疑いの目
幸也は考え事をしながらギルドに向かう。
(何だったんだあいつは、言うだけ言って消えやがって……本当に俺が作り出しちまったのか?)
(はぁ、馬鹿か俺はあいつはただの夢だ、気にする必要なんてない)
(そもそも正人たちが裏切るわけがなぇ)
(それにあいつが本物だったとしても、俺を殺した奴の言った事なんて信用出来るか)
幸也は俊を全否定し続け、ギルドに到着する。
「お、時間ピッタリに来たな幸也」
「おはようございます幸也」
ギルドには剛力と正人の二人がいた。
「二人ともおはよう」
幸也は二人を見て幻覚の俊との会話を思い出す。
(考えるなあれはあいつ戯言だ)
正人に肩を揺さぶられる。
「おい幸也体調でも悪いのか? 悪いんだったら休んでもいいからな」
「大丈夫だ、ただ考え事してただけだから。それより恵梨香はまだ来てないのか?」
「恵梨香か、遅刻してんだろ」
「恵梨香も遅刻すんだな」
「いや、恵梨香は遅刻魔だから普通のことだぞ」
「マジ!!」
「これがマジなんだよ、飲みに行った次の日は絶対遅刻してくるからな。普通の時なら問題ないんだけどな」
「恵梨香も酒飲んでんのか!?」
「あいつは飲んでないぞ、ただ場に酔っていつも夜遅くまで飲んでるだけだ」
その時恵梨香が息を切らしながらギルドに突入してくる。
「お、噂をすればなんとやら恵梨香が来たぞ」
幸也は正人の指さした方を向き恵梨香と目が合う。
「ごめんなさい幸也、昨日少し羽目を外しすぎてしまって たまたま 遅刻してしまいました」
「いや五日に一回は遅刻してくるだろお前」
「ちょ、正人幸也の前で言わないでくださいよ」
「おれもう幸也にお前の遅刻癖話してるから隠す意味ないよ」
「なんで話すんですか、私のイメージが崩れちゃうでしょうが」
「なんでお前出来ないのに、出来る女に見られたいわけ?」
「う~~……あ、あんただって強くないくせに強く見られたいでしょそれと同じよ」
「は、は、は、おれは強いんですけど、おれ元Sランク冒険者なんですけど、弱いわけがないんですけど」
「でも今は落ちぶれてBランク冒険者になってるじゃない、それって周りが強いだけであんたが強いわけじゃないんじゃないですか?」
「それを言うんだったらお前もだろ」
「私は不老の魔女の弟子なんですけど、超級魔法使えるんですけど、Bランク以上の実力は持ってるんですけど」
剛力はいつも通りの二人の喧嘩を見て和んでいたが、幸也は急に喧嘩しだした二人を見て頭を抱えた。
(クソ、どうなってるんだ?こいつらが俺を油断させるために芝居してるように見える。馬鹿あいつの戯言を信じるな俺)
正人と恵梨香の会話を聞き続けるが幸也は芝居しているようにしか見えない。
(本当にどうなっちまってるんだ、あんなに信用できそうだったのにあいつが出てきてから何もかも崩れていく)
頭を抱えている幸也を見て正人たちは言い合いをやめる。
「おい幸也、お前本当に大丈夫かよ、体調が悪いならすぐ言え、命かけた仕事なんだ少しでも調子が悪いならやめるからよ。それにほら恵梨香も寝不足だしな」
「幸也、正直私かえって二度寝したいので無理はしなくて大丈夫ですよ」
「そういうのじゃないから大丈夫だ、早く依頼受けて行こうぜ」
「お前が言うなら大丈夫なんだな、信じるぞ」
正人たちは幸也の言葉を信じて討伐依頼の場所に向かった。
––道中幸也は剣から手を離せずにいた。
正人たちも幸也がいつもと違うことに気付いていた。
「なぁ、幸也もうちょっと気負抜いたほうがいいんじゃないか?さすがのお前でも疲れるだろ」
正人が幸也を気遣うように言った言葉をすぐさま剛力は否定した。
「あのままでいいですよ、いつ何が起こるかわからないんですから」
正人は幸也に聞こえないよう小声で剛力に返す。
「いや、あいつ前と全然雰囲気が違うからよ何かあったのかと思ってな、それに最初に話しかけた時みたいな負のオーラみたいなのを感じるんだよ」
「確かに僕の知ってる幸也じゃありませんが、依頼の時はあれでいいと思いますけど」
すると恵梨香が会話に入って来た。
「気になるんだったら直接本人に聞けばいいじゃない」
「それはちょっと難しいよ」
恵梨香はようにため息をつく。
「だったらあなたが幸也の雰囲気を変えれば、そういうの得意でしょ。仲間なんだからちゃんと話し合いなさい」
「そうだなありがとう恵梨香」
正人は幸也の方に小走りで向かい話始める。
「幸也今日はやけに気合が入ってるけどなんかあったのか?」
幸也は剣を握る力が強くなるがすぐ我に返り力を抑える。
「いや何もないよ、ただ今回の依頼もAランクだからな、前みたいに死にかけないように警戒を強めてるだけだ」
「そういう事か、まぁ確かにデザートスコーピオン時はヤバかったからな。でも今回の依頼はそこまで強くないから安心しな、なんせラモスの群れだからな」
「ラモス?聞いたことないぞ」
「知らねぇのか、バーハラヘンラモスはな・・・まぁ小さな鬼みたいなやつだな。一体ならCランクレベルだから全然強くないんだぜ、それが群れただけでAランクの依頼になる、しかも一体討伐千マナの所十体討伐で三万マナになると来た百体倒せば三十万マナ、それが大量発生してそこら中にいるカモが葱背負ってやってくるとはまさにこと事だよな」
「そうか」
「おう、だからよそこまで気を張らなくても大丈夫だぜ」
正人は幸也を和ませようと肩を組む。
幸也は肩を組まれ俊が幸也を崖から落とし死体を回収するように担いだことを思い出し、無意識に剣を抜いてしまった。
正人はそれを見て反射的に離れる。
「幸也お前」
幸也は自分が剣を握り正人に向けていることに気付く。
同時に剛力と恵梨香が異変に気付き近寄ってくる。
「いや、これは、違––」
––「べラーーーー」
あらゆる方向から聞いたこともない音波の咆哮が耳を貫通する。
「正人恵梨香私のそばに」
「きやがったかラモス」
木の上、地面、崖に一メートルの小型で灰色、一本の角が生えたラモスが一瞬で現れる、正人たちは逃げる隙が無いほどに囲まれてしまった。
正人は弓を構え魔力を蓄える、恵梨香はすぐに詠唱をし、剛力は正人と恵梨香を守るため全身に注意を呻けていた。
だが幸也は一人だけ状況を飲み込めずにいた。
(気づかなかったのかこんな大勢を、五百はいるのに。俺のミスだ注意をあいつらに一切向けてなかった、ヤバいこのままじゃ守れない)
幸也は一歩出遅れたが正人たちの元に向かう、だがお構いなしにラモスは幸也達を襲い幸也は孤立した。




