休みって何?
「言った通りだっただろ幸也、逃げずに戦っておれ達の力で勝てたんだ」
「ごめん俺がお前たちを信じてやれてなかった」
「幸也、謝らなくて大丈夫ですよ僕の腕や状況を見て逃がそうとしてくれてたんですから」
男たちが喜び抱き合っている中また恵梨香は一人ぽつりと立っていた。
「おい恵梨香、お前もこっち来いよ」
「私は遠慮しときます」
「お前の力のおかげで勝てたようなもんなんだから遠慮すんなよ」
「そうですよ俺も恵梨香がいなかったら毒針で何回刺し殺されていたかわからない」
「お前はその程度じゃ死なねえだろ」
(そうだ俺、まだ死んでない設定だった)
恵梨香は行きたそうにはしていたが足を踏み出せない。またに手を当て匂いを嗅ぐ、そして絶対行かないと後ろを振り向く。
「私今すごく臭いのでそっちには行けません」
「臭いそんなこと気にすんな、幸也なんてめちゃくちゃ血生臭いぞ」
幸也は自分の服を嗅ぐ。
(本当に血なまぐさいだと)
幸也の心にダメージが入る。
「そういう問題じゃないですそんなことしてる暇があったら早くコアを回収して帰るべきだって言ってるんです、剛力さんの腕忘れたんですか」
「そういえば僕の腕折れてましたね、アドレナリンがドパドパで気づきませんでした」
本人が忘れていた、気づいた幸也と正人は喜ぶのはやめてそそくさとコアを回収しあらぬ方向を向いている剛力の腕を気遣いながら帰っていった。
––何事もなく町に帰って来た、町の住民は剛力の腕を見るや吐くものや気持ち悪くなって倒れる物が続出したため教会まで腕を隠しながら向かった。
「わざわざ教会まで送ってくれてありがとうございます」
「当たり前だろ仲間なんだから、それにお前のそれを心配しない奴はいない」
「そうですか僕はあまり痛みは感じませんけど?」
筋肉が大きく自分の腕が見えないのか平然と笑っている。分かれ際折れてない方の腕を大きく振り別れを告げている、それを見た幸也はあまりの絵ずらに妖怪がいる世界にでも迷い込んでしまったのかと感じた。
ギルドに向かう分かれ道。
「それじゃあ私は帰ります」
「なんで一緒に来ないんだよ恵梨香」
「早く帰って着替えたいので」
股を隠しながら言う。
「まだ臭いこと気にしてんのか?そんなん冒険者なら当たり前だろ」
「そういうのはいいんで、もう帰りますから」
走って逃げるように家に帰っていった。
「どうしたんだよあいつ」
「綺麗好きなんじゃない」
「いや、こんなことは初めてだよ」
ギルドに付き受付に向かうとちょうど正人の元パーティーメンバーのレイブンアローの面々と出くわした。
「うわ」
「おう正人ではないか、スライム討伐でもしてきたのかへ?」
「んなわけないだろ」
「そうか薬草採取か、だが不思議じゃの、薬草採取でどうしてそんなに血だらけになっているのかのー?そ奴は、まさか薬草にやられたのでわあるまいなー」
首を斬られた時に出た血が幸也の服にびっしりついている。それを指さし見下したかのように笑みを浮かべる。
「だからそんなんじゃんねぇって」
「だったら何なのじゃ?ちなみに童達はAランクのアイスゴーレムを討伐したぞ」
「へぇーーアイスゴーレムね」
正人はめんどくさそうに追い払っていたが、アイスゴーレムと聞いた途端に興味津々にレイブンアローがいる受付を覗き込む。
「やっぱりお前らはすごいな、アイスゴーレムを一体倒してしまうなんて」
棒読みでおだてるように言い放つ正人。
「ようやく認めたのかへ––
言い終わる前に正人は大きな声で受付に話しかける。
「アスビーさん依頼通りデザートスコーピオンを三体倒してきましたよ」
「あと序でにデスワームも一体倒してきました」
狐のお姉さんは聞き間違いをしてしまったと思い、長い耳を手入れする。それに幸也は少し興奮する。
「本当にすごいですねアイスゴーレム一体倒せるなんて、おれらなんてデザートスコーピオンを三体倒すだけで精一杯ですよ」
「ふ、正人ついには見栄まで張るほど落ちぶれたとはな、傑作じゃの」
正人は受付に出したコアを手に取り狐のお姉さんを見上げ勝ち誇ったかのように見せびらかす。
「なぁ!!」
「これが本当なんだなアクレシアさん、おれ達は今日デザートスコーピオンを三体同時に戦って狩ったんだぜ」
正人はさりげなく誇張する。
(アクレシアていうのか、素敵な名前だ)
アクレシアは開き直ったのか、認めるしかなかったのか?
