初めての休日
幸也は何の目的もなくただぶらぶらと町を歩いていた。
(暇だなー。俺休みの日って何してたっけ? うーんゲームだろ部活、釣り)
(だめだどれもこの世界に存在しない(釣りは魚が大きすぎてできません。やるんだったら直取りです)。本でも読みたいが余裕が出来るまで金は使いたくないし。現代知識を広めて楽しもうにも、もう先駆者達が将棋やらチェスやら広めてるんだよな。ルール知らないからできないけど)
その時腕を抑えながらランニングをしている剛力とすれ違い、互いに存在を認識し振り返る。
「幸也じゃないですかこんなところで会うなんて偶然ですね」
「剛力さん何やってんですか」
「何って見ての通りランニングですよ」
(この人昨日腕折れてたよな?)
「あの腕は大丈夫なんですか?」
剛力は腕をさすりながら似合わない笑顔で微笑みかける。
「心配してくれてありがとうございます、全然大丈夫ですよ腕は元通りです」
そういいながら腕を振りアピールするが痛みが再発し腕を抑え込む。
「大丈夫ですか!!」
幸也は剛力の元に駆け寄る。
「大丈夫ですよ幸也は回復魔法を使ったことがないと思うのでわからないと思いますが異常がなくても痛みは少しの間続くんですよ」
腕の痛みが少し治まり何事もなかったように立つ。
「なら今日くらいは安静にして方がいいんじゃ」
「それはできません、僕は強くならないといけない。昨日のおかげでよくわかりました」
「そんなことはないと思いますよ昨日だって毒を治してくれたじゃないですか」
「それだけです、それだけじゃダメなんです。僕は正人と恵梨香を守る役割のはずなのに守れなかった、もしあの場に幸也がいなかったと思うと……だから僕はやめません、それにこれは僕の趣味ですから苦痛ではないですよ」
「そうですか」
「それじゃあまた今度」
そういいながら腕を押さえつけ幸也に大きな背中を見せながらまた走っていった。
(何が休みだよ俺にそんな暇ないじゃんか、よっし決めた俺も修行がてらモンスター討伐に行こう)
幸也は方向を変えギルドに向かい依頼を受けた。
––幸也はBランクモンスター蒼氷龍モドキを倒しに氷雪地帯に向かっていた。
まだ氷雪地帯に入っていないにも関わらず寒い。
(一応防寒具着て来たんだけどな、それにしても見てるだけで寒い)
幸也の目の前には白と青色だけの広大な雪と氷だけの白銀世界が映っていた。
木は生えているが葉は雪に隠され、水は寒さから凍り、所々に雪が降っている。
「ここが氷雪地帯か、見た目通り寒すぎる」
(寒いクソ寒い、俺の弱点だな気温は、にしてもすぐそこには砂漠すぐそこには雪この世界の気候どうなってるんだよ?)
