れる可能性もある。ディヒーアの件を忘れたのか?」


「忘れては無いけどよぉ。」


過去二度も魔物に襲われてきた村だ、忘れるわけがない。


一応それを想定した防備も拡充しているが、村の拡張に追いつかず南側にはまだ塀が作られていない。


今から作るにしてもかなりの時間を要するだろう。


「それについては冒険者に依頼を出してみてはどうでしょうか。」


「冒険者に?」


「ワザと森を抜けてもらい南の村まで行ってもらうんです。そうすれば村と魔物どちらについても調べる事ができます。」


「さすがティナ殿だ、シュウイチの言葉で言えば一石二鳥という奴だな。」


村長の家にはいつものメンバーが集っていた。


商店側からは俺とシルビア、村からはウェリスとドリスのオッサン、冒険者からはティナさんだ。


ニッカさんは孫の顔を見に行っているので不在である。


え、村長なのに良いのかって?


若い世代にバトンタッチするのも仕事の一部らしいよ。


それを口実に孫の顔が見たいだけなのは承知している、文句を言う人間は誰もいない。


「依頼料は商店から出しましょう。その代わりに新人冒険者にやらせても構いませんか?」


「大事な仕事をわざわざ新人にやらせる必要は無いんじゃないか?」


「遠征させる事でダンジョンに深く潜る練習をさせるわけだな。」


「新人冒険者から夜営の方法や準備についての問合せが結構出ているんですよ。本来であれば中級冒険者が間に入って教えてやるべきなんですが、こぞってダンジョンの奥に潜ってしまいまして・・・。」


「また何か仕込んだんだろ。」


「魔物が大量発生した場合を考えて20階層より下に結構な数を召喚したんです。どうやらそれが噂になったようで皆さん嬉しそうに潜っていかれました。あの様子じゃ二日は戻ってこないかと。」


最初はモンスターハウス的な奴を作っただけなのだが、何故か冒険者にバカ受けしてしまい、速攻で潰されてしまった。


それが悔しくてついムキになって大量に召喚したら、ちょっとやりすぎてしまったのは内緒だ。


現在は各階層に溢れる魔物を複数の冒険者が臨時の班を作って削りながら進行している。


某MMORPGで時々行なわれていた塔イベントを思い出してもらえれば分かるだろうか。


もちろんコレはゲームではない。


戦えば怪我をするし死ぬ冒険者も出ている。


だがその恐怖に勝る実入りの良さが冒険者達をひきつけている。


ぶっちゃけこんな事になるとは思わなかったのだが、案外好評なので今後も継続してやっても良いかもしれない。


冒険者が来れば俺達は潤う。


勿論冒険者も潤う。


ダンジョン商店として最高の状況が作り出されているわけだ。


ただしその影響で中級冒険者が減り、初心者の行き場がなくなっているのもまた事実。


そんな彼らをサポートする意味も含めて、複数人での探索をやらせたいんだよね。


初心者育成もまた、シュリアン商店に課せられた使命なのだと俺は思っている。


「それでしたら私が付いていきましょうか?」


「ティナさんが?」


「そういう状況であれば私が潜る意味はありませんし、南の村がどうなっているかも気になります。」


「確かにティナさんが一緒であれば新人達も心強いでしょうけど・・・報酬はあまり出ませんよ?」


「報酬目当てではありませんから。」


そうやっていつも面倒な事を引き受けてくれるんだよなぁ。


ほんとお世話になっています。


「それなら俺としても安心だ。様子を見に行かせて何かあったら申し訳ないからなぁ。」


「それは冒険者も覚悟の上ですよ。」


「分かってはいるが人の命だ。」


「耳が痛いですね。」


「別にお前の商売を否定してるわけじゃねぇ、俺の気持ちの問題だ。」


「とりあえずティナ殿が同行してくださるのだ、その心配もないだろう。さらに南の村がどうなっているのかが分かればこちらとしても援助の申し出が出来る。水に関しては・・・コッペンが噛んでいるんだったな。」


