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捨てた私と、拾った貴女  作者: 衛星 奏志
第二章 ロゼー

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第四話 順風満帆な人生

※ここからロゼー(妹)視点です。

「君のお姉さんは凄いね。侯爵家を出てからどんどん商会を大きくしている。ほら見てご覧、あの豪華な馬車とドレスを。身につけてる宝石なんて一点ものだ。あんなにも美しくて聡明な姉がいると言うのに君は……。少しでも彼女に似ていればよかったのにね?」


 そう言って旦那様は私を見て笑った。


 本当はこんなところ来たくなんてなかった。

 五十近く上の富豪の後妻へと両親に売られた。


 その両親もあっという間にお金を使い果たして今はどこにいるのか、生きているのか死んでいるのかすら分からない。


 私は別邸から出ることを許されず、数ヶ月ぶりに外に出してもらえたと思ったらお姉様の幸せを見せられている。


*****


 あたしの人生は順風満帆だった。


 お父様は一緒には住んでいなかったけど、毎日来てくれたし、来るたびプレゼントを抱えていた。


 お父様とお母様は心から愛し合っていた。そして、二人ともあたしのことも心から愛してくれた。


 何不自由なく両親に愛されて幸せだった。

 でも、お母様はいつもお父様が帰ってしまうと涙を流す。


「ロゼー。ああ、ロゼー。あなたはお父様の娘で、確かに侯爵令嬢なのに、なぜあの女の娘が侯爵令嬢であなたが違うというの? わたくしはあんな女よりも旦那様に愛されているのに、なぜわたくしは侯爵夫人ではないの?」


 ちゃんとした意味は分かっていなかったけれど、お父様には他にも母の様な人がいて、その人にも子供がいるんだというのは分かった。そして、その母子があたし達よりも恵まれ、幸せであるということも。


 突然、お父様が笑顔であたし達母子を迎えに来た。


「やっと、お前達を我が侯爵家に迎えることが出来るようになったぞ」


 両手を広げお母様を抱きしめ、キスをしたお父様が、あたしを抱え上げる。


「ああ、旦那様。わたくしはようやく侯爵夫人になれるのですね?」

「そうだ。愛するベアトリス。今日から侯爵夫人だ。そして、愛する我が娘ロゼーは侯爵令嬢だ。苦労をかけたが、これからは公にお前達だけを愛することが出来る」

「嬉しいわ、旦那様。愛しております」

「私もだ、ベアトリス」

「お父様、大好き」

「私も愛してるよ、ロゼー」


 それから連れて行かれたのは今までの何倍も大きなお屋敷。


「ここが、侯爵家」

「そうだ、ここが今からお前達も住むあたし達の家だ。さあ、中に入りなさい」

「はい」


 馬車で横付けした玄関は、見上げるほどに大きい。

 扉が開き、中へ入ると驚くほど広い空間が広がっていた。

 今まで住んでいた家がすっぽり入ってしまうのではと言うほど広く高い空間だ。


 そこに白髪混じりの男性と、同じ歳くらいの女の子が立っていた。


 女の子はとても美しかった。見た目の可愛さはあたしの方が絶対勝ってる。でもなんだか、立ち方なのかとても美しいと思った。


「おかえりなさいませ、お父様」

「おかえりなさいませ、旦那様。そちらの方々は?」

「妻と娘だ」

「と、申されますと?」

「聞こえなかったのか? 妻と娘だと言った」

「まさか、喪も明けておりませんのにお屋敷に招き入れるおつもりですか?」

「なんだ? 文句があるのか?」

「……っつ」

「いいえ、お父様。初めまして、エルシアと申します。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」


 白髪の男性が言い募ろうとするのを女の子が止めたように見えた。


「ベアトリスとロゼーだ。ロゼーは妹だ、よく面倒見るように。分かったな」

「承知しました」

「百合の部屋をすぐ片付けさせろ。全て捨てても構わん」

「なっ、百合の部屋は奥様の……」

「ハンス」

「……承知しました」


 なんだかギクシャクした空気のまま、二人は下がって行った。


 とりあえず、準備がまだできていないとのことで、客間に通された。

 ソファーはふかふかで、手触りが良く、大きな窓と、美しい刺繍の入ったカーテンは見るからに高そうだ。


「お母様、すごいお屋敷だわ」

「そうね、でも、これからここがわたくし達の家になるのよ。堂々と言えるわ! わたくしは侯爵夫人。ロゼーは侯爵令嬢。もう肩身の狭い思いなんてしなくていいのよ! たくさんドレスを買ってあげるわ。宝石だって」

「嬉しい! あたし、お姫様みたいなドレスを着て王子様と恋に落ちるの」

「ええ、ロゼーの可愛さがあれば王子様も夢じゃないわ。あの娘よりもロゼーの方が何倍も可愛いのだもの。あの娘の婚約者の王子様だってあなたに夢中になるわ」

「あの娘って?」

「エルシアとか言う、お父様とお母様を引き裂いた、忌々しいあの女の娘よ」


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

お母様、ロゼーを身ごもってから意識してわたくしと一人称を変えました。

貴族の夫人は一人称がわたくしなのだから、私もわたくしと言うのが正しい。だって旦那様の愛する本来の侯爵夫人はわたくしだもの。とか思ってます。ねぇ、勘違い。

次回から雲行きが怪しくなってまいります。坂道の手前、崖っぷち。

お楽しみいただけますと幸いです。


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