(いかんいかん、弱音を吐くなここには修行に来てるんだ、そうこれは修行弱点克服にはちょうどいいじゃないか。それに俺の力を早く使いこなせるようにならないと)
幸也は寒さを根性で耐えながら歩き続けた、雪を踏む時の力加減が難しく固まっていた雪を崩しながらちょっとずつ進んでいく。
(寒い、手足の感覚がなくなってくれたら嬉しいんだけどな再生持ちの悪い所だ、神経もすぐもとに戻るせいで初めに浴びるシャワーをずっと浴びてる感覚だ)
その後も耐えて耐えて耐えてようやく蒼氷龍モドキを見つけた。顔はまんまドラゴン、その顔の真ん中に角が生え、大きさは三メートルと思ったより小柄で翼のような背中に生えた突起にティラノサウルスのような小さい手。尻尾をうねらせながら幸也に気付く。
幸也を威嚇しながら見つめている。
「やっど見づけだぞ」
唇は震えては治まり震えては治まりを繰り返し、幸也は戦う前から気力的にもう満身創痍の状態であった。
(さすが蒼氷龍モドキ、龍を背負うだけはある戦う前から俺をこんなに追い詰めてくるとは)
最初に動いたのは蒼氷龍モドキ、口から白い息を吐きだしたと同時に冷気の塊を発射する。
幸也はよけようと足に力を入れ斜め上に飛ぶが地形が崩れてしまいうまく飛べずよけることが出来ない。
咄嗟に盾を構えて防御する、間に合ったが空気なので全て防ぐことはできず露出している部分に痛みが襲う。
(冷った、いや熱い焼けるように熱い、ドライアイスと同じようなもんか)
熱さで地団太を踏んでいる幸也に羽を横に伸ばし頭を振りながら突進してくる。
それを幸也は翼の下をでんぐり返しをし避ける。
(今のめっちゃモ〇ハンじゃね。装備的にも片手剣だし)
龍モドキは急ブレーキしまた幸也に突進してくる。今度は二回目と違い幸也に噛みつき攻撃をしてくる、それを簡単に躱す。
その後も突進、噛みつき、翼での薙ぎ払い、ブレス攻撃などを十分近く繰り返した。それでも幸也には最高でもかすり傷しか負わせることが出来ない。
(やっぱり実戦は良い練習になるな、少しずつ感覚を掴めてきた)
幸也はすぐ倒せるのにも関わらずわざと倒さずに生かしていた、それは龍モドキの動きが単調でやりやすく修行にピッタリの相手だったからだ。
龍モドキが突進し幸也の目の前で尻尾を振り上げる初めての動きだが龍モドキに慣れ切った幸也は簡単に躱す。
(これ以上やっても意味はないな、それじゃ最後に実験するか)
剣を首にあて自殺しようとする。
(二回、パワーアップした力のトリガーは多分俺の死、確かめるためにも一回いや何回か死なないと。大丈夫だ俺は何度だって生き返る大丈夫大丈夫)
幸也は死ぬことが出来なかった、手は震え首に近づけば近づくほど自殺からは遠ざかっていく。
(クッソ無意識に拒絶してやがる、なんでだあの不快感が嫌なのか?それとも死んで強くなるのが嫌なのか?)
待ってくれるはずもない龍モドキが幸也の試行中に突っ込んでくる。
(考えてるときに、いや自分で死ねないんだったら殺されるのもありか)
幸也は腕を広げ無防備になる、だが直撃しそうな時に無意識に飛んで避けてしまった。
(俺には無理だ)
だが避けられることが分かっていたのか幸也が避けた先に龍モドキが貯めていたブレスを放った。
足に当たり今度は凍り付き動かせない。
(油断した、まさか二種類のブレスがあるとは)
足を切り落とした幸也はすぐさま舐めプをやめ龍モドキを倒しにかかる。
龍モドキの力任せで隙だらけの突進を見切り首を落とした。
角を回収し真っすぐ帰る。
(自殺してる奴らを根性なしと思ってたが俺はそれ以下だったんだな)
ギルドに報告を済ませた後に下を向き反省しながら宿に向かっていた途中にまた偶然にも買い物途中の恵梨香と出会う。
「幸也じゃないですか」
名前を呼ばれ恵梨香に気付く。
「恵梨香さん」
「こんなところで偶然だね、何してたの?」
「ちょっと依頼を受けに行ってました」
「!! 休みなのに依頼受けに行ったの、すごいね」
「はい暇だったので」
「暇だからって普通行かないよ」