シルビアが苦笑いで俺を見てくる。


そんな顔しないでよ、シャルちゃんの為に仕方なかったんだからさ。


「別に我々が動く分には文句を言わせませんよ。彼は彼で何とかするでしょう。」


「ま、それもそうだな。」


「ひとまず巡回と警報用の罠、冒険者の派遣で今回の件は終わりだな?なら俺は行くぞ、まだ南側の伐採が終わってないんだ。」


「そうですね、シャルちゃんの件はひとまず保留で。」


「何処にも属さぬ商人か、どう考えても真っ黒であろう。そんな奴にシャルを渡してたまるものか。」


「誘拐までは無いと思いますが最悪を考えておいても良いかもしれません。」


俺が連れて行かれた件もある。


最悪は常に想定しておかないと。


「自警団に張り付かせているから問題は無いだろ。」


「では解散ということで、お疲れ様でした。」


順々に席を立ちニッカさんの家を後にする。


あー、疲れた。


「シルビアはこの後どうしますか?」


「セレン殿の所に行くつもりだ。シュウイチはどうする?」


「このまま店に戻ります。ユーリに早く戻るように言われているので。」


「ユーリに?」


「魔物を大量に召喚した件でちょっと。」


ここに来る前に、出来る限り早く帰って処理をしろと睨まれたんだよね。


機嫌を損ねない為にも急ぎ戻るとしよう。


帰り際にシャルちゃんの店の前を通ったが特に問題は無い感じだった。


定期便が休みなのでそんなに冒険者も並んでいない。


お、ティオ君が手を振ってる。


今日は彼がボディーガードのようだ。


ウサ耳のせいか弱そうに見えるけど、実力はかなりのもの。


人を見かけで判断するとダメな奴だな。


店に戻ると丁度メルクリア女史が昼休憩をしていた。


「遅かったわね、ユーリさんが待ちくたびれていたわよ。」


「ちょっと長引いてしまいまして。」


「地下にいるみたいだから顔を出しておきなさい。」


「有難う御座います。」


やれやれ休憩できそうにないな。


カウンターをくぐりバックルームへ抜けるとその足で地下室へと降りる。


薄暗い地下室の床には巨大なMAPが広がっており、赤とか青の点が忙しそうに動き回っていた。」


「ただいま戻りました。」


「お帰りなさいませご主人様。」


「どんな感じですか?」


「冒険者は現在21階層を掃除中です。この分ですと一刻程で掃討されるでしょう。」


「思ったよりも早かったですね。」


赤は魔物、青が冒険者を表示している。

部屋を埋め尽くす程いたはずの魔物は、冒険者の波状攻撃によって少しずつ削られ、その数を半分以下まで減らしていた。


奥に転々と魔物の表示があるが、主戦場にその多くが終結している。


ユーリの言うように終わりは近いだろう。


「22階層以下の状況は?」


「ご主人様の過剰な反応により予定の三倍ほど召喚されております。特に22階層はアンデット、23階層には擬態系の魔物が多いようですので突破には時間を要するでしょう。」


「いやぁ我ながらやりすぎてしまいましたね。」


「やりすぎです。まさか半日で魔力の備蓄が半減するとは夢にも思いませんでした。危なくお腹の子を産み落とす所です。」


「それはちょっと言い過ぎでは?」


「そんな事はありません。幸いにも冒険者の皆さんが奮起してくださったので収拾が付いていますが、そうでなければ冒険者の数が減り通常運行にも支障が出る所でした。ご主人様が食事をするように魔物も魔力を摂取するのですから、そこをお忘れなきようお願いします。」


