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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二部 第十九章

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時は流れて

随分と長い時間ここにいる気がする。


この世界で生まれ育ったわけじゃないのに、もうこの世界の一部みたいな感じになってきている。


ぶっちゃけ元の世界に帰るつもりはないので、もうこの世界の人間ってことでいいんだけども・・・。


「シュウイチさんおはようございます。」


「おはようエミリア。よく眠れた?」


「はい!今日はよく眠れました、シュウイチさんは随分と早いんですね。」


「なんだか眠れなくて気づけばこんな時間に。」


「ダメじゃないですか!今日お店ですよ?」


「あはは、なんとかなりますよ。」


昨日は聖日。


って事は今日からまた新しい週が始まる。


定期便も来るし忙しくなりそうだなぁ・・・。


「おはよう、二人とも早いな。」


「あ、シルビア様おはようございます。」


今度はシルビアが上から降りてきた。


朝一でスッキリした顔をしているなんて珍しい、よく眠れたんだろう。


よかったよかった。


「シュウイチは・・・随分とひどい顔をしているな。」


「シュウイチさん寝てないそうです。」


「それはいかん、少し寝てくるか?」


「いえ、大丈夫です。ウトウトはしていましたので。」


「辛くなったら早く言うんだぞ。」


「ありがとうございます。」


辛いかと聞かれると辛くはない。


元々睡眠時間が少なくても何とかやっていける体質なので、途中で仮眠さえ取れれば一日持つだろう。


それよりも二人の元気な顔が見れた、それで十分だ。


「おはようございます、奥様方。」


「おはようございます。」


「すまんな、朝早くから。」


「いえ、運動も必要ですから。」


二人が下りてきたタイミングでユーリが外から帰ってきた。


いつもと変わらず散歩という名の巡回を続けている。


その手に抱かれているのは男女の乳児、もちろんユーリの子ではない。


俺達の大切な子供達だ。


「ご主人様は少しは休めましたか?」


「えぇ、散歩をお願いしてすみませんでした。」


「まさか私達が寝ている間、シュウイチが見ていてくれたのか?」


「ごめんなさいシュウイチさん。」


「二人の方が大変ですからね、これぐらいどうってことありませんよ。」


さっきも言ったように少し寝ればすぐ回復できる。


つきっきりの母親と違い父親に出来ることは少ない。


そんな中でも少しでも役に立てるのであれば本望ってもんだ。


「さぁ、二人共食事の時間ですよ。」


ユーリに抱かれて気持ちよさそうに目を瞑っていた二人が、パッと目を見開いた。


「「ふぇぇ~~!」」


すぐに泣きだし、目の前にいる母親に手を伸ばす。


その反応に妻達も笑顔になり愛おしそうにそれぞれの子を抱きしめた。


「よしよし、今飲ませてやるから待ってろシルカ。」


「リュシアもちょっと待ってね。」


もう一歳になるのにまだまだ母乳が恋しいお年頃。


この世界では結構遅くまで母乳で育てる習慣があるそうだ。


セリスちゃんもつい先日まで飲んでいた気がする。


幸せそうに母乳を与える様子を見ているとユーリにグイっと首を曲げられてしまった。


今グキ!っていったんですけど・・・。


「大丈夫です、こんな事で取れたりしません。」


「いや、取れると困りますから。」


「まったく、いくらお二人がお好きでも子供に焼きもちをやくなどありえません。」


「焼いてませんって。」


いくら二人が好きだかからってさすがにそれはない。


「そうですよ、イナバ様は全員が大好きなんですから。」


「ニケさんもおはようございます。体調はいかがですか?」


「今日は幾分かマシです。」


「朝食は摂れます?」


「そうですね、軽くであれば大丈夫だと思います。」


遅れて二階から降りてきたニケさん。


今日は幾分か顔色がいいようだ。


エミリアもそうだったけど悪阻の重い軽いってホント人それぞれなんだな。


ちなみにシルビアは軽く、食欲も旺盛だったがエミリアはほぼ何も食べれない日々を過ごしていた。


どうやらニケさんも同じ感じらしい。


え、孕ませたのかって?