「だからどうしたというのじゃ、童達もそのぐらい余裕で出来るわ。それに貴様らはイキってはいるが満身創痍ではないか」
正人は幸也の服を引っぺがした。
「いやん」
「いやんて気持ち悪い声出すなよ」
(しょうがねぇだろアクレシアさんの前なんだから)
「ほれ見ろよ、こいつは無傷だぜ、二つ名通りにな」
幸也の体をまじまじと見るアレクシア、幸也は少しもっこりする。
「傷がないじゃと!!」
「お前昨日こいつが噂だけの男とか言ってたよな?幸也は噂以上にすごかったぜ」
「たかがAランクのモンスターを無傷で狩っただけで図に乗る出ないは」
正人は疑うようなそぶりや声で煽る。
「へーじゃあなんでアイスゴーレムを一体しか倒してないんですか?」
「それはだな……そう寒かったからじゃ、寒かったから六体以上倒せたところを寒かったから一体倒して帰って来たのじゃよ」
「その暑苦しそうな体毛は飾りかよ」
(こいつ何アレクシアさんにセクハラしてんだ、ぶっ殺すぞ)
「なんじゃと貴様」
「やんのか、お、お」
その時長身の薄金色で長髪イケメンのエルフが二人の間に入ってくる。
「アレクシア正人に絡むのはやめなさい」
「じゃって、じゃって、こやつらが」
「どうしてあなたたちは仲良くできないんですか」
深くため息をつくエルフ。
「言い訳はいいのであっちに行っててください」
レイブンアローの方を指さし。それに従いアレクシアはしゅんとしながら帰っていった。
「師匠お久しぶりです」
「見ないうちに成長しましたね正人」
「そんなまだまだですよ」
「いえ、デザートスコーピオンを倒せるだけでもすごいですよ自信を持ちなさい正人」
「それもこれも師匠が見ず知らずのおれを育ててくれたからですよ」
「ならこれからも私の教え通りに励むんですよ」
「はい師匠」
エルフは帰っていった。
「お前師匠なんていたのか?」
「そりゃいるだろ、右も左もわからない状況で一人で何か出来るわけないだろ。幸也はいなかったのか師匠的な存在?」
「……いない」
幸也は何かありそうな雰囲気を無意識に醸し出してしまう。無理もない俊の顔が頭に浮かんでしまったのだから。
「そうか」
「あの正人様とユキヤ様、そろそろ受付に」
「すいません忘れてました」
––「合計十六万マナの報酬になります」
十六枚の金色に輝くマナを見て正人は興奮を隠しきれない。
「おい幸也すげー、まじすげー、日本人軍団で初めての大金、チョーやべー」
幸也は対照的に冷静だ。一回だが十五万マナを受け取ったことがあるからだ。
(十六万か四人で割って四万マナ)
そんな幸也をみて正人は不思議がる。
「どうしたんだ幸也嬉しくないのか?」
「いや、嬉しいよ四万マナも貰えたんだから」
「じゃあなんで驚かねぇんだよ」
「一回だけな、十五万マナを報酬で貰ったことがあるんだ」
「マジかよなんの依頼やったんだ?」
悪意のない質問ただ好奇心で知りたかっただけのそんな単純な質問を幸也は答えることが出来ない。
「・・・・・・ごめん言いたくない」
「おれもすまんな聞いちゃいけない奴だなこれ」
「まぁあれだ明日と明後日休みだからよこの金で遊んで来いよ」
幸也に取り分の四万マナを手渡しする。
「休み?」
「うん、休み」
幸也は異世界に来てから一回も休みを取ったことがなかったので少し驚く。
「お前休みがない世界線の人?それとも社畜高校生?」
冗談交じりに幸也をからかう。
「違う違う、ただここに来てから一回しか休んだことがなかったからつい」
「お前そんな辛い境遇を、明日おれが奢ってやるよ、それに休みたかったらちゃんと言えよ絶対休ませてやるからな」
「いや、休んでないのは俺の意思だ、能力で体の疲労がないから今まで休んでこなかっただけで心配される奴じゃない」
「なんだ、びくっりさせんなよ。まぁ明日は剛力の腕とおれ達の疲労的にも休みだからな、異世界休日を楽しんで来いよ」
正人と幸也はそれぞれ家に帰っていった。
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