「すみませんでした。」


ここまでユーリに怒られるのは久しぶりだ。


ほんと怒りに我を忘れちゃダメだね。


何事も冷静でいないと。


「あ、崩れましたね。」


そんな話しをしている間も足元の地図は点滅を繰り返しており、青い点が赤い点を食い破って部屋に流れ込んだようだ。


これで21階層もスムーズに攻略される・・・はずがないよね。


「この奥は罠を設置したと記憶していますが、どんな塩梅ですか?」


「このままなだれ込むと十分に効果はあるでしょう。冷静になられると見破られる可能性がありますが・・・。どうやら突入を選んだ冒険者がいるようです。」


青い点の一部が魔物を振り切り部屋奥の通路を確保しに動いた。


勿論コレは愚策ではない。


通路を確保する事で流入する魔物の数を減らすことができる。


時間を稼げば稼ぐほど残党狩りはし易くなるし、危険は少なくなるのでむしろ推奨される方法ではあるのだが・・・。


「眠りガス作動しました。制圧に成功です。」


「奥の魔物は?」


「罠に反応し進行を開始しました。」


「救援が先か、それとも餌食になるのが先か。」


「恐らくは救援が先でしょう。最後の魔物が倒されました。」


部屋の赤い点が全て消滅する。


代わりに奥から魔物が向っているが、先行した冒険者を追いかけてまた数人通路へと向っている。


うーむ、残念。


もう少し罠を増やすべきだったか。


まだまだ読みが甘いな。


「魔力の回収はどんな感じですか?」


「消費した分の七割は回収できました。明日まで引張れれば、再度突入で魔力の補充が完了するかと。」


「プラスマイナスゼロ、ですか。」


「魔力的はそうですが商店の収益で考えると十分な利益が出ています。結果成功したと言えるのでは無いでしょうか。」


「大損しなかっただけ良しとしましょう。後、お願いできますか?」


「お任せ下さい。」


「無理はしないでくださいね。」


返事はなかったが嬉しそうに笑う横顔が見えたので良しとしよう。


ひとまず上に戻り近くの椅子に腰掛ける。


ふぅ、疲れた。


「お疲れ様でした。」


「エミリア達に比べればまだまだ。でも有難う御座います。」


「今日はまだ少なめですから。」


「先程21階層が突破されましたので夕刻には大量の素材が持ち込まれると思います。これから忙しくなりますよ。」


「腕がなります。」


買取のプロフェッショナルが二人もいるんだから大丈夫だと思うけど・・・。


俺もカウンター業務頑張ろう。


「メルクリアさんは?」


「会議に出ると先程出て行かれました。」


「マジですか。」


「夕刻までには戻ると思いますよ。」


「一人で大丈夫ですか?」


「いつものことですから。」


ニケさんの悪阻が酷くなってからはエミリアが一人で処理する日が多くなった。


人を増やす事も考えたが、メルクリア女史が戻ってくると多すぎるんだよなぁ。


俺がもう少しここに留まれれば良いんだけどそういうワケにも行かないんです。


「疲れ果てる前に言ってくださいね。何とかしますから。」


「シュウイチさんも、ですよ。いつも無理ばっかりするんですから。」


「私は良いんです、好きな事させてもらっていますし。」


「それでもです。」


まるで子供を叱るような顔で俺を見てくるエミリア。


俺が言うとあれだけど、子供を産んで益々綺麗になったなぁ。


母親になったのもあるかもしれない。


シルビアも鋭い雰囲気が少なくなって、より可愛くなった気がする。


え、惚気は結構だって?


別に良いじゃないか。


「シュウイチさんお昼は済まされました?」


「実はまだなんです。」


「今なら空いているので行ってきてください。私は先に戴いたので。」


「じゃあ遠慮なく。」


戦士たる者食べれるときに食べる。


シルビアによく言われたものだ。


空腹は最大の敵だからな。


カウンターから宿のほうを見ると、少ないとはいえ冒険者の姿はある。


見た感じ初心者が数人。


これから潜るのかガンドさんにアドバイスを貰っているようだ。


邪魔するのは申し訳ないがジルさんがお休みなので致し方ない。


「ガンドさん、日替わりをお願いします。」


「随分遅い昼食だな。」


「会議が長引きまして。」


「ご苦労なこった。」


盛り上がっている所をカットインして注文をすると、突然の登場に他の冒険者が驚いた顔で俺を見てきた。


「あ、イナバ様!」


「どうぞ話しを続けてください。」


「あの!どうやったらイナバ様みたいに一人でダンジョンに潜れますか!?」


「一人で?」


「王都の新人最速記録はまだ更新されてないんです。どうやったらあんなに早く奥に進めるんですか?教えてください!」


「俺も聞きたい!」


「私も!」


さっきまでガンドさんに群がっていたのに急に標的を変えて質問攻めにしてくる。


教えてくれって言われても、俺も君達と同じ初心者ですよ?


「私も初心者のままですから偉そうにはいえませんが、事前にしっかりと調査しておくことですね。」


「調査ですか?」


「どんな魔物が出るのか、どんな罠があるのか。未開拓のダンジョンならまだしも他のダンジョンには沢山の情報が出回っていますから、それをしっかりと把握して挑めばそんなに恐れる事はありません。ただ一つだけ言うならば、一人で潜るのはやめたほうが良いでしょう。」


「「「え?」」」


お前はやってるのに何でだよって顔するよね。


わかる、わかるよその気持ち。


「一人で潜ると失敗が出来ません。失敗したときは死ぬ時です。余程自信があるか、誰かに助けてもらえる環境でないと難しいでしょう。」


「イナバ様は自信があったんですか?」


「ありました。その為に準備しましたから。」


「「「お~~~。」」」


「とか何とか言ってるけどな、この人は未開拓のダンジョンも一人で踏破してるからあんまり信じるんじゃねぇぞ。」


「ガンドさん、そりゃないですよ。」


「あの時冒険者を連れ帰ったときの事、忘れてないからな。」


確かにそんな事もあったけどさぁ。


あれはほら、魔物のいないダンジョンだったから。


カウントしちゃいけないんですよ。


「それって集団失踪事件ですよね?」


「知ってる!突然いなくなったのよね。」


「おぅ、その時俺も救出作戦に加わったんだが、イナバ様は・・・。」


その後話しは大いに盛り上がり、代わりに俺の昼食が出てくる事はなかった。


仕方ないので裏に戻り携帯食料を齧りながら帳簿を合わせる。


「それ、店の在庫じゃないの?」


「後で代金は支払いますよ。」


その状況をばっちりメルクリア女史に見られてしまった。


代金は払うので横領ではない・・・はずだ。


「店主がこんな所でそんな物食べて。家に戻って作れば良いじゃない。」


「時間が勿体無くてつい。会議はいかがでした?」


「相変らず無駄な会議だったわ。」


「あはは、ご愁傷様です。」


「でも収穫もあったわよ。水不足の件だけどどうやら日照りだけが原因じゃないかもしれないわ。」


「え?」


予想外の所から出てきた情報に思わず難しい顔になってしまった。


これは思っていた以上に大事なのかもしれないぞ。


一つ片付ければ二つ問題が出る。

世の中上手く行かないものですね。

それでもめげずに一つずつ潰していけばいつか終わりが見えてきます。

そう、バグを潰す作業と同じなのです。


でも、新たに出てきた問題は中々に巨大なようです。

相変らずトラブルを呼び寄せる主人公。

果たして次なる問題は?


ここまでお読み戴きありがとうございました。

また次回もよろしくお願いいたします。

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