言い方が悪くないですかね。


まぁそうなんですけど。


お陰様でエミリアとシルビアに続きニケさんにも新しい命が宿ったようだ。


「どうして私の事は話して下さらないのですか?」


「話の流れで、つい。」


「まったく、人のお腹をこんなにも大きくしておいて。」


お分かりだと思うがユーリのお腹にも命が宿っている。


順番的にはユーリが先で最近ニケさんが授かった。


最初の目標を超えてからもう二年か。


時間が経つのは早いなぁ。


「人聞きの悪い言い方をしないでください。」


エミリアたちはまだ終わりそうにないのでユーリとともに朝食を作る。


家族が増えたとはいえずっと一つ屋根の下で生活しているので変わったことはあまりない。


変わったことがあるとすれば、正式に籍を入れた事ぐらいだろうか。


といっても、籍を入れられたのは戸籍があったニケさんだけで人造生命体であるユーリには、指輪しか渡すことが出来なかった。


本人はそれでも満足なようで、時々嬉しそうに指輪を眺めている。


しっかしあれだな、人造生命体でも本当に子供を作れるんだな。


「あの方はそれを想定して私をおつくりになりましたから。」


「生まれてくる子はどういう位置づけなのでしょうか。」


「私のように魔力を摂取するだけで生きるのか、それとも皆様と変わらないのか。それに関しては生まれてみなければ何とも言えません。」


「そうですねぇ。」


「今の所成長過程はセレン様や奥様方と変わりございませんので、おそらくは皆様と同じなのかと。むしろ私が心配しておりますのは母乳です。」


母乳・・・。


確かに子供が生まれると母親からは母乳が出るようになるが、そこまでの機能が備わっているかは全くわからない。


本人曰くユーリ自身の体が変化することはないそうなので、難しいのではという見解だ。


こらこら朝から自分の胸を持ち上げないの。


「その時は我々が交代で授乳すれば問題ないだろう。」


「あ、終わったんですね。」


「あぁ。シルカにも歯が生えてきたしそろそろ乳離れが近いかもしれんがな。」


その授乳を終えたシルビアが台所にやってきた。


「人一倍食いしん坊ですからすぐに慣れるかもしれませんよ。」


「わからんぞ、父親に似て乳離れが遅いかもしれん。」


「それに関してはノーコメントでお願いします。」


「ご主人様は胸のほかにお尻もお好きですよね。」


「それは今関係ないと思いますけど?」


朝から絶好調だな二人共。


確かにどっちも好きだけどさぁ。


お腹いっぱいの本人はというと会話がわかるはずもなく早くも眠そうな顔をしている。


幸せそうな顔だ。


「男の子は乳離れが遅いといいますから。」


「リュシアはどうだ?」


「早く大人と同じ物が食べたいみたいです。」


「ははは、食い意地が張っているのはどちらも同じか。」


同じく授乳を終えたエミリアがやってきた。


眠そうなシルカと違い目を爛々と輝かせ、俺の作っている料理を見ている。


今食べたばかりだというのに、なかなかの食欲だ。


今から一年とちょっと前。


春節の初めに二人はほぼ日を同じくして、最初にエミリアが女の子をその後シルビアが男の子を出産した。


女の子はリュシア、男の子はシルカ。


お互いの名前と、シルビアはニッカさんからも一文字もらいこの名前になった。


それから一年。


大変なことはたくさんあったけれど、その度に困難を乗り越えてここまでやってこれた。


それもすべてこの子たちがいてくれたおかげだ。


それはこれからも変わらない。


むしろ新たに生まれてくる子供の為にも、より一層頑張る必要がある。


今は夏節種期。


つい先日新たな目標が設定されたばかりだ。


「さぁさぁ、子供たちの食事が終われば大人の番です。お皿を並べてください。」


「シュウイチ、子供たちを頼む。」


「おいで、二人共。」


料理は完成したので後は並べるだけ。