異世界の普通がまだわかってない幸也は少し考える。
「ねぇ幸也依頼終わって今暇ならさ、一緒に買い物行かない?」
(一緒に買い物!! うーんこの町を探索したいし何が売ってるか見ておきたいし断る理由はないな)
「はい俺でよければ」
こうして幸也と恵梨香は一緒に買い物に行くことになった。
––二人で武器屋の中に入り新しい装備を物色する。
「幸也、この杖 にあってますか?」
恵梨香は赤色に輝くマ石が先端に取り付けられている身長より少しい大きい杖を持ち持っている腕を突き出してポーズを取る。
「すごく似合ってますよ恵梨香さん」
恵梨香は褒めたはずなのにあまりいい顔をしていない。
「幸也その恵梨香さんって言うのやめてよ、普通に恵梨香って呼んで私たちもう仲間でしょ」
幸也は認められた気がして嬉しかった。
「わかった、じゃあ今から恵梨香って呼ぶ」
「うん、私もこれから幸也のことは幸也って呼ぶから」
「もう幸也って呼んでんじゃん」
「ふふ、そうだね」
その後は服、食材、食事、魔法陣、本屋に行きショッピングを楽しみ幸也と恵梨香は打ち解けることが出来た。
「楽しかったね幸也」
「そうだな、俺もこの町のこともわかって、初めての休日も楽しく過ごせて一石二鳥だったよ」
「久しぶりに聞いたわ一石二鳥なんて、懐かしいなー」
「この世界にことわざってないんだ」
「あるわけないでしょ日本のことわざなんて」
幸也は恵梨香を家まで見送り宿に向かった。
(楽しかったな今日は日本にいた頃を思い出す、それにすごく仲良くなれた最初はちょっと近づきがたいイメージだったけど話してみれば全然そんなことなかったし、それになんだか認められた感じもする休日ってやっぱいいものだな)
上を向きご機嫌で帰っているとこそこそと周りを見渡しながらどこかに向かっている様子の正人を発見した。
(休日に仲間全員と会うとは思わなかったな、俺は運がいいな……そうだちょっと脅かしてやろ)
後ろにこっそりと近づき大声で正人の名前を呼んだ。
「うおおおお」
面白いぐらい正人は慌てふためき、幸也はそれがツボに入ってしまい二十秒ほど笑い続けていた。
「なんだ幸也かよびっくりさせんなよ」
「そんなに驚いて何しに行こうとしてたんだよ」
幸也は笑い気味でいった。
「お前になら話していいか」
耳に口を近づけ小さい声で囁く。
「エッチなお店」
聞いた瞬間から幸也は引き笑いが治まる。
「お前まじかよまだ俺と同じ十八だろ、やっていいことと悪いことの区別もつかないのか?」
「いやだからこの世界だったらいいんだって十歳以上になったらもう大人なんだよ、それに日本でも十八からOKだぞ」
(ぽ〇もん見たいな設定だな)
「さすがにやめた方がいいと思うぞ、さすがの剛力さんも引いてたから」
「そうか剛力も引いてたか・・・ちょっと待って剛力も知ってるのか?」
「昨日話した時に聞いた」
「!! それマジなの、じゃあ恵梨香もこのこと知ってるのか?」
「剛力さんが知ってたんだし恵梨香も知ってるんじゃないか」
「マジかよ、ああもうやけだ今日は抱きまくってやるぜ」
「じゃそういう事だから」
正人が行こうとしている所を幸也は止める。
「ちょっと待て」
「あのな何度も言うけどこの世界だと合法なの」
「そういう事じゃなくてどの店に行くのか聞きたいだけだ」
正人はにやつき半分嬉しさ半分の笑顔で幸也を見る。
「そうか、そうか、つまり君もそういうやつだったのか、いいぜ詳しく教えてやるよ」
正人に熱が入り事細かに教えて来た、自分のお気に入り嬢のこと、マニアックなプレイが出来る店のこと、新入り嬢の良い所。
「幸也お前童貞だろ、お前のおかげで稼げたからな今夜は俺が奢ってやるぜ」
幸也はためらうことなく言い放つ。
「ありがとうでも俺初めての種族はもう決まってるから」
「そうかじゃあな」
正人と幸也は分かれた。正人は少し違和感を感じたがやりたいで脳が埋め尽くされたためすぐ忘れた。
もし面白いと感じたら評価ブックマークしてくれたら嬉しいです。