盛り付け等は任せて子供達を二人から預かる。


「や~や!」


「アブ!」


はずが、無理やり二人から引き離され二人は泣き出してしまった。


暴れる二人を何とか両手で抱きしめ、リビング奥のサークルまで連れて行く。


シルカはまだだが、リュシアはつかまり立ちを始めている。


ハイハイはどちらも得意なので、囲いの中に入れておかないとどこに行くかわかったものではない。


「すぐに来るから少し待っててな。」


うるうるとした目で見つめられるとついつい抱っこしたくなるが、今は心を鬼にして離れなければならない。


急いで食事を済ませて抱っこしてあげるから待っていてくれ。


「お待たせしました。」


「では頂きましょう。」


「「「「いただきます。」」」」


慌ただしい朝食にもだいぶ慣れてきた。


先に食べた者が子供の相手をするという暗黙のルールが出来上がっているので、誰が世話をするとかは考えていない。


皆の子供だ。


これからどんどん増えるし、こんなことでペースを崩されるわけにはいかない。


サクッと朝食を済ませ、子供たちの相手をしながら仕事の準備をする。


体調の悪いニケさんの代わりに先週からエミリアが現場復帰、ユーリには体調を見ながら手伝いをお願いしている。


今日の子守担当はシルビアだったな。


時々セレンさんが子守をしてくれるので、その時は村に連れていきシルビアにはニッカさんの手伝いをするようにお願いしている。


あれから体調も良くなり、今まで以上にエネルギッシュなニッカさん。


やはり孫という存在は大きいようだ。


初めて孫を抱いた時のニッカさんの顔は一生忘れられないだろう。


ダンジョンの整備はバッチさんがいるので問題なし。


だが、ダンジョンが大きくなってきたのもありそろそろ増員してもいいとの事だ。


ぶっちゃけ、まともにダンジョン妖精を呼んだことがないのでどうすればいいかは知らないんだけどね。


「じゃあ行ってきます。」


「頑張ってこい。」


「お昼には戻ってくるからね、二人とも。」


「あぃ!」「アブ!」


いいお返事です。


早くも言葉を理解し始めているリュシア。


女の子は成長が早いというけれど、早すぎないだろうか。


急いで成長しなくてもいいんだぞ。


四人に見送られて徒歩十秒の店に向かう。


中では早くもガンドさんが開店準備をしていた。


「おはようございます、早いですね。」


「なかなか寝れなくてな、ってイナバ様も似たような口か。」


「あはは、お陰様で。」


お互いに眠そうな顔をしている。


間違いなく理由は同じだろう。


「ジル様はお休みですか?」


「今日はちょっと体調が優れなくてな、大事を取って寝かせてる。」


「シルビアが見れますからいつでも仰ってくださいね。」


「あぁ、助かる。」


ジルさんが出産したのは今年の冬。


玉のような男の子を生んだのだが、産後の肥立ちが良くないのか体調を崩していることが多い。


時々はお店に出るものの、長時間はやはり難しいようだ。


「シュウイチさんは表をお願いしますね。」


「わかりました。あ、在庫発注用のリストは仕上がっているので注文だけお願いします。」


「わかりました。」


どれ、今日も元気にがんばりましょうかね。


まずは外の掃き掃除。


次いで店内のテーブルを丁寧に拭き上げる。


開店当初は真新しくキズの目立たなかったテーブルも、今じゃキズの無い場所は見当たらない。


だがそれがまた味であり、この店の歴史でもあるので感謝も込めて拭き上げていく。


これでよしっと。


宿のフォローはユーリにお任せして、忙しそうなら援軍を頼もう。


今日は忙しくなりそうだからなぁ。


「おはよう、あらアナタだけなの?」


「おはようございますメルクリアさん、エミリアでしたら中で準備をしています。」


「そう、じゃあそっちに行くわね。」


「お願いします。」


壁にかけられた掲示板を整理していると、黒い壁が突如現れ中から幼女が飛び出してきた。


幼女と言っても見た目だけで中身は鬼女・・・ゴホゴホ。


「何か言いたげな視線を感じたんだけど?」


「滅相もありません。」


「そ、ならいいわ。」


我がシュリアン商店が所属するダンジョンスマート商店連合の今や取締役。


そんな偉い人が何で一般店舗にいるのかって?


それには海より深い理由があるんですよ。


メルクリア女史がカウンターをくぐり店の奥へと消えていく。


昨日は会議があるからって言ってたのに大丈夫なんだろうか。


「おはようございます、イナバ様。」


「あ、ティナさんおはようございます。」


「お顔色優れませんが大丈夫ですか?」


「あはは、少し寝不足なだけです大丈夫ですよ。」


続いてやって来たのは元冒険者ギルド長のティナさんだ。


今は冒険者に戻り、うちのダンジョンをメインに潜ってくれている。


あくまでも冒険者であって店側の人間ではなく、村に出来た冒険者ギルドの出張所に出入りする立場だ。


もちろん職員でもないのでギルドのやり方に口は出していないそうだが・・・。


「そうですか。今日の予定なんですが、初心者が多く来るとの報告をグランからもらったのでダンジョンの上層を巡回する予定です。」


「それは助かります。最近上層部での怪我が続発しているので、指導も含めてして頂けると助かります。」


「魔物量は変わらずですか?」


「今は少な目ですね、下層に入る冒険者が増えたのでそっちに重きを置いているので・・・。」


「それでケガが多いのは妙ですね。確認しておきます。」


「よろしくお願いします。」


本来、ダンジョンの内容を告知することはないのだが、当ダンジョンは初心者推薦ダンジョンに位置付けられているので、こうして定期的な巡回が行われている。


これも本当はギルドの仕事なんだけど・・・。


ま、ティナさんが好きでやってるからいいか。


ちなみに村に引っ越しされたので毎朝通勤してもらっている感じだ。


メルクリア女史?


あの人は実家から転移魔法で一瞬ですよ。


うらやましい。


「そうだ、シャルちゃんがイナバ様に用があると言っていたので後で様子を見てあげてください。」


「シャルちゃんが?」


「なんでも折り入って頼みたいことがあるんだとか。」


「なんだろう・・・。」


「それと、ドリスさんとウェリスさんもイナバ様に用があると仰っていました。」


「あの二人は自分で来たらいいんです。まったく、ティナさんを伝言板か何かだと思っているんでしょうかね。後で文句を言っておきます。」


「大丈夫ですよ、ついでですから。」


今日も笑顔が眩しいなぁ。


ともかく時間が出来たら村に行ってみよう。


今日はメルクリア女史もいるし、少しぐらいなら抜けても大丈夫だろう。


「そろそろ開店時間よ。」


「わかりました!」


話し込んでいるうちに時間が来てしまったようだ。


「シュリアン商店開店です、今日も張り切っていきましょう!」


皆の返事が店中に響く。


今日から一週間の始まりだ。


寝不足なんて置いといて元気に頑張りましょうかね。


新章スタートとなりました。


書き終わる気で追いましたが、やはり作者としても終わらせるのがもったいなく・・・。

こうして新たにスタートさせて頂きました。

引き続き宜しくお願い致します。

始めましての方はどうぞ520話ほど戻って頂けましたら、よりお楽しみ頂けるかもしれません。

外出自粛でお暇でしたらいかがでしょうか。


あれから二年後。

新たなシュリアン商店のスタートです。

どうぞよろしくお願いします。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

また次回もよろしくお願い致します。

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